【感想・ネタバレ】腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方のレビュー

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ネタバレ

マイクロバイオータの存在と免疫

2018年06月01日

腸科学
https://t.co/wPQyDk26rR
https://youtu.be/KfZBsDup-vk

粘膜免疫系は、一方が脅威に激しく反応する(炎症誘発)、他方が、脅威が去ればこの激しい反応を抑制する(抗炎症)。制御性Tレグ細胞は、このバランスをもたらす。マイクロバイオータの排...続きを読む泄物の主成分に短鎖脂肪酸があり、これらの分子は、制御性Tレグ細胞を増やすのを助ける。

病院の免疫療法は、炎症を意図的に起こして、がん細胞への攻撃を期待するもの。この手法の危険性は、善玉菌まで標的となり、炎症性腸疾患に見舞われること
マイクロバイオータを育て、彼らの活動による免疫機能回復の方が安全で結果を出す。

病院の免疫療法より、自然循環療法による自然免疫発動が、安定的で安全な根拠。

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Posted by ブクログ 2017年05月03日

ヒトの体内あるいは体表面にともに棲む微生物(=マイクロバイオーム)についての本を何冊か読んできている。
本書は微生物学者夫妻によるもので、最新の研究結果も織り込みつつ、専門用語を交えすぎないわかりやすい仕上がりになっているところが長所だろう。巻末のかっちりした参考文献と腸内細菌を育てるレシピが同時に...続きを読む1冊の本にあるところもなかなかおもしろい。

マイクロバイオームの話は難しい。関わる因子(細菌の種類、ヒトの食生活、生活環境、年齢)が多すぎて、マイクロバイオームがヒトの健康状態に関与していることはわかってきても、ピンポイントで、「どの」細菌が「どのように」関わっているかを詰めていくのが容易でないのだ。それは往々にして「どの」1つの細菌という話ではなく、複数の細菌のバランスの問題であったりする。ヒトの側の要因も数多い。どれか1つの「善玉細菌」さえいれば万人によい結果が生じるというような単純な話ではないわけだ。
但し、どういった病状のときには、どういった種類の細菌が多い傾向があるといった形で徐々にデータは蓄積されていて、「いずれ」は、微生物を駆使した(おそらくは個別化もされた)医療への道も拓けていくのだろう。だが、それには相当の時間が掛かる。
そういった複雑さも本書を読み進めていくと段々呑み込めてくる。

人体と微生物の関わりを考える上で、抗生物質の登場は外せない。確かに感染症と闘う上で非常に重要なツールではあったものの、抗生物質はいささか強力過ぎた。悪さをしている細菌だけでなく、根こそぎ焼き尽くしてしまうのだ。
加えて、我々にとって細菌は「敵」だというイメージを植え付ける上でも大きい存在であったように思う。とりあえず「ばい菌を殺してしまえ」という姿勢が出来てしまったのだ。
その結果、現在、抗生物質の処方は必要以上に多すぎ、そのことはもしかしたらアレルギーや肥満の形成に役割を果たしている可能性もある(理由はともかく、動物への抗生物質投与で成長の度合いが高まることが実際に知られている)。特に小さいうちから抗生物質に晒されることで、子供のマイクロバイオームが正常に発達しない可能性がある。そのことが「現代病」に寄与している可能性は排除できない。それがどれほどなのかは今後の研究に委ねられるとしても。

ただ、マイクロバイオームの話でもう1つ難しいのは、ピンポイントで指し示せない現状では、「偽科学」の入り込む余地がかなり大きい、ということかもしれない。人は得てしてわかりやすい話に飛びつく。「○○菌」とついた眉唾話は巷にあふれかえる。
いずれ、エビデンスを伴うものが出てくるとしても、それまでは、ナントカ菌に騙されるよりも、より健康的なマイクロバイオーム育成に役立つと思われる食事(繊維が多く脂肪やカロリー過多でない)を採るよう努めることが現実的かもしれない。
そういう意味では巻末のレシピは(そのままは使えなくても)参考になりそうだ。

「生まれ」か「育ち」か、という議論がある。
ヒトは自分の持つ遺伝子は変えられない。けれども体内・体表面に棲む微生物をある程度変化させることは出来る。それが実は健康には相当役立つ可能性はある。
本書の一番の美点は、複雑なマイクロバイオームを、敵としてだけでなく、「同士」として捉える視点を提供してくれていることかもしれない。
レシピを取り入れたからといって、即、超絶健康体になることはなくても、少なくともお通じはよくなっていきそうである。それだけでも試してみる価値はあるかも。

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Posted by ブクログ 2017年03月29日

腸って凄い。いや凄いのは細菌だけど…と思わせてくれる1冊。最初は「カイチュウ先生」のアメリカ版かなぁ、と読み始めたのですが、最新の研究結果(マウスによるものも多いですが)も多く、かなり説得力のあるものでした。
とりあえず第6章だけを読んでみれば、マジかよ!となるのではと。腸内の微生物相ことマイクロバ...続きを読むイオータさんについて、脅威のエピソードが連ねられています。健康とかそういうレベルは何となくわかるのですが、記憶力やら性格にまで影響してきますかね!

人間がハードウェア、OSのレベルだとすれば、マイクロバイオータがミドルウェア的に色々な機能を追加しているということでしょうか。そして、マイクロバイオータは食事である程度コントロールできる、と。何だか面白いけど、凄い話。
あまり囚われすぎても良くないのでしょうが、やって損にもならなそうだし適度な範囲で暮らしに取り入れていきたいと思わせてくれる本でした。

なお、巻末に「メニューとレシピ」がついていますが、これらは日本で実践するにはひじょーにコスパが低そう。アーティチョークなんかは日本で調達するのは骨が折れそう。一部に和食のテイストが取り入れられていますが、蕎麦のピーナツ味噌ソースはあんまり食べたくないなぁ。。
まぁ、和食自体が腸内細菌にとっても悪くない食事のようで、今の食事をベースに意識して食物繊維を増やしていけば良いのかな、と思いました。

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Posted by ブクログ 2019年08月19日

腸内細菌叢が大きく変わった要因は、工業生産された加工食品の増加、抗生物質の乱用、帝王切開の増加、母乳保育の衰退があげられる。

産道を下りていくる胎児は、母親の膣と肛門にいるマイクロバイオータまみれになり、新生児に受け継がれる。産道を通らずに帝王切開で生まれた人は、肥満、アレルギー、セリアック病、虫...続きを読む歯にかかりやすいという研究結果が多い。

乳児に対する抗生物質の使用は、喘息、湿疹、肥満など多くの疾患の罹患率の高さと関連している。また、抗生物質を与えられた乳児は、同年代の乳児より、長期にわたって体重が重くなる。

ピロリ菌が排除されると、免疫系は攻撃すべき標的とそれ以外を見分ける能力を失う。ピロリ菌がいない子供は、喘息やアレルギーを発症しやすい。子どもの時期にはピロリ菌を排除せず、壮年になったら除菌することがいいのかもしれない。

乳酸菌などの有用菌は、免疫系を刺激して人体の防御を強める働きや、腸壁を覆う細胞の間を埋めるタンパク質をたくさん作らせ、腸壁を丈夫に保つ働きがある。しかし、腸内の環境を好むものは少なく、腸内を通過するだけで、やがて排出される。

プロバイオティクスの使用に関する科学的結論は得られておらず、医療現場は、有害ではなさそうで、有益かもしれないという立場に立っている。

マイクロバイオータの食べ物になるプレバイオティクスの代表であるイヌリンは、最大で60個の果糖分子がつながったもの。タマネギやニンニクなどの野菜や多くの果物に含まれる。植物性の炭水化物重合体と食物繊維は、ほとんどがプレバイオティクスと考えてよい。

腸内のマイクロバイオータは発酵によって短鎖脂肪酸をつくり、腸はそれを吸収して熱量を得る。

グリセミック指数(GI)より大切なものとして、一人分当たりの食物に含まれる炭水化物の量を示すグリセミック負荷(GL)がある。カボチャのGIは高いが、一人分の分量が血糖値に与える影響は小さい。

小麦は、変質しやすい胚芽を取り去ることによって、貯蔵期間を大きく延長でき、外皮のブランを取り除くと、ふわふわで白い小麦粉ができる。胚芽には脂質が多く、繊維も含んでおり、ブランは繊維質のため、マイクロバイオータの餌であるマックが減ることになった。

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Posted by ブクログ 2017年01月09日

本のタイトルは、私のお得意の誤字ではない。一時期ブームとなった、超に続く、超科学の誤字ではと思われる方もいるかもしれないが、腸の科学なので、腸科学なのだそうだ。

それはさておき、この本を読もうと思ったのは、昨年のTVドキュメンタリーがきっかけだ。そのドキュメンタリーでは、アメリカでは糞便移植(?)...続きを読むが行われており、糞便バンクまでできていると言うのだ。

???である。

入門書であるこの書籍で認識しなければならないことは、


・食物の栄養の吸収において微生物による分解が必要であること
・微生物は多種多様にいるが、その割合が重要であること
・微生物の種類の豊富さ、割合の偏りによって、体質、そして性格までかわること(まだ究明されていない部分が多い)


ということだろう。

特にこの分野でアメリカでの研究が進んでいるのは、食文化が単一化し、微生物層が貧困となってきており、病気が多発しているからであるようである。

旧来の、日本の食生活であれば、そのようなことにはならないと考えられるが、スナックが食事の代わりとなるような時代となれば、そんなことも言っていられないかもしれないだろう。

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