cnmさんのレビュー一覧
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「多様性」という耳障りの良い言葉の上澄みだけをすくったようなタワーが日本で建設されるという設定は、日本人の国民性が反映されていて面白かった。表面だけ取り繕って、中身がスカスカのカタカナ英語を多用する近年の傾向に対する問いかけのような内容になっているのではないかと思う。
心が動かされる、感動する、という類の小説ではなく、作者が淡々と疑問を投げかけてくるので、個人的には物足りなさを感じた。AIのような、当たり障りのない言葉しか話さなくなった人間をデザインしたのかもしれないけれど、それならば一人称小説にした意味を考えてしまう。
タクトの出自については、いささかご都合主義なところが気になった。