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植物に栄養を与える、動物の行動を操る、医薬品や新素材をつくる、有毒物質を分解する、地球の気候を変える、宇宙空間で生き延びる……。私たちの常識を覆すキノコ・カビ・酵母たちの世界!
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Posted by ブクログ
菌糸がどこまでも伸びる ある人がバケツいっぱいのペンキを持って 街を歩くとする バケツには小さな穴があいていて どこをどう歩いたか分かる ペンキで出来たラインは全て菌糸にとっては 身体なのだ だとすれば、私たちも歩いて来た道のりの全てが 身体なのかもしれない 人類全ての移動の軌跡を可視化して...続きを読む 重ね合わせる 世界地図の上に出来た網の目それ自体が 世界そのものではないのか
菌類が生物界に与える影響とその驚くべき能力について説明した本。 生物界の複雑性と奥深さを思い知らされる内容だった。本書によると、推定で世界には220-380万種の菌類がいる(植物の推定種数の6-10倍)が、まだ菌類全体の6%程度しか発見されていないとのこと。その僅かな発見済の菌類の能力をあげても、...続きを読むパンや酒を発酵させるのは勿論のこと、汚染物質を分解し、ペニシリンを生成し、宇宙空間でも生存でき、時速100kmで胞子を放出し、個体間で後天的に遺伝子を伝播させ、菌根ネットワークを構築して植物間の炭素、リン、水分、そして(仮説段階であるものの)電気信号のやり取りを可能にしている。 本書を読んで、菌類は生物史や人類史で暗躍するフィクサーのような印象を受けた(別に菌類は隠れて何かをやっている訳ではなく、ただ生きているだけだが)。というのも、生物が水中から陸上へ上がるのも、人類の生活様式が狩猟採取から農耕へ変化するのも菌類がいなければ起こっていないし、もっと細かいことを言えば、ジャレド・ダイアモンドが「銃・病原菌・鉄」で述べていたように、文明間の力関係にも決定的な影響を与えている。 個人的には菌類が持つ除染能力には非常に興味があり、我々が直面する環境問題の解決の糸口の一つになれば良いのにと考える。菌類を使った先端技術はコスト的にまだまだ高く、実用化に苦戦している場合が多いと聞いたことがあるので、産官共同でこの分野に大きな投資が行われて、新たなイノベーションに繋がれば良いと思う。
マザーツリーという本を読んで以来、のめり込んでいる菌根の世界。違う人の視点もみたいと思って。菌根に関わるところだけ抜き出し読みした。 共生菌根ネットワークのはたらきについて、シマードの本では樹木を主体に解説されていた。その一方で、菌類側から同じ現象を解釈することも必要だよ、という意見があるのはこの...続きを読む本と、「もっと菌根の世界」でも触れられていたが、今回は菌類サイドに立って自分なりの仮説をたてることができたのが大きな収穫。 「枯れかけた樹木から周りの木々(とくに自分と血縁関係のある樹木)に、残された養分が分配されている」という現象を、シマード本で読んだ時は母の愛やお涙頂戴的に解釈した。それを菌類サイドの視点ではこうなるのではないか? 「枯れかけた樹木に見切りをつけた菌根菌は、その木から残された養分をすっかり奪い取って、未来ある若い健康な木々に配分し、自分(菌根菌)の成長に不可欠な炭素の供給が滞らないようにしている」 菌根菌に意志があるとは考えにくいが、生命維持のために行動するのはどんな生物でもみられること。この本を読んで、より科学的に菌根菌を見られるようになった気がする。
キノコは身近でありながら、わからないことがたくさんある。地球上の生き物の役割としては分解者であると習ったが、それ以上に様々な能力を持っているということが、著者である生物学者によって整理されている。世界を救う存在として、今まで知られていなかっただけ?なのかもしれない。南方熊楠のようなグローカルで一つの...続きを読む領域に止まらない研究者が、今後も登場することを願ってやまない。菌類についてもっと知りたくなる一冊だが、入門書としてはちょっとばかり難しいかも。
あらゆる生き物は菌類によって生かされている。知らないうちに操られてさえいる。菌類は環境汚染を解決し、深刻な病を治療する可能性を秘めている。超過酷な環境にも耐える。時には私たちの胃に美味しく収まる。漫画でもありえないレベルの大活躍。すごいぞ菌類!そんな驚きに満ちた本。
とても興味深い内容なので読み始めたが、途中から文章が難解になり、読んでも頭に入らなかった。きっと言っていることは自分の関心するところなのだろうけども、入ってこないので…これは再読が必要だと思いながら、再読する時期は、だいぶ先になりそう。大事なことなのに。
" アメリカ先住民ポタワトミの一員で生物学者のロビン・ウォール・キマラーは、ポタワトミに固有の言語は動詞が豊富で、ヒト以外の世界に生き生きとした感覚を与えると言う。たとえば、「山」という語は動詞であり、「山になる」ことを意味する。山はずっと「山になる」プロセスにあり、能動的に山でいるのだ。...続きを読むこうした「有生性の文法」〔有生性は語が示す対象の生物としての性質を表す〕があるので、他の生物の生活を「それ」と形容したり、伝統的に人間に使用される概念を借用したりせずに記述することが可能になる。これに対して英語では、「他の生物の存在という単純な事実」さえ認めることができないと彼は述べる。もしあなたがヒトでないなら、あなたは自動的に無生物になる。つまり「それ」あるいは「ただの物」になるのだ。ヒト以外の生物の生活を理解するためにヒトにかかわる概念を持ち出すなら、あなたは擬人化の罠に嵌っている。「それ」という語を使うなら、あなたは生物を客観視することで別の罠に嵌る。――P.54" " 菌類は驚異的な分解者だが、彼らの多くの生化学的な業績のうちでももっとも印象的なものの一つが、木材に含まれるリグニンを分解する白色腐朽菌の能力である。フリーラジカルを放出する能力にちなんで、白色腐朽菌がつくるペルオキシダーゼは「ラディカル化学(radical chemistry)」として知られる仕事をする。「ラディカル」〔ラディカルには「急進的」、(化学の)「基」などの意味がある〕はまさに言い得て妙だ。これらの酵素は地球上における炭素の循環を永遠に変えたのだ。今日、菌類による分解――その多くは木材の分解――が最大の炭素放出源の一つであり、一年につき約八五ギガトンの炭素を大気中に放出している。二〇一八年に人間が化石燃料を燃やして排出した炭素は、約一〇ギガトンだった。――P.216" いままで特に強い印象をもっていなかった菌類というものに対して、ボルボックスやイスカに類するものを想像させる。そんな発想をしか得られない門外漢だが、非常に刺激的で読みやすい内容だった。 こういう知識に出会うと、中学・高校で、学問というものには現状最新というステータスがあることを教えてくれる教師に出会えなかったことが悔やまれる。これが世の理だとばかりに与えられた知識が暫定的なものにすぎないと教えられなかったことに。
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菌類が世界を救う キノコ・カビ・酵母たちの驚異の能力
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