今村夏子のレビュー一覧
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ネタバレ面白かった。はじめはカルト宗教に関わった家族が歪み壊れていく暗い話かと思ったけれど、読んでいくうちにそんなことはなくて驚いた。
確かに小説の中心に宗教はあって、そのせいで姉がいなくなったり生活が貧しくなったりとかはあるけれど、想像していたようなそれが原因で極度のいじめに合うだとかいうのはなく、かといって受入れられているわけでもない。少し遠巻きにされたりバカにされたりはあるけれど、先生に詰められた時はクラスメイト達が慰めてくれたりもする。カルト宗教というと怖い、怪しい、近寄りがたいというイメージがあったけれど、実際に二世の生活ってこんな感じなのかな?と思わせる不思議な説得力があった。もちろんあくまで一例、それも想像上の一例だろうけれど。
両親がちひろと宗教に対してどういった優先順位でどんな心境なのかいまいち掴めなかったけれど、ラストで確かにちひろは愛されている、宗教に傾倒したのも元はちひろの為で、これからのちひろの為の選択を選ぼうとしている雰囲気が感じられて思わず泣いてしまった。巻末の対談を読むと、作者はそうと決めて書いたわけではなさそうだったけれど、私にはそう感じられたので、そういうラストだったんだと思うことにします! -
Posted by ブクログ
表題作と中編1つと短編1つ
・こちらあみ子
映画を先に視聴済み
原作と大体同じ
無垢なあみ子は周囲を壊していく
時代背景としては昭和か平成初期くらいなのだろうか?
令和の今、もしくは田舎ではなく都会なら違った育ち方もあったのかもしれない
安易に知的障害だとか発達障害だとか断定してはいけないのだろうけど
「普通の子」とは違っているので、継母としてはあれこれあった上でのあの態度なのだろうなぁ
返事の帰ってこないトランシーバーの片割れがあみ子の状況を象徴している
寝込んでいる母を励まそうと、「弟の墓」の札をのり君に書いてもらうところ
とても残酷なのだけど、その残酷さをあみ子は理解できない
のり君の訝しげにしつつも書いてあげたんだよな
まぁ、その後で親にめちゃくちゃ怒られたとあみ子に愚痴ってるけど
村田沙耶香「コンビニ人間」を読んだ時にも思ったけど、思考に一般的な倫理観や価値観が入らない人は恐ろしい
あみ子も悪気があってやってるわけではなく、善意でやってることでも周囲の人にとっては人の心がないように見えてしまう
あみ子も上手く一般の人に擬態できればまだ違ってただろうけど、擬態には一般人の行動を理解してトレースする必要があって
この家族の中でそれは難しいと思う
小学校の頃はまだ兄が傍にいたけど
あみ子が中学生になると、兄ではなく「田中先輩」として認識されている
もう、かつての兄はいないという事なのだろうな
映画を見てても恐ろしかった、保健室でのり君と二人のシーン
のり君のブチギレ
あみ子の「好きじゃ」に対しての「殺す」
その場面だけ見ればのり君に否があるように見えるけど
あみ子の「好きじゃ」は暴力だし、のり君に殴られてやっと安堵する描写のアンバランス具合が文学的なものを感じる
もう手の施しようがないため、あみ子を手放すことにした父
あみ子は今の母親と離婚して引っ越す事を想像するけど、実は出ていくのは自分だけという勘違い
ここも残酷だよな
死産したのは弟ではなく妹だったのをようやく告げる父
そんな事すらあみ子は知らなかったわけで
誰もあみ子に向き合ってこなかったというのが伺い知れる
でも、最後の最後にお兄ちゃんが助けに来てくれる
でも、兄が捨てた鳥の巣が家族崩壊を象徴しているのだろう
昔はあみ子を窘めたり助けたりしてくれた兄
「幽霊の音」に怯えるあみ子を助けてくれたけど、それが家族としての最後を象徴しているのが皮肉
ところで、あみ子の実母はどうなってるのだろ?
死別?それとも単なる離婚?
離婚という言葉をあみ子が知ってたので、離婚だと思うのだけど
となると、実母が別れた理由もあみ子だったりするのだろうか?
だからこそ、兄が継母をほくろおばけではないという諭しがあったのかも
映画を見ても辛かったし、ストーリーを知ってて小説を読むのも辛かった
あみ子
でも、小説だと冒頭と最後にあみ子の現在の状況が描かれていて
のんびりといた情景に安堵を感じるとともに、それが全てではなさそうだし、さらにこの後にどうなるかを考えるとやはり不安になる
・ピクニック
お笑いタレントと付き合っているという七瀬さんと、お店で働くルミ達のお話
お笑いタレントの「春げんき」と付き合っているという七瀬さん
彼が子供の頃に川に落としてしまった靴を川下で拾い、そのエピソードがラジオで語られた事が縁で付き合い始めたという
何か違和感があると思いつつ読み進めて
やはり何か可怪しいなぁと読み終わった
映画「花束みたいな恋をした」で
「今村夏子さんの『ピクニック』を読んでも何も感じない人」という表現が出てきたけど、一体どんな意味だろうと思って他の人の感想を読んだ
なるほど、七瀬さんは虚言癖で、ルミ達はそれを知りつつ引くに引けない状況にして楽しんでいたと
醜悪だなぁ……
言われてみればなるほどと思ったけど、自分では気づかなかった
どうやら私は「今村夏子の「ピクニック」を読んでも何も感じない人」だったわ
いや、感じないわけではないのだけど、気づかなかった
だって、小説は地の文や書かれてあることはとりあえず信じてしまうじゃない?
七瀬さんの言うことはどこからどこまでが本当なのだろう?
やはり、最初から最後まで全部嘘、なのだろうなぁ
ルミ達が続きのシナリオを考えたり、メモを残すところが醜悪
新人さんの方がまだマシな人に思えてくるけど
結局は同じ側に行ったものなぁ
その結末としての「ピクニック」
悪意の塊だわ
それに気付けなかった自分にショック
多分、あみ子が周囲の理解を得られずに孤立化していった話なので
七瀬さんもちょっと変わった人だけど、理解と応援してくれる人がいてよかったね という感情になってしまっていた
もしそんな前提条件がなかったら気付けてた
はず?
・チズさん
近所に住むおばあちゃんのチズさん
まっすぐ立てない歩けない
小学生くらいの子を見かけると孫の名前を口にする
老いとはこういうものなのでしょうね
家族が尋ねてくるけど、その状況もまざまざと目に浮かぶ
それにしても、今村夏子さんは「むらさきのスカートの女」でも、結局何が起こったのか説明が少ない物語だったし
「星の子」も最後に宗教に取り込まれたのか、家族を取り戻したのか判別が難しいラストシーンだったし
読者の想像力に色々と委ねる作家性なのだろうか?
だとしたら、私は作者の想像する読者に達していないような気がする
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第26回太宰治賞&第24回三島由紀夫賞 W受賞
読む人のたましいを揺さぶる、
芥川賞作家・今村夏子の衝撃デビュー作
あみ子は、少し風変わりな女の子。優しい父、一緒に登下校をしてくれる兄、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいる母、憧れの同級生のり君。純粋なあみ子の行動が、周囲の人々を否応なしに変えていく過程を少女の無垢な視線で鮮やかに描き、独自の世界を示したデビュー作。短編「ピクニック」「チズさん」を収録。
解説:町田康・穂村弘
「いつか、たった一人の読者の手によって、ボロボロになるまで繰り返し読んでもらえるような物語を生み出すことができたら、どんなにか幸せだろうと思っています。そういう物語は、書く側が命懸けで臨まない限り決して生まれてこないのだと、今更ながら思い知った次第です。」── 今村夏子(太宰治賞受賞の言葉より)
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Posted by ブクログ
読み進める時、なるほどそっちに進むのね、となる。はいはい、これは面白いわ。今村夏子さん、流石です。おぉー、ここまでいくのね。んぁ?
って感じ。一本道のように続いていくストーリーの中に、明確な分かれ道はない。決められた道を歩かされるようだけど、綺麗に舗装されていて、進みやすい。にも関わらず、進んだ先には全く見覚えのないし、見ようともしなかった景色が広がっている。どこで歩く道が変わったのかもわからないけど、今ここにいることが全てだった。
確かに、所々ヒビのようなものが刻まれているが、歩道に関して言えば特段珍しい事ではない。でも、多分、おそらく、確信はないけど、どこかでわたしは躓いて、ここにいる。進むはずのない道を進んでしまった。でも、これを望んでいたことは否めない。素晴らしい。
とんこつQ&A
特に凄いのが、最後の一文の頭。
「というわけで、」
この一語からどこまでも広がっていく。製作者側の意見すぎるし、既に決定していることに対して、後から理由を付けた時に言うセリフすぎる。先に事実(虚像?)があって、次に裏付けのシーン(虚言?)があった。
そう思えて仕方がない。
良夫婦
これが一番好きかもしれない。こんな物語が読みたかった。人間の丸裸が描かれて、その構成もまた、人間味をより強く押し出している。 -
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ネタバレこの本を読んでずっと心がヒリヒリしていた。
あみ子は今の時代であればわかりやすく病名のつくような発達系の障害を抱えていると思う。
私はこの本に出会うまで、こういうハンデを持つ子どもは両親や周りからのサポートを受けて当たり前と思っていた。
でもその理解がなく、大人達からのサポートを受けれない「変な子」とレッテルを貼られる事でまるで犯罪者のような扱いになってしまう怖さがあった。
あみ子に翻弄されている周りの人々と、それに傷つくあみ子が見ていられなかった。
最後は色々な想像ができる終わり方で、私はあみ子が居心地の良い場所に行けたと解釈している。
まだまだ私の知らない事が多いことと、知っていることで見方が変わることを学んだ。
電車で何かに怒って叫んでいる人も、自分のコントロールができず困っているのかもしれない。
そういう所に気づいて助けられる人になりたい。 -
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ヤバい宗教の会員の両親に育てたれている子供が主人公ですが、自分の子供の頃と重なる部分もあり、気持ちは少しだけわかりました。
うちの両親はクリスチャンなのですが、宗教の中でもポピュラーなので、そこまで苦労はしませんでしたし、アメリカではむしろマジョリティなので、アメリカにいた頃の方が楽でしたが、日本ではやはり親の言うことと世間の反応のギャップにズレを感じていました。
そんな感情を如実に表しているのが著書であり、創◯学会やオ◯ム真理教の会員2世の方々なんかも共感できる部分が多いのかなと思いました。
ただ、昔から変わらず日本人の宗教に対する偏見は、世界に比べてかなり多いとう印象もずっと持っています。 -
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なぜだか夢中で読み進め、このあとどうなるんだろうと思ってページを捲ったらお話が終わってしまった。
安易な救いも、涙を誘うような展開もないまま閉じた世界が閉じて行った。
星を眺めるあのラストをどう解釈したらいいんだろう。幸せな家族の、そこには確かに愛情があるという描写、とも取れなくはないけれど、私は不気味さや不穏さを感じるな、と思った。
砦の外にいる人間に危害を加えるわけではなくても、周りから見た時の宗教や信仰は奇怪で意味不明で恐ろしいものだったりする。信じるものが違う時、距離を置く以外の方法で解決しうる人間関係ってあるのかな。この本を読んでいて、私は主人公におじおばのところに逃げて欲しいなと思ったし、絶対逃げるべきとさえ思ったけど、本人の見ている世界は周りが思うほど深刻では(まだ)ない、というところが生々しかった。
公園で見かけた、見慣れたはずの両親の姿を「はじめて見た」と思う場面が印象深い。あと、先生の似顔絵が計算用紙になる所が好き。 -
Posted by ブクログ
表題作はアヒルの『のりたま』を中心とした人々の様子が、主人公の視点から淡々と語られるお話です。
作中で一番遠くからのりたまを眺めているのが彼女なのですが、誰よりもよくのりたまを見ていたのも彼女だったかもしれません。
資格取得を目指して試験勉強中の主人公は、のりたまを構いに来る近所の小学生達が自宅の敷地内で騒いでいても、勉強の妨げになると腹を立てるようなことはありません。
自室(二階)から様子を窺うだけで子供達に直接干渉することもなく、家が賑やかになって喜ぶ両親を何も言わず静かに見守りながら、遊びに来る子供達が好きそうなお菓子をコッソリ買い足しておいたりなど、陰からそっと、さり気ないサポートをするようなタイプです。彼女の言動からは、物静かで冷静な人物像や、周りをよく見ていてるなぁという印象を受けます。
物語には特に起伏もなく平坦で、終始静かなのに何故か不気味っていう、今村さんらしいお話なのですが、動物と一緒に暮らした経験のある人に刺さるような箇所がいくつかありました。主人公がのりたまの体を丁寧に清めてあげるシーンは思わずグッときてしまいました。
もう一つ印象的だったのが、他人と家族との線引きがはっきりと描写された場面でした。誕生日会のエピソードは、その差を酷くあっさりと、情け容赦なく突き付けるもので、謎の少年が主人公の想像通りであってほしいと願わずにいられないです。
『あひる』の他に二篇の短編も収められていまして、こちらは是非、間を開けず続けて読むことをお薦めしたいです。
ふたつのお話はお互いにリンクしていて、内側から見たおばあちゃんと、外側から見たおばあちゃんの違いに注目して読むと面白いです。おばあちゃんの複雑な境遇を想うと、おばあちゃん子の私は非常に胸が痛みます……。それにしても、おばあちゃんに訪れた本当の変化点は一体どこだったんでしょう……??
そして三作品通して、作中に登場する子供たちの解像度がとにかく素晴らしいです。
小説の中でこんなにも生き生きとしたガキンチョ共を描く作家さんに出会った事がなかったので、とても新鮮で驚きました。本当に目に浮かぶようです……!