三田誠広のレビュー一覧
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三田誠広さんの『僕って何?』が芥川賞を受賞したのは私が大学の時だった。それ以来,ほとんど彼の本を読んでいなかったが,『十七歳で考えたこと』というタイトルにひかれて読んでみた。
彼は高校時代一年間学校を休んだ。今でいう不登校だ。彼は文学の世界にのめり込み,本を読んで読んで読みあさった。ドストエフスキー・ツルゲーネフ・キュルケゴール・パスカル・・・。彼は文学ばかりでなく哲学書も耽読していった。
十七歳の頃,自分も不安定だった。いつも「いかに生きるか」ということと「恋愛」や「友情」について悩み,苦悶していた。だからこそ,音楽や文学そして哲学にのめりこんでいった。レベルは全然ちかうけど・・・。今,あの -
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20世紀の思想界を席巻した実存主義と構造主義の考え方を平易に紹介するとともに、戦後の日本文学のなかでこれらの思想がどのように受容されているのかを論じた本です。
著者は、実存の病に苦しんでいる人間にとって、みずからの抱えている問題がこれまでいくどとなく繰り返されてきた構造の反復であることが「救済」になりうると主張します。そのうえで、大江健三郎と中上健次の作品をとりあげ、彼らが戦後の日本文学にもたらしたものについて考察が展開されています。とくに著者は、大江の『万延元年のフットボール』や中上の『枯木灘』『千年の愉楽』に注目し、そこで反復する物語の構造を自覚的に作品のうちに取り入れることで、戦後の日 -
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むりやり誘われて参加した左翼の集会
なりゆきでセックスして同棲に到った女
党派性を帯びた集団行動のうち、みんなが同じひとつの方向を向いて
川の流れのように液状化する心
そういった体験どもに、はたして自分の主体性があったのか
という疑問を抱いて、また別の流れに乗り換える「僕」
そして気づけば結婚の話が持ち上がっている
主体性のない人生は不安だ、いつ梯子をはずされるかわからないから
だがなにもかも裏切り、また裏切られて、孤独になったとき
彼はひとつの秘密を抱え込むことで
「僕」の実態をつかんだような気持ちになるのだった
しかしそんなものは
川の流れと「僕」の秘密を相対化させることで得られた錯覚にす