今村夏子のレビュー一覧
-
購入済み
今村夏子さんのデビュー作で話題の一冊。昨今注目度の高い、学習や感情面での障害についての問題提起的なものも感じつつ、自分の理解できない人間に対して「気持ち悪い」と感じてしまうことについて考えさせられる。
-
Posted by ブクログ
今村夏子さん、初めまして。
大好きです。
語られる視点が、私にとっては初めての視点で、それがとっっても新鮮で面白くて大好きでした。
信頼出来ない語り手とも言えるのかもしれないけど、それとはなんかまた感じ方が違う、本当に不思議な読書体験でした…!!
どういうことかというと、語り手が、「むらさきのスカートの女」を追う「黄色いカーディガンの女」なんですね。
その黄色いカーディガンの女から見た、むらさきのスカートの女を語ってくれるのですが、ストーカー状態なので、ほぼ作者が神の視点でむらさきのスカートの女の全ての行動を語ってるように思うんですよ…でもふとした瞬間に本当の語り手である黄色いカーディ -
Posted by ブクログ
ネタバレ今村夏子さんは、世の中の “ 普通 ” とは、ずれた人たちをただ、そのまま書く人、という印象。そこが好きです。
絶対に忘れられない小説を書く作家。
あみ子はもうまさに。少し風変わり、なんて可愛いものではない。
周りのチョコだけ舐めあげたクッキーを、好きな男の子にあげるのですよ。。クッキー食べようと思ったけどまわりのチョコ全部舐めたらお腹いっぱい→のり君が好きだからこれあげよう!…なんという完璧なあみ子理論。
のり君に告白するシーンは壮絶の極み。
あみ子にロックオンされたのり君が不憫でしょうがないし、再婚相手の子供があみ子だった母親にも同情してしまう。なのに。
なぜだか、「あみ子に傷ついて -
Posted by ブクログ
やばい、これはめっちゃ好きだ…。
中華料理屋とんこつで働く主人公今井の不器用過ぎる対策が予期せぬ結末を迎える今作、終わり方が本当に恐ろしくて…。
今村夏子では星の子が1番好きな作品だった。
親という逃れられない存在が作る環境に違和感なく生きる主人公は生活の中で疑問に思いながらなんとか自分の居場所を探そうとする。
変なのは分かってる、でもそれが私の世界なの。そんな声が聞こえてきそうな切なさに、最後には両親が彼女を解き放つ展開がある。
親子3人がそれぞれ違う星を見ながら迎えるエンディングはとても開放感があった。
けれど今作はまさに星の子と対とも言える物語で、新たな擬似家族を作り自分の居場所を -
Posted by ブクログ
SNSで人気だったので読みたくなって購入しました。
初の今村夏子さんでした。
まず読んでみて驚きの連発です。
なんて面白いんだろう。本のこの薄さで、この本の面白味が全部詰まっています。
普通の本にはない、斬新な内容です。
タイトルからしてホラー的な内容だと思っていました。読む前はむらさきのスカートを履いた女が夜な夜な子どもを襲うとか、そんな話かと思っていましたが全く違いました。
ホラーではありませんし、怖い話でもありません。
ただ、読み終わった後にすごく不思議な感覚になる本です。
そしてこの本を知人に貸したまま返ってこないので、返ってこないままならまた買おうと思います。 -
Posted by ブクログ
昨年映画を観てすごくよい作品だと思ったけれど、小説も素敵だった。映画で感じた空気感と小説だからわかる繊細な心情の動きが合わさり、より深みをもって読めた気がする。
信仰を持たずに生きていると、宗教、特に新興宗教に入信している人たちに対しては「ヤバい」という一方的な線引きを行なってしまいがち。しかし信じるものがあるということは、弱さでも奇妙さでもなく純粋さに通ずると思う。まっすぐだから信じられる。その過程には不幸もあるし、幸福もある。何を信じても、信じなくても、それは変わらないのだと思う。
映画の時には特に印象強くなかったけれど、春ちゃんの彼氏の宣誓がすごく素敵だった。 -
Posted by ブクログ
ある女の事をほぼストーカーしており、少し恐怖を感じた。
また、こんなにも観察していても案外バレることはないだと感じた。実際にやっていたらすぐにバレていそうだけど。。
こっちはあんなにも意識しているのに相手には認識されていない悲しみがあり、話しかけない限り相手には認識されないのだなぁと。
あまり知らない人のことは信用されず、
孤独だなと。
孤独感や寂しさは少し共感できた。
でも、仕事をあまりにもサボりすぎていて最初は無職かと思ったしなぜそんなにもお金がないのか。
修理代があまりにも高いのか、貯金がないのか
それに結構犯罪していて
側から見れば変な人だけれど。
本を読んでいる間はあまり変だと思 -
Posted by ブクログ
現在の私がこの作品と出会ったタイミング・環境があまりにもドンピシャリすぎて、この上ない没入と共鳴を体験した表題作《こちらあみ子》。
本書は3つの短編が収録された作品集であるが、もうこの《あみ子》だけで星5をつけちゃうくらいに素晴らしい読書だった。久々に夢中になりすぎて電車を乗り過ごしちゃう本でした。しかも3回。ほんとに。
ただし、その他の話《ピクニック》と《チズさん》はそこまででもなかったかな。《ピクニック》はともかくとして《チズさん》は如何とも言い難い。
そもそも《チズさん》の話、最初に通読した時はもしかして2話目に登場した〈七瀬さん〉のスピンオフ的な話かな?と思って読み返したけど「全部、 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「こちらあみ子」映画版よりもあみ子の頭の中や心情がよく分かって切なくなった。引っ越した後にできた友達が映画にはいなかった存在で気になる。
「ピクニック」最初は優しい先輩たちだなと思ってしまった。虚言癖の人に付き合うのは優しさなのか悪意なのか分からなくなったが、楽しんでるのは後者だと感じる。淡々とした文章が恐ろしさを増幅していた。
「チズさん」左側に傾いてしまうチズさんというお婆さんの家に時々行って、買い物を手伝ったりしている主人公。ヘルパーさんではない。ある日チズさんの家族が家に来て、咄嗟に隠れようとするが寧ろ堂々と出て行こうかと考える主人公の一瞬の気の迷いとか、お誕生日ケーキを持ってきた自分 -
Posted by ブクログ
ネタバレあみ子は、「悲しみ」「寂しさ」「怒り」などの感情があまり見られず、周りの人が当たり前のようにこなす「空気を読む」こと、「気を遣う」ことができない少女だ。発達障害だと思う。そのずれが、あみ子の意図とは関係なく、周囲との対立やすれ違いを生じさせていくところに、どうしようもない切なさを感じた。
このような子供に強い感情が生じる時、周りが押さえられないような特有の爆発性がある。心理学でも習った気がする。例えばのり君に「殺す」と言われてもなお「好きじゃ」と叫びながら伝える場面だ。「あみ子のこころは容赦なく砕けた」という文章からは、他の場面では感じられないあみ子の感情の昂りが伝わってくる。
私の周りに、特 -
Posted by ブクログ
物語を読み進めていくにつれてだんだん「わたし」の状況がわかってくる不思議な読書感。
私自身も大学時代バイト先の友人に誘われて集会に行ったことがある。何人かのグループに分かれて、話になって座って自分の話をした記憶がある。
全面に宗教は出てこなかったし、誘ってきた女の子も全面には宗教感は出してこなかったけど、そういう人なのだというのはなんとなく知ってた。
周りの友人も誘われて集会に参加したことがあると言っていたが、詳細については内容語りたがらなかったし、入会したという話も聞かなかった。
身近にも危険は潜んでいる、そんな事を思い出した。
子供の頃から親が熱心な人だと、それが当然のものと思って抜け出す