【感想・ネタバレ】一夢庵風流記のレビュー

あらすじ

戦国末期、天下の傾奇者(かぶきもの)として知られる男がいた。派手な格好と異様な振る舞いで人を驚かすのを愉しむ男、名は前田慶次郎という。巨躯巨漢で、一度合戦になるや、朱色の長槍を振り回し、敵陣に一人斬り込んでいく剛毅ないくさ人であり、当代一流の風流人でもあった。そして何より、自由を愛するさすらい人でもあった。故あって、妻子を置き旅に出た男の奔放苛烈な生き方を描く時代長編。

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一気に読んでしまった

通勤電車内で、ちまちま読もうと思ってたが、自宅に帰ってからも止まらず読みきってしまった。
ようするに面白い
花の慶次で充分だと思っていたが、漫画では表現しきれていない所がある事もわかった。
補完する意味でも読むべき
とはいえ、読み終えて感じたのは、原哲夫であればこそ、その魅力を引き出す事が出来たのだと理解した。

1
2020年02月06日

Posted by ブクログ

存在が謎ながら人気が高い前田慶次の生涯を端的な文章で描く歴史小説。というかこの小説が後々の前田慶次像となっている。風流人でありながら教養もありいくさもめっぽう強い。「傾奇者」という言葉が示すように生きたいように生きる姿は現代に生きる人たちに活力を与えてくれると思う。名シーン、名言のオンパレードで心がグッと熱くなる場面が飛び出してくる。周りを固める武将の造形もよく出来ている。生涯の友となる直江兼続や確執のあった前田家の造形は素晴らしく、利家との別れのシーンは絶品で兄弟とはかくあるものだなぁと思わせてくれる。

0
2025年03月12日

Posted by ブクログ

戦国時代の傾奇者としての人生は
読んでいて退屈が無く、最後まで読み続けられました。
一言でカッコイイと思える生き様は
読んでいてとてもその人物に惹かれるものでした。

0
2024年11月24日

Posted by ブクログ

とにかく すかっと させてもらえるのです。
なんとなく 気分がすぐれないなぁ
なんとなく やる気がでないなぁ
なんとなく やりきれないなぁ

隆慶一郎さんの「時代小説」は
まさにそんなときの 一服の清涼剤です

かなりお歳になってから執筆活動をされたので
遺された作品たちを繰り返し読んでは
ーやっぱり いいねぇ
と 思ってしまう素敵な作家さんです

0
2024年07月29日

Posted by ブクログ

隆慶一郎の代表作。前田慶次を発見し、読者に提供した功績はおおきい。かぶき者の慶次とまつの交わりが好きだ。

0
2022年05月14日

Posted by ブクログ

ずっと積読してた。パチンコとかアニメで活躍してるらしい。何となく読み始めた。ら、止まらない止まらない。

前田慶次郎、前田利家の義理の甥。色々あって、日本史至上最高のかぶき者。信長、秀吉、家康の時代に、やりたい放題。

優秀な馬と家来を引き連れ、自由に生きる、男の中の男。という感じ。

めちゃくちゃ面白かった。歴史に残らない人物を蘇らせる隆慶一郎の手腕に脱帽。

そして、手前の話で恐縮だが、自分は石田三成のような奴だと思った。

「石田三成は慶次郎とは正反対の男だ。あらゆる起り得る事態に智恵をふりしぼって対策を立てる。そのくせ事は必ずしも対策通りには起らない。そのなるとこの男は神を呪い、人を罵り、結局は自分を責める。よろず事に向う姿勢が派手派手しく、終った後も知る限りの人人に吹聴してやむことがない」

0
2021年10月25日

Posted by ブクログ

ご存知あの『花の慶次』原作。戦国時代末期、いくさ人、傾奇者として名を上げた前田慶次郎の痛快な生涯。

読んで本当にスッキリする作品。前田慶次郎の爽快な生涯。マンガの原作になるだけの「いくさ人」のなんともカッコイイ生き様が堪能できる。

隆慶一郎は結構固い書体なのだが、それを超えた慶次郎の魅力、テンポよく楽しめる。

これぞ名作。

0
2020年04月07日

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漫画「花の慶次」の原作となった作品。デビュー作に並ぶ大傑作。主人公の魅力が何よりも素晴らしい。一種のスーパーマンだが望んで求めることのできぬヒーロー像がここにある。

0
2017年10月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

豪胆さもありつつ、風流でもある
柔剛併せ持つといった魅力を持った人物として主人公を描いている作品

何度も読んでいる
面白い

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2014年06月01日

Posted by ブクログ

「花の慶次」の原作。

漫画の慶次のイメージと小説のそれが合っているのが、良かったです。漫画では、琉球に行っていましたが、こちらでは韓国なのも新鮮で良かった。

力が強いだけでなく、風流、そして、権力にあがなう。女性だけでなく、骨や捨丸と言った、闇の世界に生きる人も虜にしてしまう。そして、自分が認めた相手は最後まで信じ抜く。

「そもそも友とは何かを喋るものかね。」
言葉の重みが分かっている人は、無闇に喋らないのかもしれないし、それ以上に、一緒にいると言う事実を楽しんでいるのかもしれません。

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2014年05月12日

Posted by ブクログ

コミックで「花の慶次」というのを見た事はあるが、絵が嫌いで興味なかった。たまたま、その原作らしいと気づき読んでみたけど・・面白かった。前田慶次郎は実在の人物らしいが、ほとんど創作だろう。秀吉の天下取りから家康まで快男子の活躍として朝鮮も絡む。歴史人物を散らしながらも、陰険な悪役は出てこない。恋あり冒険ありの、痛快時代小説。もう亡くなっているけど、作品を追いかけてみます。

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2014年02月23日

Posted by ブクログ

すばらしい漢の生き様。風流を知る稀代の知識人でもあった前田慶次郎。漫画からはいりましたが、小説の方が、面白いかな。でも、あのキャラクターが脳内で暴れまくっていましたσ(^_^;)

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2013年10月16日

Posted by ブクログ

慶次郎の生き様もそうですが、彼をとりまく人々の魅力に溢れた小説だと思います。とにかく爽快。何度読んでも笑ったり泣いたり、良い意味で忙しいです。
この本を読むと、いつも"自分はどう生きたいのか"を考えさせられます。
行き詰まった時、哀しい時、何度でも読み返したい。
大好きな一冊。

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2019年01月16日

Posted by ブクログ

少年ジャンプの『花の慶次』の原作。掲載されていたのは90年代らしい。パチンコのシリーズにもなっている。それらで目にしたことはあったが、私はジャンプでも読まずパチンコもしない上に、正直あのリアルな画風が好みではなかった。

だが、そうした経緯とは関係なく、漫画になるだけあって漫画みたいに面白い。実在した武将で、前田利益(とします)。戦国時代末期に前田利家、上杉景勝に仕えた。性格が超然としていて、本書の中でも「万能タイプ」に描かれる。いわゆる、強くてカッコ良くて奇抜、何でもできる系主人公で、そこにカタルシスを感じるタイプのスカっと小説だ。ファッションも変わっていたらしく、その内容は小説でも漫画でも再現されている。

日本人の幕末のイメージが‟司馬遼太郎“によって作り上げられるように、前田利益のイメージもこの小説や漫画によって作られるという現象は面白い。歴史は常に新たな発見でその仮説を書き換えていくのだが、それと同じくらい、親しみやすい普及したイメージが市民権を得てしまう。例えば、「身の丈六尺五寸(197cm)の大柄の武士」なんていうのは作り話だし、正確も本小説で描かれるほど、爽やかであったかは微妙だ。

作中には直江兼続や豊臣秀吉も登場するが、史実には出てこない登場人物も多い。だが、それは単なる創作というより、物語を成立させるための“歴史的空白の補完”とも言える。一次史料が乏しい人物ほど、後世の作り手の想像力が奮うのだろう。それが歴史小説の面白いところでもある。

小説や漫画が作り出した「花の慶次像」は、歴史的な厳密さとは別次元で、“時代精神を可視化したアイコン”として成立する。歴史書が描ききれない価値観、当時の民衆が抱いたであろう英雄像を、一種の象徴として。そのイメージを現代の読者が継続するというのも感慨深い。

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2025年12月01日

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僕は、前田慶次郎と言えば、昔、時々やっていたパチンコ「花の慶次」を真っ先に思い浮かべる。そこに登場するキャラクターやエピソードが、この作品にも出てくるからだ。この作品は、前からずーと読みたかったものだ。やっと念願が叶って、とても嬉しい。

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2025年05月30日

Posted by ブクログ

 隆慶一郎さんにハマったきっかけとなる作品が、「死ぬこととみつけたり」だった。分厚い単行本2冊を読むのには、文庫本のように逐一ルビは振られておらず、また内容も「葉隠」に近いということもあり、史実との照らし合わせが含まれ、総じて難解な作品であった。ただその難解さ、読み進めなさがその物語自体の面白さを一層引き立たせていると感じ、私はそこに惹かれた。
 そして次に読んだ隆氏の作品がこの「一夢庵風流記」である。一読した感想としては、漫画を読んでいるような気分になった。というのは、「死ぬこととみつけたり」と比べ、日本語も読み易く、人間関係・相関関係共に至ってシンプル。ストーリーもバトルやロマンスなど、複雑では無く、直接的な描かれ方をしており、分かりやすかった。
 ただ、その分作品としての深淵さであったり奥深さなるものが、少し希薄であると個人的には感じてしまった。まあでも、このような単純明快で爽快な物語は、誰が読んでも止まらない面白さであるのは間違いない!

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2022年04月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ゲームか何かのキャラクターとしては知っていましたが、本人については何も知らずに読み始めました。
長身で長槍を振り回すと言えば前田利家。
同じ前田の血筋なのだろうとは思いましたが、まさかそこまでそりが合わないとは…。

これまでに読んできた前田利家は温厚で、篤実で、愛されキャラだったように思いますが、この作品においては器が小さくてで執念深くて、まつにすらちょっと軽んじられているところがあるくらいです。(まつは慶次郎が好きなのです。で、両想い!)

風流記というほど風流に傾いてはいませんが、漢籍を読み、歌や詩を作り、茶を嗜む慶次郎は確かにただの暴れん坊ではありません。
だからこそ、直江兼続とは莫逆の友として生涯友情をはぐくみ続けることもできたのでしょう。
何しろ兼続は兜の前立てに「愛」を描く人ですからね。

それにしても、秀吉の朝鮮出兵にあたり現地視察を命じられたりとか、家康の上杉攻めの際に味方を追いつめた最上義光の兵たちを、たった8人で追い散らしたりとか(味方の死者はゼロ)、マンガや小説のような出来事が実際に記録に残っているのですから、すごい人です。
目立ちたいから人目を引くような奇抜な格好をした形だけの傾奇者ではなく、したいからそうする。
人々の驚く顔を見て喜ぶ。
天衣無縫とはまさにこのことか、と思いましたが、いやちょっと待て、なんか新庄ビッグボスのような気もしてきたぞ。

編集者経験があると著者略歴を読んで知りましたが、だから小説っぽくないのかと腑に落ちました。
歴史小説の中では結構天の声として作者の主張が書かれることがありますが、この作品の天の声はそういうものとはちょっと違う気がします。
作品を俯瞰してみた場合、登場人物に語らせるには無理があるけれど大事な事項なのだから補足しておこうとでもいうような、作品との適度な距離を感じました。
それはもしかしたら小説家ではなく編集者の目だったのかもしれません。

作者が60歳をすぎてから作家デビューというのも驚きです。
「自分で自分に限界を作ってはいけない」ことの見本のような方ですね。

0
2022年03月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2度目のような気がするが、面白く読めた。史実に基づいている部分は少なく、大半がフィクションだと思われるが想像力は素晴らしい。

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2019年03月04日

Posted by ブクログ

ご存じ漫画『花の慶次』の原作小説。漫画もあまり読んだことはないが、漢気あふれる主人公の印象。

実在するがきわめて歴史上の存在感の薄い人物は、いかようにも脚色しやすい。とはいえ、資料に忠実な面もある。時代劇にありがちな遊び人の世直し読み切りストーリーの連続だなと思っていたら、作者は「鬼平犯科帳」などで知られるテレビドラマ脚本家出身だった。

最初面白かったのだが、唐入り(朝鮮出兵)あたりから、凄腕の刺客をやっつける→仲間入りのワンパターンで、主人公がひたすら無双すぎ、途中でいささか飽きてしまったのがやや残念かも。文章は平易で読みやすい。

大河ドラマ「真田丸」で、北条攻めのとき氏直説得のため大名が頭丸めたシーンあったが、これが元ネタだったのだろうか…。

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2018年04月28日

Posted by ブクログ

戦国末期、歴史の表舞台にはあまり立たなかったものの、天下の傾奇者として知られた男、前田慶次郎の一代記をテーマにした小説。昔ジャンプに連載していた「花の慶次」の原作ですね。

さすが隆慶一郎と言うべきか、解説を上手く挟みながら読者をストーリーの中に誘っていき、魅力的なキャラクター(毎回味方サイドは良いチームになるような)とテンポの良い展開で、気付くと読み終わってましたというパターンでした。
「影武者徳川家康」と比べると、舞台の大仕掛けさや重厚さでは一歩劣るものの、主人公の快活なキャラクターと突飛な行動で気軽に読める印象です。エンターテイメントとして読むならとても楽しい本。

改めて映像化したら面白いのでは…と思ったのですが、直近のポリティカル・コレクトネス的な時流の中ではいくらか魅力はスポイルされてしまいそうです。
全く架空の話として構成し直さないと、マンガ版の様に朝鮮行きが琉球行きに変わったりしそう。女性周りの行動も、直截的なものは上手くかわさないと難しいか。

まぁ、そんなコト言うだけ無粋ですので、面白い小説を楽しめるヨロコビを味わえば良いのかな!

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2018年02月04日

Posted by ブクログ

前田慶次郎の活躍を描く時代小説。

「北斗の拳」で有名な原哲夫の「花の慶次」の原作としても有名。

捨丸、骨、金悟洞といった、最初は主人公慶次郎の命を狙うものの、その魅力に負けて、いつのまにか付き従うことになるサブキャラクターたちが秀逸。

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2017年09月09日

Posted by ブクログ

熱い!!
日本男児ならこうありたい!と思うような本だと思う!!
要は人。義に対しては義。真実を真摯に考え、自分が犠牲にならずにやり遂げる。まさに仕事人(いくさ人)!現在との違いはあるが人に対する気遣いと己の思っている事を全うしたいと思う。言葉を観ず、人を観れば自ずとわかってく!まさにそのとうりだと思う。
自分の技術や知識が凄い、前より収入が挙がって儲けたから勝ち組...前田慶次にぶち殺されますな!そして「そんなものは永遠に続かないんだと...」かなりの金儲けをした5人のガン患者の言葉も思い出す...

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2017年01月23日

Posted by ブクログ

夫にとっては花の慶次、
私には壮さん。

原作はだいぶおじさんのようですが(笑)、かっこいいことには変わりなし!

まつ、もうちょっと出て欲しかったな。

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2014年09月01日

Posted by ブクログ

20代・30代前半に読んでいたら絶対に影響されたな(笑)。
一人の男の生き様を生き生きと描いた素晴らしい一冊です。
まあ、近くにこんな男が居たら少し迷惑かも。

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2013年12月16日

Posted by ブクログ

解説で秋山氏が書いていることに同感。つまり、冒頭から、自分好みで、この小説は面白いだろうと予感していたけれど、期待が裏切られなかった!慶次郎の生き様が素晴らしい、かっこいい。友情のありかた、描き方が好き。理想像である。

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2013年08月01日

Posted by ブクログ

作者の「こういう男をかっこいいっていうんだよ!」という声が聞こえそうな作品。歴史小説、というより戦国ロマンだなあと思いました。
前半の利家や秀吉とのエピソードや終盤の会津でのシーンなど、伝承に基づいて、ある意味作者が縛られて書いた部分こそ、命がけの逆風の中で悠々と傾く慶次郎がかっこよく、逆に自由に想像だけで書いたと思われる朝鮮半島での場面は、無敵のスーパーマンになりすぎてかっこよさが半減していたのは皮肉でしたが、全体としてはとても面白かったです。

この作品の慶次郎は、女性から見てもかっこいいですが、たぶんむしろ男が惚れる男、ってやつなんでしょうね。
慶次郎の力量のない慶次郎気どりほど性質の悪いものもないし、たぶん乱世だからこそかっこいいともいえる生き方なので、フツーの男性にはあんまり真似してほしくないですが。

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2019年01月16日

Posted by ブクログ

小説家としてわずか五年の活動期間、酒好きが祟って肝硬変により66歳で死去。
この作品(作者)の特徴は、数少ない遺された資料をもとに作者の想像力を最大限拡げた活劇ストーリー性と場面が簡単にイメージ出来る描写力にある。(それもそのはず、元々映画やテレビドラマの脚本家でも著名でした)
想像(創造)力が発揮された例として、例えば歴史上、信長は敵が降伏しても一族根絶やしにする残虐さに比較して秀吉は好色というキャラ付けがされている。秀吉が敵方の娘を人質として差し出させるという好色の裏で、何千人もの男女の命が救われたという事実を登場人物にこう語らせる。「だが、女一人で一国が救えるのならやすいことではないか。全国の大名にそう思わせることができれば、わが君の好色も悪いものではない。少なくとも、無用のいくさが避けられる」(P66)
秀吉の好色さが敵を許すための方便であり口実だったのではないかという説は面白い。確かに、秀吉は日本人が奴隷として海外に売られていた事実に激怒し人身売買を禁止した史実も残っています。人が好きでなければ好色にもなりえません。

本作は「花の慶次」にてマンガ化もされた様です。

隆 慶一郎(1923年〈大正12年〉9月30日- 1989年〈平成元年〉11月4日)は、日本の脚本家、小説家(時代小説作家)。本名は池田 一朗。本名で脚本、隆慶一郎のペンネームで小説を執筆していた。
1984年、『週刊新潮』で小説家として第1作『吉原御免状』を連載する。隆慶一郎は、この時より名乗った筆名である。小説家時代は時代小説を中心に執筆した。代表作として『吉原御免状』、『影武者徳川家康』、『一夢庵風流記』、『捨て童子・松平忠輝』が挙げられる。長らく脚本家として活動しており、小説家生活に入ったのが還暦を過ぎてからと遅く、小説家としては実働わずか5年だった。また急逝したこともあって、未完の作品、構想だけが編集者に語られるなどして残った作品も少なくない。ちなみに、還暦を過ぎるまで小説を手掛けなかった理由については、かつて師事した小林秀雄(1983年逝去)が存命の間は、とても怖くて小説は書けないと思っていたからという旨のことを語っている。

以下、作品情報です。
★『吉原御免状』(1986年、新潮社) のち新潮文庫
同タイトルで舞台化。宮本武蔵によって育てられた後水尾天皇の落胤・松永誠一郎は、自由の民・傀儡子によって営まれる色里・吉原を守り、神君・徳川家康から下された吉原御免状を狙う老中酒井忠清とその手先裏柳生との間で死闘を繰り広げる。第95回直木賞候補作。
★『鬼麿斬人剣』(1987年、新潮社) のち文庫
『刀工剣豪伝・鬼麿一番勝負』の題で連載された。同タイトルでテレビドラマ化。内山まもるにより漫画化(単行本未刊行)。名刀工・源清麿が旅先で遺した数打ちの駄剣を折り、師匠の名を守ろうとする弟子・鬼麿の前に、清麿を恨む伊賀同心の一味が立ちはだかる。
★『かくれさと苦界行』(1987年、新潮社) のち文庫
『吉原御免状』の続編。後水尾天皇との再会を果たした松永誠一郎と吉原の傀儡子の民に、またしても裏柳生の手が迫る。
★『柳生非情剣』(1988年、講談社) のち講談社文庫
徳川家将軍指南役柳生家の六世代にわたって、柳生家の目から見た徳川家を描く連作短編集。第101回直木賞候補作。
「慶安御前試合・柳生連也斎」「柳枝の剣・柳生友矩」「ぼうふらの剣・柳生宗冬」「柳生の鬼・柳生十兵衛」「柳生跛行の剣・柳生新次郎」「逆風の太刀・柳生五郎右衛門」の短編6編収録。
「柳枝の剣・柳生友矩」を余湖裕輝らが『柳生非情剣 SAMON』のタイトルで漫画化。青春アドベンチャーでラジオドラマ化。
★『一夢庵風流記』(1989年、読売新聞社) のち新潮文庫、集英社文庫
数度舞台化。原哲夫らにより『花の慶次 ―雲のかなたに―』として漫画化。
★『影武者徳川家康』(1989年、新潮社) のち文庫
関ヶ原で死んだ徳川家康の影武者であった世良田二郎三郎が、徳川家繁栄のために豊臣秀頼を謀殺しようとする秀忠に対抗するべく、甲斐の忍びの六郎や島左近、風魔忍者衆と協力し歴史の暗部で戦う。同タイトルでテレビドラマ化。原哲夫らにより漫画化。
★『捨て童子・松平忠輝』(1989年 - 90年、講談社) のち文庫
主人公は徳川家康の子松平忠輝。生まれながらにして大きな体を持ち、鬼っ子と恐れられ、武術、水術、音楽、忍術などすべてに天才的な能力を持ち、異能の人と呼ばれた忠輝の前半生を描く。横山光輝により同タイトルで漫画化。
2003年に『野風の笛』のタイトルで宝塚歌劇団・花組が舞台化。
本作以前に、隆自身が本名の池田一朗名義で原案・脚本を手掛けた『野風の笛 鬼の剣 松平忠輝・天下を斬る!』が制作・放送されており、本作はテレビドラマ版を基に新たな解釈を加えた上で執筆したのではないかとする向きもある。
★『柳生刺客状』(1990年、講談社) のち文庫
「柳生刺客状」「張りの吉原」「狼の眼」「銚子湊慕情」「死出の雪」の短編5編収録。
★『死ぬことと見つけたり』(1990年、新潮社) のち文庫(未完作)
著者が第二次世界大戦に徴収される際、陸軍で推薦されていた『葉隠』の本の中に著者のお気に入りのフランス文学を挟み込んで持ち込み、『葉隠』に見出した佐賀鍋島藩浪人の主人公の斉藤杢之助を描いた書。
★『花と火の帝』(1990年、日本経済新聞社) のち講談社文庫、日経文芸文庫(未完作)
余儀なく徳川秀忠の息女和子を皇后にした後水尾天皇の御世、天皇家を守るため徳川幕府に挑む八瀬童子・岩介の戦いを描く。
★『かぶいて候』(1990年、実業之日本社)のち集英社文庫
表題作「かぶいて候」以外に「異説 猿ケ辻の変」、エッセイ「わが幻の吉原」、対談「日本史逆転再逆転」などの作品集。
★『駆込寺蔭始末』(1990年、光文社) のち同文庫
江戸時代、既婚の女性から離婚を申し出ることができず唯一離婚する方法が鎌倉東慶寺に駆け込むことだけだった。その東慶寺の住持の玉淵尼を守るため、公卿の身を捨てた御所忍びの棟梁である麿の活躍を描く連作短編集。
★『見知らぬ海へ』(1990年、講談社) のち文庫(未完作)
武田勝頼の下にあった向井水軍の嗣子向井正綱が生き延び水軍を組織し、後に徳川家康の水軍に編入され、水軍の長になり活躍する姿を描く。
★『風の呪殺陣』(1990年、徳間書店) のち徳間文庫
戦国時代比叡山の修行僧・昇運が信長の比叡山焼き討ちを生き延び、信長を呪い殺そうという設定。著者が赤山禅院の叡南覚照大阿闍梨に「仏教が人を殺すか」と一喝され、改稿する予定だったが、著者の急逝によりそのまま発刊された。(Wikipedia)

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2024年08月09日

Posted by ブクログ

天下の傾奇者前田慶次郎の一代記。慶次郎の傾奇くスケールの大きいこと!身近にいたら理解できない奴なのだが、脇役の描き方含めて隆慶一郎は上手い。しかし前田慶次郎、共感しづらい男だ

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2022年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今年から新たに本を読むことを目標にした。
まずは、人生初のこの作品から。ご存知の方もいるでしょうジャンプにて連載されていた「花の慶次」の原作です。
小学校の時に読んで漢字が分からず断念し、中学生の時に、影武者徳川家康と一緒に読みました。

花の慶次と色々と内容は違いますが、慶次のキャラクターはそこまで違和感はなく、むしろ少年漫画的な描写はないのでより魅力的に感じました。

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2018年01月01日

Posted by ブクログ

宝塚雪組壮一帆さんの退団公演の原作である。観劇前の予習として読んだ。戦国時代の武将であり、時代随一のかぶき者、前田慶次の一代記。
名前だけは聞いたことがあったものの、ほぼ何の知識もないまま読み始めたのだが、まるで少年漫画の主人公のようであり、戦国時代版桃太郎のようでもある前田慶次の人物像が、とにかく魅力的だった。豪放磊落、文武両道に秀で、常識に縛られずに真を見抜く目と自由さがあり、友情に篤く、強くて、熱い。同時に可愛げがあって、おおらかで、男女も身分も国籍も問わずに優しい。彼に傾倒する人間たちが周りに集まっていく様はワクワクするし、彼らがが慶次に惹かれる気持ちがよく理解できる。波乱万丈の彼の生き様が面白かったし、胸がすく思いがした。
当時も、現代に至る時代時代でも、多くの日本人がこういう人間を愛してきたのだと思うと、日本人の感覚って素敵だなと思える。
宝塚の舞台でどのように描かれているのかも、益々楽しみになった。

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2014年06月22日

Posted by ブクログ

次の雪組公演の原作本なので、読んでみました。隆慶一郎の本を読むのは、同じく宝塚の舞台「野風の笛」の原作だった「捨て童子」以来かな? 話は読みやすいし、前田慶次も魅力的だけど、まっつの出番あるの?ってくらい、書き込み少ないんですけど… どうしてくれるの!

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2014年05月04日

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