鍛原多惠子のレビュー一覧
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ヒトの体内あるいは体表面にともに棲む微生物(=マイクロバイオーム)についての本を何冊か読んできている。
本書は微生物学者夫妻によるもので、最新の研究結果も織り込みつつ、専門用語を交えすぎないわかりやすい仕上がりになっているところが長所だろう。巻末のかっちりした参考文献と腸内細菌を育てるレシピが同時に1冊の本にあるところもなかなかおもしろい。
マイクロバイオームの話は難しい。関わる因子(細菌の種類、ヒトの食生活、生活環境、年齢)が多すぎて、マイクロバイオームがヒトの健康状態に関与していることはわかってきても、ピンポイントで、「どの」細菌が「どのように」関わっているかを詰めていくのが容易でないの -
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腸って凄い。いや凄いのは細菌だけど…と思わせてくれる1冊。最初は「カイチュウ先生」のアメリカ版かなぁ、と読み始めたのですが、最新の研究結果(マウスによるものも多いですが)も多く、かなり説得力のあるものでした。
とりあえず第6章だけを読んでみれば、マジかよ!となるのではと。腸内の微生物相ことマイクロバイオータさんについて、脅威のエピソードが連ねられています。健康とかそういうレベルは何となくわかるのですが、記憶力やら性格にまで影響してきますかね!
人間がハードウェア、OSのレベルだとすれば、マイクロバイオータがミドルウェア的に色々な機能を追加しているということでしょうか。そして、マイクロバイオー -
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分業は、交換という性向のおかげで達成された。
交換→分業→専門化→革新→時間の節約→生活の多様化→豊かになる。
資産市場は、投機、群集心理、不合理な楽観主義、独占や超過利潤、などで相場が上下する。
合理的な楽観主義。危機を脱却できる。
国内で格差が拡大しても、世界で見れば格差は縮小している。統計のパラドックス。
健康面、教育面では確実である。
ソローの自給自足は、現代では成り立たない。
労働の分割ではなく労働の掛け合わせ
物々交換の開始
交換は発明された=犬は交換しない。
男女による分業。
捕食者が獲物を獲り尽す前に、捕食者が激減する。
人類は、他の代替のお捕食物を開拓することで、 -
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ペルム紀末の大絶滅が古生代を終わらせ,白堊紀末の大絶滅が中生代を終わらせたように,現在進行中の種の激減は「人新世末の大絶滅」となって新生代を終わらせてしまうのだろうか?
先史時代から大型哺乳類を狩って絶滅させてきた人類は,近代化以降,化石燃料の使用による地球温暖化・海洋の酸性化,輸送による外来種の拡散,開発による棲息地の分断によって動植物の絶滅をさらに加速させてきてしまった。その速度は前例を見ないもので,この事態はやがては人類自身の絶滅にまでつながるのかも知れない。豊富な具体例とともに警鐘を鳴らす一冊。
初めて聞いたときは「人新世」なんて大袈裟な,なんて思っていたりもしたけれど,認識が甘かった -
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脳の一部摘出手術を受け記憶する能力を失ったH・Mことヘンリー・モリソンについて50年近く研究を通して歩んできた学者がその間得られた脳の機能について、およびH・Mの人生について記述する。
H・Mは転換の重い発作のため1900年代半ばに海馬周辺の摘出手術を受ける。その時はわからなかったが、両方の海馬の機能を失うことで30秒程度以上の記憶を保持することがほとんど出来なくなってしまった。一方手術以前の記憶は残っていたり、体を動かすような記憶や意味記憶(エピソード記憶でない)はわずかではあるが出来ていたりする。これは記憶が単に脳のある箇所だけで行われるのではなく、様々な部位で行われることを示した。また意 -
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ネタバレ望みをかけて臨んだてんかんの治療のための手術で
脳の一部を切除し、術後からの記憶をとどめることが
出来なくなったヘンリーの記録。
現在に閉じ込められた…と聞いても
中々どんな状況なのかなんて想像もつきません。
会う人々がみんな知らない人。
今いる場所もわからない。なぜそこにいるかも。
お腹がすいているかもや喉の渇きもわからない。
時間がたつとどこがどういう風に痛いのかも説明できない。
家族が亡くなったのも覚えていられない。
こんな状況で、いつも笑みをたやさず
自分からすすんで脳科学の研究に協力するヘンリー。
自分らしさを形作るものは、膨大な過去が
積みあげてきたものによると思っていた私 -
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ネタバレてんかんの外科的治療のため両側の海馬+海馬傍回を切除したHMは新しい物事を覚えようとしても15秒以下しか記憶がもたないという重度の健忘症に苦しめられるようになった ー 非常によく調べられ、有名な患者であるHMについて、主研究者であったスザンヌ・コーキンが記した本。内容的にはセンチメンタルな部分は少なく、神経心理学的な話が中心。多少なりとも神経科学の知識がないと難しいかもしれない。
これまであまりよく知らなかったが、HMは手術を受けたあともてんかん発作には悩まされていたという。また、抗てんかん薬の副作用らしき小脳萎縮も顕著で、運動を指標とする検査結果の解釈は若干慎重に行うべきらしい。
HMは -
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「昔は良かった」という人達がいるが、現在の世界は50年前に比べて格段に良くなっている。便利なものはより便利に、より安く入手・使用することができるようになった。平均寿命も延び、乳児死亡率も低下している。
著者は自分が「合理的な楽観主義」だという。資源の枯渇や環境汚染が騒がれているが、新たな資源の可能性はいくらでもある。また環境汚染でも、排気ガスが発する有害物質は減っている。この先の世界もそう悲観するものではない。
ということが具体的なデータを並べて示されている。
著者は原子力発電が主力になっていくとしているが、これは東日本大震災による福島の事故から修正されるべきだろう。著者の今の考えはどう -
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人類の10万年史を振り返ると、近現代の生活水準の向上は驚くべきものである。現代社会の抱える恐るべき貧困でさえ、個別的な事例の悲惨さはさておき全体的な視点から見れば、過去の歴史における破局的な貧困よりはマシであるのは間違いない。ことによると我々人類がマルサスの罠に捉えられていたころの平均的な生活水準でさえ、現代人の感覚からすれば貧困状態と言っても間違いかもしれない。我々は、ともすれば、この科学技術社会を語る際に、産業革命以前の社会のノスタルジックな側面と対比しがちであるが、ノスタルジックな幻想を抱くことも多いが、「世界は常に良くなってきた」ことを、もっとキチンと認識すべきである。
というのが、 -
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