石原千秋のレビュー一覧
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「三人にだけ伝わればいい」――。新聞小説家・夏目漱石が、小説を核に際して意識した読者像に焦点を当てながら、初期三部作・後期三部作、未完の『明暗』までを辿る。巻末に全小説のあらすじを掲載。
第一章・二章では漱石の読まれ方及び当時の「小説」の扱われ方を概観、漱石が常に「書くこと」に対して意識的だたことを見。三章以降は、漱石の作品を通じて誰が「読者」として想定されていたのかを作品別に読み明かしていく。
『虞美人草』で想定していた反応と実際の読者の反応にずれがあったことを踏まえ、以降の小説に「死角」を入れるようになったという点が印象。また、後期三部作は新聞連載→単行本という発表方法をとっていたが、連載 -
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大学時代に著者の授業を受けていたが「講義中はわからないように寝ろ」と怒られた思い出しかない。そんな石原先生の著書は、「文学が背負った課題」と過大に思える副題が付く。なぜ「近代」の課題を文学が背負うのか。ちなみに今、私たちが生きている「現代」は近代の途上。その途上でなぜ近代を今、語るのか。これは具体的には言及されていないところから、この本のわかりにくさは始まる。
近代論というより、小説論として読んだ方が、まだわかる気がする。言文一致の小説が誕生して発展した明治期の近代文学の構造や着目点の例示のされ方はわかりよい。「主人公」の誕生や、1人称や3人称の視点の模索、写実主義の誕生などなど。
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かつて学生だった頃を思い出すと、確かに国語は道徳教育だったと感じる。
高校時代の夏休みの課題作文で教師から、私が書いた作文は表現などは良いが内容が道徳的でないとの事で、惜しいけど作文展への出品は別の生徒の作文を、と言われた事をふと思い出した。
個人的にかもしれないが、社会に出てから必要な国語能力は正確な読み書き能力であると感じる。書店ではビジネス文書の書き方についてのコーナーもあり、社会人には文書の書き方で不足を感じている人も多いのではないだろうか。
塾講師をした経験からすれば、現在の中高生はカリキュラム上、特に「書く」事が不十分だと感じる。小論文に苦手意識を持つ生徒も多い様に思われる -
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テクスト論の大御所、漱石研究なんかで有名な石原千秋の新書。日文の基礎演習で読む『大学生の論文執筆法』(ちくま新書)の著者と紹介した方が分かりやすいという人もいるかもしれん。
さてさて、非常に刺激的なタイトル。もはや完全に一時期の勢いはなくしたものの、なんだかんだで息の続いているケータイ小説。プロの手によるラノベですら文学の範疇に入るのかと議論されている昨今、素人の手によって支えられてきたケータイ小説が、文学研究者の中でどのように評価されているのか。
面白かった。
まずタイトルを見て思ったのは、「おいおい、そんなこと言っちゃったら文学の定義から入らなきゃなんないよ? そんなの、こんな薄い新書 -
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国語教科書の背景にある思想性について、テクストを丁寧に読み込むことを通じて、
抉り出していくのがこの本の見どころか。
著者の言葉を借りるなら、国語教育は実は「道徳教育」なのだ。
子どもたちあるいは我々は国語教育・教科書という装置を通じて、「自然」、「家族的親和性」といった道徳的イシューを内面化していく。確かに言われてみると/思い返してみると、「良い解釈」とでも言うべきものは多分に制限されていて、それらは実は暗黙のうちに価値的なものを植えつけるために機能しているようだ。著者の危惧は、単に道徳教育そのものにあるのではなくて(道徳教育そのものの存在は否定しない)、何のための道徳か?という問い -
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ネタバレ[ 内容 ]
「代表作」ばかりが名作ではない。
作家たちが残した数々の小説のなかには、あまり知られていないけれども極めておもしろい作品が存在する。
そこには、作家の意外な一面や素顔がちらりと顔をのぞかせることも。
裏まで奥まで、丹念に読めば読むほど深まる、小説の愉悦がここにある。
夏目漱石、谷崎潤一郎、芥川龍之介、太宰治といった文豪はもちろん、萩原朔太郎、宮沢賢治、近年再評価の進む尾崎翠や、現在活躍する多和田葉子など、彩り豊かな作家十二人が勢ぞろい。
あなたにとっての名作が、きっと見つかる。
[ 目次 ]
進化論を超えて―夏目漱石『趣味の遺伝』
輸入品としての「気分」―谷崎潤一郎『人魚の嘆き -
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[ 内容 ]
ケータイ小説を大胆にも文学として認め、その構造を徹底分析。
小説の「読み」「書き」に起こる異変を解きあかしポスト=ポスト・モダンという新しい境地を見出す刺激的アプローチ。
[ 目次 ]
1 ケータイ小説と文学
2 ケータイ小説とリアリティー
3 「新しい国語教科書」のモラル?
4 何が少女をそうさせたのか
5 男たちの中の少女
6 ポスト=ポスト・モダンとしてのケータイ小説
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