石原千秋のレビュー一覧
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漱石が彼の作品を誰に向けて書いたのか、
という疑問を当時の社会制度や一般国民の東大卒に対するイメージ、
更に文壇で流行している文学の手法や主義などのデータをもとに
作品を分析し解明していく。
扱われている作品は主に前期三部作と後期三部作。
それに『虞美人草』と『我輩は猫である』も扱われている。
誰に向けて、という疑問には、主に三つの答えがあって、
一つは漱石の門下生や文壇といった、「顔の見える読者」に対して、
二つ目は朝日新聞に勤めていた漱石が新聞社から言われていたであろう
朝日新聞を読む、当時としては上流階級の人々、「何となく顔の見える読者」に対し、
三つ目にはそれ以外の、未来の読者でもあり -
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910
ケータイ小説は読んだことはなかったけど、この機会に書籍化されたケータイ小説を読んで論じてみました、という本。
ケータイ小説は文学でない、という言われ方をするし、文壇からは無視される存在だけど、こういう形をとっているから、もうこれは文学だという立場でスタート。
さらに、ケータイはケータイで読まなくてはならないという田中久美子説も否定。
有名どころのケータイ小説『恋空』『DeepLove』『赤い糸』をストーリーを追って、その分析をしてくれてますが・・・
私の感想としては、そもそも基本の部分で違うような気がしてしまう。ケータイで読んでこそケータイ小説、というのは、読み方としてもそうだけ -
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漱石研究の第一人者が、文学テクスト論を駆使して、ケータイ小説の構造を読み解いた本です。取り上げられている作品は、Yoshi『Deep Love』、Chaco『天使がくれたもの』、美嘉『恋空』、メイ『赤い糸』の4作品です。
デリダの「誤配」や「ホモソーシャル」の問題といった分析装置が駆使されており、ロラン・バルトによって「作者の死」が宣告された文学シーンの中で、ケータイ小説の「テクスト」が占める位置価を測ろうとした試みとして読みました。
著者は、ケータイ小説が記号化されたアイテムを並べているにすぎず、「リアリティ」が希薄であることを指摘するとともに、それがいかに荒唐無稽に見えようとも実話に基 -
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小学校、中学校の数社の国語教科書を分析し、「国語教科書こそが内面の共同体を創る装置」として機能していることを鋭く分析した本。それぞれの教材がどのような意図で採録されているのか、どのような読みを規定してしまっているのか、を解説している。生徒からは見えない形で道徳教育をしてしまっていることが問題であると指摘している。
確かにみんながみんなで同じような話を読まされて同じような解釈を求められる点で、日本人としての「正しい」価値観の共有、というものが国語教育の中でも成されている、ということが言えると思う。特に小学校の動物出現率の多さ、さらに動物を擬人化する教材の多さ、という指摘は面白いし、他国に比べ -
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著者の前著である『国語教科書の思想』(ちくま新書)の続編。前著から4年を経て、ふたたび小学校、中学校の国語教科書を題材に、そこでおこなわれている「道徳教育」のありようを分析しています。
著者の立場は、基本的には前著と同様だと言ってよいと思います。ただ本書の巻末には、前著に対する批判に答えた「『国語教科書の思想』その後」というタイトルの章が置かれています。この中で著者は、国語教育が「道徳教育」になっているという主張に対して寄せられた、「自分は子供の頃からそれぐらいのことはわかっていて、後ろ向いて舌を出しながら先生の気に入ることを書いていただけだ」という意見を紹介しています。その上で、「後ろ向い -
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小学校や中学校で使われる国語の教科書にテクスト分析の手法を適用することで、そこに働いている権力のありようを解明する試みです。
ただし本書は、「学校」という空間の権力分析をおこなう理論的著作ではなく、もっと論争的な意図を持って書かれた本というべきでしょう。イデオロギー装置としての現代の国語教育に対して、著者ははっきりと反対の態度を表明し、あるべき国語教育について積極的に「提言」をおこないます。「あとがき」によれば、「道徳教育で押さえ込むのをやめて、「批評」活動を通して「個性」を育てる方向へシフト・チェンジしなければ、日本はもう世界で生き残れないのではないだろうか」という思いが本書を書かせたとい -
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第1部「秘伝人生論的論文執筆法」は、論文、レポートの書き方についての解説です。
第2部「線を引くこと―たった一つの方法」では、論文を書くことは思考によって文化・精神の領域に分割線を引くことだという考えが紹介されており、そうした考えに基づいて7つの論考を著者とともに読み解く実践編と呼べるような内容になっています。
本書では、文学や社会学系の論文、レポートが念頭に置かれており、カルチュラル・スタディーズが隆盛している研究状況を踏まえつつ、既存の枠組みに沿って事実を並べるだけではなく、新しい発想を提示するような論文、レポートをめざすべきだという著者の信念が語られます。
「あとがき」に、著者たち -
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文系(特に文学系)大学生に向けた、論文執筆法体得の足掛かりとして書かれた一冊。
全ての表現は思想であるという文中の言葉どおり、思想・人間性の滲み出た分かりやすくも嫌らしい文体が印象的。
書中の記述とは関係ないが、批判的読みを身につける訓練として、嫌いな人の本を読むというのは効果的だなと感じた。
前半は、タイトルの決め方や段落の変え方など基本的な論文の「型」の話から、文筆家として生きるための話など幅広い内容。
いわゆる知識人的な人の本にありがちな、「タイトルと内容が一致していない」という問題も一部見られるが許容範囲。
後半の実例を挙げて解説するパートでは、論文があらゆる事象・思想に「線を引く」