【感想・ネタバレ】希望格差社会――「負け組」の絶望感が日本を引き裂くのレビュー

あらすじ

フリーター、ニート、使い捨ての労働者たち―。職業・家庭・教育のすべてが不安定化しているリスク社会日本で、勝ち組と負け組の格差は救いようなく拡大し、「努力したところで報われない」と感じた人々から希望が消滅していく。将来に希望が持てる人と将来に絶望している人が分裂する「希望格差社会」を克明に描き出し、「格差社会」論の火付け役となった話題の書。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

【再録~以前にmixiに投稿したものです~】

経済の枠組みが大きな変化を迎える中、
それに適応できない若者が「希望」を失い、
「希望」を持つ者と、持たざる者との「格差」が
バブル崩壊後急速に進んでいる現状が報告されています。

リスク化、二極化、職業・家族・教育の不安定化等の 環境要因を背景に「希望」を失った若者が
再生産される仕組みも理解できます。

読んだ後は、非常に暗い気持ちになるのも事実ですし、
これからは生き難い時代なんだなぁと改めて思います。

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2011年11月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「『格差社会』論の火付け役となった話題書、待望の文庫化」

と帯に書いてあります。

日本の現在とこれからに関する、リアルでシビアな分析。
まとめると、
「日本では格差が固定しつつある。その根本的な問題は『希望』を持てるか、持てないかというところで質的な断裂が起きているところにある。これは構造的な問題で亀裂の存在自体はもう否定しようがない。その中でどういう風に立て直すのかが今後の課題である」
というような内容です。
とにかく、読んでて背筋が寒くなりました。いつの間にか、この国はほんとうに大変なことになっているようです。これが書かれたのは2004年です。自分が今まで考えていたことが、いかにぬるいものだったか、思い知らされました。

読むと辛くなるのですが、今の時代の「親」なら読む価値はあると思った一冊。

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2011年07月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

データがたくさん載っていて勉強になりました。フリーター増加の要因を教育に求めるのではなく、社会状況の正確な把握が対応の道になるのかなと思いました。リスク化とか二極化は避けられないけれど、未来に対して暗い気持ちになるのではなく、現実を知ってどう捉えるか、自分はどうしたいのかが大切。

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2013年12月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 この本はリスク化と二極化という二つのレンズから、日本の社会で起きている問題について考察している一冊である。
 以前は一部の人が結婚や仕事において「自ら進んでリスクを取る」だけであったのが、様々なものが自由化され、また自由化によってそれぞれの人が所属する「組織」もリスクを取れなくなり、現在は全ての人が「リスクを取らざるを得ない」状況になっている。
 一方近代以前は格差が固定化し、その格差に対して人々も「納得」していた状況が様々なものの自由化によって壊れ、実力が「格差」につながり、(例えば所得が)上の人は上の人同士でくっつき(結婚)、逆に下の人は下の人とくっつくことによって格差の二極化が現在急激に進んでいる。
 この2つのレンズによって職業、家族、そして教育の3つの領域を考察している。
 職業においては職業が不安定化し、中核労働者と非正規雇用者という2極が出現。一度非正規になった人は正規になることは難しく、中核労働者はどんどん働かされるので、所得・能力の二極化が進む。また非正規になってしまういリスクは誰にも起きる点からリスク化も進んでいる。
 家族に関しては、まず女性の状況の変化に着目すれば以前は結婚すれば安泰と考えられていた状況から夫がいつクビになるか分からない状況となっている。また夫の状況に着目しても、人の流れが近代より激しくなったことによって妻が他の男性と出会う機会が急激に増えたため、いつ離婚を突きだされるかも分からない。よって家族が「一緒にリスクを乗り越えて行く共同体」ではなく、「リスクそのもの」になってしまう。また上で述べたように所得水準が高いカップルがくっつくことによって所得水準は上がり、またそれとは逆に所得水準がどんどん下がっていく家族が発生する。これによって家族の状況も二極化していっている。
 最後に教育に関しては、以前は「受験」というパイプラインが正常に働いていたが、現在労働市場の変化により企業も人を多く必要としなくなり、「このパイプラインに乗ったつもりだったが、いつの間にかそのパイプからもれていた」というような人が多く発生している。また高い教育を受けた家族は高い教育を受けた子供を再生産し、二極化を促進させる。
 これらの「二極化」「リスク化」により人々の間で「希望」に格差が生じている。「希望」とは「自身の努力が報われる感覚である」と、ある社会学者の意見を引用している。
 対策としては政府、企業、自治体等の組織が総合的に状況に対処していかなければならないと述べている。様々なデータを巧みに使って意見を主張している点や、以前から自分が疑問に感じていたことを論理的に説明してくれていた。おすすめの良書。

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2012年01月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

格差社会の到来と言われて久しいが,これまでは格差の実態について,収入などの「量的格差」に議論が向きがちであった。
しかし本書では,格差の根本にある仕事能力による格差拡大を指摘し,単純労働から抜け出すことができない人の急増,いわゆる「質的格差」の存在を明らかにしている。そしてこの「質的格差」を自覚した人びとが,仕事や将来に対する「希望」を見いだせなくなっているのが現在の日本社会というのだ。
職業は,人びとにアイデンティティを与える。アイデンティティが見いだせない社会構造はやはり問題であるし,結果的に将来の重大な社会不安定要素に繋がる。これを警鐘した本書の意義は大きい。

ただ,教育に対する考え方に違和感を感じたこと,重複する説明が多く,無駄に読み疲れたので星3つ。

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2011年11月23日

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