あらすじ
主人公の「僕」たちは、何を探し続けているのか――。小説に隠された「謎」を追い、ムラカミ作品の新しい魅力を探る。『ノルウェイの森』他4作の画期的読み方。
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批評とは敬意を伴った行為、と小林秀雄が言っていたような気がする。
村上春樹の作品の中から、あら探しをすることも意味のない行為ではないが、なぜ自分がこうも惹かれるのか、ということに、一つの枠組みを与えてくれたことは大きかった。
村上春樹は分からない、という。私も言語化しにくい。そこが物語であり、文学の醍醐味でもあると思う。何かのメッセージととらえた瞬間に、何かがこぼれていくからだ。
しかし、ホモソーシャルな価値観ですくいとれる部分が多い村上春樹の作品の中で、直子が自分の責任として自殺する、という解釈に生きることの本源を感じたのは私だけではないだろう。哀しみの中に、死の中に、生がある。
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村上春樹も石原千秋も好きではなかったが、この2つが合わさると天才が生まれることがわかった。
“作者は一番書きたいことを隠して作品にする”。謎が多い春樹の作品を見事にテクスト論を用いて解いている。
春樹の作品を読んだ後にこの本を読めば、“目から鱗”になること間違いないっ!!
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村上春樹の解釈本。村上春樹という作家はあとがきや解説を全く書かない人なので解釈の仕方は個々に任されている感が強い。解釈の一部としてとてもおもしろい。長編小説ほとんど読んでいる人でないと楽しめない本。
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芯をえぐる論点は主にふたつ。
1、物語の神話化……一番書きたいことを隠して書く……信頼できない語り手……かつての自分の作品を作品内に埋め込む自己神話化を創作のエンジンにしている。神話の誕生、神話殺し、神話の再生という3部作。
2、ホモソーシャル社会……女をハンティングしたり遣り取りしたりして男同士の絆を確かめ合う。鼠殺し。
テクストからしか根拠を拾わないが、作品を縦断することで、作者の私的経験がほの見える。
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テンポ良く感じるのは講義を文章に起こしたものがもとになっているかららしい。
男性間で女性をやり取りする「ホモソーシャル」、ノルウェイのワタナベは大人になりきれていなくて直子はワタナベと寝たときに大人になったのだ、というところがおもしろかった。
他にも興味深い話がいろいろあったし無駄な引用も少なかったのでなかなか中身の詰まった本だと思う。
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村上春樹の著作を通し、読者に新しい読み方を提示し、またその世界をひろげてくれる本。
小説を読みそこから意味のある事を取り出すのに、こんなにも様々な知識が必要で、また細部にまで意味がある事に驚かされる。
論理構成についてはたまに強引さや疑問を感じることもあるが、だからといってこの本の魅力が下がる訳ではないだろう。肝心なのは、読者の小説への視点を豊かにしてくれることだ。
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今まで村上春樹の小説がどうもしっくり来ず、何がこうも多くの人に支持されているのか分かりませんでした。石原先生の読み解き方を読んで、パズルが少しはまった感じがします。作品のストーリーを単純に読むのではなく、言葉のひとつひとつから裏に隠された小説世界の詳細を読み取るというのは勉強になりました。村上春樹は、徹底的に意図して言葉を配置しているのですね。「小説家はうそをつく」、勉強になりました。同時に村上春樹著「若い読者のための短編小説案内」を読むと、村上春樹ってモシカしたらとんでもない次元で小説を書いているのではという説にも納得がいきます。
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早稲田大学教育学部で「ちーさま」「ちーちゃん」「千秋」と学生から畏れ慕われている石原千秋様の著書を、恐れ多くも就活の一環と好奇心と後学のために買ってみた。ここんとこの春樹読書と平行して読んでいたおかげで、春樹への抵抗がなくなったとも言える。ありがとうちーちゃん。ちなみにあたしは御姿を拝見したこともない。
主に初期の名作を扱っていて、『風の歌を聴け』と『ノルウェイの森』の考察は思わずこれが正しいと思いかけた。。うーん、これ読んだ後に自分の考察なんて出来ないよ。でも『1973年のピンボール』は作品としてあんまり理解できずな部分があったし、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に関しては作品が長すぎるせいか複雑なせいか、この考察はイマイチ腑に落ちず。これで煽られて「ならば私がこの読みを提示します!!」とはならないけど、そういうのも楽しそう。ホモソーシャルとか分かりやすく説明してくれてる。是非私が春樹の読解発表する時に参考にしたいものだ。。
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第一章の『風の歌を聴け』の解説部分は一読の価値あり。‘ホモソーシャル’に関する解説にかなりの部分を割いている。が、しかし、このキーワード、実は村上春樹文学に欠かせないもの。勿論、ホモ・セクシャルとホモ・ソーシャルは全く違うものである。すっごく簡単に言ってしまえば、ホモ・ソーシャルは男性中心的社会のことであり、上野千鶴子なんかも、著書の中で指摘している概念である。女のやりとりの中で、男たちの社会的な絆っていうのは深まっていくのだ。少なくとも文学の中では。
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・風の歌を聴け
・1973年のピンボール
・羊をめぐる冒険
・世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
・ノルウェイの森
村上春樹の初期の作品群を筆者である石原千秋が読み解いていく。早稲田の人気講座の書き起こしだそうです。
非常におもしろかった。
ここまでこう読むか!って、ひいちゃう場面もあるものの、全般を通して作者石原千秋の解釈を楽しめました。
しょっぱなの、風の歌を聴けの物語の全体像から、へぇと感心しっぱなしでした。
-ノルウェイの森-
筆者がとある映画の淀川長治の解説をノルウェイの森の主人公ワタナベトオルとレイコさんのセックスをうまく言い表していると言って引用した部分。
【以下抜粋】
映画の後に淀川長治が解説をして、「新婚早々でご主人をなくした女性が少年とセックスをするわけですから不道徳かもしれないけれども、それ以外に彼女が彼の愛を受け入れる方法がなかったんですね」と言ったのだった。そして、「少年も悲嘆に暮れている女性を自分の性の対象にしてはいけない思っている。思ってはいるけれども、自分の気持ちを伝える方法はそれしかなかったんですね」と言うのだった。そして「なんて哀しいセックスなんでしょう」と言った。その解説を僕はいまでも鮮明に覚えている。僕はその時に、世の中にはこんなに哀しいセックスがあることを学んだ。
Posted by ブクログ
おもしろかったですね。
いろんな話が いろんなカタチで入り組んでいる
ことが よくわかって
見事な 分析力と 平易な表現力に満ち溢れている。
言語論的転回 時間 空間 そして 言葉
に関して 実にたくみに 説明してある。
この ムラカミハルキの 臨床解剖 は
成功しているような気がする。
ムラカミハルキの
テキストは 嘘をつきながら その嘘が暴かれることで
その暗闇が 明るみ になっていく。
ムラカミハルキ 自身が 謎をかけ
謎ときしている状態なので
こんがらがっている糸が ほどけてきているような感じがした。
内田樹センセイとは 違った味があった。
羊をめぐる冒険は・・・
星の紋章のついた羊を探すことだったが
結局 探し出すことができなかった。
星の紋章のついた羊は 羊博士 に取り付き・・・
右翼の センセイ に取り付き
そして 鼠に 取り付いた。
鼠は 星の紋章のついた羊 を取り込んだまま
自殺する ことによって
一緒に 羊と心中したことになっているが。
鼠の 遺体はなく そして 星の紋章のついた羊が
なぜ そこから抜け出すことができなかったのか?
よくわからない・・・が
結果として 羊を 見つけることができなかったのである。
Posted by ブクログ
まさに謎ときでした。
はっきり言って小説読むのに、ここまでいろいろ考えていたら疲れそう。
文芸批評家でなければ、楽しく読んで自分なりに解釈して納得すればいいと思う。