おかざきおかのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレいつの間にか、このシリーズも完結していて、残り4冊を一気に読んだ。
想像通り、記念館は川越に移転し、百花の父の雑誌に書かれていた小説が「手仕事をめぐる旅」として単行本化されることになり、絶版になっていた「東京散歩」もあらためて出版される運びとなった。
コロナ禍を経て、こもの市も開かれ、懐かしい三日月堂や、月光荘のお話に出ていた川越の笠原紙店なども登場する。こうして川越での手仕事が一堂に介したところで大団円となる。
一成と対立しがちだった浩介も、コロナ禍を経て和解したようだし、新入社員ばかりで記念館のオープンを任されたことも杞憂に終わり、何一つ障害なく、新しい記念館のオープンを迎えられた。皆いい人ばかりで、そこに複雑なドラマはなかったが、この物語はそれでいいのかとも思う。読み手が安心して読めるのは、そこにあるのかもしれない。
仕事に徹した描写で、恋愛を織り込まなかったこともこの小説に合っていた。川越のシリーズがまだ続くのかわからないが、またどこか他の小説のなかで、三日月堂の弓子さんのように、ふと、百花と一成のその後が垣間見られるかもしれない。
(星が少ないのは、一気読みして、登場人物がごちゃごちゃになったせいかも) -
Posted by ブクログ
ネタバレ手芸を嗜むこともあり、モノづくりが関わる物語はジャンルを問わずに好きです。
和紙というのは高級品というイメージが先行しており、実際に触れた経験はほとんど記憶にないです。このシリーズを読んでいると和紙を実際に見て触りたくなります。
この巻で、主人公の和紙を巡る物語はおしまいです。藤崎さんとの関係がもしかしてワンステップ登るのかしらなんて思っていましたが、あくまでも上司と部下の関係以上同志という関係でしょうか、素敵なコンビになったと思います。
百花の仕事に対する真面目な姿勢がそこに現れているようで恋愛関連に発展しなかったことにやや残念なようなホッとしました。(というより、そもそも新入社員で新プロジェクトにも関わるとなったらそんな時間は持てないでしょうね。)
最初の孤高の藤崎さんが会社を通じた社会貢献まで考えるようになったと考えると感慨深さも覚えました。
コロナ禍という今もなお世界を悩ます前人未到の問題の中で、主人公やその仲間たちのようにここまで前向きに模索できた方たちは本来は少数かもしれないですが、人との関係が薄くなるからこその本物の手触りや感触を求めるというのは非常に納得できるものがありました。
なんだかんだ、主人公は人に恵まれ発想力に恵まれ性格も態度も良いという理想的な新社会人で、物事が上手くいきすぎている感も否めませんが私は好きなシリーズです。
この作家さんの書かれる物語は、それぞれの物語がリンクしているようなので紙屋ふじさきのその後も見れたら嬉しいと思います。 -
Posted by ブクログ
手紙とか書き文字を見直してみたり。
【手漉き和紙見本帳】コロナ禍、緊急事態宣言。記念館もゼミもまともに動けない。自分の立ち位置を見失いかけた百花だが藤崎から送られてきた手漉き和紙見本帳に和紙への思いを新たにする。リモート面接で百花はただ和紙に貢献したい、そのために藤崎産業に入りたいと語る。
【わたしたちの日常】小冊子研究会はオンライン会議で次の企画を検討していたがどうにもいい案が出てこない。そんなときとある事情でしばらく発言していなかった松下さんが久しぶりに発言した。
【結のアルバム】卒論に取りかかった百花だが行き詰まりなぜか夫婦箱づくりに夢中になってしまう。また、コロナ禍で各種イベントが中止になりその代わりのようにアルバム作りが少し流行していると聞く。また、記念館再開の目処が立ち、どこにするか選定することになった…結果、予想通りの場所になるようだ。
■コロナ禍について
《できることなんて、なにもないよ……。》p.16
《自然災害とちがってなにも壊れていないのに、日常だけが壊れていくような、異常な日々だった。》p.52
《いまって、ハレの場がないんだよね。》p.104
《ずっと、人が集まることが良いことを生み出す、もちろん悪いことを生み出すこともあるけど良いことの方がたくさんある。人間はそうやって進歩してきた、と信じてたんですけどね。今回は集まること自体が悪になってしまった。》p.135
《リアルにはかなわないけど。でも、これがわたしたちのいまの日常だ。》p.204
《でも、わたしたちにとってはいまのこの世界が現実なんです。だからみんなで話しました。こんなことになってなかったら、って思うのはやめよう、って。いまだってできることはあるんだから、悔いがないようにそれをやりとげよう、って。》p.271 -
Posted by ブクログ
[1]墨流し、物語ペーパーの書籍化、和紙体験、閉館に向けた記念イベント。
[2]ああ、新型コロナを絡めてくるのかぁと。ストーリーの中としてはマイナスでもなくちょうどいい加減のインターバルを取れるかもしれへんなあ。
[3]いずれ記念館は川越に移転するんじゃないかと(おそらくは誰もが)思っているやろうけどそういう方向に流れていってるかも。
【第一話 ぴっかり千両】小川町の和紙体験学習センターと東秩父和紙の里への遠足。新たな人脈小川町の和紙体験学習センター出身で襖紙の工房に勤めつつ料紙を作っている岡本さん。
【第二話 墨流しと民藝】岡本さんがやってきて料紙談義の後百花がよくわからなかった墨流しを実演してくれた。ぼくらの世代やったら? 子どもでもわりと普通に遊んでた技術なんやけど。/吉野雪彦ファンだというライターの浜本との話で物語ペーパー各章ごとでも全文を出版する話が浮かび上がりどうせなら和紙で活版でとなり三日月堂に挨拶に行く百花と藤崎。
【第三話 春霞の小箱】記念館閉館に向けたイベントや企画をこなしていく百花や藤崎。実績づくりの甲斐あって記念館で行っていたワークショップは本社の会議室で続けられることになった。所属は書籍用紙を扱う第二営業部の和紙部門となった。/岡本から連絡を受けて楮かしき(かすかしき)体験をすることになったら薫子さんと秘書の朝子さんとついでに藤崎の母、有名声楽家のめぐみまでついてくることになった。偶然、弓子と天野も参加していて女子会が始まる。/最後の二か月続きのワークショップ「春霞の小箱」。しかし新型コロナの足音が近づいてきていた。 -
Posted by ブクログ
いよいよ最終巻。
百花は藤崎産業に入社し、新しい記念館準備室に配属される。
記念館は川越にあり、古い商家をリノベーションしたもの。
同期の本宮さん、松岡さん、烏丸さんと、アイディアを出し合いながら、内装やどんな内容にしていくかを決めていく。
この雰囲気は、これまでの学園祭の時の雰囲気や、月光荘の終りの方とも似ている。
これまで出てきた人々だけでなく、他の作品にも出てくる人(例えば三日月堂の弓子さん)なんかもちらっと出てきて、いかにも「大団円」な感じが演出される。
・・・人が多すぎて、これって誰だっけ感が否めない。
他の皆さんはもっとこのシリーズを読みこんでいて、困らないのだろうか。
この間まで紫式部の職場生活を読んでいたせいか、新入社員の同期の間の軋轢が生まれたりしないかと思ったりもした。
一人だけバイト出身で、創業家の一成とつながっているという立場は、紫式部の場合のように攻撃されやすい気がしたのだ。
が、この作品に限って、そういうドロドロはない。
みんな大人で協力的。
クリーンな物語だった。 -
Posted by ブクログ
いまを生きる私たちのために和紙を役立てる
小説家ってすごい
イマジナリーの中で経営なんかもできちゃう
そして読んだ人を洗脳しちゃうんだよね
まぁほしおさんの世界好きだから良いんだけど笑
今までの物語がスクロールされて
大団円に近づいている気がする
とはいえ急いだ展開と聞いていたので
後半が飛ばし気味になってくると
とうとう来たかという感じ
終わって行くのが惜しくなる
和紙と人々のつながりの物語
…のはずだったのでしょうけど
思わず時代を感じさせる内容にもなりました
感染症で疲弊していたあの頃の記録は
後でどんな印象に変わるのでしょう…?
ともあれシリーズ完結です
おめでとうございます(^^) -
Posted by ブクログ
このシリーズ7冊目。でもって完結巻ということのようね。
いよいよ藤崎産業の社員となった百花が同期の3人と一緒に記念館の移転開館に向けた道筋をつけていく様子が描かれる。
その過程では、飯田や美濃など今まで訪れた場所、物語ペーパーや組子障子のカードをはじめとしたこれまで創ってきたグッズ、三日月堂やモリノインク、文字箱などの関係した先々のことが現われ、紙こもの市も再開されるなど、まるでシリーズ総集編の趣。
物語としては、なんだかツール・ド・フランスの最終日のパレード走行を思わせる、全体的に緩い感じの話になってしまったが、折々にはこのシリーズらしい慎ましやかでもホッとする話も織り込まれていて、ずっと読み続けていた者としてはまずまず面白く読めた。
在りし日の父が隣で眠っている妻のお腹の中の子どもに語りかける情景や道草書房の社長が語る子どもの名前に対する親の思いにはホロリとする。
そうして生まれた百花は相変わらず自己肯定感は低めだが、それでも与えられた役割を『やるしかない』と受けて立てるようになって、父が『よく生きる』と遺した、少しでも良い方向に進もうという生き方がしっかり受け継がれていく様が好ましい。
ついでに言えば、一成も自分のことを『世間の標準から少しずれている』と語るようになり、最初の巻からするとふた皮くらいむけたみたいでほっこりする。
第5巻の感想に、コロナ禍について『このお話にわざわざこの話題を入れるか』と書いたが、それを乗り越えこれまでとは異なる新しい生活様式を作り定着させつつある今、『和紙とともにある暮らしを提案する』という新記念館のコンセプトに象徴される、伝統を守りながら発展させていく様々な取組みを描いてきたこのシリーズの志はピタリと嵌ったようにも思った。