鍛原多惠子のレビュー一覧
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失われた都市ウバール
モルモン教はマヤ人が失われたイスラエルの民であると主張した。1830年刊のモルモン書にレーマン人として登場する。レーマン人は紀元前600年ごろにイスラエルを出て、アメリカへ海路渡ったとされた。20世紀になるとモルモン教会は多額の資金を投入して大勢の考古学者をメキシコと中南米に送り込み、遺跡発掘によって真偽を確かめようとした。この試みは貴重な発見につながったものの、モルモン史観とは矛盾。
リモートセンシングに使うライダーはアメリカの軍事技術を利用しているため、なかなか使えない。
メキシコのアンガムコの遺跡には、上空から見ると鍵穴のように見えるピラミッドもあった。 -
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ネタバレまるで自分も秘境の古代遺跡発掘に参加しているような、そんなリアルなドキドキ感を味わえる一冊だった。簡単には人が立ち入ることのできない、蛇やジャガーがうろつくジャングルに、命をかけて乗り込んで行く。現代の最新機器を持ち込んで、昔よりは的確に目的地へたどり着けるようだけれど、それでも大きな危険が伴う事に変わりはない。古代遺跡を見つけた!すごかった!だけの話では無く、その場所がなぜこんなにも時を超えて忘れ去られた場所になっていたのか。その謎を探ると、昔ヨーロッパ人が植民地化のためにやってきてから、先住民たちの数が激減していった歴史なども知ることになる。現代にも受け継がれている恐ろしい感染症の話など、
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てんかん治療として海馬を手術によって除去され、記憶障害となった有名な患者H.M.。著者は、彼を長年研究した医師である。本書で彼はH.M.=ヘンリー・グスラフ・モレゾンとして再度名前を与えられ、単なる特殊な症状を有する研究対象ではなく、ひとりの人間としての彼の人生に光を当てられる。多くの脳神経科学を紹介する本でも紹介されたH.M.が、つい最近の2008年まで存命だったというのは驚きだ。今後脳の海馬切除手術は行われることもなく、H.M.のような患者は二度と現れないことを鑑みると、PETやfMRIなど脳内の活動を計測する装置が進化した近年まで存命であり、それらによる検査を受けることができたのは科学に
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まさに啓蒙書。蒙を啓くというか目からうろこがボロボロ落ちるというか。あまりの楽観論なので都合の良いところばかり鵜呑みにする危険性はあるが、悲観論に首元までどっぷり浸かった現代日本人にはこれくらいの本が適していると言えるだろう。文明バンザイ、成長バンザイ、都市・交易・イノベーションによる繁栄。現在が最も恵まれた時代であるという主旨は、後発書の「暴力の人類史」にトーンが近いが、「暴力」は膨大な数値データ・グラフで説得力を持たせるが、本書は語り口と参考文献で首肯。
いかにして現生人類は今ここにあるか。
年号はほとんど無いが、ある意味、これが「世界史」と言えると思う。
繁栄に群がる寄生者・略奪者で -
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本書によると、人類とその他の生物の違いは分業化からくるイノベーションにあり、そのおかげで例をみない繁栄ができたとある
本書の細部がどこまで正確かは議論があるとは思うが、
全体像としては極めて正しいと思う
未来に対して楽観主義過ぎる様にも見えるが、
イノベーションに制限を加えない前提においては、
正しいのだと思う
ところで、本書の視点で日本を見ると怖くなる
世の中的に先端の研究開発していると見られている
企業ですら分業が下手で突出した個性を活用できない
(問題意識はあるのでまだましだが・・)
教育、特に初等教育は更に悲惨で問題意識すらなく
分業のアーキテクチャーを構想できる人材や
分業化において -
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未来はよくなる、絶対に。
恥ずかしげもなく抜かしてしまったが、そう言いたくなるくらい、清々しい読後感だ。
人類は「分業」と「交換」によって進歩し続けてきた。今後もそれは続くだろう。それどころか、ますますそのスピードは上がり、かつてない繁栄(!)がもたらされるだろう。
著者の主張は、このことに一貫している。ドキドキするくらい楽観的だ。
極端な悲観論者を、パオロ・マッツァリーノ氏が「スーペーさん」と呼んで茶化している。悲観論は後ろ向きになるだけで、いいところがないのだ。悲観論を打ち破り、楽観的になれ。実はそれこそが何よりも難しいことかもしれない。 -
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生物学的な考え方から組織のあり方、リーダーシップのあり方を説いた一冊。
ダンバー数が150人ということは何となく聞いたことがありましたが、それがどういう意味で現代社会にどう影響をしているかということを改めて知ることができました。
冒頭で、著者はこの本の目的について、このように述べています。
○私たちの心理と行動が適応しているのは非常に小さな世界であって、現代人が暮らす大都市や仕事をするメガ組織ではないのだ。現代社会においてあらゆる人間の組織が直面するジレンマとストレスは、私たちの本来の姿と現在暮らしている環境間の緊張状態によって生み出されるのだ。これが本書の要諦である。
動物の脳の大きさなどに -
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菌類が生物界に与える影響とその驚くべき能力について説明した本。
生物界の複雑性と奥深さを思い知らされる内容だった。本書によると、推定で世界には220-380万種の菌類がいる(植物の推定種数の6-10倍)が、まだ菌類全体の6%程度しか発見されていないとのこと。その僅かな発見済の菌類の能力をあげても、パンや酒を発酵させるのは勿論のこと、汚染物質を分解し、ペニシリンを生成し、宇宙空間でも生存でき、時速100kmで胞子を放出し、個体間で後天的に遺伝子を伝播させ、菌根ネットワークを構築して植物間の炭素、リン、水分、そして(仮説段階であるものの)電気信号のやり取りを可能にしている。
本書を読んで、菌類 -
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マザーツリーという本を読んで以来、のめり込んでいる菌根の世界。違う人の視点もみたいと思って。菌根に関わるところだけ抜き出し読みした。
共生菌根ネットワークのはたらきについて、シマードの本では樹木を主体に解説されていた。その一方で、菌類側から同じ現象を解釈することも必要だよ、という意見があるのはこの本と、「もっと菌根の世界」でも触れられていたが、今回は菌類サイドに立って自分なりの仮説をたてることができたのが大きな収穫。
「枯れかけた樹木から周りの木々(とくに自分と血縁関係のある樹木)に、残された養分が分配されている」という現象を、シマード本で読んだ時は母の愛やお涙頂戴的に解釈した。それを菌類 -
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何年も前から読もうと思っていた本書をやっと読めた。
重度のてんかん治療のため、脳の外科手術をおこなった結果、記憶する能力を失った男性の50年にわたる臨床と研究の記録だ。
脳の外科手術というと、映画にもなったロボトミー手術を思い浮かべるが、こちらはもう実行されることはなくなっている。本書で取り上げられている手術も当時としてもかなり実験的だったようで、手術がもたらした結果を受けて、執刀医は「同様の手術はやってはいけない」と結論づけているとある。ただ、服薬ではなかなか改善が難しい病態のてんかんも実際にはあって、事実私も、以前の職場で、脳の一部切除を受けた人を二人ほど支援していたことがある。生活に支障 -
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ネタバレ子供の人生は腸で決まる
◯マイクロバイオーム(真正細菌、古細菌、真菌、原生生物、ウイルスが形成)は変えることぎできる。
・3歳までは極めて流動的
・経膣分娩では、新生児な母親の細菌を受け継ぐことができ、長期に渡り健康に良い影響を与える。
・膣播種: ガーゼかタンポンを膣に挿入し、1時間ほどそのままにする。出産後に赤ちゃんの健康状態を確認し、赤ちゃんの口、鼻、耳、皮膚、会陰部を拭う。出産前の妊婦の病原体検査で問題なければリスクは極めて低い。
・遺伝子組み換え作物に特にそうでない作物との安全上での差はみられていない
◯母乳の特別さ
・多様なオリゴ糖がたっぷり含まれ、これが腸内のBインファンテ -
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そもそもこの本の主張となる懐古主義的「原始生活が幸せ」論には、感覚的に賛同できない。確かに、ハーバードMBAとメキシコ人漁師の話のように、本当の幸せは、欲張らずにのんびり暮らす事だという感覚は大賛成だ。しかし、餓死や疫病、暴力から、文明は少しずつ良くなっていると信じたいし、というか、文明化しなければ支配されるという構造的な必要性から、そもそも選択肢がなかったような気もする。
しかし、そうした競争がないなら、本質的にこの本の主張は正しい(気がする)。特に以下の話は気になる部分。コロンブスの話は、まさに、文明の先行者が支配するという凄惨な具体例だ。その後の資源についてもそう。脱文明化は、支配され