今村夏子のレビュー一覧
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ネタバレ3篇ともどれもとても良かったです。
木になった亜沙と的になった七未は最後は思いがけず泣いていました、、
ある夜の思い出で、ジャックの家を探してインターフォンを押してまわって
お母さんですか?
あたな誰ですか?
ハッピーちゃんです。
警察呼びますよ。
のシーンは何回読んでも笑ってしまいます。
普通のちゃんとした大人になれるように、見えるように日々それに囚われて生活している私には今村夏子さんの小説はとても心地良いです。
何とも言えない悲しいような気持ちにもなるし、読み終わった後、ぼーっとしてしまうけど、素の自分でいられる瞬間でもあります。
エッセイも面白かったです!
むらさきのスカートの女の文庫本にもエッセイが入っていて面白かったのですごく嬉しかったです。
村田沙耶香さん好きなので解説も嬉しかったです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレここまで鳥肌の立つ不気味な作品は初めてだった。きっとどの街にも名物人物と言うか家族或いは地域で大体の人は知っているような少し変わった人みたいなのはいると思う。実際私の街にも居る。そんなことを小説として書き切ったような作品だった。
しかしこの不気味さはそんな名物人物(作品内ではむらさきのスカートの女)が作り出しているのではない、それを追いかけ執着する主人公が生み出した不気味さなのだ。主人公はむらさきのスカートの女の行動全てを見届けようとする朝のバスから何から全てをだ。少しコミカルに軽快に描かれる一挙一動が逆に不気味さを増している。
そして彼女が何を着ていても主人公の中でむらさきのスカートの女は頑なにむらさきのスカートの女なのだ。主人公は彼女をストーキングする。そして彼女もまた所長(主人公とむらさきのスカートの女の勤め先の上司)をストーキングする。いつの間にか主人公は自らを黄色いカーディガンの女と呼び、自らをむらさきのスカートの女と同化させる。むらさきのスカートの女が居なくなった時、黄色いカーディガンの女はむらさきのスカートの女の帰りを待ちながら、むらさきのスカートの女専用シートに腰を掛ける。そしてきっとこの連鎖は途切れない。次は赤いシャツの女かもしれない。まるでむらさきのスカートの女を筆頭としたその街の名物人物という概念だけが宿主を変えて生き続けているかのように思える。そしてそれは私たちも同じで、自分と同じような人間が過去にも居てこれからの未来にも生まれるのかもしれない。そんな果てしない考えに迷い込んでしまう。そしてその考えは自分という存在を曖昧にして、不安や不気味さを生み出す。
もしかしたらこの作品を俯瞰していた自分が次のむらさきのスカートの女なのかもしれない。 -
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こちらあみ子
ジュンシンムク、という言葉が似合う少女のようで、逆に嫌悪感を撒き散らす存在でもあるあみ子。
いわゆる知的障害、発達障害を持っているのだろう、と容易に想像できたが福祉の手などこの時代にはないのだろうな……と。
ただ「変わった子」「まともになれない子」として扱われているのが、それでも本人は気づいていないのが、救いなのか闇なのか……。
のり君はキツかっただろうな、と容易に想像できる。
子どものままのあみ子を見る度イライラしてしまうんだろうな、と。
ピクニック
むらさきのスカートの女を読んだ後に読んだので、何か起こるのではないかとひやひやした。
周囲の態度が本当に応援しているのか、小馬鹿にしているのか分からない絶妙なラインで、とても生々しかった。 -
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自分の病気がきっかけで両親がカルトにハマってしまった女の子から見た、家族と宗教と外の世界。
両親がハマってるカルトについて主人公が善悪のジャッジを下さずに「そういうもの」として認識してるのが、幼い頃からその環境に置かれてたらそりゃそうなるよなぁと妙にリアルに感じられた。
読みながら「この人がこの子を助けてくれるのかな?」って思った人たちがもれなくクズで逆に主人公を傷つけて、心が苦しくなった……
描写されてないけど、もしかしたら姉のまーちゃんが家出を決意するまでの間にも同じような悪意に晒されたりしたのかなと思ってしまった。つらい。
両親との絆を再確認したラストは美しいけど……うーん、やっぱり私は高校進学を機に家族とカルトとは距離とってほしいと思ってしまうかな
でもこのまま親と一緒にカルトにハマり続けるのも彼女の主観では決して不幸ではないのかもしれない、難しい…… -
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『木になった亜沙』
他人が自分たちの聖域にずかずか土足で入ってくる不条理。誰に迷惑をかけるわけでもないのに、せっかく手に入れた場所を奪われるという悲痛さ。で、自分たちを守るために亜沙は仲間たちと心中することを選ぶ。……え? さっきまで感情移入して見ていたのに、急に引いてしまう。なんでそこまで、みたいな。気味の悪さと理解の出来なさ。宗教団体の集団自決なんかが頭によぎる。僕が歩んできた人生や日常からは想像できない世界観の中で生きている人たちがいる。彼女たちに本当の意味で寄り添うことは僕にはできないんだと感じた。
『ある夜の思い出』
キモい話だったのにラストは急に泣きそうになった。たった一夜しか会わなかった人でもふと思い出すことってある。懐かしくてたまらなくなることがある。もう一度会いたいとかは思わないけど、忘れたくないなと思う。 -
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今村夏子のユニークさは万人が感じ入るところであろう。
だけど、なぜユニークなのか、と問われると言い淀んでしまう。明確に示すのが難しいこともあるが、明確にしてしまうことをためらわせる仄暗い場所にその魅力が隠されている。平時では見えないふりをしている人間社会の裏側が顕現しまうことが恐ろしい。
では、「あひる」について。
愛くるしいあひるを介して育まれる一般的な家庭と近所の子どもたちとの触れ合い。和気あいあいであるべきテーマである。ハートウォーミングな展開も期待できる。だが当然、裏切られる。
語り手の不遇、家族間の不和、新興宗教の影、弟の粗暴と人間の実存に関わる問題がぽつりぽつりと現れてくる。主人公の一人であるあひるすら存在が安定しておらず、この物語の不穏さがどんどん際立ってくる。
物語のラストでは、主人公の取り巻く環境に小さくない変化が生じる。周囲を構成する要素が改変される。変化していく環境と、以前と変わらない生活が続く主人公との乖離。同じ空間で過ごしているのに違う世界に住むような違和感がある。主人公の未来や展望が期待できない、滞留している水たまりのような不衛生な暮らしが続くことを予感させる。
ネタバレ回避で観念的な感想となってしまうが、語り口の平易さと物語に通底する人間社会の不条理さを感じさせるテーマとのアンバランス。今村夏子にしか表現できない読み応えが、癖になる。 -
購入済み
今村夏子さんのデビュー作で話題の一冊。昨今注目度の高い、学習や感情面での障害についての問題提起的なものも感じつつ、自分の理解できない人間に対して「気持ち悪い」と感じてしまうことについて考えさせられる。
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昨年映画を観てすごくよい作品だと思ったけれど、小説も素敵だった。映画で感じた空気感と小説だからわかる繊細な心情の動きが合わさり、より深みをもって読めた気がする。
信仰を持たずに生きていると、宗教、特に新興宗教に入信している人たちに対しては「ヤバい」という一方的な線引きを行なってしまいがち。しかし信じるものがあるということは、弱さでも奇妙さでもなく純粋さに通ずると思う。まっすぐだから信じられる。その過程には不幸もあるし、幸福もある。何を信じても、信じなくても、それは変わらないのだと思う。
映画の時には特に印象強くなかったけれど、春ちゃんの彼氏の宣誓がすごく素敵だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ初めての今村夏子の作品。
どの話も読み終わると何とも言えない気持ちにさせられた。
木になった亜沙は、もう世にも奇妙な世界観が凄かった。え?そうなる?そっちにいくのかー!と進む先が驚きの連続で、先が読めないとはまさにこの事だなと痛感した。斬新なお話だった。
的になった七未。この話が1番印象的だった。
最初は可哀想な子だなと思いながら読み進めていたが、子どもが産まれてからのストーリーが切なくて。
私自信も息子がいるので、尚更自分に置き換えたら…と考えて後半涙が…。
でも最後の最後に息子と再会し、射的の弾を愛する息子から当てて貰えたのを七未は母として嬉しく思ったんだろうなあと感じた。当ててもらいたくて堪らなかったものを息子に当てて貰えたんだもの。
壮絶な人生を駆け抜けてきたけど、最期は少しだけでも幸せになれたんじゃないかと思う。
ある夜の思い出。このお話もなかなかに摩訶不思議だった。
結局人間なの?猫なの?え、どっち??と困惑したまま、解決もしないまま話は終わってしまった印象が強く、それ以外を思い出せない…。
この作品で完全に今村夏子ワールドに引き込まれたなあ。
現実にありそうな、でも無さそうな、いや、やっぱりあり得る?そんな不思議な気持ちになった作品でした。面白かったなあ。 -
Posted by ブクログ
以前、情報番組で宗教二世をフィーチャーした回を見たことがありる。その宗教は度々トラブルを起こして世間を騒がせていた。
匿名で番組に出演していたAさんは、親が信者であり、自身も生まれた時からその団体に所属している。
客観的に見ると、怪しいしアウトでは?と思ってしまうが、信者がいるというのもまた事実。
その団体が起こした事件を、信者はどのように思っているのか、なぜそれを受けても信じ続けるのか、ずっと疑問だった。
本作の主人公・ちひろも宗教二世。
ちひろの属する宗教は人に迷惑こそかけないものの、かなり怪しいもの。それは、ちひろの同級生や叔父さんの反応でも描かれている。
宗教の内部にいながら、外側の感覚も合わせ持っているちひろの視点や心の動きはとても興味深かった。
Aさんもちひろと同じように、自らが属する宗教のおかしな点、ちょっとした違和感に気が付いていた。
物語終盤、ちひろが「両親になかなか会えない」というシーンがある。同じ合宿に参加し、同じ会場にいるはずなのに、その姿を数日間見かけない。
なんてことないすれ違いだった。大人数が参加していますし、そんなことも起こり得る。しかし、両親に会えない間、ちひろは言いようのない不安に駆られる。
宗教が原因で好きな人から変な目で見られたり、嫌な思いをたくさんしたものの、ちひろは最終的にはその団体に居続けることを選ぶ。それはちひろにとってこのコミュニティーこそがホームだからなのだろう。
先に述べた情報番組の最後でAさんは、「自身の団体におかしな点があることは認識しているが、それでも、これからもこのコミュニティーの中にいたい」と語っていた。
小さい頃から慣れ親しみ、仲間もたくさんいるその場所で生きていきたいというのは、ごく自然なことだと気づく。 -
Posted by ブクログ
『あひる』
巻末の解説や、レビューでも「怖い」「不気味」といった言葉が多く見られる。確かに、と思う。一方で、親の視点から見るとそれとは別に悲しい印象も受けた。
読後、実家の両親のことが頭に浮かんだ。うちは両親と僕と妹の4人家族で、僕と妹は大学進学を機に上京したため、現在実家では両親が2人で暮らしている。
小さい頃、ペットが欲しい、犬か猫がいいと両親にねだった。家の外で飼うのはかわいそうだから家の中で飼いたいとお願いした。両親は、家の中が汚くなるからダメだと言って、結局ペットは飼えずじまいだった。
ところが僕と妹が実家を離れてから、両親は家の中で猫を飼いだした。里親募集で貰った猫や、野良の子猫など、どんどん増えて4匹になった。猫は家具や壁を引っ掻き回すし、粗相をする子もいて、たまに帰る実家は以前より荒れている。両親はあまり気にしていないようで、一応作った家族のグループラインには可愛い猫の写真がたまに送られてくる。
年末は必ず帰っていた実家に、去年は帰らなかった。実家というのは意外とやることもなく退屈だ。だけど今年は、猫に会いに実家に帰ってみようと思う。