あらすじ
現世での生きづらさ、生命の根源的な孤独。世界的文学『苦海浄土』の著者による、水俣・不知火海の風景の記憶と幻視の光景。朝日新聞に3年にわたり連載された遺作であり、著者最晩年の肉声。解説・上原佳久。
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Posted by ブクログ
亡くなる数年前の作品で、著者の最後の作品。
たぶん石牟礼道子は初めから異界にいた。
そこから「近代」によって異域に押し出された
水俣病の患者たちとの
連帯が生まれたのだろう。
ー池澤夏樹
プロの以上の言葉に、心から納得。
偉大な魂は取り敢えず、肉体から離れてしまったが、その魂はこれからも様々な人の魂を揺すぶっていく。
Posted by ブクログ
本書は、朝日新聞に2015年1月から2018年1月31日まで掲載されたものを書籍化したものだが、著者が亡くなられたのが2018年2月であるから、正にその最晩年の肉声である。(その文章は口述筆記でされたようだ。)
育った場所や家族との思い出、幼き日に束の間出会った友だちとの遊び、水におぼれたときの記憶、そうした懐かしさを語る合間、合間に水俣病の被害者の姿や、海や川の汚染の様相が炙り出される。
自然と人間とのつながり、人と人との関わりについて、美しくも、力強い文章をたくさん残していただいた。一つだけここに特記しておきたい。2017年9月28日掲載「原初の渚」より。
「海が汚染されるということは、環境問題にとどまるものではない。それは太古からの命が連なるところ、数限りない生類と同化したことご先祖さまの魂のよりどころが破壊されるということであり、わたしたちの魂が還りゆくところを失うということである。」