• 星の子
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    宗教にはまった経緯からそのことによって起きた家庭内の変化を淡々とテンポよく書いているので、読みやすいながらも、ああ、こういうことありそう。と引き込まれながら最後まで一気に読んだ。しかし、セリフが多いわりにはそのほとんどがどうでもいい会話で、登場人物の感情をいまいち引き出せていないことが個人的に気になった。読後、よくある話しをただ書いたものを読まされたという感想に着地してしまい、宗教3世からすると、宗教当事者以外が小説を書くとこの辺りが限界なのかなと思ってしまった。(当事者性が必要とは思わないけれど)

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    2024年06月14日
  • おいしいごはんが食べられますように
    購入済み

    人に迷惑をかけないようにしようとする姿勢は、日本人の美徳ですよ、と思う。時間通りの交通機関、クレーム対応窓口、いつでも綺麗なトイレ、24時間営業のコンビニ、深夜営業の食堂、丁寧な接客、お客様は神様。「自分よければ全てよし」という海外スタンダードに触れると、愛国心がぶわわと沸き起こって、ああ、自分は日本人に生まれて本当に良かったと心の底から思う。その反面、やりすぎなのでは?と疑問に思うこともある。人間なんだからミスするよ。休憩時間くらい自由にさせてよ。なければないでなんとかなるよ。自分の人生を一番に考えることのなにが悪いの?
    この作品を読んで、「過渡期」という言葉が思い浮かぶ。弱い人、強い人、ど

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    2024年05月03日
  • 東京都同情塔
    ネタバレ 購入済み

    「多様性」という耳障りの良い言葉の上澄みだけをすくったようなタワーが日本で建設されるという設定は、日本人の国民性が反映されていて面白かった。表面だけ取り繕って、中身がスカスカのカタカナ英語を多用する近年の傾向に対する問いかけのような内容になっているのではないかと思う。
    心が動かされる、感動する、という類の小説ではなく、作者が淡々と疑問を投げかけてくるので、個人的には物足りなさを感じた。AIのような、当たり障りのない言葉しか話さなくなった人間をデザインしたのかもしれないけれど、それならば一人称小説にした意味を考えてしまう。
    タクトの出自については、いささかご都合主義なところが気になった。

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    2024年04月13日