あらすじ
仕事がない。結婚できない。将来に希望が描けない――若者をここまで追い込んでしまった社会に未来はあるのか。家族社会学を専門とする著者独自の視点から解決の処方箋を提言。
【主な内容】
序 論 若者の「失われた20年」/第I部 若者が危ない/第II部 先送りされる格差・少子化問題/終わりに 民主党政権は、追い詰められた若者を救えるか?
感情タグBEST3
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とりあえず題名は本題じゃなかった(笑)
でも社会学者さんが書いただけあって、現代の若者を取り巻く
労働と結婚、経済や少子化の問題を良くとらえている。
しばらくはこの状況の中で生きるしかないんだろうなあ。
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アメリカの社会心理学者 努力が報われたと思えば希望が生じ、努力しても無駄だと思えば絶望が生じる
ジグムンド バウマン 消費と身体によってアイデンティティを保つメカニズムが主流となる
能力がある人は、その能力を最大限に発揮できる地域に行こうとする。いくら地元のためにつくそうと思っても、能力を生かす場がなければ、無駄になる。先端産業がある一部の地域や、新しいサービス業が盛んな大都市部に人材があつまり、生産力が高まり、専門的サービスを提供できる地域が形成される。
人は自分の見たいものしか見ない ユリウスカエサル
親と会話する子供のほうが成績が良い
世界で通用する才能のある人は、国境を越えて自分の才能が最も伸ばせ、最も高く買ってくれる国地域に移動する時代がくる。国力は高い能力を活躍をさせる場を提供できるかどうかにかかってくる。日本でそれがなかなかすすまないのは、心理的なためらいと日本語しか話せないという語学能力のせいではないか。この2つの障害がなくなり、能力をもつゆえに国際移動が可能な人々と、ないがゆえに国にとどまるしかない人々に分かれていったとき、国家の持つ意味は大きく変化していくに違いない。
ポスト工業化社会にとなると、専門的能力は高く評価される一方単純労働も広がる。格差社会が浸透すると、能力が高く富裕が集まる地域と集められない地域への分化が生じる。地域格差は人間力格差なのだ。
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私は、『希望格差社会』の中で、アメリカの社会心理学者(ランドルフ・ネッセ)の「努力が報われたと思えば希望が生じ、努力しても無駄だと思えば絶望が生じる」という定義を応用して考察を行った。
為政者がなすべきことは、すべての人に希望がもてる環境、つまり、努力すれば報われると思える環境を整えることにある。努力しなくても報われるケースが増えれば、閉塞感が社会を覆い、人々はやる気をなくす。これは、いわゆる既得権と呼ばれるものである。また、努力しても報われないと思う人々が増えれば、絶望感が広がり、社会が荒廃する。それゆえ、努力すれば報われるという環境を整えるためには、①努力しなくても報われるというケース、つまり既得権を排除し、②努力しても報われない人々を救い出す必要がある。(p25-p26)
「絶望」という感情でさえ個体が生き残るために発達してきたという議論を行ったのが、ランドルフ・ネッセという社会心理学者である。(p50)
内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」の調査結果が示しているのは、若い女性の分裂である。女性の間で、二極化が生じ、仕事と家庭の両立を目指し男女平等を目指すグループと、仕事は男性に任せて個人生活を楽しみたいという女性が増えていると解釈できるのだ。
それはなぜだろうか。私は、日本社会では、男女共同参画の流れと新しい経済による「非正規化」の流れが、ほぼ同時に来てしまったからだと考えている。(p72)
日本の最低賃金が今に始まったことではない。10年前でも、いや20年前でも、先進国の中ではアメリカ並みに低く、生活保護額と大差ない水準であった。なぜ今さら問題にするのだと思っている人もいるかもしれない。
それは日本では最低賃金は、その額で生活する人が存在しないことを前提に決められていたからである。現在、問題になっているのは、最低賃金で生活する人が「構造的」に発生してきたからだ。(p76)
正社員は、仕事量や仕事の責任からくるストレスにさらされている。誰でも自分の雇用や収入が心配であれば、他人との協調性が疎かになる。成果主義が導入されると、自分の仕事を犠牲にしてまで他人の仕事を手伝おうとする人は徐々にいなくなる。結果的に仕事の責任を一人で背負う人が多くなり、押し潰される人が出てくるのだ。(p84)
成果主義の中で「他人との協調」を評価するシステムを作ることが有効である。単に個人成績ではなく、他人の仕事を手伝う、他人の失敗をカバーするといった努力を評価するシステムを意識的に作る必要があるだろう。終身雇用時代は、このような努力は長期的に評価されていたが、今は、非正社員にも「協調行為」にインセンティブをつける必要が出てきたのだ。(p85)
■「信頼関係」を壊すケータイ
私が懸念するのは、この事態が続くと人間の間での「信頼関係」が徐々に損なわれることである。正確に言えば、「信頼関係」を築きにくくなるのだ。
なぜなら、ケータイの普及により「守れないかもしれない約束」を気軽にするようになるからである。約束をしても、相手が本気で守ろうとしているのか、気が向いたら行くという程度で約束したのか、わからない。キャンセルされても、本当にやむをえない事情なのか、行くのが面倒になっただけなのか判断できない。
昔は、待ち合わせをするのには互いの信頼が前提にあった。約束の時間に行くことによって、信頼関係があることを確かめ合ったのだ。待ち合わせたら必ずその場に定時に行き、守れない約束はしない、守れなかったら罪の意識を感じるという形で互いの関係を縛り合ったのだ。(p98)
政府の役割は、国民の「希望」をつなぐことだと思っている。
政府の役目は既得権を削減し、努力をすれば報われる環境を整えることだと私は思っている。(p130-p131)
オランダでは、どんな立場の労働者であろうと安心して失業できる。それは、単に貧困を防ぐという意味だけではない。労働者の立場を強くするのに役立っている。悪い条件で無理に就職する必要がないからだ。目の前の生活に困れば、条件が悪くても企業の言うなりの雇用形態、賃金、労働時間で働くしかない。よい条件での再就職が難しいと知っているから、正社員は長時間労働やサービス残業も甘受している。日本の労働者は、仕事を選ぶ権利が実質ないのだ。
(中略)
つまり、すべての労働者の社会保障を強化することが、結果的に個々の労働者の経営者に対する交渉力を高め、不本意な仕事で長時間労働を強いられることを防いでいる。(p136-p137)
日本では、働かなくても食べられるだけの社会保障があれば、怠ける人が増えるという前提で制度が構築されている。失業給付や生活保護の受給に厳しい制限がついているのもそのせいである。政府は、国民をムチがないと働かない怠け者とみなしているのである。オランダのように、政府が国民を信頼していれば、失業者に手厚い生活保護をしても問題は起きないはずだ。先の例に見るように、失業給付で生活しながらボランティアで社会に貢献する人が出てきてもよいとオランダ政府は考えているのだ。(p138)
男性が育児休業を現実的に取得できるのは、夫婦とも正社員(公務員)として働き、夫の収入が3割になっても経済的にやっていける家庭に限られる。厚生労働省は庶民の経済事情をまったく考慮せずに、男性の育児休業率アップと言っているに違いない。(p143)
日本の育児休業制度は、夫婦とも正社員として働いていることを前提とした制度となっている。これでは、非正規化の進む現状に、まったく当てはまっていない。男性の育児休業率をアップさせるために、そして、育児休業の制度外で出産する女性をサポートするために、育児休業を雇用保険の枠組みから切り離し、ヨーロッパ型の普遍的な制度に作り替えることが必要となっている。(p144)
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週刊東洋経済のコラムの記事をまとめたもの、著者は、家族心理学(社会学)が専門で、パラサイトシングルなどの造語でも有名な人。
基本は連載記事なので、保守化するのかというよりも、連載時期(小泉郵政選挙~民主党政権誕生)の時の、施策と実際の状況のギャップを投げていることが多い。結局は、高度経済成長時代のモデルをどこかで維持してしまっているために、若者が夢をなくして生活することでしかできなくなってきている現状が描かれている。
何とかならないものかといろいろと考えますが、答えは出ておりません。
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婚活という言葉を産み出した社会学者。結論を出せない社会学の弱点は見えるものの指摘が的確。結局は保守化せざるを得ない社会環境になっているという点に納得。
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雑誌の連載をまとめたものなので、タイトルの内容をずっと貫いているわけではない。一つ一つのトピックは参考になるし、筆者の主張は強く伝わってきて分かりやすい。
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言いたいことはわからなくはないが、現状の社会問題を羅列しただけという印象は否めず、社会的不安がどのように「保守化」というイデオロギーに繋がるかまでは論理的に解説できていない感を覚える。不安の揺り戻しから来る安定の追求という一般的な説だけでは、現状の国内状況を説明するには弱い。
Posted by ブクログ
雑誌連載のまとめなので同じことを何回も言っているのが少しくどく感じられた。しかし、若者の問題は若者の態度の問題ではなく制度の機能不全という考え方には賛成する。オランダの失業した若者が「政府を信頼していますから」と言ったというのは、日本で育った私にとっては驚くことである。読むほどに希望が持てる社会を作るのは難しそうだと思ってしまう(という感じ方も希望が持てない若者を体現しているかもしれない)
Posted by ブクログ
人口減社会を甘く見てはいけない。政府はもっと危機感を持って、有効な対策を打ち出すべきだと感じた。今の軟弱で信頼の欠けた政府には正直何も期待できないが…
Posted by ブクログ
新卒主義、年功序列、転職市場の低流動性など若者の保守化はイカンとは言っても社会構造上日本の若者は保守化せざるをえないだろう、という思いは普段から思っていたのでこの本を読んでスッキリした。
結婚に関しても、非正規雇用者やフリーター、パートなどは若年層で顕著であり賃金の世代間格差が広がっている現状、若者の結婚がリスク化している感は否めない。結婚して生活レベルが下がるのならそりゃしないわけで。
けど閉塞感が高まっている社会でも、山田さんが言っているように努力が少しでも報われるような社会システムを目指さなければ希望を持てない若者が量産されてしまう。
Posted by ブクログ
連載コラムを集めたので仕方がありませんが、書名が問いかけになっているだけに、全体を通して解答が用意されているのかと思いました。実際は・・・コラムでした。
内容は充実していたのですが、出版社の売らんがため・・・の書名は顰蹙かも・・。
Posted by ブクログ
最近の若者たちは、まるで昭和の時代にもどったかのように保守化してきています。できるだけ安定した年功序列の職場がよかったり専業主婦がよかったり一時の起業家先進や海外へ出て行くなどすくなくなっているようです。それは、日本社会が敗者復活できない一回限りの卒業時の就職チャンスをなくすと永遠にアルバイト生活を続けなくてはいけないそんな事情があります。ますますこのような状況が続いていくと社会の活性がどんどん失われていくとかんじました。もてるものともたざるもの、既得権をてばなさないとか、団塊の世代の置きみやげでしょうか・・・しかし団塊ジュニアはつらいですね〜・・・
Posted by ブクログ
(K) ついつい「若者」を一つの大きな塊としてとらえ、その実体を知らないままに「若者」を語っている自分がいることに気づくことがある。加えて、一般受けの良さをクローズアップされたマスコミの情報に振り回されているのではないかという疑念を抱くこともある。「若者」を様々な切り口で分解して理解していくためには、様々な情報や意見をインプットしていかなければ始まらない。本書はそのような思いから手にした。
若者の保守化を、経済的な要因や、若者が若者らしくなくなったといった性格変化に求めるのではなく、社会の変化とそれに相応する社会制度の切り口から問題を掘り起こしている。希望とは、努力が報われるときに感じる感情であり、絶望は努力してもしなくても同じだと感じたときに生じる。利益配分構造の中に入ることができれば、努力は報われ、外れると報われない。このような格差が社会的な構造として作り出されていることが問題だと筆者は指摘している。
本書では明確な処方箋は示していないが、いろいろなデータが示されており、問題を分解する一つの切り口を得る情報源としては有益である。