山田昌弘のレビュー一覧
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昨今の結婚に対する社会環境を、欧米などとの比較から論じた一冊。
全体的に、結婚に対する諸要因が丁寧に論じられている、という印象を持つ。
結婚することの困難さが深まりながらも、一人でも生きていける環境整備が進み、なんとか結婚せずに生きていけるようになった事は一概に悪いとは言えない。
さらに見渡した時に、よく結婚できたな、と思うような者が周りを見渡せばゴロゴロいる。
ただ、そうした人々が総数としては多数を占めるし、そうした人々が結婚できない社会環境が問題なのであろう。
結婚できないことを前提とした社会環境を整備し、人々の意識を変えていく事の方が時流には合っているのとは思う。
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ネタバレ女性が男性的な行動を起こすことは許容されるのに対し、男性が女性的な行動を取ることは奇妙な目でみられるという非対象性の謎を、仕事能力に関するアイデンティティ(=「できること」)と性的魅力に関するアイデンティティ(=「もてること」)から考察した本。
男女の性自認の形成の在り方を、近代社会において子育てに関わるのは‘母親(女性)’であり、子供は母親と同じか否かという点において性自認を身に付けるという観点がとても面白かった。実際に子供が接する大人は圧倒的に女性が多いという現実において、フロイトの理論よりもよほど筋が通っていると思う。
また、女性らしさ/男性らしさというステレオタイプが消えきれないのは、 -
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(2007/4/19)
これは,おもしろい!
希望格差社会ということばは,家族社会学の研究者である筆者の手によるものですが,
筆者は,,現在存在する格差は,所得の格差による直接的なものというよりかは,未来に対する主観的な希望における格差だと主張する.
豊富な統計資料を基に,かといって,データだけしかみていないわけではなく,現代の社会の持つ定性的な構造変化にも言及しつつ読み解いています.
ちなみに「パラサイト・シングル」って言葉を作ったのもこの著者
実質ゼロ成長に達した先進国はやはり格差を内部に抱えるしかないんでしょうか?
モータリゼーション,ITなどで技術主導な生活変化で居住区 -
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結婚は、生活必需品ではなく、嗜好品?
男女交際の規制緩和とともに生じた 「出会い格差」
出会っても相思相愛になれない 「魅力格差」
相思相愛になってもなかなか結論に踏み切れない 「経済格差」 と 「価値観対立」
さて、どうする?
女性たちよ、狩りに出よ。男性たちよ、自分を磨け。
(以上、ブックカバーより)
中央大学教授・山田昌弘氏と、少子化ジャーナリスト・白河桃子氏の共著。
非常にライトな調子で、ズバズバと結婚に関する問題をえぐりまくる面白い本。
自分の身の回りにも、結婚している人は結構多くなっているが、その人が「学校からの付き合い」「職場内」以外で、結婚している率はだいぶ低い、と思う。
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婚活を揶揄するような、又は自虐するような読み物だったらイヤだな~と思い本を開くのを躊躇っていた。前書きと目次を読むとコンセプトを立てて編集した本だと分かり、俄然興味をもった。
面白かった!これ、バイブルにしよう。女性優位な点が気にならなくもないけど、出版から5年経っても普遍的なところは変わらないんだなと。近代日本において恋愛結婚が主流になったのはごくごく最近であるという主張が面白かった。出会う人が少数ならばその他を知らないから魅力的に見えるものね!選択肢が多くなるほど、成功(この場合でいう結婚)は難しくなるというのも興味深い。自由に選べるようになれば、選ばないという選択肢も、求めても手に入ら -
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玄田有史著「希望学」で山田昌弘の名前があがっていたため、読んだのが本書。
「希望学」は学問的に成熟していないためか、イマイチだったが、本書はかなりいい!まず著者が非常に切れる。しかも勉強家。多くの文献を引きながら説得力のある論を展開する。以下はこの本のポイント。再び精読することを誓う。
現代はリスクが普遍化している。
その中で、リスクを乗り越えて勝ち組になれる人と、リスクに脅かされながら生きていかなければならない人に二極化している。
例えば、結婚生活。高度経済成長時代は、離婚する夫婦は少なかったが、いまは離婚するのも普通のことになっている。
あるいは就職の問題。大学を出ても正社員になれない人 -
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ネタバレ「『格差社会』論の火付け役となった話題書、待望の文庫化」
と帯に書いてあります。
日本の現在とこれからに関する、リアルでシビアな分析。
まとめると、
「日本では格差が固定しつつある。その根本的な問題は『希望』を持てるか、持てないかというところで質的な断裂が起きているところにある。これは構造的な問題で亀裂の存在自体はもう否定しようがない。その中でどういう風に立て直すのかが今後の課題である」
というような内容です。
とにかく、読んでて背筋が寒くなりました。いつの間にか、この国はほんとうに大変なことになっているようです。これが書かれたのは2004年です。自分が今まで考えていたことが、いかにぬるい -
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パラサイトシングルなどの造語でも注目される社会学者の著作。
大学での講義を肉付けしてまとめているが、社会学者らしいデータからの読み取り、及びその原因追及などが非常に良くできている。
90年代までの高度経済成長の仕組みは崩壊して、様々な「リスク化」「二極化」ができていると著者は述べている。そのことが、若者を努力しても仕方がない希望のない社会に追いやっているということである。
今の日本の制度設計は、高度経済成長を基本に作られている。しかし、世の中は高度経済成長では考えられないような事態がでてきている。職業、家族、教育が不安定化している。これらに対して、何らかの対策をとらなければならないんだろ -
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「リスク化」と「格差の拡大」の共犯が本書のテーマ。その結果、若者のあ間にやる気の格差(インセンティブ・ディヴァイド)が広がっている。
ここでいうリスクとは天災、戦争、テロリズムのことをさすのではない。「みずからの選択の結果生じる可能性のある危険」である。リスク化とは、好むと好まざるとに関わらず「自己決定」を強いられる社会になった結果すべての人にリスクの可能性が開かれることを指す(リスクの普遍化)。だが、資本の多寡によりリスクへの対処は異なる。持つものは、リスク社会を泳ぐことができる。だがしかし、持たざる者はリスクに蝕まれる。
この本、構成もデータも上手に出来てるから読むに値する。