今村夏子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
医療資格の勉強をしている「わたし」と両親が暮らす家に、知人から譲り受けた一羽のあひるがやってくる。
それをきっかけに、近所の子どもたちが集まり、静かだった家に少しずつにぎやかさが戻っていく——そんな日常を、子どもの日記のように淡々と綴った物語。
一見穏やかな日常の中に、ふとした違和感や不穏さが顔をのぞかせ、読み手の心に静かなざわめきを残す。
しかし同時に、あひるの存在にくすりと笑ってしまう可笑しさや、他者への温かなまなざし、人間の存在そのものへの愛しさや、どこか諦観めいた無常感も漂う。
どの印象も間違いではなく、それでいてどれか一つでは語りきれない——この言い尽くせなさこそが、この物語の大き -
Posted by ブクログ
ネタバレ解説にもある通り、何について書かれているのか一言で言い表せない。テーマが分からない。そこが良さになっている感じがある。
あひる
おだやかな小説のふりをして違和感だらけの不気味な話。
あひるを選んだのが絶妙。今までかわいいと思ってきたけどあの造形ってよくよく見ると奇妙だよな。。。
完璧に構築されている傑作。
おばあちゃんの家
こちらも全体にただよう不気味さがよいのだが、最後はちょっと読者を置いてけぼりにして不思議な方向にいきすぎた感じがやや滑っているかな。
森の兄妹
ヘンゼルとグレーテルを思わせる、童話の雰囲気をまとった作品。兄妹から距離をおくお母さんだなと思いながら読んでいたら、最後に突 -
Posted by ブクログ
私にとっては他人事ではいられないストーリー。一気に読めた。
側から見たら怪しい宗教を信仰するおかしな家族。でも自分にとっては大切な家族であり、宗教だってただ日常のなかなのだ。
怪しい宗教にのめり込むようなひとは、心が弱い人?騙されやすい人?自分で問題解決できないアホな人?
そこには、その時その人にとって如何にもこうにもできない問題があって、どうにか道を開くためには藁にでも宗教にでも縋りたかった背景があるかもしれない。そして、そこには宗教で救われた事実がある。どん底から救われたものには、人は心を託して信じ続けることができるのかも。
だから、決して助けられなかった他人が笑う事はできない。
自