あらすじ
「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」で始まる有名な本著は、人の世のはかなさを主題とした日本古典の三大随筆の一作。1185年に京都を襲った大地震の経験を初め、大火、地震、飢餓などで命を失う無数の人々の運命が描かれた「無常」の文学とされている。しかし、併せて著者が20代から約40年間に目の当たりにした災害について、「男女死ぬるもの数十人」「飢え死ぬるもののたぐい、数もしらず」など、被害の惨状を映しだす「災害の文学」でもあった。 『方丈記』が誕生したのは建暦2(1212)年、今年で800年を迎える。災害日本から生まれた厳しい諦観であり、自然と共生するための独自の思想といえる「無常」が感じられる1冊である。
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Posted by ブクログ
[新訳]方丈記
乱世を生き抜くための「無常観」を知る
著:鴨 長明
編訳:左方 郁子
PHP新訳新書
紙版
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。……」
無常・無常観の文学「方丈記」
平安末期から鎌倉前期に生きた、風流人、鴨長明の作品である
リアリストである、鴨長明が描き出す、災害や災厄の数々
単なる歴史書が描く世界に比べて、臨場感あふれる世界は、死が常に人々の隣にあったことを示すようで切ない
母の命が尽きたのを知らずに、なお、乳を吸いながら眠っている幼い赤子のくだりは、無常ではなく、無情である
下鴨神社の後継者争いに敗れ、妻子を失ったと思われる鴨長明は、和歌と管絃に生きる
60を前に、出家して、草庵に引きこもった彼は、当時も、変人とみられていたようである。
災厄を本書では、不思議と称している。
四季のよそおいとともに、大火、遷都、飢饉、地震などの災害が京都を襲うさまが描かれています。
本人ではままならない移り変わりに、落伍者とみるのか、世捨て人とみるのか、生きることは今も昔も、すさまじきことと感じました。
目次
はじめに
「方丈記」訳文・原文・解説
序 人と住居は無常を競う
1 5つの不思議
安元の大火 不思議の①
治承の旋風 不思議の②
突然の都遷り 不思議の③
エピソード/古京は荒れて新都は成らず
養和の飢饉と疫病 不思議の④
エピソード/さまざまな悲劇
エピソード/死者の数をかぞえる法師
養和の大地震 不思議の⑤
2 方丈に暮らす日々
いかに生きるべきか
遁世のいきさつ
3 終の栖 日野の方丈
組み立て式の草庵
風流三昧の日々
少年と遊び、名所旧跡を歩く
静かな夜なら
わが身のための庵
閑居の楽しみ
結び 自ら問う
各論
鴨長明の生涯
重代のみなしご 下鴨神社の社家に生まれる
歌と管絃に励む前半生
短歌所の寄人に出世
大原に遁世 出家の内的動機
鎌倉への旅と日野の方丈暮らし
数寄と仏道を求めて
災害文学と無常観
大火の体験から
暴風と遷都の体験から
飢饉と地震の体験から
住居の文学
数寄と仏道修行
鴨長明略年譜
おわりに
ISBN:9784569803418
出版社:PHP研究所
判型:新書
ページ数:168ページ
定価:950円(本体)
2012年05月10日第1版第1刷発行
Posted by ブクログ
"ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。。。”の方丈記を読みました。短い内容ですが、
二つの構成からなっており、その前半は火災・竜巻・
飢餓・地震・遷都の京の都の災害ルポであり、
その中で人と棲家の無常さがテーマ。
もうひとつの後半は草庵の楽しみ・閑居の文学である
ことは知りませんでした。
特に後半の部分の文書や内容はとても美しく、
私の好きな梨木果歩さんの『家守奇談』によく似た
雰囲気の内容でした。
Posted by ブクログ
900年以上前に存在していたことを思うと、
表現力等を兼ね備えた鴨長明には常に感服する。
本書は、訳文、原文、解説の三部構造にて
評論している。特に印象的だったのは、
冒頭部分である。
序文の記載は非常に小気味良く、人間の普遍的な
感性に響くと感じる。
なお、巻末等に参考文献の記載があれば、
後世に伝えるべく随筆の解説書として申し分は
なかったはずだ。
Posted by ブクログ
これは読みやすかったです。まず現代語訳文、そして書きくだし文、解説が段落ごとに紹介されている。
出だしの「ゆく川の流れは絶えずして…」の壮大さ、無常観、哲学観に惹かれて読んでみると…
あれれ?なんだか鴨長明ってグチっぽい?!と学生時代に思ったのですが、
まぁ今回もおおむね似たような感想しか抱けず。すみません…。
この本は現代語訳に解説までついていて読みやすい、とっつき易いので、初めての方にもおすすめ。
ただ解説は…少々、長明びいき過ぎる…気がしますが。
Posted by ブクログ
ゆく川の流れは絶えずして、しかしもとの水にあらず・・・の名文で始まる方丈記は無常観がテーマの古典として有名だが、しかし同時に災害文学の側面ももっている。
昨年の東日本大震災も記憶に新しいが、過去の歴史をひも解いてみれば日本は災害の連続であったことが分かる。
方丈記にも大火や竜巻、飢饉に疫病、そして大地震と平安末期に起きたこれらの災害が記されている。
仏教に大きく影響を受けた鴨長明は、地位や名誉、金品や家などに執着する空しさを語るが、末法の世といわれた時代背景も影響を受けているのかもしれない。
彼の生きた時代は平家が栄華を誇り、そして壇ノ浦で滅亡した。彼ならずともこの世の無常を感じただろう。
現代に生きる我々を取り巻く環境も常なる物ではない。しかしその無常の中にあって変わらない何かを人々は探し続けている。
鴨長明も波乱に満ちた人生の中で、常に心の平安と安らぎを求めていたように・・・。
Posted by ブクログ
この本は、『方丈記』を解説した本です。
前半は『方丈記』の訳文・原文・解説の3点セット。後半は各論として、鴨長明の生涯と、災害を経て無常に至った長明の思想について解説されています。
参考文献が示されていたら、より興味を深掘りすることができてよかったのになぁと思いました。
さて、数々の災害を経て人と住まいの無常さを痛感した長明は、出家後に理想の住まいとして一丈四方の草庵をつくり、その魅力を『方丈記』で説きました。
『方丈記』においてわたしが最も興味深いと思うのは、世の無常の中で出家し脱執着を目指す長明自身がむしろ住まいに対して強烈な執着心を抱いているという点です。
方丈の草庵がいかに理想的であるかという点を懇々と論じ、自身でつけたタイトルも、方丈の庵を記したものであるから『方丈記』…。
執着を脱するということは到底できず、何らかの理念や思想を見出したとしても口にするや否やまたそれが執着となって現れてしまう。
その上で長明は、ニーチェの超人思想の論法ではありませんが、この矛盾を受け入れた上で自らの信じる道すなわち念仏を唱えることをひたすら突き進み行動することを、自らの『無常観』としたのではないかと感じました。