鴨長明のレビュー一覧
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原文は想像以上に短い。推敲を重ね、無駄を削ぎ落として残ったものが、方丈記であり方丈庵なのだろう。
「完璧とは、何も足すものがなくなったときではなく、何も引くものがなくなったときに達成されるものである」を思い出した。ドラッカーとかジョブズとか多々引用されてるが、オリジナルは確かサン=テグジュペリだったか。
対句で物事を鮮やかに対比、列挙。繰り返しの語句による独特のリズムが味わい深い。
接続詞の使い方が印象的。語の意味や込められた思いは言うに及ばず、生み出される間が絶妙。冒頭の「しかも」は秀逸。
章分けはもとより段落や句読点も底本にはなさげ。著者が読み易さを考慮して追加か。読点がいい味を出してい -
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[新訳]方丈記
乱世を生き抜くための「無常観」を知る
著:鴨 長明
編訳:左方 郁子
PHP新訳新書
紙版
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。……」
無常・無常観の文学「方丈記」
平安末期から鎌倉前期に生きた、風流人、鴨長明の作品である
リアリストである、鴨長明が描き出す、災害や災厄の数々
単なる歴史書が描く世界に比べて、臨場感あふれる世界は、死が常に人々の隣にあったことを示すようで切ない
母の命が尽きたのを知らずに、なお、乳を吸いながら眠っている幼い赤子のくだりは、無常ではなく、無情である
下鴨神社の後継者争いに敗れ、妻子を失ったと思われる鴨長明は、和歌と管絃に生 -
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岩波文庫の『方丈記』、まず表紙が良い。年月の経過を感じさせる上品な色合い、大昔の人が書き写した筆文字の上に印で押したような堂々とした「岩波文庫」。他の出版社とくらべても抜群に洒落ている。誰もが知る古典を倉庫の肥やしにせず、かといって変に安っぽく現代風に改変して台無しにするでもなく、しっかり現代に活かす絶妙なデザインではなかろうか。
それに手書き文字を見ていると、活字が発明される以前は本とはずっとこうして人が写して来た物だったのだなとしみじみしてきて、そうなるともう『方丈記』は自分にとって単なる歴史の記録ではなく、かつて自分と同じように、日々起きて寝て食べて、つまらない事にくよくよしたり、好き -
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方丈記は、鴨長明の無常観を感じ、隠遁生活の中で作られた作品である。本文自体が短く、読みやすかった。その上で、世間の暮らしを忠実に記し、人間の何かに迫られながらする生活を嘆いているように感じた。例えば、死ぬ人と生まれる人、建物を壊しては作る人、人間関係を気にする人がいるが、どれも一定のものではない。移り変わってゆくのである。可変的なものによって保身を図り、欲を満たすのは愚かであると長明は言っている。
私は誰もがこの事実に気づいているのに、見て見ぬふりをしている様に思う。その事実を淡々と語っているので、読者は「方丈記」を読んでいるときだけでも、達観した気分に浸ることができる。少なくとも、心を -
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超約版 方丈記 鴨長明 城島明彦訳
一般に随筆と言われているようだが
それ以上に報道的要素がある
机上で済ませず
好奇心の強い自分の足で掴み取った
ジャーナリスチックなドキュメントである
文章は簡潔でありながら美しく
正確を期すことに
心血を注いだものなのだろう
一つ難を言えば
訳者の問題だと思うが
不必要な「は」をやたら導入した
言葉使いが気になる
世間の義理人情や駆け引きに迎合せず
孤独を愛し自分で選んだ道を歩む
自然の成り行きに真理を求め
気づきを和歌に記し楽の音を好み
物作りを楽しんで日々を過ごした
人よしで素朴な人なのだろう
それにしても流石に歌なのだと〜
現文はしみじみと美し -