山田昌弘のレビュー一覧

  • 日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?~結婚・出産が回避される本当の原因~

    Posted by ブクログ

    フランスに住んでいる友人(日本人)に、「今この本読んでるんだよね」と話したら、「え、日本て少子化対策なんかしてたの?」と言われた。
    確かに。言われてみれば。
    わたしはすぐに、日本が行っている少子化対策をあげることができなかった。
    この作品によるとそれは、育休制度であるとか、保育園増やそうとか、そういうことらしい。でもそれって、なんかずれているような気がする。

    なぜ日本で結婚・出産が回避され、少子化対策は失敗したのか。
    説明していくと、こういうことだ。まとめだけでなく小言が入るので長くなります。
    日本は欧米諸国の少子化対策をベースにして少子化対策を行った。
    しかし。
    欧米の価値観を前提としたまま、日本にあてはめてしまった。結果失敗した。その欧米の価値観とは。
    A.子どもは成人したら親元から離れて独立して生活することが当たり前の慣習
    B.仕事は女性の自己実現であるという意識
    C.恋愛至上主義
    D.子育ては成人したら終了という意識

    日本にA~Dが当てはまらないのに加え、日本特有の価値観がある。それが以下である。
    ①「リスク回避」傾向
    ②「世間体重視」
    ③子どもへの強い愛着―子どもにつらい思いをさせたくないという強い感情

    まず、Aについて。日本人は自立志向が弱い。特に女性の自立は不要と考えている人が親のみならず本人にも多く、18~34歳の未婚女性の約75%が親と同居している。これが「パラサイト・シングル現象」であり、日本の少子化の一因となっている。
    では、欧米ではどうか。欧米では、成人したら原則親元を離れる。しかし、収入は日本と同様そんなに高くないので、恋人関係に発展すると同棲するカップルが増える。そのうちに子どもができる。

    次にBについて。欧米では、仕事を持って自立することが男女問わず求められる。そして、仕事には自己実現という意味合いも含まれている。子育てをしながら仕事で自己実現をするため、両立支援策が必要となる。
    日本ではどうか。日本では、「女性には仕事による経済的自立が求められない」、「仕事で自己実現を得られると思っている女性が少ない」。
    でもこうなっているのはたぶん、高度経済成長期に完成した性別役割分業制と、それによる女性の自立志向の低さがベースにある。だから、男女問わず成人式終わったらみんな実家追い出されて、みんな生活のためにゴリゴリに働いてないと、両立支援策には意味がない。全員が「働かざるを得ない社会」じゃないと適さない。

    日本では、正社員なら会社への貢献的忠誠―長時間労働―家族を顧みない働き方、が求められる。それができなければキャリアコースからは外れる。そしてもともと女性にそれは求められていなかった。
    男性並みの仕事能力がある女性は、キャリアコースから外れると、仕事を継続する気をなくしてしまう。だって誰もそれを評価してくれないし、むしろそれで疎まれることだってあるからだ。男性の多くは、仕事での自立を求められ、かつ妻子を養う必要があるのでそれに従わざるを得ないが、女性にはそれに従わなくてもいい自由がある。というか、なんなら妻子を養っている男はかっこいいし、養われている妻子は幸せ、というWIN-WINの関係が成立してしまうのだ。なんてこったい!
    日本は結婚後、夫の収入に依存するのは当然であるという感覚が強い。スウェーデンでは、「結婚後の家計維持は夫の責任か」という質問に対して、大多数の女性がNOと答えるのに対し、日本ではYESと答える人が圧倒的である。なんてこったい!

    では、日本の女性がやりがい・自己実現をどのようなところに感じるか。
    それは「豊かな消費生活を送る」というものである。日本は、仕事を苦労して続けている女性よりも、仕事をしていなくても豊かな生活をして、子どもをよりよい学校に通わせている女性を評価する社会である。そのため、女性にとって仕事は、豊かな生活や子どもにお金をかけるための「手段」としての意味合いが強い。つまり、豊かな消費生活を送る見通しが立てば、無理に仕事と子育ての両立を目指す必要はない。
    そして現在、女性の労働者の半数は非正規雇用である。「総合職と一般職を区分した上で、一般職は女性に限るという慣行」「正規―非正規で処遇が大きく異なるなどの慣行」がなくなる見込みがない以上、一般職や非正規雇用の女性の専業主婦志向は弱まらないだろう。

    ここで、①~③を見てみよう。
    特に②世間体意識を先に見てみる。
    上記のように、「仕事を苦労して続けている女性よりも、仕事をしていなくても豊かな生活をして、子どもをよりよい学校に通わせている女性」が評価され、かつ男性が主な収入源となったWIN-WIN状態は、世間体を保っているとされている。世間体を保つということは、親などの家族、親しい親戚、学校や職場の仲間、友人から、マイナスの評価を受けないことである。
    日本人は、結婚から老後まで「世間からみて恥ずかしくない生活」をしなければならないと思っている。結婚したら、子どもを産んだら、子どもを育てたら、子どもが大人になったら、世間からどのように見られるかを常に意識して行動せざるを得ないのだ。その意識はSNSの発達により強まっている傾向にある。
    例えば、日本で「同棲」「婚外出生」「事実婚」が欧米のように広まらないのも、世間体が悪いからである。この「世間体」という言葉は英訳が存在しない程、日本人特有の感覚なのである。
    現在の日本には、経済的な格差が存在する。正規雇用と非正規雇用の明確な格差。未婚男性の38.6%は年収200万未満であって、貧困と隣り合わせなのである。しかし、人から下に見られたくないという世間体意識が、貧困を表に出させない。結果、政策にも反映がされない。

    Cについて。欧米社会では、恋愛感情に基づいて人生のパートナーを情熱的に求めることが人生の一つの目的として追求される。一方、日本で恋愛感情に基づいてパートナーを得るということが人生の目的であると考える人は、欧米に比べて少ない。恋愛を「リスク」と捉える人が増えているのである。
    ここで①を見ていく。
    ①リスク回避の意識
    欧米ではリスクをとって新しいことを始めることを評価する文化があり、転職も当然のように行われるため、やり直しがききやすい社会といわれているが、日本は新卒一括採用、終身雇用慣習に代表されるように、一度コースを踏み外すと、やり直しがききにくい労働慣行を持つ社会と考えられている。
    これは結婚・出産にも当てはまる。日本では離婚は失敗という評価がつきまとう。欧米では離婚や再婚を繰り返しても特に問題とは思われない。離婚は再婚を目指してお互いにとってよりよい相手を見つけるチャンスという意識がある。
    「仕事においても家族においてもやり直しがききやすい社会」にするということが最も効果的だが、雇用慣行や人々の意識を変化させることが必要になるので、たいへん困難な課題である。

    Dについて。欧米では、子どもを育てること自体に意味がある、子どもを育てることが楽しい、といった価値観が一般的である。一方日本で子育てとは、子どもをよりよく育てる、子どもが社会からどう評価されるか、に対して強い意味づけがなされる。
    その結果、子育て責任の年齢に大きな差が出てくる。
    欧米では、子どもが成人すれば親の責任は果たしたとみなされるので、親は原則、大学などの高等教育費を工面しない。それゆえ、少子化対策としての経済的支援は未成年の間だけで十分となる。
    一方日本では、学歴や職業ランク、娘の場合はどの職業ランクの男性と結婚したかということに価値が置かれる。そして、子どもが成人した後も子を支え続けることが求められるのと同時に、それが親の生きがいにもなっている。これもWIN-WIN!そのため、子どもにお金をかけざるを得ず、子どもの数を絞らざるを得ないのである。
    ここで、③を見てみる。
    ③子どもへの強い愛着
    欧米では子どもとコミュニケーションをとることが子どもへの愛情表現という考え方が強い。しかし日本ではなにをもってしても「子どもにつらい思いをさせたくない」が先にくるので、子どもに十分なお金をかけることが親の務めとなる。つまり、日本では父親が単身赴任で地方へ行っていても、その分家庭にお金を入れることは愛情表現の一つとなりえるが、欧米ではそれは愛情表現とはいえないのである。

    日本では、親の強い愛情、世間体、リスク回避、これら三者の結合によって少子化がもたらされているので、女性が働きに出やすい欧米型の少子化対策が、全く意味がないことがわかる。
    というかこうしてみると、社会の流れの中で女性は働かないことが推奨されてきたのに、急に欧米型の少子化対策が導入されたことによって「女性も働くことが普通」みたいになってきて、日本の女性はよくそれに柔軟に対応してるなって思う。世間体自体は何も変わってないのに。女性って強いね。しなやかだ。男性も「大黒柱」みたいに言われてきて家族を顧みない働き方が美しいとされてきたけど、それ自体を否定する人は多くなってきたように思う。それでいいと思う。でも、格差があることを認めたくないっていうのは、男女問わずみんなそうなんじゃないかな。男女ともにみんな年収200万が普通なんだ!じゃあお互いに手を取り合って一緒に家計を維持していこう!となれば平和的解決なのかもしれない。もう全人類フリーターでよくない?

    いよいよ最後のまとめ。
    現在の子育て世代の親が「中」の生活を送ってきたことから、現在の子育て世代が、自分がしてきたことと同じことを子どもに提供しなければならないと思っている。だって「子どもにつらい思いをさせたくない」。
    現代日本の少子化の根本原因は、経済格差が拡大しているにも関わらず、大多数の日本の若者は中流意識を持ち続け、「世間並みの生活」をし続けたいと思っていることにある。中流の意識だけが残っているのだ。だって自分が下流だって認めたくない!
    つまり、親が比較的豊かな生活水準を保っているのに自分が将来築くことができる生活が親の水準に達する見通しがない若者たち、彼らが結婚・出産を避けており、彼らこそが、子どもにつらい思いをさせてしまう可能性にさらされている。この層の増大がマクロ的に言えば、少子化の原因である。
    若者の「将来にわたって中流生活から転落する不安」を払拭することができなければ、日本における少子化対策はなかなか効果が上がらない。若者だれもが、育てている子どもにつらい思いをさせなくてすむような見通しをとることができる社会にすべきである。

    じゃあどうすればいいのさ。(ToDoリスト)
    ・結婚して子どもを2~3人育てても、親並みの生活水準(子育て水準を含む)を維持できるという期待を持たせるようにする。(経済状況、階層のあり方を変える)←無理がある
    ・親並みの生活水準に達することを諦めてもらい、結婚・子育てをする方を優先するようにする。(リスク回避、世間体意識を変える)←日本人にはハードル高すぎ
    ・仕事においてやり直しがきいて、不利にならない職業環境、共働きがしやすい社会環境、いざとなったときには社会保障で自立に向かっての再スタートが切れる社会。それは、「子どもにつらい思いをさせなくて済む」生活水準でなければならない。←無理がある

    つまり、日本に「世間体」と「やり直しがきかない感じ」が蔓延っている以上、どんな対策をしたって無理があるんじゃないのって思っちゃった。ToDoリスト、どれも夢物語のように感じるよ。

    本当に長くなりました。最後まで読んでくださりありがとうございましたm(__)m

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    2021年04月09日
  • 結婚不要社会

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    近代は結婚がもたらす効果が純化しているという指摘が面白かった
    社会の変化からさまざまな矛盾が生じてると分かった

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    2021年01月12日
  • 悩める日本人 「人生案内」に見る現代社会の姿

    Posted by ブクログ

    昔から、多くの人は悩んでいてしかも人それぞれに悩みは違います。

    しかし、大きな流れとして昔の日本人は世間の常識というモデルから外れていることを悩み、今はモデルすら無くなりつつありどうしていいか分からなくて悩んでいます。

    個性の時代と言われながら、個を確立する具体的な方法も教えられずに大人になってしまったのかもしれません。

    著者は、読売新聞の人生相談の回答者として社会学者として社会のパラダイムを見ながら、一方で具体的なアドバイスをするにはどうすればよいか、悩みながら考えています。回答に至るまでの考え方を知り、回答そのものよりも悩みに対する対応のヒントを得た気がします。

    一般紙の人生相談なんて当たり障りのない常識的な回答しかしないだろうと、これまで殆ど読んだ事が無かったので、今度読んでみようと思いました。

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    2020年12月27日
  • 結婚不要社会

    Posted by ブクログ

    結婚のシステム、意義、歴史を分かりやすく説明した後で現代日本の意識のズレによる問題を論じている。
    好きな人と金がある人が=で無いところがポイント。要するに日本の場合は結婚=金もしくは旧来の価値観に囚われない人という事になる。

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    2020年11月20日
  • 日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?~結婚・出産が回避される本当の原因~

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    うーん、そりゃそうなんだけど。対策取る気は国には内容だなあと思う。たぶん、状況を理解する気がないのだろう。

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    2020年10月18日
  • 日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?~結婚・出産が回避される本当の原因~

    購入済み

    好感の持てる著者

    日本の少子化事情が欧米のそれとは大きく違うことを示した書。
    日本は欧米の政策を真似ることが多く、それは欧米の問題が日本にも後年発生し、解決策もそれにならうという歴史観が明治時代からあるからだ。

    しかしもちろん欧米人と日本人は文化が大きく違う。子どもの育て方からどういう主義を掲げているかまで。特に世間体を気にして結婚や出産を渋ったり、子どもが働ける年代になっても実家暮らしなど親世代と同居する例も少なくない日本では、欧米よりもはるかに結婚までのハードルが高いと断ずる。
    日本では中流の平等意識が強いが、世界では経済的な身分差など当たり前に存在している。ある意味で欧米は身分差にあった範囲で子育てをしており、働けるようになったら一切の子育て義務を放棄するのが一般的なのだという。
    言われてみれば理解できるが、日本は景気事情の低迷から、金はないのに世間に下にだけは見られない子育てをするという中流意識が蔓延っている。

    だがこれは日本人にとって子への苦労して欲しくない愛があってこそ。著者はこれを評価しており、安易な移民や海外の真似政策などを否定している。あくまで現在の日本人の意識のまま、中流意識に相応しい(子育てできると思わせるくらいの)社会保障制度を家庭に届けることを対策に掲げている。対策に関してはおまけ程度にしか書かれておらず、内容もフワフワしているが、これからの日本の人口問題に関して真摯な言葉を作ろうとしている。
    内容も納得できる失敗論で、好感が持てる一冊。

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    2020年08月18日
  • モテる構造 ──男と女の社会学

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    題名はかなり狙ってる感じだけど、内容はしっかりとジェンダー学、それに関する言説について説明されている。

    男女の非対称性を理論的に正すことが困難だと納得させた上で、その不平等ともいえる非対称性が、現実味を持って解説されていて興味深かった。
    性別の非対称性を語っているものの、不思議と前向きな気持ちで読み進められる。

    男性は〜、女性は〜、という語り口に、今まで嫌悪感を持っていたけど、これを読んで社会構造的に仕方がないことと腑に落ちた所も多く、勉強になった。
    フェミニズム、ジェンダーに関心がある人は、新しい視座を得られると思います。

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    2020年04月12日
  • パラサイト・シングルの時代

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    20年前に書かれたとは思えないほど、現代の状況とも当てはまる。
    パラサイトシングルの生活状況、問題点、発生した時代背景、海外との比較がなされている。
    生活状況とかは読んでてあるあると思ったり、こんなことにもパラサイトシングルが関係したのかと新しい発見があって、さくさく読めた。

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    2020年03月20日
  • 結婚不要社会

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    『希望格差社会』『パラサイト・シングルの時代』など、山田先生の著作が、いつも自分と家族の側に。
    幸せに生きるための道標がまた増えた感じです。

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    2020年01月15日
  • 結婚不要社会

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    歴史的背景や国際比較をした上で、なぜ日本が結婚困難な状況となっているかをわかりやすく説明してくれる一冊です。
    これまでの結婚できない環境に関する言説と、周囲の意見に齟齬を感じていた中、いい本に出会えたと感じています。
    次はもっとインタビューなど生の声がより多く入った一冊を希望します笑

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    2019年12月28日
  • 結婚不要社会

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    イエ同士の取り決めだった前近代。職業や結婚が個人化され、結婚が独立と生活の保障になった近代。高度成長期は、収入増が見込めたため97%が結婚できた。その後状況が変わったのに、結婚に経済を求める意識が変わらないため、結婚困難になっている。

    生活保障と愛情献身のバーターは、ミクロにみれば豊かなバリエーションのストーリーネタだけれども、マクロにみると社会にとっての問題。

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    2019年12月18日
  • 悩める日本人 「人生案内」に見る現代社会の姿

    Posted by ブクログ

    日本の社会学者として、この人ほど活躍している人は、珍しだろう。20年近く前に、著者の『希望格差社会』を手に取った衝撃を今でも忘れられない。

    日本は、その本で指摘された以上の希望格差社会になってしまっている。もちろんどの時代にも特有の悩みがあるだろうが、人生相談として提起される問題も、今の少なくない日本人が八方塞がりであることがよくわかる。

    著者は社会学者としての立ち位置を常に模索している。著者は、おそらく現実の社会現象をフレーズ化する天才だと思う。それは、データ分析の実力の高さもさることながら、類稀な言語センスを持っていると思う。

    人生相談もそうだが、本人自身は、問題点を十分わかっていると思う。しかし、実際は、そうではないケースが沢山ある。相談に寄せられた内容から、背景となる客観的事実を推測するの、よほど知性がないとできない。ただ著者は、学者としての権威性を十分に理解しているので、どこまでサジェッションすべきか、悩んでいることを、この本では、告白している。誠実な人柄がよくわかる。
    良い人生相談本だと思います。

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    2019年12月12日
  • 結婚不要社会

    Posted by ブクログ

    「結婚」の根源にさかのぼった考察は「文化人類学」の様にも見え、新たな知見を教えてくれる。思わず40年以上以前の、わが身の結婚生活の端緒を思い起こしてしまった。
    結婚は属人的なものだと思いがちだが、歴史を振り返ってその変遷を辿るとその社会的位置付けの変化があらわに見えてくる。「家族社会学」とはこういうものだと教えてくれる本である。
    本書の「結婚は男性には『イベント』女性には『生まれ変わり』」との指摘はまさに身も蓋も無い赤裸々な真実だろう。
    表題は平凡だが中身は濃い本である。

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    2019年07月05日
  • 「婚活」症候群

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    「婚活」時代という著書を記し,「婚活」という言葉を作って伝えたかったことは2つ。

    ・自ら動かないと結婚できませんよ
    ・「昭和結婚」から脱却しなければ結婚は無理ですよ

    2つ目のメッセージが届かなかったために本書は作成された。

    ただし,この2つのメッセージはメタ的に見ると困難な要求をしているようにみえる。
    つまり,「望むものを手に入れたいならば自ら動かないとだめ。だけど,その望むものが高望みにならないようにね。」というメッセージである。

    望みの意味をどう変容していけるか。結婚の意味あるいは価値をどう考えていけるか。
    ここら辺が鍵なのだろう。

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    2019年06月04日
  • 「婚活」時代

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    「婚活」=結婚活動という言葉を作った2人による,言葉ができた当初の「婚活」の話。
    
    このときから10年ほど経っているが,今でも通じる話が多い。たとえば,結婚できない理由は「出会いがない」ことであるとか。
    
    逆に言えば,種々の取り組み(支援策など)は増えているにもかかわらず,10年前から問題は大きく変わっていないということ。
    
    「婚活」。さて,どこに問題があるのであろうか。

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    2019年05月07日
  • 「婚活」時代

    Posted by ブクログ

    あくまで「婚活」をしないといけない人で,この本を手に取っているような人にとっては,事実確認にはなるけど,具体的な行動に落とし込むには,別の方法で補わないといけないだろう。

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    2019年02月17日
  • 底辺への競争 格差放置社会ニッポンの末路

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    現代日本をえぐるレポート3冊目は、山田昌弘さんが「希望格差」からさらに進んだ、底辺へと転落しやすくなってしまった現代社会を描いています。
    先の2冊とは違って克明に分析していますが、その冷徹さが救いのなさをあぶり出しているだけに深刻です。

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    2018年01月15日
  • 底辺への競争 格差放置社会ニッポンの末路

    Posted by ブクログ

    如何にして中流社会が壊れて、下流に転がっていくか。望めば正社員になれる希望があった1990年代、バブル崩壊で正社員が狭い門になった2000年代。正規であることと非正規であることが格差の象徴の様に感じられました。

    興味深かったのがパラサイトシングル。十分な年金を貰う親と同居することで目立つことのなかった貧困の問題。親が亡くなり、また介護の問題などで一気に生活が苦しくなる。そんな状況であれば、結婚して新しい家族を作ろうと言う気持ちにもなれないかもしれない。

    昔、この国にはなんでもあった。希望だけを除いては。しかし、何かを手にするにも年々ハードルがあがっている様にも感じてならない。

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    2017年11月06日
  • モテる構造 ──男と女の社会学

    Posted by ブクログ

    キャッチャーなタイトルの割に中身は重厚な社会学のテキスト。同僚の方から勧められた一冊。山田さんの本を読むのは3冊目になるが、日本における男女の恋愛、家族観に対してとてもわかりやすく説明してある良本が多い。

    端的に言うと、モテる男性はできる男性である。男性にとってモテることとできることはリンクしている。一方で女性の場合はできることとモテることの関係性は薄い。日本社会はこのバランスを社会に積極的に取り込んできた。結果、未だに男性優位な社会が多く、女性の社会進出は進まないと筆者は述べる(筆者はこれを前近代的と言っている)

    生物学的にも男性は競争の生き物であるけれど、それがどの局面でも如実に現れる。結果、一部の持てる人間と、持てない人間が生まれてしまう。現代日本では賃金の低下、非正規雇用の増加により後者の男性が増加傾向にある。
    女性の場合はできる女性でもそれがモテることに直結せず他の方面でのスキルが必要とされる。具体的には家庭的な面が強調される。結果、多様な生き方は許容される(キャリアの道、専業主婦、女性同士の共同体)が、男性のように仕事だけで評価されないジレンマがうまれている。

    第7章 ケアは女性の役割か?は興味深く、ケア労働(看護師や保健師、介護士)は女性の割合が圧倒的に多い。それを自分は今までは社会的なバイアスがさせているのかと思っていたが、実際は感情が関わっているようである。女性からのケアは男女共に気持ちよく受けられるが、男性からのケアは男女共に嫌悪感をいだくというものだ。
    感情が関わるということは生物的な本能や生存に必要な要素が関わってくるということだし、性区分といかに社会が付き合っていくかは本当に難しい問題だと感じた。

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    2017年09月22日
  • モテる構造 ──男と女の社会学

    Posted by ブクログ

    キャッチーなタイトルとは裏腹に、中身はとことんがちな社会学の本。男/女が同性/異性を判断する際のクライテリアとは何か、そのベースになっている3つの社会規範とその非対称性。結果的に、できること(仕事能力)とモテること(性的魅力)の二大アイデンティティに集約される社会的課題が男女それぞれに与える影響など、根源的な解説にはじまり、女性の社会進出が活発になりつつあるニューエコノミーにおける趨勢や、フロイトやチョドロウとの関連にも触れている。日本とその他の国の違いに係るリーズニングには若干疑問が残ったが、その他は大変興味深かった。

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    2017年05月01日