鍛原多惠子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
一般的な「風邪(Common Cold)」に関する知見を軽妙な文章で網羅的に扱った一冊。
この本の面白いのは、コロナ禍前の発行(2011年刊行)であるという点。今時分に風邪について本を出すと「新型コロナウイルス感染症」について多かれ少なかれ紙面を費やすことになるし、一般的な風邪についての認識もコロナ禍の影響を受けることになる。今本を出しても、比較的軽症な「風邪」についてこんなにも紙面をさけないのではないか。また、軽妙洒脱に語ろうにも、コロナ禍の社会的影響の大きさを思うと文章が重くなるのではないか。コロナ禍前にわたしたちがどのようにありふれた風邪を認識していて、どのような研究が進んでいたか。思い -
Posted by ブクログ
特に理由もなく書店で目についたので購入しましたが予想以上に面白かったです。本書の著者は歴史学の先生とのことですが、生物学、物理学の領域にもかなり踏み込みつつ、私が感じた書籍全体の印象は、人類がこれまで「未来」をどのように考えてきたか、言い換えると「未来感の歴史(未来感史)」を扱った本、というものでした。
まずパート1で「未来について考える」ということで、A系列時間:川の時間、B系列時間:地図の時間、という未来に関する2つの概念について解説していますが、この2つが本書を通じて何度も登場する大事な概念です。さらにアインシュタインの相対性理論と光円錐を用いて過去と現在、未来のイメージも紹介してくれ -
-
-
Posted by ブクログ
宇宙誕生以降の全歴史を学際的な視点から掘り下げることによって理解を深める研究・教育手法である「ビッグヒストリー」の提唱者が、過去から未来に目を転じて、人類を含めたすべての生物にとっての未来思考の意味を探求するとともに、現時点で予測可能な未来像を描き出した一冊。
著者は、人類を含めたすべての生物が意識的か無意識的かに関わらず、自らの「目的」を達成するために、発生することが確実な領域と予測不可能な領域の間にある「重大なことが起こるかもしれない不安領域」即ち「レッドゾーン」について、相関やサンプリング、因果の分析等を駆使して未来を予測し行動していることを、微生物や動植物の例を挙げて解説する。
さ -
Posted by ブクログ
ネタバレ◾︎生命は意志を持って「未来を操作する」という視点が目からウロコ
138億年のビッグヒストリーをベースに未来予想をする本。宇宙や太陽・地球の創成は無機的で意志などない。
だが生命は明らかに生存や繁栄の意図を持って未来を作って行こうとしている。それゆえ複雑で不確定要素が多いが、意志を持って未来を操作できる。この視点はすごい。
一方遠未来では、地球や太陽、宇宙が終わることは不確定要素なく分かっている。
このスケールだからこそ見えることで、非常に面白かった。それだけに、いまの我々の意志と行動で、近未来・中未来が決まるということは改めて考えさせられる。人生についても同じだなと思った。 -
-
-
Posted by ブクログ
大絶滅にかかわる学説史的なものを背景に、著者が世界各地を訪ねて取材した学者たちの活動をアンサンブル的に(もとは雑誌連載)散りばめてある。カエルのツボカビ、化石発掘、恐竜絶滅、海洋酸性化、熱帯多雨林、サンゴ礁、人新世、ネアンデルタール人などなど盛りだくさん。ヒトの手により現在進行中のまさにグローバルな事態を、地質学的な時間軸の中にすっきり位置づけてくれた。
個々のエピソードは何かしら聞いたことのある話がほとんどだだったが、個人的には以下の点などが新鮮であった:
・イースター島の環境破壊の原因は、直接的にはヒトよりもむしろネズミであった可能性が指摘されている(そのネズミはヒトが連れてきたにせよ -
Posted by ブクログ
風邪。
それは単一のウイルスによる病気ではなく、
いわゆる風邪ウイルスは200種類以上ある。
そして少なくとも5つの属があって、
ピコルナウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、
パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルスがそれらです。
本書ではそれらのなかでも、
ピコルナウイルスに属するライノウイルスによる風邪症状に焦点をあてて、
風邪全般を考察する内容となっています。
なぜライノウイルスかといえば、
風邪の40%がこのウイルスによるものだからだそうです
(日本では違うかもしれないので、「アメリカではそうなのだ」
という注釈が必要かもしれません)。
まず、感染経路ですが、
くし -
Posted by ブクログ
普通の所謂コモンコールドの話。書店で高速背表紙チェックしながらアイル通過中に、足を止められた。普段気にしないタイプのタイトルだが、やっぱり目にはいってしまうということはかなり精神的にキてるんだろう。今流行のC19は確かにコモンな風邪とは違うものですが、ゆうても”バイキン”ですから、予防や防衛になんかのヒントがありそうというか、セーフ生活の突破口となりそう。
で、読み始めて、これがもうめちゃめちゃおもろい。イグノーベル賞を受賞した研究などが紹介されているが、そのメソッドが大爆笑。ほかにもグランマのチキンスープ(あはは、風邪を引いたら卵酒的なね)のレシピも載ってるし、色々とまあ、アメリカンな部分を -
Posted by ブクログ
ネタバレホンジュラスの辺境、モスキティア地方に眠る古代遺跡をめぐる冒険。1994年より前は、75年間にわたり何度か数名の冒険野郎が探しにでかけたものの見つけることができなかった幻の白い都市。この詐欺まがいの冒険レポートが案外笑えたのだけど。
本編はその後。テレビプロデューサーが白い都市を探すプロジェクトをはじめるところから。その後科学技術が劇的に進歩し、ライダーを駆使した3Dマッピング技術が猿神のロストシティの手がかりを見つける(その技術を考古学者が否定するところもおかしかった)
まさに人もいない未開の地での冒険、考古学者やクリエイターの挑戦はなかなかドラマチック。しかし、帰国後、スタッフの半数に発症 -
Posted by ブクログ
なぜこうも人間は、知らないことを理解した気になれるのか。
どんなウイルスがどういう目的でどのように感染した結果の症状なのかも知らず、
人は風邪を引くたびに『腹を出して寝てたから』『温度変化が激しいから』『寒いところで過ごしたから』などと納得し、
『りんごが効く』『暖かくして寝る』『病院に行って風邪薬をもらう』と独自の療法によって解決しようとする。
それがまったく意味がないことだとしても問題ない。
それが流行性感冒であれば、何をしてもすぐに治るし、またどうせしばらくすれば感染するのだから。
エンテロウイルス、コロナウイルス、パラインフルエンザウイルス、シンチウムウイルス、ヒトメタニューモウイル -
Posted by ブクログ
まず読み切った自分褒めたい 笑
人類は交換と専門化によって発見や発明を繰り返して進化してきた。今、世界的な社会問題としてある貧困や人口爆発、地球温暖化だって、乗り越えられるはず。
このことを大量のデータや過去の前例を踏まえて理論的に説明した「合理的楽観主義」の本。
読み終わって思ったのは、社会全体が変わっていくことを恐れてはいけないということ。状況は変わっていくのに自分たちが変わらなければ当然自分たちが苦しくなっていく。その変化に対応する、むしろ、その変化を自分で引き起こすくらいの気持ちと力が求められてる気がした。
少なくとも、今の自分の周りの人たちは安定を求める人が多い。きっとその価値 -
Posted by ブクログ
「かぜ読本」という売り文句だけれどもまさしく読本。研究者が書いた小難しい専門書ではなく、さまざまな研究者に取材してその知見や研究結果を紹介するコラムという感じ。統計は米国のものなので若干日本とは事情が異なるところもある。ウィットというかユーモアというか、えせ科学に翻弄されがちな自分たちの姿を笑いとばしている。普通感冒については結局いまだよくわかっていないことが多く、市販の風邪薬の効果は疑わしいけれども有効成分よりプラシーボ効果のほうが大きい、ということだけはとりあえずわかった。ついでにいうと後半は「かぜを絶滅させても社会はたぶんよくならないし、いっそかぜをひいたら布団に籠もって読書でも楽しもう