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あみ子は、少し風変わりな女の子。優しい父、一緒に登下校をしてくれる兄、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいる母、憧れの同級生のり君。純粋なあみ子の行動が、周囲の人々を否応なしに変えていく過程を少女の無垢な視線で鮮やかに描き、独自の世界を示した、第26回太宰治賞、第24回三島由紀夫賞受賞の異才のデビュー作。書き下ろし短編「チズさん」を収録。
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「こちらあみ子」
2022年7月8日公開 出演:井浦新、尾野真千子、大沢一菜
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Posted by ブクログ
なんとも言えない気持ちを引きずっています。 あみ子は純粋でおおらかで人を喜ばせたいと思える子。だけど常識的に関わるのは難しく、適切な対応が必要な子なんだと想像できます。 診断されて「支援が必要」となれば周囲も「そういう子」として付き合えたかもしれない。この子は違うんだから、と。 でもその区別なしに皆...続きを読むに受け入れられる事は難しい。同級生はあみ子を全く理解できないし、迷惑を被ることだってある。 明確に区別された方があみ子はあみ子のままでいられると考えてしまう自分にもモヤモヤ。うーん。そうなの?どうなの?モヤモヤ。 家族も周りもどんどん疲弊して壊れていくのを、あみ子はどう受け止めていたんだろう。 あみ子がポロッと漏らす言葉や、同級生に問いかける言葉が心をえぐってきます。 ただ一つ言えるのは、誰も悪くない!ということ。 坊主頭くんの存在で少し息もつけたし、希望があると信じたいラストですが…どうなんだろう。 「ピクニック」 なんかこの感じ知ってるなとゾワゾワしました。ありますよね… 「チズさん」 不思議。「あれ?」となって何度も読み直し、やはり「??」ただただ不穏〜
今村夏子さんのデビュー作で話題の一冊。昨今注目度の高い、学習や感情面での障害についての問題提起的なものも感じつつ、自分の理解できない人間に対して「気持ち悪い」と感じてしまうことについて考えさせられる。
現在の私がこの作品と出会ったタイミング・環境があまりにもドンピシャリすぎて、この上ない没入と共鳴を体験した表題作《こちらあみ子》。 本書は3つの短編が収録された作品集であるが、もうこの《あみ子》だけで星5をつけちゃうくらいに素晴らしい読書だった。久々に夢中になりすぎて電車を乗り過ごしちゃう本でした。...続きを読むしかも3回。ほんとに。 ただし、その他の話《ピクニック》と《チズさん》はそこまででもなかったかな。《ピクニック》はともかくとして《チズさん》は如何とも言い難い。 そもそも《チズさん》の話、最初に通読した時はもしかして2話目に登場した〈七瀬さん〉のスピンオフ的な話かな?と思って読み返したけど「全部、私がチズさんの代わりに、英語で答えた。」(p212)というくだりから七瀬さんはそんなんじゃないな、と思い直し、ではまさか1話目の〈あみ子〉か?と思ったけどそれはないな、というところで話の意味がわからなくなってしまいハマらず。 《ピクニック》は「仲間」(p207)が裏テーマの大人の青春ストーリー風な建て付けであるが、そこはかとなく漂う「残飯」(p180、p182)の腐臭は隠しきれない。物語中のところどころに散りばめられたこの腐臭は言い換えれば「悪意」もしくは「侮り」「嘲り」ということになるのだろうか。我々はこういった腐臭の中をサバイヴしていかなければならないのだな、という真理めいたものを感じた一作。赤ちゃんを連れていた上品なお母さんが川に残飯を流すシーンは衝撃。 そして《こちらあみ子》、これがあまりにも私がいる現状に近いというか、実娘とあみ子の様子があんまりにもダブって見えることから、まるで未来日記を読んでいるかのような感覚で目が離せなかった。幼い頃は‘不思議ちゃんだな’で済ませられていた事が年々そうも言っていられなくなり、「右腕を伸ばし、その先の手のひらで父はなにも言わずにあみ子を押した。左の鎖骨のあたりをとん、もう一度同じ場所をとん、とやられたら、体はもう両親の寝室の外にあった。」(p72)という父が娘を拒絶するシーンは申し訳ないが痛いくらいに良くわかってしまった。家族だから理解出来る、乗り越えられるという事じゃないんだという事を書いて下さったのかな、などと冷静に思ったり。 あみ子は辛い中学時代を送るのだが、幸いにして理解者…というほどの大袈裟なものではないが、無視をせずに関わってくれるひと、「さてはあみ子をよく知っとるひと」(p118)が現れてくれて、どうにか一筋ばかり社会との繋がりを保つ事が出来ているのは救いではある。描写的にも、両親・兄と暮らしていた時は「青葱の植えられたプランタ」「青葱の横にはなにも植えられていないプランタ」(ともにp53)、「からの植木鉢」(p67)といった舞台装置が孤独さ・空虚さを醸していたが、親元を離れ祖母の家に移ったのちには「脇に植えられた一株のつつじが満開の白い花を咲かせている」(p9)、「坂の上の平地には小さな畑が広がっていて、季節ごとに植えられるきゅうりや三つ葉、茄子や大根など」(p10)など、他にも色とりどりの植物が描写されていてなんとなくあみ子の心の平穏や満ち足りた心情を感じ取れるように思われた。ラストは歳の離れた「友達」(p121)と呼べる存在もいて、ああよかったと思う一方、竹馬に乗ってよちよち近付いてくる友達に対しては「だいじょうぶ。あの子は当分ここへは辿り着きそうもない。」(同)と、いつかあの子が物事をわかるようになった時には離れてしまうのかもな、と薄々察するあみ子の寂しさを漂わせる。 更に、ラストシーンであみ子が「すみれの入った袋を落とした。」(同)という場面があるのだがすみれの花言葉には「小さな幸せ」という意味があるそうで、それを「落とした」というのは何の暗示なんだろうか…と不穏な気持ちになりました。 あみ子は自由で囚われない生き方をしている、と映ると共に、絶えず孤独や誹謗のなかを生きていくことになるのかな…などと、我が子の将来に想いを馳せるヘビーな読後感でした。ひねくれすぎかもしれないが。 ひとつわかることは、あみ子はいわゆる‘無敵の人’ではないので、ちゃんと傷ついていると思うよ。 それを適切に打ち明けられる・キャッチしてくれる存在が近くにいないだけで。 14刷 2025.9.20
3作どれも好きでした。ゾクゾクしながら、なんとなく不穏な雰囲気を感じながら一気に読みました。 ピクニックはタイトルこそ平和だけど、中身は全く平和じゃないよね、、途中からルミたちの見え方が変わってくる。
すごくいい。 あみ子、世の中の普通じゃないところを背負ったあみ子は 堂々としていて、悲しくて、かっこいい。 痛いな、と思う、その痛さが自分に向かってきて、 あみ子になりたいというか、 自分の中にあみ子がいることに気づく。 あみ子の周りにいる人たちもそれぞれ痛くて、痛みを知っている。 とても好きな物語...続きを読むだった。 ピクニックの七瀬さんも痛い。 ルミたちという塊で表された一人格も痛い。 その痛みの心地よさ。 チズさんと、関係性がはっきりしないヘルパーも不思議な解放感が痛くてよかった。 いろんな感想をもったけれど、すべては町田康さんの解説に言い尽くされている。 愛のある素敵な文章。 穂村弘さんも、この小説にゾクゾクしたのだと感じた。
ずっとゾワゾワ
表題作「こちらあみ子」ではハッキリとした怖さ、ピクニックではなんなのかわからない違和感がずっと続く
#怖い
ちょうど発達障害の勉強してたから、あみ子を色々分析するように読んでしまったけれど、あみ子の素直さ、まっすぐさいい!と思った。
いわゆる普通から外れた女性たちの人生を描いた短編集。良くも悪くも彼女たちの言動は周りを巻き込み、周囲の人たちの“普通”を揺さぶる。 こんなにも読み手の感じ方で印象が変わる本は初めてかもしれない。読む人の経験や価値観によって、まるで違う物語になると思う。読んだ人同士で語り合いたくなるそんな一冊。 『...続きを読むこちらあみ子』 おそらく何かしらの障害があると思われる主人公・あみ子の無邪気な言動は、周囲の人たちの心に鋭く突き刺さる。壊れていく家族の中で、ただ一人、純粋なままのあみ子。あみ子の目を通した世界と、客観的な視点が交互に描かれることで、人と人との微妙な距離感や、理解し合えないもどかしさが浮かび上がってくる。 『ピクニック』 「ピクニック」という柔らかいタイトルが、物語の残酷さを際立たせている。明確な悪意のない意地悪ほど怖いものはない。そして現実にもありそうな人間関係が印象的だった。 今村夏子さんは、“普通”の枠に収まりきらない人たちを突き放さず、優しく、でも甘くは描かない。そのまなざしに人間への深い理解と温かさを感じた。
今村夏子さんの本をこれですべて読んだ。いつも、不気味なのに上品にも感じるような、不思議な体験でページを巡る手が止まらない。『こちらあみ子』『ピクニック』は、これまで読んだものと比べると難しい、と思ったけれど、どちらも、普段生活しているだけなら向き合わないで済むような自分の心の一部を目の前に持ち出され...続きを読むるようで、ちょっと苦しくなった。けれど、それでもどこか爽やかに感じたのが印象的だった。
現代なら誰かが療育児とその家族のカサンドラ症候群に気づき専門家に繋げたのかもしれない。 でも、あみ子の無垢な言動の方がよほど人間らしく見えるからこそ、異物のように周りから取りこぼされていく姿が痛ましかった。 映画も併せてオススメしたい。
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