新井紀子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「シン読解力」とは、著者が命名した言葉で、「教科書を読み解くために必要な読解力」のこと。
著者は、一般社団法人「教育のための科学研究所」の代表。
大学に入ってから、数学が苦手だった原因が教科書の読み方にあったことに気づいた自らの経験をもとに、教科書を読めるようになるための手段とトレーニング法を開発した。
それがリーディングスキルテスト(RST)という独特の手法。
単純計算すると、30分弱で終わるテストだが、「主語と述語」、「修飾語と被修飾語」などの関係性といった文の構造を読み取る力、グラフや図形、概念図など資料を正確に読み解く力、定義を読み解く力など6つの分野に分けて能力診断する。
新しい手法 -
Posted by ブクログ
AIの仕組みを解き明かしながら、人間はどの部分がAIには敵わなくて、逆に何が可能なのかが書かれた一冊。「AI技術を使ったロボットは、東大に入れるレベルの知能を身につけられるのか」という壮大な実験から、人間側の教育、そして危機感について書かれている。
AIと聞くと、なんでも万全で、自分が思った答えをくれる夢の技術のように語られることが多いけれども、「一を聞いて十を知る」能力だったり、異なる文章を比較して、同義かどうか確かめたり、意味を読み取ることができないという弱点がある。とてもロジカルに書かれていて、AIがいかに数学と人間による細かい設定や教師データによって成り立っているかがわかる本だった。 -
Posted by ブクログ
簡単過ぎたり、急に難易度が上がったり、かと思えばすぐ答えを出すのではなく、解説まで迂回を経ることになり、解説のための解説で迷いそうになったり。そういう解法が好きな人には良くて、私は好きな方だが「こんどこそ!」的な人にはどうなのか。
例えば、有理数と無理数。幾つかの計算パターンで無理数になるのはどれ、みたいな展開。答えを解説する前に、定義から入る。当たり前の流れだが、分かる人は直ぐ答え合わせしたいし、分からない人は、定義を聞いても辛いのでは、と。
牛乳パック問題。1リットル牛乳パックは70mm×70mm×194mmで、容積を計算すると950.6mlになり1000mlには足りない。しかし、表示 -
Posted by ブクログ
私にしてみれば珍しい岩波である。
会社の同僚に「読んでみますか?」と薦められた本。
ブログで仕事の事は書かないようにしているが、実は教育関係の仕事をしており、とあるデジタル教科書も手伝ったりしているのだ。
もう3年前、当時の総務大臣であった原口氏が、原口ビジョンの中で、2015年までにデジタル教科書を全ての小中学校全生徒に配備するなどとブチあげたものだから、一気に「デジタル教科書」に注目が集まった。
この本は、というか新井紀子氏はどちらかというと懐疑的なスタンスで、この本をまとめている。
デジタル教科書って一口に言っても、子供たちが使う「児童生徒用」と、教師が使う「指導者用」が有ります。
-
Posted by ブクログ
2022年の下半期は、お絵描きAIの「Midjourney」とチャットボットAIの「ChatGPT」が一般公開されて話題となった。「Midjourney」に描かせた絵画が芸術コンペ(米国コロンビア州)で1位となり、短編SFで有名な星新一の賞でもAIを活用した作品が一般部門で優秀賞となった。特定範囲におけるAIの能力(「弱いAI」とも呼ぶ)は人間を超え始めたと言えそうだ。そんなタイミングだからこそ、積読だった本書を手にとった。
本書は「東大ロボ・プロジェクト」で「出題者の意図を理解できない東ロボ君(偏差値57.1)に8割の学生が負けた」という問題に対処するために開発したRSTという30分程の読 -
Posted by ブクログ
AIは人間を超えるのか?国立情報学研究所の新井紀子氏が率いた「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトの成果をもとに、AIの限界と、日本の子どもたちの読解力の危機に迫る一冊。AIが難関大学の入試問題を解けるようになる一方で、人間の子どもたちは教科書レベルの文章を理解できていないという現実を明かす。読解力の重要性を問い直す、衝撃の教育・社会ドキュメント。
本書を読んで改めて思ったのは、「AIが人間を超える未来=シンギュラリティ」は絶対に来ない、ということ。AIには明確な限界がある。たとえば「この近くのイタリア料理以外の店」と検索しても、イタリア料理店がずらっと並ぶように、AIは“意味”ではなく“