石原千秋のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレすべてを理解できたとは言えないが、ふだん何気なく読んでいる小説について、単に話の筋を追うだけではたどり着けない部分について教えてもらった。
引用されている小説の言葉の意味を探り細かく分解して、登場人物と語り手と読者の立場を明らかにして読むことで、小説の文章がすっきりとした印象になった。新たな視点について気付かされることもあり、とても有意義だった。
歴史の流れ、時代の変化、学問の進み、人々の興味関心などさまざまなものが響き合って現在につながっているのだと思えた。平易な言葉や説明で本書が書かれていることに感謝したい。ワクワクする読書体験だった。今後読者として小説に接する際に、読み方の広がりを感じら -
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Posted by ブクログ
漱石の主要な作品を取り上げて、二人が「読み」を深めていくのだけど、めちゃくちゃ面白い。
テキストの時代背景を知ることと知らないことでは、こんなに深め方に差が出るのか、と自分の浅さに恥ずかしくもなった。
漱石が、世の中に起きていることを、ほぼリアルタイムに虚構化し、またそこに予見を加えていく。
それを新聞小説として、読者が時事と絡めながら読み解いていくという構造に凄みを感じた。
家同士の繋がりを保つ「好きではない」相手との結婚に、自由恋愛が入り込んでいく過程。
女性が、男性の心を上手くコントロールするという、対等にわたる一つの武器を手に入れたこと。
そして、女性が男性を「読んで」きたことと同 -
Posted by ブクログ
小説の誕生と、読書という文化、そして読者の位置付けと、面白すぎて頭の中がまだ整理しきれていない。
夏目漱石の抱えた主題は、果たして近代的自我の苦悩か?という所から、自我とは何かということについて考えていく。
結局、自我なんてものはない、のか。
それは、ある種のエゴなのか。
はたまた、玉葱の皮の一つ一つ、自分の中に内在する多様な仮面なのか。
一方で、個としての自分は、共同体に位置付けられる存在でもある。
大衆とは何か。
イデオロギーによって、言葉によって、作者は、読書は、方向性を持たされている。
しかし、そのことは、その時代に亘る共通意識を見えやすくしたのかもしれない。
科学の信奉と、リア -
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Posted by ブクログ
批評とは敬意を伴った行為、と小林秀雄が言っていたような気がする。
村上春樹の作品の中から、あら探しをすることも意味のない行為ではないが、なぜ自分がこうも惹かれるのか、ということに、一つの枠組みを与えてくれたことは大きかった。
村上春樹は分からない、という。私も言語化しにくい。そこが物語であり、文学の醍醐味でもあると思う。何かのメッセージととらえた瞬間に、何かがこぼれていくからだ。
しかし、ホモソーシャルな価値観ですくいとれる部分が多い村上春樹の作品の中で、直子が自分の責任として自殺する、という解釈に生きることの本源を感じたのは私だけではないだろう。哀しみの中に、死の中に、生がある。 -
Posted by ブクログ
国語の解法は「道徳」であるという指摘はみんなが何とは無しに感じ続けていたが言葉に出来なかったことなんじゃなかろうか。
内容もさることながら、文章に適度に毒が利いていて読みやすい。
国語が分かる人=「道徳的視点・枠組みから文章が読める人」という視点は、国語力と読書力・読解力を安易に結び付けようとする最近の流れに対して、良い牽制球だと思われる。
突っ込み所があるとしたら、「根拠」の部分かなぁ。言っている事は正しい「気がする」が、それを裏付けるような確固たる証拠や用心深さが見られない。徹底的にやる気なら、もっとやれるはずである。
とは言え、攻撃的な姿勢に全体的に好感が持てる本です。