最初のスムージー飲んでくれなくてキレる話にドン引きしつつ、その後の数々のエピソードで段々おもしろく思えてきて、ヨーグルト踏んづけるときのアグレッシブな描写で爆笑してしまいました
作者さん、ごめんなさい
どれも辛い記憶だと思うのですが、遠くから拝見する読者の目線からだと面白くって⋯
チャップリンの「人生は近くで見ると悲劇だが遠くから見れば喜劇である」ってやつですね
実際に目撃したらドン引きなんでしょうけど、この方の手にかかると躍動感溢れる動きとすんごい表情とエピソードの強さが面白すぎて⋯コミックエッセイストは天職ですね
現在の夫さんと暮らすときに「上に立つぞ!」と構える姿勢や、ずっと不要だと思っていた食器棚を買って家に置いてみると「すごく家っぽい!」と驚く様に、これまでどれだけ常識外れの辛い体験をされてきたのかと、読んでて悲しい気持ちになりました
この方のお母さまは、「母がしんどい」に詳細が書かれていますが、本当にすごいモンスターで、当たり前の心地よい家庭と親を本当に知らない人生なんですよね
子どもを抱っこしたまま掴みかかったり、キレると少し気持ちよさがあるなど、細部も私の知らない世界への発見が沢山あり、私には全く共感できなかった「キレる人」がこういう感覚でこういう世界で生きているのかと、目から鱗が大量に落ちます
キレるパターンを分析すると、「自分のことダメだダメだと思っているとき」にキレたくなると気づく作者
そして、自分でキレなくなる方法を調べようとするのが凄い!そんな発想が出てくることが素晴らしいです
しかし、キレなくなる方法が見つからないことに愕然とすることに⋯
努力しようとしても方法がわからなかったら呆然とするしかないです
目から鱗の打開策を知りたい、それを教えてくれる誰か(専門家)に会いたい
その苦しみはいかほどだったか
前に受けた箱庭セラピーがよかったからと、他のセラピストがやっている箱庭セラピーに行ったら期待外れだったのにも共感
セラピストやカウンセリングって高額なわりになんの意味もないこともよくありますよね
もちろんすごく効果的なこともありますが、先方の腕前で左右されるギャンブル性があるんですよね
さらにホームページがよさそうだった病院にいっても医者の診察は意味なし
旦那さんに話せばわかってくれると思うよーなんてテキトーなこと言われて終わってしまう
そしていよいよ、ゲシュタルト療法に行き着いたのが素晴らしい
諦めずに行動し続けたからこそたどり着けた、著者の努力の賜物だと思います
私もゲシュタルト療法してみたいなーってすごく思いました
怒っている自分をみてどう思いますか?と聞かれて、「お母さんみたい」って言うところで衝撃を受けました
お母さんみたいにしてたら私も夫に嫌われると身にギュッと力が入っている描写が心に痛い
そのあとのセラピストの対応がいいですよね
お母さんがいると思って「殺してやる」って言ってみてくださいって言うんですよ
ええー!本人いないとはいえ、お母さんに殺してやるって言っていいのー!?!?!?ってびっくりしました
しかも、お母さんに殺してやるって言ったあと、どんな顔をしてると思いますか?って聞かれて作者は「笑ってます」って答えるんですよ
即答できるほど母親のことがわかる作者もすごいし、ここで笑っているだろう母親もあまりにヤバい人間すぎて、ゾッとします
その後のお母さんになりきったときのお母さんそっくりな喋り方も、憑依しているみたいで、なんだかすごい現場でした
その後は自然とキレることが激減したとのこと
キレるのは怒りもあったけれど、ダメダメだと思っている自分をさらにダメだと攻撃される(ように感じる)状況にパニックになっていた側面もあるのだと自己分析されてます
そして、爆笑しちゃったのが、牛乳を子どもがこぼしたときにキレた場面、子どもはキレる作者をみて「バイト先で突然キレだした奴にドン引きしてる人みたいな表情」してて、作者は急に羞恥心を感じるんです
その子どもの「はぁ?」って表情が絶妙で笑っちゃいました
セラピーの基本は「状況」じゃなくて、「心」に寄り添うこと
誰かに心の部分に注目してもらったり、自分で心の部分に注目するだけで癒されるんだとか
たとえば、「もう会社を辞めようかと思ってる」って言われたとき、「やめないほうがいいよ、就職難だし」って返答は、「心」じゃなくて「状況」への返答
その人の心には向き合ってないんです
ここはすごく勉強になりました
私は母に微妙な気持ちをずっと抱いている反面、母は毒親というほど悪い人ではなく、よく育ててくれた人だと思っています
それでも母への引っ掛かりがずっと付き纏うのは、母は私の状況にずっと返事をして、心をみようとしたり、心に寄り添おう、心に返答しようとしてくれたことがなかったからなのだと腑に落ちました
最後の最後に、夫婦の関係について見直すことになるのもじーんときました
夫と喧嘩になったり揉めたとき、相手の答えを待つことができてなかったことに気付いた作者
どっちが悪いと結論がでないと落ち着かないから、自分が暴れることで「自分が悪い」という結論を無理やりつくってその場をしのいでいた
そして、夫にとってもそうやって妻が勝手に結論をつけてくれる関係がちょうどよかったのだと分析する
こんなキレる作者と結婚している夫を最初は聖人かと思い、不思議な人だなぁなんて思っていたが、夫にもメリットがある関係性だった
キレる自分をやめようとしたから、夫婦関係の歪みがいま表面化してきたのですね
作者が変わったら夫も変わらなくちゃいけなくなる
変わったらずっと変わり続けなきゃなんない
キレることから、人間関係の根幹を問い直される素晴らしい良書でした