新井紀子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
自分自身の読解力を上げたいと思って読み始めたが、想像していた内容とは少し違った。
本書の中心は、大人が自分の読解力を伸ばす方法というより、子どもの「教科書など、基本的に解釈が一つに定まる文章を正確に読む力」をどう伸ばすか、という話だった。家庭でできる具体的な訓練方法はそれほど多くなく、「学校教育の中で取り組むことが望ましい」という内容が多いため、どちらかというと教育者向けの本だと感じた。
一方で、子どもが特定の教科だけ苦手な場合、単純にその教科の知識が不足しているのではなく、「その教科特有の文章の読み方」が身についていない可能性がある、という視点は面白かった。
たとえば、国語は問題なくても数学の文章がうまく読めない、といったことが起こり得る。親として子どもの「苦手」の原因を考える際に、こうした可能性があると知れたのはよかった。特定の教科だけ苦手な子どもを持つ親なら、読んで損はないと思う。
読解力テストが収録されているのも面白い。ただ、テストの直後に正解が目に入ってしまう構成なのは気になった。正解を読んでから問題に答えることになりかねないので、そこはもう少し工夫してほしかった。
また、エビデンスとして多くのデータが示されている点は良いのだが、説明がかなり長く、読んでいて「結局、何が言いたいのかを先に教えてほしい」と感じる場面も多かった。研究者らしい丁寧さではあるものの、一般読者向けとしてはもう少し結論を簡潔に示してもよかったと思う。
特に気になったのは、終盤の大手2社を比較した部分。RSTで測定する「シン読解力」をやや重視しすぎているように感じた。シン読解力の高さと企業の生産性を結びつけて解釈しているが、生産性に影響する変数は当然ほかにもあるはずだし、企業や職種によって必要とされる能力も異なる。一概にシン読解力だけで説明するのは難しいのではないかと思った。
また、実際に読解力を鍛えるための訓練内容が少なかったこともあり、少し意地悪な見方をすれば、RSTを受けてもらうための入口となる本のようにも感じてしまった。
冒頭はAIについての話が多く、すでに知っている内容も多かったため、個人的にはあまり興味を持てなかった。一方、後半の「教科書をどう読むか」という具体的な話は興味深く、本書で最も印象に残った部分だった。
総じて、自分自身の読解力を伸ばしたい大人が、具体的なトレーニング方法を求めて読む本としてはあまり向いていないと思う。一方、教育者や、特定の教科だけ苦手な子どもを持つ親にとっては、「その子は本当にその教科が苦手なのか。それとも、文章の読み方につまずいているのか」と考えるきっかけになる本だと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読み始めて少しだけ違和感。検索してみると、chat GPTが出現したのが2022年だった。この本が出たのが2018年だから、チャッピー以前の状況からの言説だった。試しにいくつか、当時のコンピュータに難しいとされる問題を、検索AIに入れてみたら、ほとんど問題なく答えてた。いや、日進月歩と言うけど、凄まじい勢いの進化を実感することとなった。
ちなみに2018年はまだ令和にもなってないし、コロナなんて夢にも思わなかったんだよな…。
前半が、数学者としてのAIについての話。後半が、日本人(とりわけ子ども)の読解力について。
Alexの問題は、どこかで見たことあったけど、思い出せない。調べたら、Xで前からフォローしてたかただったので、その辺りで見かけたんだろうか?この読解力問題は8年後の今も変わらない問題だと思う。
星四つと迷ったけど、やっぱり、データ(?)的に当時の状況として読まなきゃ…というとこから、一つ引いた。 -
Posted by ブクログ
「AIに仕事が奪われる」という漠然とした恐怖に、冷徹なデータと論理で光を当てた衝撃の一冊です。
本書が暴くのは、AIの進化への驚異ではありません。それ以上に深刻な、私たちの「基礎的読解力」の欠如です。文章の意味を理解せず、AIが得意とする「論理と統計」の土俵で戦おうとしている現状に、背筋が凍るような危機感を覚えました。
しかし、著者の指摘は絶望で終わるものではありません。AIがどれほど進化しても、彼らには「意味」が解りません。私たちが人間として、言葉の裏側にある感情や文脈、そして「意味」を読み解く力を磨き直すこと。それこそが、不透明な将来への不安を、確かな生存戦略へと変える唯一の道だと気づかせてくれます。 -
Posted by ブクログ
・人生で大事なこと。日本語を正しく読解すること。それを強く感じた一冊
・文章が読めなくなったのは活字離れが進んだからではないことを、事実ベースで描かれていたため、ロジカルに納得できた
・スマホが普及し、誰でもSNSを触る機会が増えた現代において、昔よりも文字を読む機会は格段に多くなっているはず。
・小説ばかり読んでいて気づけなかったが、読書の本質は現代の新しい知識を入れることなんだなと改めて考えさせられた一冊だった
・苦手な教科が出てしまうメカニズムと、苦手教科への対処法について、人との関わり方にも応用が効くのではないか。人と関わるために、2人で共通の言語を獲得する。辞書に載っている言葉の意味だけでは通じ合えない2人の中だからこそ通じ合う言葉。言葉とは本当はそういうものであろう。
・問題は半分程度しか正答できなかった。日本語の受け取り方の勉強になった
・「和文数訳」は英語はできるけど数学はできないのような方に、うってつけの学習方法であると感じた -
Posted by ブクログ
5年前に読んだ「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」の感想に「AIの本来の意味は人工知能だけど、今普通に使っているAIは「AI技術」の事。ディープラーニングも人間が教師データを設計してる訳で、AI技術の絶大な進歩のお陰であらゆる事が便利になったりはしても、コンピュータはあくまでも計算機でありシンギュラリティ(人間の能力を超える)は起こり得ない」と書いたが、その後ChatGPTなどの生成AIが出てきて、このところしきりに汎用AI(AGI)、超AI(ASI)なんて騒がれている中での新井先生のご意見は?との関心持って読んだが、やはりシンギュラリティは無い、と。
安心して良いのやら。 -
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本編にたくさんの練習問題があって、最初は解けたから私の日本語は大丈夫だと思って安心したけれど、後半は全然解けなかった。解説を読んで納得したものもあるし、説明を読んでもよくわからないところもあった。
慣れていないトピックの文章は、思っていたより理解できないのかも、ということに気づかされた。
気づいたけど、じゃあ自分の日本語力どうしたらいいのと思っても、自分でどうにかする方法は書いてない。
学校や企業でみんなでトレーニングする方法などは載っているけど。
AIが生活に深く入り込んできている今、文章を正確に書く、読んで理解する、というスキルは今まで以上に大切になってくるんだな。
さて、私の日本語はどうしようかな。 -
Posted by ブクログ
2025/56
前半はとにかく難解。
私は完全なるガッチガチの文系なので数字の話された途端に、日々の10倍アホになってしまう。
教育者の端くれとして、後半はじっくり読みました。
AIに代替されやすい能力を育てても、本質的には意味がないことが分かった。AIにとって難しい「考える力」が育たない限りは、人間の将来は不安ってことだよね。
また読解力を身に付けることが、読書や勉強習慣とは意外と関連性が少ないのが驚きでした。
アクティブラーニングの在り方も共感性の高い迎合する子供たちの間で行われても、正しさを導くスキルを磨く一助にはならない。確かにそうかも。
あとは、大学入試で求められているのは三角関数を理解しているかじゃなくて
三角関数を理解するためにどれだけ努力をしたのか、その子供の思考力や忍耐力を求めているっていうのはその通りだと思った。
教え導くことの難しさを改めて感じる一冊。
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Posted by ブクログ
私にしてみれば珍しい岩波である。
会社の同僚に「読んでみますか?」と薦められた本。
ブログで仕事の事は書かないようにしているが、実は教育関係の仕事をしており、とあるデジタル教科書も手伝ったりしているのだ。
もう3年前、当時の総務大臣であった原口氏が、原口ビジョンの中で、2015年までにデジタル教科書を全ての小中学校全生徒に配備するなどとブチあげたものだから、一気に「デジタル教科書」に注目が集まった。
この本は、というか新井紀子氏はどちらかというと懐疑的なスタンスで、この本をまとめている。
デジタル教科書って一口に言っても、子供たちが使う「児童生徒用」と、教師が使う「指導者用」が有ります。
「指導者用」は、すでに全ての教室に配備されたデジタルテレビや、プロジェクター、電子黒板などを利用し、教科書を大写しにして使うもの。
現在の一斉授業形態の中でも比較的すんなり利用できるものですが、「児童生徒用」となると個人持ちハードウェアやネットワークの事もあり、そう簡単にはいきませんし、そもそも現在の教科書がデジタルになる必要があるのかと、私自身も懐疑的ではあります。
原口ビジョンのような総務省が掲げる経済活性化のための材料として「教育」をそんな場に出して欲しくないですもんね。
でも、「デジタル教科書」と言えば一般的には、「児童生徒用」を指すようですが、この本も「児童生徒用」の事を中心に書かれています。
ま、興味がございましたらお勧めです。
60ページ程度の本なので二時間もあれば、読み終わっちゃいますし、すごく読みやすく書かれています。
さて、岩波書店。
私は、岩波系の本をほとんど読みませんが、実は先日、仕事の関係で岩波の論壇誌『世界』から取材がありました。
小中の情報教育についてページを設けるんだそうで。
どんな取材だろうと期待してたんですが、単に会社の沿革や雑談で終わってしまいました。
もっと本質に突っ込んでくるかと構えてたんだけど、ちょっと肩すかしを食らってしまったな。。。
個人的な意見ならいくらでも言えるけど、公の立場を思うと何にも言えなくなっちゃうんだけどね。 -
Posted by ブクログ
2022年の下半期は、お絵描きAIの「Midjourney」とチャットボットAIの「ChatGPT」が一般公開されて話題となった。「Midjourney」に描かせた絵画が芸術コンペ(米国コロンビア州)で1位となり、短編SFで有名な星新一の賞でもAIを活用した作品が一般部門で優秀賞となった。特定範囲におけるAIの能力(「弱いAI」とも呼ぶ)は人間を超え始めたと言えそうだ。そんなタイミングだからこそ、積読だった本書を手にとった。
本書は「東大ロボ・プロジェクト」で「出題者の意図を理解できない東ロボ君(偏差値57.1)に8割の学生が負けた」という問題に対処するために開発したRSTという30分程の読解力テストについての解説。
RSTの類型は6つ。
・<係り受け解析>文の基礎構造を把握できているかどうか。文法問題と言える。
・<照応解決>代名詞などが指す内容を認識しているかどうか。
・<同義文判定>2文の意味が同一かどうか判定する問題。
・<推論>日常生活から得られる常識を動員して文の意味を理解できるかどうか。
・<イメージ同定>文と非言語情報を正しく対応付けられるかどうか。
・<具体例同定>定義を読んでそれと合致する具体例を認識できるかどうか。
どれも文脈を共有して議論を発展させていく上で必須となる能力。中学生以上は当たり前に備わっていると思うと大間違いらしい。音感と同じで、できる人には当たり前だが、一定数できない人が居るとのこと。正直、本書で説かれている言語能力のハードルを超えたとしても、バカの壁であったり、認知バイアス、心理的安全性の欠如など、コミュニケーションを阻害する要因はいくつもある。そしてこれらのどれかひとつでも絡む状況においては、AIに敵わなくなってくる可能性が高いと僕は感じている。人間にとってなかなか望み薄な戦いな気がしてならない。