隆慶一郎のレビュー一覧
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漫画「花の慶次」の原作。
それまでも前田慶次(作中では慶次郎)を描いた作品はあったものの、彼を有名にしたのはこの作品。そして漫画。
もともと資料は少ないので創作の部分が多い(朝鮮渡航は完全に創作、漫画では諸事情で琉球)が、その創作部分がこの作品を素晴らしいものにし、前田慶次の魅力を作り出した。
実際もそうだったらしいが、作中の前田慶次はさらに「傾奇者」。
女はもちろん、男までも惚れさせる。
「こんな男がいたら、もっと歴史に名を残すはず」と思うかもしれないが、「逆にこんな男だからこそ歴史に名を残さなかった」のかもしれない。
個人的には「皆朱の槍」のエピソードに唸り、ラストで直江兼続が -
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死を畏れぬ心の鍛錬とは、人を一体どこに辿り着かせるのか。葉隠が教える生き様。死が恐ろしくないならば、人は自暴自棄に生きてしまわないものか。そこに眠る信念を歴史小説が解き明かす。清々しく気持ちの良い、痛快な物語だ。それでいて葉隠の真髄が随所に散りばめられる傑作。今まで読んだ事が無かった事、本作を手に取った邂逅を嬉しく思う。
何より、作者の原体験。死は必定。戦時中の回想から始まるのである。徴兵検査を受けさせられ、兵役を課せられることになった作者は、その当時アルチュール・ランボーと中原中也が愛読書だった。ランボー作『地獄の季節』をどうしても戦場に持っていきたかった。考え抜いたあげく戦場でも許される -
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太平洋戦争で徴兵された若者が、ランボオの詩集を持ち込みたくて「葉隠」の中に潜ませて行く。活字に飢え、やむなく葉隠を読み出して、その魅力に引き込まれ、独自の解釈を展開していく。ここから時代は江戸初期に移る。鍋島藩(現在の佐賀)の葉隠武士3人衆が、藩のため、主君のために躍動する。その生き方は、武士の本分そのままであり、常に自分は死人(しびと)として生に執着せず、故に立場にも金にも執着しない。義や孝に反するものは許さないが、それが主君であっても、不法を諌めて切腹を賜るのが最上とするもの。なんとも爽やかで潔い生き方。家族も友人も、吉原の顔役すら、皆彼らに惹かれる。まっすぐなだけに、命懸けで付き従うもの