隆慶一郎のレビュー一覧

  • 影武者徳川家康(下)

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    二郎三郎はあくまで豊臣家との和平と、その後に招来する二大勢力によるパワーバランスを目指す。しかし史実は、豊臣が滅亡の道を歩む大坂冬の陣~夏の陣へと容赦なく進む。本作創出は『史疑徳川家康事蹟』が基となった大作だが、他の史料とも整合させる造りとなっている。もはや70歳を超し老齢の極みに達した二郎三郎には、秀忠、柳生の陰謀を完全に封じることができなくなった。そして最後に、「鯛の天ぷら」を食べたことが死因という逸話に、柳生毒殺を被せてきた!? 家康が影武者だったら……そんな物語を楽しませてもらった。

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    2021年12月15日
  • 影武者徳川家康(中)

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    史実や文献につなげるのには唸ってしまうけど、説明が入ると少し退屈に…
    そこを気持ちの良い傑物達のエピソードで補ってくれてる。
    家康優勢のままであるものの、下巻では時の経過が秀忠に味方していってしまうのかな…少しそわそわしている。

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    2021年09月15日
  • 新装版 柳生刺客状

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    ネタバレ

    久しぶりに読んだ隆慶一郎作品。
    柳生宗矩視点の影武者徳川家康はだいぶ前に読んだ同作のことを思い出して楽しかった。
    その他吉原にかかわる人々の生き様や剣術家の決闘など隆慶一郎ワールドが凝縮されていた。

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    2021年02月28日
  • 死ぬことと見つけたり(下)

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    武士道と云ふは死ぬことと見つけたり。葉隠の武士道思想を物語化した隆慶一郎未完の遺作だ。理想の死のあり方から逆に生を考える。死を毎朝シミュレーションし、その覚悟が真っ直ぐな生を作り出す。己の人生をどう生きるべきか。死と背中合せの状況は、まさか今日死ぬなんてあり得ないと思ってる現代の我々の生き方とは全く違う。死をネガティブなものと捉える人たちとも違う。死は日常的であり特別なものではないからこそ、美しい死に方に意味があるし死ぬことを恐れず命を賭けられる。死を厭う現代の我々が日本の歴史の中では異質であること、おそらく戦争が終わるまでこの感覚って日本人には当たり前にあったのでしょうね。

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    2021年01月23日
  • 影武者徳川家康(下)

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     徳川家康の影武者として生きた男の生涯を描く最終巻。
     男の目指す和平とは、徳川と豊臣の勢力が緊張状態にあるからこそ戦乱のない時代を迎えられるというもの。しかし、その状態が崩れれば、影武者徳川家康として生き、和平を実現しようとした男の夢は潰えることになる。しかし、時世の流れは無情にも徳川と豊臣の最終決戦「大坂の陣」へ向かってしまう。
     戦国の世に生きるとはどのようなものか、様々な人間の思惑が交差する時代の波に翻弄されながらもどこか余裕をもって物事にあたる人間の姿を描く。
     この下巻では「松平忠輝」がキーマンになってくる。この作者の作品には、この松平忠輝にフォーカスした作品もあり、いずれは読んで

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    2021年01月18日
  • 影武者徳川家康(中)

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     徳川家康の影武者として生きることになった男に待ち受けていた数奇な運命を描く長編小説の中巻。元来、自由人として生きたく専制君主を嫌っていたが、気が付くと自分がその専制君主になってしまっているという皮肉。そして、いつ狙われてもおかしくない生命。しかし、この男には一つの目標があった。それは関ヶ原合戦後の太平の世を築くこと。そのためには権力闘争に身を置き、自分の治世を実現するしかない。この男の生きざまに触れたかつての敵である島左近、箱根に結界をはる忍びである風魔小太郎の協力を得て、2代将軍秀忠、その指図で動く剣の達人集団裏柳生との権謀術数をめぐらせた闘争に進んでいく。

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    2021年01月15日
  • 影武者徳川家康(上)

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     江戸幕府を開いた徳川家康は、実は影武者であり、本物の家康は関ヶ原で殺されたのではないか。こんな大胆な発想から歴史を紐解いた意欲的な作品。読んでいくと「なるほど。こういう解釈もできるか」と思ってしまう場面が多々ある。総ページ数は約1600ページに渡る長編歴史エンタメ。本書はその上巻。関ヶ原合戦から徳川家康の征夷大将軍任命までを描く。
     内容は非常に興味深く面白いのだが、歴史ものであるがゆえに登場人物が多く、話題も数年の時を行ったり来たりするので、ある程度の予備知識は必要かもしれない。それだけに読むには体力がいる作品。ただ、それぞれの人物の思惑や考え方、駆け引きなどは読んでいて引き込まれるものが

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    2021年01月11日
  • 新装版 捨て童子・松平忠輝(下)

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    陰陽師と聞いて
    安倍晴明 ではなく
    芦屋道満が いいねぇ

    大山祇神社に奉納されている
    頼朝の鎧、弁慶の長刀を見て
    そのものよりも
    これを作った「名もなき匠」は
    だれだろう

    と思ってしまう人は
    ぜひ ご一読を

    いつものことながら
    たまらなく 面白く
    たまらなく 爽快に
    させてもらえる
    隆慶一郎さんです

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    2019年11月21日
  • 影武者徳川家康(中)

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    ネタバレ

    上巻の最後に征夷大将軍の地位を得た徳川家康こと、影武者世良田二郎三郎。
    この中巻では自らの命を守るため、堅固な砦となる駿府城を建てつつ、箱根山に拠点を持つ風魔衆をも引き込み、徐々に盤石の態勢を敷いていく。資金面では日本各地の金銀山を家康直轄とし、さらに南蛮貿易にも手を伸ばすなど、やることなすこと抜け目がない。さらに側室との間に子どもも次々と生まれ、「徳川家康」という実在の人物の実際の活動を下敷きにしており、うちいくつかは創作であるとは分かっているものの、これだけのことを60歳過ぎてから成したのか、と驚嘆せざるを得ない仕事ぶり。

    家康の影武者を主役に置いている関係上、対立軸として上巻で既に馬脚

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    2019年04月07日
  • かくれさと苦界行

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    徳川家康より与えられた「神君御免状」をめぐる裏柳生との争いに勝ち、松永誠一郎は色里・吉原の惣名主となった。
    だが、一度は敗れながら、なお執拗に御免状を狙う裏柳生の総帥・柳生義仙の邪剣が再び誠一郎に迫る。加えて吉原を潰すべく岡場所が各地に乱立し、さらに柳生の守護神・荒木又右衛門も江戸に現れた。
    ついに吉原と裏柳生前面対決の時が-。


    裏柳生と表柳生。柳生一門が抱える複雑な事情や、幕府閣僚のしつこい執念。
    そこに否応なく巻き込まれていく吉原と松永誠一郎。
    松永誠一郎の生き様や吉原の面々の優しさを、とても温かく感じます。
    出会い方が違えば、いい友となりえたかもしれない運命の皮肉さや、宿敵であるから

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    2019年03月29日
  • 時代小説の愉しみ

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    エッセイ「台風」が良い。いじめっ子論も面白い。また、非行の低年齢化に関して、「低年齢の男の子の恐ろしさは、簡単にそこに生命を張ってしまうところにある。自分しか見ていないからだ」とした後、「ここを抜け出るにはいわば男の美学の進化しかない。もっと高度のダンディーズムニ移行するしかない。ある日、自分の鏡に映った姿が見にくいと感じた瞬間に、非行は終わるのである。」とある。蓋し達見。また、「昭和初年のはやり歌は、歌詞といい曲といい退廃そのものである。その退廃しきった唄を、くすんだ軍服のむさい男たちが、飯盒の中子で酒を飲みながら合唱する切なさは今も私の胸底にある。」この文章も著者の資質を鮮やかに示す。

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    2019年03月06日
  • 一夢庵風流記

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    ネタバレ

    2度目のような気がするが、面白く読めた。史実に基づいている部分は少なく、大半がフィクションだと思われるが想像力は素晴らしい。

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    2019年03月04日
  • 影武者徳川家康(上)

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    面白い。
    設定が良い。本当にあったんじゃないかと思ってしまう。影武者の次郎三郎、忍びの六郎が魅力的。
    忍びの場面が素晴らしい。
    時代劇ドラマで観たい。

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    2019年03月16日
  • 影武者徳川家康(中)

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    ★秀忠が非常に悪人に描かれているので、実際どんな人だったのか知りたくなった。

    ★松平忠輝カッコいい。

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    2019年01月15日
  • レジェンド歴史時代小説 見知らぬ海へ

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    男の生き様を描かせば隆慶一郎に勝る作家をいないのではないか。向井正綱というあまり世間に知られていないが、男気溢れる水軍の長を主人公に持ってきたところがまた面白い。

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    2018年05月04日
  • 一夢庵風流記

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    ご存じ漫画『花の慶次』の原作小説。漫画もあまり読んだことはないが、漢気あふれる主人公の印象。

    実在するがきわめて歴史上の存在感の薄い人物は、いかようにも脚色しやすい。とはいえ、資料に忠実な面もある。時代劇にありがちな遊び人の世直し読み切りストーリーの連続だなと思っていたら、作者は「鬼平犯科帳」などで知られるテレビドラマ脚本家出身だった。

    最初面白かったのだが、唐入り(朝鮮出兵)あたりから、凄腕の刺客をやっつける→仲間入りのワンパターンで、主人公がひたすら無双すぎ、途中でいささか飽きてしまったのがやや残念かも。文章は平易で読みやすい。

    大河ドラマ「真田丸」で、北条攻めのとき氏直説得のため大

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    2018年04月28日
  • 吉原御免状

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    そこそこ 傀儡師とかの道々の輩が出てくるのであった。
     そんで以て、ノモス(仕切りとか国とか)がさういふ、前は好き放題やらせてくれたのを飲み込むほど強力になった頃、どうサーヴァイヴするか、みたいななんかで面白いと思ふのだが、うーん。

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    2018年03月04日
  • 一夢庵風流記

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    戦国末期、歴史の表舞台にはあまり立たなかったものの、天下の傾奇者として知られた男、前田慶次郎の一代記をテーマにした小説。昔ジャンプに連載していた「花の慶次」の原作ですね。

    さすが隆慶一郎と言うべきか、解説を上手く挟みながら読者をストーリーの中に誘っていき、魅力的なキャラクター(毎回味方サイドは良いチームになるような)とテンポの良い展開で、気付くと読み終わってましたというパターンでした。
    「影武者徳川家康」と比べると、舞台の大仕掛けさや重厚さでは一歩劣るものの、主人公の快活なキャラクターと突飛な行動で気軽に読める印象です。エンターテイメントとして読むならとても楽しい本。

    改めて映像化したら面

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    2018年02月04日
  • 影武者徳川家康(中)

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    上中下巻の超大作。
    中巻では、ついに征夷大将軍になった家康の影武者二郎三郎が、二代目将軍になる秀忠とパワーゲームを繰り広げます。小細工から大仕掛けまで、中にはクスッと笑えるようなモノもあって飽きさせません。
    話の筋としては大きな動きは無いものの、それでも一気読みできる面白さ。下巻が楽しみです。

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    2018年01月16日
  • 影武者徳川家康(下)

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    現実社会の中では、うまくいく筈がないとか、こんなことをやっている場合ではないとわかっていても、仕事としてやらなければならないという状況はいつでもある。

    先が見えない人々の中で、将来このままではダメになるとわかっていながら、自分のできる範囲内で、最大限努力し、事態の変化を待つということはいくらでもある。いや、そういう場合の方が大部分だろう。

    本書の主人公である徳川家康の影武者、世良田二郎三郎は、権力の頂点に立っているといえども、その点ではわれわれと同じである。
    豊臣家の滅亡と二郎三郎からの権力奪取を狙う二代目秀忠と、豊臣家復興の機をうかがう大坂方の間に立って、ひたすら平和と共存を図ろうとする

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    2017年09月16日