はじめて今村夏子さんの話を読んだ。他のも読もう、と思わされる一冊でした。
短くてスルスル読める。ものすごい悪人も出てこない。読後感も軽い。でも主人公たちの選択に、些細な言動に違和感があってザワザワと嫌な予感がする。えっ、いいの…?となる。
でも本人たちは良いらしいから、多分こんなに空気が軽やか。
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「とんこつQ&A」
不器用でいらっしゃいませも言えない今川さんが、中華料理店の親子のところでバイトをはじめる。読めば大丈夫、と気付いた今川さんはQ&Aの想定問答集を作る。そして大将と坊ちゃんのおかげで、ついにメモ無しで接客ができて笑ってしまう。…ここまでは朝ドラのようで、すごく穏やかだった。でも新しいバイトの人が入ってからどんどんおかしなことになっていく。
みんな気持ち悪いんですよね。坊ちゃんはまぁ…うーん…小学生だからセーフ?大将もまぁ…セーフ。大阪弁で「読む」ことしかできない丘崎さんもセーフ。あれ?セーフ?いや大将はアウト。関西弁を強制するな。大人だろ。でも今川さんはおかみさんを作り上げ、Q&Aを作り上げ、とっても幸せそう。どこからか夢だったのかな。採用されて一週間後ぐらいのところでクビになって全部夢だったのかも。
「嘘の道」
何もかもの犯人にされる与田正と、与田正と呼び捨てにする主人公たちの父母と、手のひらくるくるの同級生たち。
もしかしたら自分の中にもありえるかもしれない何か。
「良夫婦」
タムという少年の世話を焼く奥さんと、その良い夫の話。奥さんの思い込みとぐいぐいいくところに、嫌な予感が募っていく。
後半、タムがサクランボの木から落ちた後の夫の手際の良さ。妻を守るためで、確かに良い夫なんだけど、いや良い夫ですよ。何があっても妻の味方をする。二人はタムが落ちた時のヒヤッとしたことを忘れるし、仲良しの夫婦の会話を続ける。こわ…こわいな〜〜 悪人ではないけど怖い
「冷たい大根の煮物」
図々しいオバちゃんが主人公のアパートで料理を作り、金を借り、仕事を辞める。
絶対このオバちゃん関わらない方がいいのに、何故だか最後、主人公は自炊をはじめてる。前向きになってる。から…いいのか…な??