古賀史健のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
抜群に読みやすくてわかりやすい「日記のすすめ」。
1章で出てきた、「書くことは考えること」であり、「考えるとは『答え』を出そうとすること」だというヤドカリおじさんの言葉が自分の中でとても納得感があり、スッと腑に落ちました。
自分の普段の生活を顧みても、仕事や雑事に忙しく、余暇はSNSのショート動画を見ているうちにあっという間に過ぎてしまって、自分自身とじっくり向き合い、考える時間って全然とれていないなぁと思います。
自分をもっと知り、好きになって、人生を堂々と前向きに歩んでいくために、日記を書くことは確かにとてもいい方法で、自分も書いてみようと素直に思える内容でした。
あと、舞台が海の中で登場人物たちが海洋生物なので、ファンタジックでとっつきやすく、読み心地が深刻にならないのもいいなと。
頭の中でタコジローたちが暮らす海の中のきれいな町を想像しながら、また、『走れメロス』が『泳げメロス』だったり、おやつがこんぶチップスやうみぶどう味のアイスだったりの小ネタにもクスッとしながら、楽しく読むことができました。
特にタコジローと同じように悩んでいる中学生に、ぜひ読んでもらいたい1冊です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【普通であることの勇気】
・勝って自分の力を証明したい、注目を集めて特別な存在になりたいという欲求の裏には、普通の自分を受け入れられない気持ちがある。「普通」を「無能」と同一視せず、特別でなくても価値がある自分を認めることが必要だと感じた。
【人生は山登りではなく、ダンスや旅】
・人生を山頂へ到達するための登山と捉えると、目的を達成するまでの大半が「途上」になってしまう。しかし人生は、今この瞬間を踊り、ふと振り返ったときに遠くまで来たと気づくようなものでもある。旅も目的地だけでなく、そこへ向かう道中のすべてが旅である。
【会計士になるまでの時間も人生】
・公認会計士という目的地には、早く効率的に到達した方がよいと思いがちだが、合格までの日々が不完全な時間になるわけではない。学び、悩み、少しずつ理解できるようになる過程も、その時点で一つの結果である。合格だけを見て今を犠牲にせず、道中そのものを味わいたい。
【所有ではなく使用の心理学】
・重要なのは、何を与えられたかではなく、与えられたものをどう使うか。大柄で屈強な人には憧れるが、威圧感を与えることもある。一方、自分の穏やかさは人をくつろがせる力として使えるかもしれない。持っていないものを嘆くより、今ある特徴の使い道を考えたい。
【他者との競争から降りる】
・健全な劣等感は、他者との比較ではなく、理想の自分との比較から生まれる。他者との競争を続ける限り、負ける不安から休まる暇がなく、周囲を敵として見るようになる。人間関係を優劣のある縦の関係ではなく、対等な横の関係として捉えたい。
【自己への執着から、他者への関心へ】
・自分がどう見られるか、勝っているか、特別であるかばかりを考えると、関心が自己の内側に閉じてしまう。自分の価値を証明することより、相手に何ができるかへ意識を向けたい。自分を大きく見せることではなく、人を安心させたり、くつろがせたりすることも立派な貢献だと思う。
【経験ではなく、与えた意味が自分を決める】
・人は過去の経験そのものに決定されるのではなく、その経験へどのような意味を与え、何の目的に使っているかによって行動を選んでいる。自分を変えたいときは、今の行動を否定する前に「この行動は何を守り、何を実現しているのか」を分析したい。変わらないことで、まだ何者にでもなれるという「可能性」を守っている場合もある。
【嫌われる勇気との距離感】
・自分の生き方を貫くには、他者から承認されない、あるいは嫌われる可能性というコストを引き受ける必要がある。ただし、他者評価を一切無視するのではなく、大切な人間関係との両立は考えたい。誰にでも好かれることを目指さず、それでも尊重すべき相手は大切にする、という距離感が自分には合いそうだ。
【怒りも目的のための手段】
・怒りは抑えられない感情ではなく、相手を動かすために持ち出している手段と捉えられる。目的を確認すれば、怒りではなく論理の言葉で伝える選択肢も見えてくる。 -
Posted by ブクログ
著者は「嫌われる勇気」で知られるベストセラー作家。中身は小説とノウハウの間をいくような作品で、彼の手によって読者は、「日記書きてー!」となるのだ。
本作の舞台は海、主人公はタコのタコジロー。タコジローは引っ込み思案で、その性格ゆえクラスメイトからいじめに近いイジリを受けている。そんなある日、タコジローの通う学校で体育大会が開催される時、タコジローはクラスメイトの悪ノリで選手宣誓を任される。憂鬱な気持ちのタコジローは学校をサボるようになってしまう。そんなある日、タコジローは公園で、ヤドカリのおじさんと出会う。ヤドカリのおじさんは自己嫌悪でいっぱいのタコジローに「自分との人間関係の築き方」をゆっくりと語る、という話。中高生向けに書かれたというこの本は、大人にも響く内容が非常に読みやすく書かれていて、読んでいて「心地よい」という感情を抱いた数少ない本の一つだった。 -
Posted by ブクログ
あらすじを読まずタイトルだけでエッセイ本だと思って読み始めたら、タコジローとヤドカリおじさんの対話を通して「書くこと」「考えること」を描く寓話でした。
特に心に残ったのは、「書くことは、考えること」という話です。私はジャーナリングが苦手で、なかなか続きません。書く作業そのものが面倒なのだと思っていましたが、本当は「考えること」は大変なことなのだ、と言われて妙に救われました。
けれど、考えることを放棄すると、誰かが用意した「わかりやすい答え」に飛びついてしまう。面倒でも、自分のことは自分で考えなくてはいけないのだと思わされます。
「答えを出さない、答えを決めない」ことで可能性を残しておきたくなる、という話も痛かったです。決められずにいる苦しさはあるけれど、その状態にいれば、まだどちらにも進める。それはある意味、真剣に考えて決断することから逃げている状態でもあるのかもしれません。
「みんなと一緒にいると、自分ではいられなくなる」という言葉からは、平野啓一郎さんの『私とは何か――「個人」から「分人」へ』も思い出しました。相手によって違う顔を持つこと自体は自然でも、いろいろな人の中にいるうちに自分の軸が見えなくなることがあります。だからこそ、ひとりになって自分に戻る時間も必要なのだと思います。
「言葉の暴力はコスパがいい」という表現も印象的でした。簡単に使えて、その場では証拠すら残らないこともある。でも、受け取った側のやわらかいところには長く残ってしまう。言葉を使う側として忘れたくない感覚です。
ヤドカリおじさんの言葉は、どれも優しいのに激痛を伴いました。見たくない現実や、考えたくないことを、一つひとつ丁寧に言葉にして差し出されるような本です。
休憩しながらでも、考えることから逃げないこと。
そして、言葉をちゃんと自分の味方にすること。
日記を書くための具体的なヒントもあり、今度は実践する側として、この本の言葉を思い出したいです。