隆慶一郎のレビュー一覧
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どのような卑怯をも決して許さぬ社会、武士が武士たり得た社会、命など己が名誉に比ぶれば何の価値も持たなかった社会がかつてあった。江戸時代、佐賀鍋島藩である。佐賀鍋島藩の浪人、斎藤杢之助がこの物語の主人公である。
葉隠において「常住死身」(じょうじゅう・しにみ)という言葉は重要な概念である。いつでも死んでみせるという覚悟、それはたとえその死が犬死であっても構わないということともとれる。しかし、考えてみると犬死という言葉には価値観が含まれている。無駄な死、死に損という損得勘定、謂わば計算がそこにはある。しかし、葉隠のいう「常住死身」とはいざというときに死んでみせるという覚悟ではなくて、いつだって死 -
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佐賀鍋島の侍には3種類ある。
1、切腹して果てることを前提に行動する奴。
2、それに一生ついて行く奴。
3、主君に箴言を言って切腹するために出世する奴。
どのみち死狂いであった。
三河武士と双璧をなすめんどくさい侍たちの活躍を見ていると、本当の忠とは命を投げ出すものなのだと思わされる。熱い、ひたすらに熱い。
主君にずけずけと物を言う家風も、幕府が鍋島藩を潰そうとするなら江戸に火を放った上で一戦交えると豪語するいくさ人っぷりも大好きだが、一番好きなのは主人公の鍋島武士達が「何に」仕えているのか、という点。
誰のための、何のための「忠」。自分でも主君でも、藩でもない、彼らが仕えているのはもっと -
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上巻レビューの続きですよ。
この本を好きな理由ですが、まず主人公が単純明快でヒロイックなこと。
これはこの著書の描く主人公のパターンですが、自分の世界観がきっちりと
あって、それに従って即断即決即行動。このパターンが死ぬほど好きなのです。
わたしは火星が牡羊座にあるので、単純・明快・行動的という火の男をこよなく
愛しているのですね。過去につきあった男はすべて火の男です(どうでもいい)
そしてこの小説の主人公は「死人」です。毎朝イメージの中で死ぬ。
なので死を恐れない、という付加価値がついてくる。
この死人であることが、蠍座のわたしにはたまらないのですね。
蠍座は生と死を司り、オール・オ -
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常住坐臥、死と共に生きている葉隠武士。
時は江戸、鍋島藩に幕府の黒い陰謀が降り掛かる。
そんな中、戦国の世をいくさ人として過ごし、太平の世になってもその生き方を変えずにいる主人公。
その主人公が己の威信を守るために莫逆の友達と幕府老中との激闘を繰り広げます。
ただ現世利益を追い求め死ぬ間際になって自分の名前を後世に残すために名誉に走る醜い老人達が散見される今の時代。
そんな世の中を生きる私たちに、全てにおいて判断基準を己に求め、他人の評価や自分の栄達を顧みることなく、本当の意味で己の名を惜しみ、日々を死人として過ごしている主人公達はまさに清冽な風を送ってきます。
ただ、惜しむらくはこの