やなせたかしのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ朝ドラ「あんぱん」を観て、おとうととの詩集があることを知り、さっそく購入した。本の紹介には「18編の絶唱」とある。22歳で海に散った弟を、詩と絵で綴ったものだという。
まず表紙の絵に、胸が締め付けられる。弟がもういないことへの悲しみが伝わってきて、思わず涙が出る。兄弟って、小さいころは絶対的に年上の子が大きくて、下の子は頼りなく小さい。この表紙のように、はっきりとした身長差がある。下の子は、なんでもできるお兄ちゃんやお姉ちゃんを見上げて、絶対的な信頼を寄せ、頼りにしているものだ。やがて成長して、下の子が上の子の身長を追い越したり、立場が逆転することもあるけれど、この年齢差からくる身長差は、幼いころ特有のものだと思う。うちにも、姉が弟を抱っこしたり、おんぶしたり、ミルクをあげたりしている写真がたくさんある。でも、今では弟の方が大きくなって、そんなことはもうできない。小さいころだけに見られる、兄弟の貴重な光景だ。
この本には、弟とのかわいらしい思い出や、兄弟ならではのしがらみに対する悔恨も綴られている。
*「ぼくが妹だったら、兄ちゃんはよかったかな?」(子どもの頃、体が弱くて女の子の恰好をしていた千尋のことば)
*「兄ちゃんといっしょでなければいや。」(伯父夫婦の養子になった弟。兄の崇だけが独りぼっちにならないよう、いつも一緒を望んでいた)
*よく並んで川のそばでおしっこをしていて、弟の大事なところが腫れてしまったという、微笑ましくも不思議な幼い頃の思い出
*ちゃんばらごっこをしていて、外敵が襲ってきたら、弟は絶対に自分の味方だったという、二人の絶対的な信頼関係
*兄の劣等感から、ふざけ合いが狂気のようになり、弟を背負い投げしてしまったことへの後悔。やがて兄弟の差がなくなり、弟に追い抜かれるかもしれないという複雑な感情
*伯父夫婦の子どもとして違和感なく暮らしていると思っていた弟の本から出てきた、たった一枚の本当の父親の写真
*懸賞金を一度だけ分けてあげたこと、そして弟が「すまんな兄貴、また頼むよ」と言ったこと。またはもうなかったこと。もっと弟を喜ばせたかったという、消えない後悔
*弟が自慢だったけれど、心の底には嫉妬もあったこと
*戦争で、パシー海峡の珊瑚の海に散ってしまい、木札一枚になってしまった弟のこと
最後に、やなせたかしさんによる「おとうとものがたり」へのエッセイが載っている。心の奥の寂しい部分がぎゅっと締め付けられるような、やりきれなさ、やるせなさが綴られている。戦争で弟を失い、帰ってこなかったことへの無念が、ひしひしと伝わってきて苦しくなる。戦争は、絶対にあってはならない。それだけではなく、もし家族で仲たがいしている人がいれば、後悔のないように、日々の関係を大切にしてほしい。そんなことを、たくさん考えさせられる詩集だった。
絵がとても素敵なので、何度でも読み返したくなる。そして、読むたびに涙ぐんでしまう。 -
Posted by ブクログ
扉に書かれた「弟よ 君の青春はいったいなんだったのだろう」という言葉が、じわじわと心に染みていく感じがしました。
淡々と綴られた詩のなかに、やなせたかしの生い立ちが書かれ、弟への思いがあふれていました。
事実があまりにも悲しくて、余計な言葉はなくてもその思いが伝わってきました。
「戦争は大嫌い」と公言していた理由が、よくわかりました。小さくてかわいい弟、大きくなってからの弟。どちらもやなせたかしにとっては、大切な弟だということが、すごく伝わってきました。
カラフルなアンパンマンも大好きですが、この本の白黒のイラストも、とてもよかったです。
〈目次〉
父の死
母とのわかれ
夏の川で
赤い着物
坊ちゃんの兄
朝やの星
シーソー
はれたオチンコ
道信山の夕やけ
背負い投げ
父の写真
ただ一度の小づかい
スケッチボックス
風の中
小さな木札
珊瑚
海彦・山彦
墓前で
僕と弟
初出一覧
やなせたかし年譜 -
Posted by ブクログ
《私が参考になったこと》
◇人生は現在と未来しかない。
それをなるべく楽しく面白く生きる
◇戦争経験を通して
悪いやつをやっつけるだけではなく
ひもじい人を助けるのもヒーローの役割?
→アンパンマンの誕生
◇正義を行うには傷つく事を覚悟する。
◇生きているから、痛み、悲しみ、苦しむ。
それを感じるから喜びに気づける。
◇自分のやってることが
世間にどう影響を与えるか考えてみる。
《感想》
私は"普通"と呼ばれる人生から
かなり外れて生きてきて
(毒親育ち、不登校、
転職続き、結婚願望ナシ、鬱病治療中…)
劣等感があり、自分のことが嫌いだった。
この本を読んで遅咲きでも、
こんなに楽しく幸せに
生きた人が居るのなら、
私も今やれることを1つ1つ積み重ねて
今と未来に目を向けて
生きていこうと前向きになれた(*´∀`) -
Posted by ブクログ
想像以上に、やさしさや平和の大切さを伝える作品群で、心が洗われた思い。
何年か前に気づいたが私はメルヘンが好きなのだ…。特に【バラの花とジョー】や【天使チオバラニ】、【星の絵】などのメルヘン世界はたまらない。
【チリンの鈴】
絵本を読んだばかりだったが、絵本以上に文章が多く、物語についてより多くを理解することができた。
羊の群れにも拒絶されてひとりぼっちになってしまう展開は、特に絵本では語られなかった部分。
シルヴァスタインの「ライオンのラフカディオ」にちょっと似たところがある。
【天使チオバラニ】
みどりのゆびの雰囲気がある優しい童話。
人のために祈ることの美しさが、メルヘンの世界で表現されている。
【バラの花とジョー】
とてつもなく美しく優しい愛の物語だ。
オスカーワイルドの「幸福な王子」が近い。
※「何かに似ている」ということが言いたいのではなくて…普遍的なテーマをやなせたかしさんがこれほど端的かつ情緒的に物語にするのが凄すぎる…と思ったので書き留めた。
【星の絵】
これぞメルヘン!ものすごく好きだった。
美しくしくてきらきらしていてたまらない。
幼い頃にしか見ることのできなかった眩しいほどの希望や創造の世界を私はちゃんと思い出せるだろうか。
【風の歌】
【キュラキュラの血】
戦争紛争について深く考えさせられる。
今の時代にこそ読むべき名作だった。
メルヘンを描いたと思えば掌の物語にこんな無骨なアンチテーゼを入れてくるやなせたかしの才能よ…。 -
Posted by ブクログ
悲しみと後悔と別れ、どんなにつらい思いをしてきたんだろう。想像を遥かにこえるものだろう。その中でこれが好き!を認識し向き合っていったやなせたかし先生素敵すぎる。
昔の人は強いと耳にすることがあるが、何でもやっていかなきゃ食べていけないからやらなきゃ!って気持ちが強いのかもしれない。
やなせたかし先生は色んなお仕事をされてる。その全てが積み重なってアンパンマンを描けたのだと思う。アンパンマンの歌は沢山あるが、そのほとんどがやなせたかし先生の作詞であるから驚き。才能の塊。
この書籍は他の著名人からのコメントも掲載されているのが良い。立場が違えば見る視点が違うし考え方も違う。「あ~なるほどそういうこともあるか。」が連続する本。