山田昌弘のレビュー一覧
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日本の社会学者として、この人ほど活躍している人は、珍しだろう。20年近く前に、著者の『希望格差社会』を手に取った衝撃を今でも忘れられない。
日本は、その本で指摘された以上の希望格差社会になってしまっている。もちろんどの時代にも特有の悩みがあるだろうが、人生相談として提起される問題も、今の少なくない日本人が八方塞がりであることがよくわかる。
著者は社会学者としての立ち位置を常に模索している。著者は、おそらく現実の社会現象をフレーズ化する天才だと思う。それは、データ分析の実力の高さもさることながら、類稀な言語センスを持っていると思う。
人生相談もそうだが、本人自身は、問題点を十分わかっている -
Posted by ブクログ
「婚活」時代という著書を記し,「婚活」という言葉を作って伝えたかったことは2つ。
・自ら動かないと結婚できませんよ
・「昭和結婚」から脱却しなければ結婚は無理ですよ
2つ目のメッセージが届かなかったために本書は作成された。
ただし,この2つのメッセージはメタ的に見ると困難な要求をしているようにみえる。
つまり,「望むものを手に入れたいならば自ら動かないとだめ。だけど,その望むものが高望みにならないようにね。」というメッセージである。
望みの意味をどう変容していけるか。結婚の意味あるいは価値をどう考えていけるか。
ここら辺が鍵なのだろう。
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Posted by ブクログ
如何にして中流社会が壊れて、下流に転がっていくか。望めば正社員になれる希望があった1990年代、バブル崩壊で正社員が狭い門になった2000年代。正規であることと非正規であることが格差の象徴の様に感じられました。
興味深かったのがパラサイトシングル。十分な年金を貰う親と同居することで目立つことのなかった貧困の問題。親が亡くなり、また介護の問題などで一気に生活が苦しくなる。そんな状況であれば、結婚して新しい家族を作ろうと言う気持ちにもなれないかもしれない。
昔、この国にはなんでもあった。希望だけを除いては。しかし、何かを手にするにも年々ハードルがあがっている様にも感じてならない。 -
Posted by ブクログ
キャッチャーなタイトルの割に中身は重厚な社会学のテキスト。同僚の方から勧められた一冊。山田さんの本を読むのは3冊目になるが、日本における男女の恋愛、家族観に対してとてもわかりやすく説明してある良本が多い。
端的に言うと、モテる男性はできる男性である。男性にとってモテることとできることはリンクしている。一方で女性の場合はできることとモテることの関係性は薄い。日本社会はこのバランスを社会に積極的に取り込んできた。結果、未だに男性優位な社会が多く、女性の社会進出は進まないと筆者は述べる(筆者はこれを前近代的と言っている)
生物学的にも男性は競争の生き物であるけれど、それがどの局面でも如実に現れる -
Posted by ブクログ
ネタバレ私は、『希望格差社会』の中で、アメリカの社会心理学者(ランドルフ・ネッセ)の「努力が報われたと思えば希望が生じ、努力しても無駄だと思えば絶望が生じる」という定義を応用して考察を行った。
為政者がなすべきことは、すべての人に希望がもてる環境、つまり、努力すれば報われると思える環境を整えることにある。努力しなくても報われるケースが増えれば、閉塞感が社会を覆い、人々はやる気をなくす。これは、いわゆる既得権と呼ばれるものである。また、努力しても報われないと思う人々が増えれば、絶望感が広がり、社会が荒廃する。それゆえ、努力すれば報われるという環境を整えるためには、①努力しなくても報われるというケース、つ -
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著者はパラサイト・シングル、婚活といった言葉の生みの親。
この本を読んで、日本の社会が抱える現実問題を目の当たりにした。投機でしかない高等教育、独身無職で親に寄生する若者たち、老人優遇の社会制度、退廃的な文化だけが最後の便り。
こういった時代にロスジェネとして生まれ、一度は破綻した人生からなんとか這い上がってきた自分に、いったい何ができるというのか。親の介護を考えただけでも頭が痛いのに、それ以上の崩壊が日本規模で起きている。
本書ではタイトルの疑問に対する答えは(少なくとも納得する形では)示されていない。日本社会の破綻について淡々と書かれているだけで、読んでいて辛い。