あらすじ
フリーター、ニート、使い捨ての労働者たち―。職業・家庭・教育のすべてが不安定化しているリスク社会日本で、勝ち組と負け組の格差は救いようなく拡大し、「努力したところで報われない」と感じた人々から希望が消滅していく。将来に希望が持てる人と将来に絶望している人が分裂する「希望格差社会」を克明に描き出し、「格差社会」論の火付け役となった話題の書。
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Posted by ブクログ
「パラサイト・シングル」の中には私ももちろん含まれるし、「親に寄生してるのをいいことにリッチな生活を送る独身者」という表現を何度も読むことになった。
19年ほど前の本だけど、私の行動原理についてはほぼ予言されていた。
つまり未来に希望を見出せない人間は未来と向き合う苦しみから逃れようとし、逃避する行動に出る。
酒やセックス、(それならまだいい。ドラッグにハマるとヤバいと書いてあった)そして追っかけなど。
まるで私…まさしく私だ。
推しを追っかけて、日々酒を飲んで逃避している…そうしてないととても耐えられない…耐えたことがほぼないからわからないけど、耐えたくない!
自殺者の増加についても触れている。
高水準を維持したままの自殺率。
私が今死なないのは死ぬと色々とまずい気がするからだし、生きる楽しみだってたくさん見つけられたから…
不思議と生きる楽しみなんていつもあったはずだけど、死ねば今読んでる漫画の最新刊も気になる映画も全部なくなってしまうのに、私が飛び降りた時はそんなの気にも留めなかったな。
ただ離婚したらその結婚のために用意したお金は全部無駄になるみたいな言い方はあんまり好きじゃなかったかも。
パラサイト・シングルとしての行動についてだいたい言い当てられた気がする点で、私はこの本を手に取ってみてよかった。
Posted by ブクログ
リスク化と二極化の話。1990年までが安心社会だったが、以降自由主義的な「自己選択、自己責任」の概念が浸透。自己責任の時代は当然、リスクを伴う。いわれてみれば、ではあるが、自分が選択するだけではなく、他者からも選択されるという「おそろしさ」を改めて感じる。
1998年問題、という変曲点は、極めて興味深い。
ーフリーター、引きこもりの出現
ー離婚、晩婚化
ー合理的な目的のない犯罪
ーアディクション
などで二極化が進むが、その最たるものは、希望における二極化。題名にもある「希望格差」は、夫婦の強者連合、親子の強者連合により加速した。
肝心な解決策ソリューションをどう導くかとなると様々なアイデアが挙げられているが、決定版はまだない、という印象。「公的な個人の活動支援」というものが成り立ちうるものなのか。
Posted by ブクログ
大学時代にこの本を読んだ時、衝撃を受けました。
若者が社会的弱者になる?まさか、、、、な。
でも、やたらに説得力があったのを覚えています。
今、読みかえしてみても、著者の指摘は、ほぼ当たっています。
というか、若者を取り巻く環境は、当時よりも、
現在の方が、より深刻さを増しています。
未来に希望を持てない若者が大量出現している構造を、
統計資料を元にあぶりだした著者は、やはり先見性があります。
しかし、この10年で、抜本的な対策が行われることなく、
希望格差は若者、そして社会全体に広がっています。
Posted by ブクログ
(2007/4/19)
これは,おもしろい!
希望格差社会ということばは,家族社会学の研究者である筆者の手によるものですが,
筆者は,,現在存在する格差は,所得の格差による直接的なものというよりかは,未来に対する主観的な希望における格差だと主張する.
豊富な統計資料を基に,かといって,データだけしかみていないわけではなく,現代の社会の持つ定性的な構造変化にも言及しつつ読み解いています.
ちなみに「パラサイト・シングル」って言葉を作ったのもこの著者
実質ゼロ成長に達した先進国はやはり格差を内部に抱えるしかないんでしょうか?
モータリゼーション,ITなどで技術主導な生活変化で居住区の郊外化も進む中,社会のダイナミクスはどのような未来を構成していくのだろうか.
K教授(所属ラボのボス) 曰く
「砂漠化がすすんどる.」
一昨日もテレビ付けてたら,「円安の時代で輸出産業が好調だが,長期的には内需を拡大させる方向にシフトしなければいけない」
ということをNHKの論客が仰っていた.
内需を拡大するというのは消費を増やすということだろうか?
無駄遣いをせずエコで格差も生まれず暮らしが成長方向で安定するような社会ってつくれるんですかね?どうなんですかね?
消費を増やす事が環境の消耗に繋がるのでは困ります.
マクロ経済やその他諸々絡むので,学の足りない私には分かりません.統合的に理解できる日がいつか来ればいいなと思います.
Posted by ブクログ
【再録~以前にmixiに投稿したものです~】
経済の枠組みが大きな変化を迎える中、
それに適応できない若者が「希望」を失い、
「希望」を持つ者と、持たざる者との「格差」が
バブル崩壊後急速に進んでいる現状が報告されています。
リスク化、二極化、職業・家族・教育の不安定化等の 環境要因を背景に「希望」を失った若者が
再生産される仕組みも理解できます。
読んだ後は、非常に暗い気持ちになるのも事実ですし、
これからは生き難い時代なんだなぁと改めて思います。
Posted by ブクログ
玄田有史著「希望学」で山田昌弘の名前があがっていたため、読んだのが本書。
「希望学」は学問的に成熟していないためか、イマイチだったが、本書はかなりいい!まず著者が非常に切れる。しかも勉強家。多くの文献を引きながら説得力のある論を展開する。以下はこの本のポイント。再び精読することを誓う。
現代はリスクが普遍化している。
その中で、リスクを乗り越えて勝ち組になれる人と、リスクに脅かされながら生きていかなければならない人に二極化している。
例えば、結婚生活。高度経済成長時代は、離婚する夫婦は少なかったが、いまは離婚するのも普通のことになっている。
あるいは就職の問題。大学を出ても正社員になれない人も多い。そういう人はフリーターとして生きていかなければならないリスクを背負う。
また、教育の問題。裕福な家庭は教育にお金を注ぎ込み、子どもは勝ち組のレールに乗る。裕福でない家庭は教育にお金を使えないために、階層化されていく。
Posted by ブクログ
「『格差社会』論の火付け役となった話題書、待望の文庫化」
と帯に書いてあります。
日本の現在とこれからに関する、リアルでシビアな分析。
まとめると、
「日本では格差が固定しつつある。その根本的な問題は『希望』を持てるか、持てないかというところで質的な断裂が起きているところにある。これは構造的な問題で亀裂の存在自体はもう否定しようがない。その中でどういう風に立て直すのかが今後の課題である」
というような内容です。
とにかく、読んでて背筋が寒くなりました。いつの間にか、この国はほんとうに大変なことになっているようです。これが書かれたのは2004年です。自分が今まで考えていたことが、いかにぬるいものだったか、思い知らされました。
読むと辛くなるのですが、今の時代の「親」なら読む価値はあると思った一冊。
Posted by ブクログ
パラサイトシングルなどの造語でも注目される社会学者の著作。
大学での講義を肉付けしてまとめているが、社会学者らしいデータからの読み取り、及びその原因追及などが非常に良くできている。
90年代までの高度経済成長の仕組みは崩壊して、様々な「リスク化」「二極化」ができていると著者は述べている。そのことが、若者を努力しても仕方がない希望のない社会に追いやっているということである。
今の日本の制度設計は、高度経済成長を基本に作られている。しかし、世の中は高度経済成長では考えられないような事態がでてきている。職業、家族、教育が不安定化している。これらに対して、何らかの対策をとらなければならないんだろうが、新自由主義や大きな政府復古型も含めて、有効な策を打ち出せてはいない。
悲しい現実だが、これを肯定しないといけないのだろうか。
Posted by ブクログ
「リスク化」と「格差の拡大」の共犯が本書のテーマ。その結果、若者のあ間にやる気の格差(インセンティブ・ディヴァイド)が広がっている。
ここでいうリスクとは天災、戦争、テロリズムのことをさすのではない。「みずからの選択の結果生じる可能性のある危険」である。リスク化とは、好むと好まざるとに関わらず「自己決定」を強いられる社会になった結果すべての人にリスクの可能性が開かれることを指す(リスクの普遍化)。だが、資本の多寡によりリスクへの対処は異なる。持つものは、リスク社会を泳ぐことができる。だがしかし、持たざる者はリスクに蝕まれる。
この本、構成もデータも上手に出来てるから読むに値する。
Posted by ブクログ
「昔は良かった。今の若い者は…」という世代に読んでほしい本。
確かに、昔と違って人生のあらゆる場面(仕事、結婚)において、不確実なことが増えた。
でもそれは、選択肢が増えたこと、自由の裏返しでもある。
昔は、受験勉強を頑張って、高学歴になれば、自動的に豊かな未来を手に入れることができた。
今は、努力しても報われない、気がついたら人生のパイプラインから漏れてしまう、一度漏れたら二度と這い上がってこられない仕組みになってしまっている。
”日本社会が、将来に希望が持てる人と、将来に絶望している人に分裂していくプロセス”をデータを使って説明している本。
昨秋からの不景気で、この本(初版は2004年)に書いてあることが現実化していて少し怖い。
Posted by ブクログ
従来の教育の視点と、本書の教育の視点どちらがいいのかもう一度立ち止まって考えたい。教養を身につけることの意義とは?手段としてだけ考えることは果たしていいのか。人間性の向上の本質的な価値とはなんなのか。
日本の教育システムであるパイプライン・システムのデメリットばかり強調されているようにいつも感じていた。しかし本書ではなぜ日本の教育が批判されるようになってしまったかについてまでしっかり触れていたため、とても良かった。改めて日本の教育システムを中立的に、メリットについてもしっかりとらえたいと思った。
Posted by ブクログ
少し前に話題になった本である。今さらと言われるかもしれないが、自分自身の中に切実な問題意識が出てきたことを機に手にとった。
読んでいて、暗澹たる気持ちにならなかったといえば嘘になる。実際に自分の身の回りで見聞きする様々なことが、この本に書かれている分析にピタリと当てはまっていく。そういう「当てはまっていく」という感覚は、本来気持ちのいいものであっていいものなのだけど、この本の場合は、むしろ背筋が寒くなるという感じがする。
この本が世に出てから随分経っている。おそらく、ここに描かれていることは現実のほぼ正しい分析であることははっきりしているように思える。では、その警鐘に対して、何らかの対策が取られているだろうか。例えば、というものがなかなか思い浮かんでこない。
僕自身、若者の未来についてある程度関与するべき仕事をしている。この本の分析に従うならば、「パイプラインからの水漏れを防ぐため、全力を尽くす」のが職業人として今できることだろうし、現に全力を尽くしている自負はある。しかし、問題が構造的なものであるとすれば、やはり心のどこかに無力感が忍び込んでくるのを感じざるを得ない。
確実に目の前に存在する「希望を持ち得ない若者」に対して、僕にできることは何なのか。目をそらさず考え続けるしかないのだろう。なによりも、自分自身が希望を持ち続けるためにも、そうやって考え続けなければならない。考え続ける努力は報われると、葉を食いしばって希望を持たなければならないのだと思う。
Posted by ブクログ
データがたくさん載っていて勉強になりました。フリーター増加の要因を教育に求めるのではなく、社会状況の正確な把握が対応の道になるのかなと思いました。リスク化とか二極化は避けられないけれど、未来に対して暗い気持ちになるのではなく、現実を知ってどう捉えるか、自分はどうしたいのかが大切。
Posted by ブクログ
この本はリスク化と二極化という二つのレンズから、日本の社会で起きている問題について考察している一冊である。
以前は一部の人が結婚や仕事において「自ら進んでリスクを取る」だけであったのが、様々なものが自由化され、また自由化によってそれぞれの人が所属する「組織」もリスクを取れなくなり、現在は全ての人が「リスクを取らざるを得ない」状況になっている。
一方近代以前は格差が固定化し、その格差に対して人々も「納得」していた状況が様々なものの自由化によって壊れ、実力が「格差」につながり、(例えば所得が)上の人は上の人同士でくっつき(結婚)、逆に下の人は下の人とくっつくことによって格差の二極化が現在急激に進んでいる。
この2つのレンズによって職業、家族、そして教育の3つの領域を考察している。
職業においては職業が不安定化し、中核労働者と非正規雇用者という2極が出現。一度非正規になった人は正規になることは難しく、中核労働者はどんどん働かされるので、所得・能力の二極化が進む。また非正規になってしまういリスクは誰にも起きる点からリスク化も進んでいる。
家族に関しては、まず女性の状況の変化に着目すれば以前は結婚すれば安泰と考えられていた状況から夫がいつクビになるか分からない状況となっている。また夫の状況に着目しても、人の流れが近代より激しくなったことによって妻が他の男性と出会う機会が急激に増えたため、いつ離婚を突きだされるかも分からない。よって家族が「一緒にリスクを乗り越えて行く共同体」ではなく、「リスクそのもの」になってしまう。また上で述べたように所得水準が高いカップルがくっつくことによって所得水準は上がり、またそれとは逆に所得水準がどんどん下がっていく家族が発生する。これによって家族の状況も二極化していっている。
最後に教育に関しては、以前は「受験」というパイプラインが正常に働いていたが、現在労働市場の変化により企業も人を多く必要としなくなり、「このパイプラインに乗ったつもりだったが、いつの間にかそのパイプからもれていた」というような人が多く発生している。また高い教育を受けた家族は高い教育を受けた子供を再生産し、二極化を促進させる。
これらの「二極化」「リスク化」により人々の間で「希望」に格差が生じている。「希望」とは「自身の努力が報われる感覚である」と、ある社会学者の意見を引用している。
対策としては政府、企業、自治体等の組織が総合的に状況に対処していかなければならないと述べている。様々なデータを巧みに使って意見を主張している点や、以前から自分が疑問に感じていたことを論理的に説明してくれていた。おすすめの良書。
Posted by ブクログ
中学校、高校、大学と受験でのセレクションが正しく機能していた時代では
無理のない、そのごの人生展望が人々にはまっており、
一流大学を卒業したならば、
大企業、官僚、研究者といった職業が待っていて、
自動的に送り込まれる。
コレを、著者はパイプラインシステムと呼んでいる。
しかし、
今現在、
受け皿としての、大学、企業の組織体系および、パイプラインシステムの
雨漏りがあり、受験を通して、上のパイプラインシステムの流れに乗っていたとしても、そこから転落する人が多く出てきている。
さらに、雨漏りがあるとわかっていながらも、上に行くためにはパイプラインにい続けることが不可欠である。
収入の多い夫婦のほうが、収入の少ない若年夫婦よりも共働き率が多く。
強者がより強者になってゆき、
高い収入から、高い教育が可能になり、
“平等”と言われている勉学さえも、先天的な収入や生まれた環境によって左右される時代が来た事を切れ味よくレポートしている。
Posted by ブクログ
たいへんわかりやすく、納得できる内容でした。というのも、初版の出版が2004年です。著者の指摘が的確で、かつ、この七年間で改革が何ら実現されていない、それよりもさらに混迷の度合いを深めているようである、ということでしょうか。
Posted by ブクログ
●出会い
内田樹「下流志向」
●purpose
社会学に興味あり
●感想
独断的に言いきる著者
社会学分野に無防備な自分には斬新で刺激的
「うのみにすべきでないこと」2割。でも、「その通り」8割。
●おすすめ度★★★★
●お気に入り★★★
●難易度★★★
●読み直し★★★★
Posted by ブクログ
まだ社会に出てないし、社会がどういう状況か分からないので、なんとも言いようがない。社会学者ってネガティブな人が多いんじゃないかと思うけど、この本も読んでいて暗くなった。でも、読んでよかった。
Posted by ブクログ
この本が単行本で出たのは2004年。しかし、その後「格差」を埋めるための努力はどれぐらいなされているのかと、やや「絶望」的な気持ちになりました。
Posted by ブクログ
データに基づいた分析は的確で、20年ほど前のものだが、正に予言のごとく、格差の増大、未婚・離婚の増大・少子化…などその通りの社会になっている。
ただ、基本的に高度経済成長期の日本社会-サラリーマン専業主婦家庭、1億総中流社会-を安定した「良い」時代のように記載し、その前提が崩れた現代社会をリスクのある不安定な危険な社会という論調には違和感を覚えた。
能力、やる気、努力の有無など人によって千差万別だし、企業は営利団体なのだから能力の有無によって地位や報酬に差異を設けるのは合理的。
寧ろ高度経済成長期に能力に関わらず全員を正社員として採用して保護して仕事の出来に関わらず年功序列で給与を上げたから成長しない貧しい国になったのでは?
格差と騒いでいる人たちはマクロで物事を見過ぎ気がする。個々人の能力や努力(ミクロ)で見ると、やっぱり格差の下に属する人は結局は自己責任なのではないかと思ってしまう。
あと、宗教が心の拠り所(防波堤)になっていたとの分析はその通りだと思う。自分は無神論者だが、海外の人はほぼ何らかの宗教を信じている。昔、海外旅していた時、あなたは何を信じているか?との質問に無神論者と回答したら「では、何を指針に生きているのか?」と言われたことを思い出した。過激派などに焦点が当たりがちだが、本来的には重要な役割を担っているのかも。
Posted by ブクログ
分析の根底にある企業社会に対する認識がハッキリとせず、多くが社会の変化としか記されないのだが、特に既存企業の時代遅れ感などには触れないので肯定的なのであろう。しかし「パイプライン」の先にあるはずの日本企業は本来なら様々な職種で支払われるはずであった賃金をかき集め、仕事の淘汰をしたにも関わらず将来が展望できるような実績を生み出せてはいない、つまり儲からないのに生き残っている結果を企業社会の基準にとらえている限り日本には何の希望もなくなるだろう。公的支援を施すと同時に、喰える世の中作りに進む施策が必要であろう。それは大企業や公務員支援でないのは確かである
Posted by ブクログ
日本の現代の問題を単なる経済格差ではなく、希望格差=努力が報われる社会かどうかで論じた視点は素晴らしい。しかし、取り上げている話題への分析が浅薄で、なにより今後の提言が弱いのが残念。
・人々が中流とランクづけるのは、格差が量的なものだと思われていること、そして、成長によって追いつくことが可能だと希望がもてたことに依存する。
・教育は、何より「階層上昇(もしくは維持)の手段」であり、社会にとっては「職業配分の道具」なのである。この二つが危機に瀕していることが、現在の教育問題の根幹にある。しかし、これは主流の教育学者からは嫌われる考え方。
・苅谷:学力が低い生徒ほど現状肯定感が強い。→過大な期待を持つ以外に現状をやり過ごす手立てがない。
・ランドルフ・ネッセ:希望という感情は、努力が報われるという見通しがあるときに生じ、絶望は、努力してもしなくても同じとしか思えないときに生じる。
・中国が社会主義という看板を捨てられないのは、革命によって前近代的宗教を破壊した後に、社会主義を放棄すれば、貧しい人々に救いがなくなってしまうことに指導者たちが気付いているからなのだ。
Posted by ブクログ
この本を読めた高校生とそうでない生徒では人生変わるかもしれない。大学生は(特に学力の低い学生が)出席点を好むものだが、『希望』というキーワードでよく理解できた
Posted by ブクログ
日本社会が、将来の安定を期待することが難しいリスク化の時代を迎え、従来の教育と職業のシステムがさまざまなところで機能不全を起こしていることを明らかにした本です。
フリーターのように将来に希望を持てない人びとや、オーバードクターのようにそれまでの投資を無駄にすることを受け入れられない人びとが、みずからの心理的な安定のために夢にしがみついているという指摘も、非常に鋭いと感じました。
ただ、経済的なセーフティ・ネットだけではなく、心理的なセーフティ・ネットの整備が必要だという主張はまだ抽象的で、「希望格差」という事態にどのように対処していくべきなのかという道筋はそれほど明確にはされていないのではないかという印象も持ちました。
Posted by ブクログ
少し古い本になるので、内容が現代にそぐわないのではないかという不安があったのですが、そんなことはありませんでした。この本が世に出されてから、今に至るまでの日本の状況はたいして変化していないようです。希望格差という言葉を初めて耳にしましたが、自分の日常に引きつけて考えやすく、理解のしやすい内容でした。
読むと不安感を煽られ、少し暗い気持ちになります。最終章において、これからの私たちの方針のようなものについて言及されているのですが、個人的に行うことのできる策が少なく、なかなかこの本自体が「希望」になりきれていないように感じてしまいました。
いまの日本を取り巻く環境を見つめ直す、よい機会になりました。現在、義務教育のパイプラインを流されている方に読んで欲しい一冊です。
Posted by ブクログ
10年近く前に書かれた本にもかかわらず、内容は全く古びておらず、むしろ現在の状況を予見していたかのように感じた。
若者を取り巻く状況はむしろ当時より悪化しているし、日本のみならず世界的な経済の落ち込みで、著者が想定していたより現在は深刻かもしれない。
この本に書かれているように、徐々に仕事で昇級・昇進していって結婚・子育てをしていくっていう典型的な中流の生活には、自分自身現実感を持てないのが本音である。
未来に対する希望がいまいち持てないから、将来に対する不安に備える為には、できるだけそういうリスクを取らない方がいいのでは、という思考に陥ってしまう。
もしくは今が楽しければそれでいい、という短絡的な思考を持ってしまうのもまた事実である。
だけど将来どうなるかなんてわからない、来年の今頃でさえも予想できないけれど、行動を起こさなければ何も変わらない。
小さな行動、トライ&エラーが将来につながるかもしれないくらいには希望を持ててるのも事実なので、そういった事を積み重ねていくのが大事かも、というのが本書を読んで思ったことだ。
誰もが暗い未来なんて望んでない。 将来に希望を持てる社会を作る事にほんの少しでも貢献していけたら、というのが私自身の願いである。
Posted by ブクログ
格差社会の到来と言われて久しいが,これまでは格差の実態について,収入などの「量的格差」に議論が向きがちであった。
しかし本書では,格差の根本にある仕事能力による格差拡大を指摘し,単純労働から抜け出すことができない人の急増,いわゆる「質的格差」の存在を明らかにしている。そしてこの「質的格差」を自覚した人びとが,仕事や将来に対する「希望」を見いだせなくなっているのが現在の日本社会というのだ。
職業は,人びとにアイデンティティを与える。アイデンティティが見いだせない社会構造はやはり問題であるし,結果的に将来の重大な社会不安定要素に繋がる。これを警鐘した本書の意義は大きい。
ただ,教育に対する考え方に違和感を感じたこと,重複する説明が多く,無駄に読み疲れたので星3つ。