おかざきおかのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ「紙屋ふじさき記念館」その6。
前作で現実世界のコロナ禍が物語を変化させ、本作ではコロナ禍中の一年が綴られる。
オンラインでのゼミや就職活動、最後の大学祭、卒論。
百花は無事に藤崎産業への就職を決め、ビルの建替えのため閉鎖された記念館は、より大規模な記念館として(ほしおさんお得意の)川越市で再開する運びとなる。もちろん百花は、そこの専任スタッフに迎えられる運びと、とことんとんとん拍子。
めでたしめでたし。
『結のアルバム』とは、水引細工を組み合わせた百花手作りの夫婦箱に、手製本で綴じ合わせた学生たちから恩師へのメッセージをおさめたもの。
一昔前なら色紙に寄せ書きなんてことをしたものだけれど…
紙や伝統工芸の話が興味深いので、まだ読んでいるが、ますます夢見る女子の小綺麗なモノローグ、人に読ませる前提で書いた日記帳のよう。
うーん。
気楽にお付き合いしていくシリーズかなぁ。 -
Posted by ブクログ
まもりは就活の前哨戦ある、インターンシップに邁進。
慌ただしい夏がやってきた。
葉二は関西に行く話がまもりに打ち明けられず、時間ばかりが経つ。
一方、ユウキは高校でうまくいっていない人間関係が!?
将来を考えるという局面に差し掛かった時に、
自分が何をしたいのか、取り柄は何かなど、「自己分析」といういや〜な言葉で括られるのだけど、
まもりはインターンシップを通して少しずつ自分の適性や働き方の方向性を絞り込んでいるようだ。
すごいな。
ユウキの件は、意外な展開を見せ、見守る立場の読者としては一安心。がんばれ。
葉二とまもりのすれ違いも起こりつつも、葉二の内面が今回は描かれていて、これはこれで良かった。
やはり、ちゃんとした大人だったか…。
最初の頃では考えられない、まもりへの執着とも言っていいほどの感情が、この人も人間だったんだなと思わせてくれた。笑 -
Posted by ブクログ
マンションの外壁工事のお知らせが二人のもとに。
ベランダや通路が作業場となるため、もさもさ育っている野菜たちの撤去及び引っ越し作業を急遽敢行。
そして、まりもの従姉が仕事をやめて戻ってくるとのことで、まりもの引っ越しもしなければいけない事態に。
ベランダで菜園が出来ない、そして音やシンナー臭によるストレスで、自宅を脱出して外で作業する葉二。
ストレス溜まりまくり。
それでも冷蔵庫で行う水耕栽培は画期的。
スペース取るのでは?とも思うが…
まりもの引っ越し騒動もまた、二人の気持ちを再認識するにはいい機会だったか…?
最初からお隣同士だったのが、川崎と練馬と離れるのは結構つらいもんがあるなと思いながらも、
葉二もまた大人なりの解決法を探していたところに、この人なりの愛を感じた。
葉二の姉、すごいな。 -
Posted by ブクログ
このシリーズ6冊目。今度も配偶者のほうが先に読み終えた。
コロナ禍で記念館の閉館イベントも中止になった前作から続き、全編を通じて蔓延が始まったばかりの頃の街や生活の様子が描かれる。
不要不急の外出自粛、オンラインでの会議や面接、リモートワーク、病院や介護施設での面会謝絶といった緊急事態宣言下での生活だが、それらには私たちが経験したことやニュースで取り上げられた以上のものはなく、あの時はそうだったよねというようには思いながらも、あまり面白みはなし。
ただ、『いまのこの社会が現実。こんなことになってなかったら、って思うのはやめよう。いまだからできることはあるんだから、悔いがないようにいそれをやり遂げよう』という前向きな気持ちが表されていたのは、この物語らしくて良かった。
そうした状況を下敷きにしながら語られる第一話のメインは、百花の藤崎産業への入社試験。
ただでさえ緊張するのに加えてオンライン面接とは、なかなか動揺する局面ね。
ありきたりな展開だが、このタイミングで手漉き和紙の見本帳を送ってくる一成の心遣いが嬉しい(彼も成長したよね)。
第二話は大学祭に向けた雑誌づくりが中心の話。
コロナ禍の制約の中での知恵の出し合いだが、3年生も2年生もみんな前向きで救われる。
今やここから3年経っているのだが、色んなところでこういう知恵を出し合ってきて今の暮らし振りがあるのだなと改めて思わされた。
途中挟まれる松下さんの祖母の話は切ない。
第三話は卒論の話、の筈が、その気休めに箱づくりを始めたら、そちらがメインになった模様。
紙小物について考え出したり作り始めたりすると次々とこうしたらどうかということが湧き出して来るところはさすが“小鬼ちゃん”。
そんなことしないで早く卒論書きなよという気持ちだったが、こちらが気を揉んだ割にはあまり呻吟が描かれずに卒論が完成したのにはやや脱力。
記念館が再スタートすることになった時のオリジナルグッズを考えたり先生に渡す手紙の本づくりなども重なって、最後まで小鬼ちゃん振りのほうが目立つ。まあ、彼女らしいけど。
最後に出てきた記念館の移転先が川越になるのは、楽しみなようでもあり安易なような気もしたり。 -
Posted by ブクログ
シリーズ6作目。
コロナの世界的大流行の影響で記念館閉館イベントは全て中止。
大学4年生となった百花は、リモート環境下で卒論と就職試験に取り組むこととなる。
突然身に降りかかった未曽有の事態。
誰もが不安で、どう乗り越えたらいいのか分からなかった2020年を2年の期間をおいて描いてくれたことで、その実態を冷静に受け止めることが出来た気がした。
5作目の感想で、「書き急ぐのか?」と書いたが、この6作目でコロナに翻弄された1年を丁寧に描いていたような気がする。
学生の大事な1年さえも、コロナは奪ってしまった。
たくさんの人が虚無感に襲われたと思うが、自分の心の中にいつもいた大学4年生、高校3年生など最後の1年間を奪われてしまった人々の想いが、今作を通じて知ることが出来た気がする。
もちろん、今作はフィクション。
作者さんだって、本当の大学生ではない。
それでも百花やゼミの同級生、サークルの仲間とのやり取りから、にじむやるせなさや、その中で必死に前を向こうとする気持ちを感じ取ることが出来た気がする。
リモートのやり取りしか出来ない中で、自分が出来ることを見出そうとする人たちの言葉にも勇気をもらえた。
特殊な環境だから、これまでのような内容とは違うけれど、唯一出て来た「結のアルバム」のラストには涙がこぼれた。
記念館の未来には驚きだったが、次作から藤崎産業の社員となる百花の活躍に期待。
今作の刊行記念のオリジナルグッズが、すごい気になる・・・ -
Posted by ブクログ
ネタバレ「紙屋ふじさき記念館」、その5。
和紙と活版印刷…とつながって、「物語ペーパー」に使われた百花の亡き父・吉野雪彦の著作を復刻した小冊子を刊行するという話がもちあがる。
また、紙そのものが芸術作品になろうかという、墨流しの技法を使った料紙との出会いから、閉館する記念館の最後の企画は料紙を使った文箱を作るワークショップと決まったのだが…
だんだん、失われつつある手作業や伝統技法の解説が多くなり、百花の研究レポートのようになってきたような…
その上、突然、リアル世界の新型コロナウィルス感染が物語世界に入り込んできたことにびっくり。
もちろん、コロナ禍で人々の生活様式も価値観も大きく揺さぶられたことは間違いないんだけれど…
ここまではっきりとリアル時間が百花の大学三年生と特定されたら、この先の物語も現実世界の実像を反映させて進まなくてはならなくなりそうで、何となく違和感が残った幕切れだった。
この先の世界の変動、例えば為替変動や他国の戦争も、物語に入れますか?この物語の伝えたいことって、そこですか?という…
そして、例によって蛇足ですが、表紙のイラストが気になって気になって…
百花の体のねじれ方もすごいが、腿裏まで届くような長〜いショルダーバッグと、いつも三揃スーツの御曹司の、レギパンのようなピッチリしたパンツ。ううう…誰も気にならないのかしら…
さらに個人的には、ご贔屓の登場人物、文字箱の綿貫さんの再登場希望。