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我が家にあひるがやってきた。知人から頼まれて飼うことになったあひるの名前は「のりたま」。娘のわたしは、2階の部屋にこもって資格試験の勉強をしている。あひるが来てから、近所の子どもたちが頻繁に遊びにくるようになった。喜んだ両親は子どもたちをのりたまと遊ばせるだけでなく、客間で宿題をさせたり、お菓子をふるまったりするようになる。しかし、のりたまが体調を崩し、動物病院へ運ばれていくと子どもたちはぱったりとこなくなってしまった。2週間後、帰ってきたのりたまは、なぜか以前よりも小さくなっていて……。なにげない日常に潜む違和感と不安をユーモラスに切り取った、著者の第二作品集。
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Posted by ブクログ
今村夏子のユニークさは万人が感じ入るところであろう。
だけど、なぜユニークなのか、と問われると言い淀んでしまう。明確に示すのが難しいこともあるが、明確にしてしまうことをためらわせる仄暗い場所にその魅力が隠されている。平時では見えないふりをしている人間社会の裏側が顕現しまうことが恐ろしい。
では、「あひる」について。
愛くるしいあひるを介して育まれる一般的な家庭と近所の子どもたちとの触れ合い。和気あいあいであるべきテーマである。ハートウォーミングな展開も期待できる。だが当然、裏切られる。
語り手の不遇、家族間の不和、新興宗教の影、弟の粗暴と人間の実存に関わる問題がぽつりぽつりと現れてくる。主人公の一人であるあひるすら存在が安定しておらず、この物語の不穏さがどんどん際立ってくる。
物語のラストでは、主人公の取り巻く環境に小さくない変化が生じる。周囲を構成する要素が改変される。変化していく環境と、以前と変わらない生活が続く主人公との乖離。同じ空間で過ごしているのに違う世界に住むような違和感がある。主人公の未来や展望が期待できない、滞留している水たまりのような不衛生な暮らしが続くことを予感させる。
ネタバレ回避で観念的な感想となってしまうが、語り口の平易さと物語に通底する人間社会の不条理さを感じさせるテーマとのアンバランス。今村夏子にしか表現できない読み応えが、癖になる。
Posted by ブクログ
『あひる』
巻末の解説や、レビューでも「怖い」「不気味」といった言葉が多く見られる。確かに、と思う。一方で、親の視点から見るとそれとは別に悲しい印象も受けた。
読後、実家の両親のことが頭に浮かんだ。うちは両親と僕と妹の4人家族で、僕と妹は大学進学を機に上京したため、現在実家では両親が2人で暮らしている。
小さい頃、ペットが欲しい、犬か猫がいいと両親にねだった。家の外で飼うのはかわいそうだから家の中で飼いたいとお願いした。両親は、家の中が汚くなるからダメだと言って、結局ペットは飼えずじまいだった。
ところが僕と妹が実家を離れてから、両親は家の中で猫を飼いだした。里親募集で貰った猫や、野良の子猫など、どんどん増えて4匹になった。猫は家具や壁を引っ掻き回すし、粗相をする子もいて、たまに帰る実家は以前より荒れている。両親はあまり気にしていないようで、一応作った家族のグループラインには可愛い猫の写真がたまに送られてくる。
年末は必ず帰っていた実家に、去年は帰らなかった。実家というのは意外とやることもなく退屈だ。だけど今年は、猫に会いに実家に帰ってみようと思う。
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