鴨長明のレビュー一覧
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ゆく川の流れは絶えずして、しかしもとの水にあらず・・・の名文で始まる方丈記は無常観がテーマの古典として有名だが、しかし同時に災害文学の側面ももっている。
昨年の東日本大震災も記憶に新しいが、過去の歴史をひも解いてみれば日本は災害の連続であったことが分かる。
方丈記にも大火や竜巻、飢饉に疫病、そして大地震と平安末期に起きたこれらの災害が記されている。
仏教に大きく影響を受けた鴨長明は、地位や名誉、金品や家などに執着する空しさを語るが、末法の世といわれた時代背景も影響を受けているのかもしれない。
彼の生きた時代は平家が栄華を誇り、そして壇ノ浦で滅亡した。彼ならずともこの世の無常を感じただろう -
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2012年は、方丈記が書かれてからちょうど800年らしい。
こないだ、8月5日付の朝日新聞で特集があって驚いた。しかも漱石とのつながりで。
24歳の漱石が、ディクソンに頼まれて方丈記を英訳したのは1891年。
その当時の書簡を読んだりすると、どんな心境だったのかわかって面白い。
鴨長明は、たぶんものすごい寂しがり屋だったんじゃないだろうか。
わざわざ隠遁しておきながら、子どもと遊んじゃったりするし。
ほかの本(無名抄)とかでも、まだ歌のことグジグジ忘れらんなくて、かわいいよな。
長明の、人嫌いで、でも人恋しいカンジ。
この味がわからなくては。 -
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とりあえず一般小説というカテゴリに入れたけど違うな(^^;)
それはあとで直すとして・・・
『ゆく川の流れは絶えずして もとの水にあらず よどみに浮かぶ泡沫は かつ消えかつむすびて・・・・』
というフレーズは中学だか高校だか、古文の時間に皆さん一部は触れていると思います。私もそうでした。
当時の私は人付き合いが苦手で友人も中々作れず、ひとの輪に飛び込んでいけないのを美化したかったんでしょうなぁ。
無常とか孤独とかがすごくカッコイイと思っていてこの方丈記の一説がいたくお気に入りでした。
さりとて、全文きっちり読みこなしたわけでもない辺りがお粗末さまでしたー。 -
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身の程を知り、何事にもしがみつかず、自然を愛で、足るを知る生活。
が、多くは「無常」に耐えられなかったのか、余剰生産は搾取を生み出し、もはや引き返せないようになった。
現代の無常観は、「行く川のながれは絶えずして、しかももとの水にあらず」ではなく、「行く川のながれは絶えずして、ほぼもとの水である」という、無常というより空虚に近い。
同じ「むなしい」でも今と昔ではその意味が異なる。
鎌倉時代、大きな火事、嵐、地震を通して、鴨長明は「完全なものなんてねぇな」って思って、無常を知り、足るを知った。
が、現代(の一部)では、そういったことが起きた時に、「完全なものをつくるしかねぇな」と思っている。 -
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この本は、読んだ年齢によって大きく印象が変わるのではないかと思った。
著者の万物流転、諸行無常で何をか栄華を望まんや、という姿勢は、今の時代においては「負け組」の発想を容易に連想させる。
著者の、才覚が筆致から溢れるような、現代でも無駄のないと感じるテンポのいい叙述で物事への執着心の無常を説く心の裏には、
彼の出自を絡めてみると、どうにも若き日の栄達を阻まれた世間への憾みが見え隠れするように読める。
これは自分が20代であるからなのかもしれない。
注釈も初心者に便宜的で、原文自体が平易な短文なので、初めて日本の古典に親しむという目的なら適切。 -
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この本は、『方丈記』を解説した本です。
前半は『方丈記』の訳文・原文・解説の3点セット。後半は各論として、鴨長明の生涯と、災害を経て無常に至った長明の思想について解説されています。
参考文献が示されていたら、より興味を深掘りすることができてよかったのになぁと思いました。
さて、数々の災害を経て人と住まいの無常さを痛感した長明は、出家後に理想の住まいとして一丈四方の草庵をつくり、その魅力を『方丈記』で説きました。
『方丈記』においてわたしが最も興味深いと思うのは、世の無常の中で出家し脱執着を目指す長明自身がむしろ住まいに対して強烈な執着心を抱いているという点です。
方丈の草庵がいかに理 -
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「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」
の名文から始まる有名な古典文学です。
遠い昔に国語で習ったことがあるのでしょうが、全く覚えておらず、ちゃんと読んだのは初めてでした。
意外だったのは、人生観のようなものを語るのみでなく、遷都、辻風、大火、飢饉、地震といった人災、天災についても克明に記録しているところです。特に飢饉のパートはその凄まじさがよく分かる文章でした。
最近読んだベストセラーの「限りある時間の使い方」という本に、他人の目を気にせずに自分のやりたい事に打ち込むことが人生の満足度に貢献すると書いてありましたが、世俗を捨てて小さな庵を結び、自身の思うままに暮らした鴨長明