大河原遁のレビュー一覧
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雑貨商の井ノ原からの依頼を突端にした、夏のリゾート地での着こなしを紹介する「愛しのカプリ島」編である。
フォーマルなスタイルの範囲ではあるが、やや気軽なパーティでのスタイルを紹介する内容は興味深いところだ。それが役に立つ日が来るかというと、すこぶる微妙ではあるが……。
井ノ原氏のような、正味貧相と言っていいだろう日本人のおじさん顔を使ってこうして色々とコーディネイトしているのも興味深い。正直、服が勝っている部分もなくもないが、こうしたスタイルを試していく余裕もまた、ビジネスマンとしてはあって然るべきだろう。
今回は星五つで評価している。 -
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ツッパリ系ルポライターのチェレスティーノ・バルツァーギをキーキャラとした「モノトーンの彩り」編である。
彼の曾祖父、北部財界に影響を与える財閥総帥に彼のスタイルが忌み嫌われている人間関係をベースに、その関係をほぐす過程で出会ったフリーアナウンサーのサブリナ嬢との恋愛なども挟み、しかもその背景にはファシスト党という歴史的な存在も絡んでいるという、結構詰め込んである一巻だ。
内容的にはしっかりとしていて、なおかつキーキャラである彼も好感の持てるキャラ像をしている。読みやすく、読後感も良い一冊であった。
星五つで評価している。この第二部で一、二を争うだろう質の物語であった。
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今回は再びのジョナタ。油虫と忌み嫌われる織部の兄弟子リッカルドと対決しながら彼がモードの奥深い世界を垣間見る「仕立て学校 モード×クラシック」編である。
修行に嫌気の差したジョナタがモードへの転向を狙うも、リッカルドとの対決を通じて己の土台の脆さを実感していく改心の物語となっているが、非常にスマートな展開だろう。
妙な理由でジョナタが勝利することのないリアリティなどは、両者の特徴と状況を上手く整理しているがゆえのことに思える。この辺はさすがの腕前であろう。
今回は星五つで評価している。しかし、ジョナタのような扱いづらいキャラを使い捨てにしないあたりはさすがと言うべきか。 -
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アメリカでステーキチェーンを展開するジョー・ローリングがイタリア進出を狙い、ジラソーレからの紹介で織部の店を訪れる「魅惑のシャツ」編である。
今回は連作短編。少しずつ理解を進めるような形で、様々なシチュエーションで使えるスーツとシャツの組み合わせを紹介している。イタリアにおける白シャツのフォーマル感などは参考になる情報だろう。
物語も、彼の大学時代の恋人との顛末が描かれ、そこには色濃く薫るような過去の恋愛の残滓があった。顛末は予想されるところであったが(この作品でそこまで艶っぽい物語は展開されないだろう)、彼による復讐劇にはだいぶ笑わせていただいた。
今回は星五つ。
元カノへのこう -
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仕立て屋協会の抗争が丸く収まる第三巻である。グランドジャンプPREMIUMでの連載が終わった、一応ひと段落した巻でもあるだろう。
内訌が外圧によって解消されるというのは間々あることであるが、ここでも中国からの人材引き抜きによって後継者問題に改めてスポットが当たり、両派が協力して次世代を育てる服飾学校を設立する流れへと繋がっていった。
ここで衝撃のジョジョパロキャラ登場である。どんな経緯でこのキャラが採用されたのか興味深いところだが、原作五部の各キャラほどには濃くない(しかもギャングではなく単なるチンピラ)ので、きちんと物語の中に納まっている。
今回は星五つ。やはりジョナタのインパクト -
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雑誌の大幅再編成によりシリーズをクローズさせることを余儀なくされた完結巻である。ここではやや足早に物語は展開しているが、次のシリーズが楽しみとなる伏線が敷かれているのはさすがだろう。
今回は夏のエスコート編をテーマに仕立てが為されていて、少し珍しいのはラウラ個人で引き受け最後まで織部の助けを借りなかったorder197「お茶漬けの味」だろうか。途中で織部の見解を挟むようなこともなく最後まで描いたのだから、彼女もまた成長著しいのかもしれない。
失敗に終わったペッツォーリ氏とユーリアの会談など、ペッツォーリ社のナポリ進出も含めてこれからの展開に期待できる内容となっていた。
シリーズ全体の評 -
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29巻からは欧州の紳士服界に騒乱をもたらす腕時計編が始まっている。
スイスの独立時計職人の嫁取りに端を発したジラソーレ社の腕時計を含めたトータルコーディネイトプランに各社が素早く反応、それぞれが温めていた企画を即座に立ち上げていく流れは、新雪に塗れた坂から転がり落ちる雪玉のように、徐々に事態を大きくしていっている。
構成の巧みさがいかんなく発揮された、非常に楽しい一冊となっていた。イギリス編でのサヴィル・ロウの一件は、やや肩透かしの形で終結していたが、今回はどうなるのか注目したいところだ。
この巻の評価は星五つとしている。物語が膨らんでいく展開はさすがの一言であるし、紳士服に比べると -
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28巻は織部の過去を描いた「シチリア・マフィア編」が収録されている。シチリアのファミリーでの跡目争いに巻き込まれた織部が、少壮にあっても今と変わらず動じぬ姿で注文のツイードジャケットを仕立てる姿が描かれている。
とはいえ、ここではツイードという生地そのものが重要な役割を果たしており、「先代と同じ仕立てのはずなのに、そこにオーラが伴わない」という問題には織部も頭を悩まされている。その解決がなされたのは物語終盤。
全体を通した展開もダイナミズムがあり、一冊の巻としての構成がよく計算された相変わらずの見事な手並みであった。
長期連載ゆえの構成の妙であろう。これもまたシリーズの旨味だと判じ、こ -
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今回は記事を主題にした物語が展開されている。物語の横糸としては、ロンドン支店長のクラリッサがナポリ本店のヘルプで戻ってきており、彼女の成長がそれに当たるだろう。
全体を通してみても、ラウラやリヴァルのお坊ちゃんが親から与えられた課題をクリアしたり、織部の元に入り浸りとなっているクラリッサの様子を聞いて駆け付けたエレナが、二人で角を突き合わせながら依頼をこなしたりと、織部の周辺にスポットを当てた形で物語が展開されており、この辺は構成の妙だろう。
相変わらずお遊びもふんだんに施されていて、クラリッサが織部の内弟子になると宣言された次の話の冒頭はだいぶ笑わせてもらった。どこぞの土佐の英雄の逸話 -
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今回はアメリカ編から寄り道して、ペッツォーリの御大を連れ歩きながらの日本編である。日本の世界に誇るべき医療関連会社を紹介しながら、スランプを抱えたペッツォーリ総帥の復活が描かれている。
この物語は服飾の教育という点で際立った部分のある作品ではあるが、今回は特にその傾向が強い巻となっていた。物語と絡めようとせず、ルポ形式でそのまま載せているところなどは非常に潔い。
そうした意味からしても、今回は保存版というべきか。ためになるし、興味深い内容でもあった。
文句なしに星五つである。次回からはなんとハリウッド編が始まるようだが、さてどんな物語となるのやら。 -
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ジラソーレ社ニューヨーク支店長のフェデリカが登場した20巻である。あっさり拉致された織部らは大西洋を越えてアメリカの地へと向かうことになる模様、次巻からはニューヨーク編となるのだろう。
それはさておき、今回も面白かった。特にorder119の「仮面の告白」はコメディとしてゲイを扱いながら、内容の濃いものとなっていて実に面白かった。勧めた担当編集の方はグッジョブである。クラシックにおける裾の短いジャケットがバッチコイ状態を意味している、というのはこのシリーズを読んできた中でも特に感心した薀蓄の類だった。
それ以外も含めて、今回も楽しませていただいた。星五つで評価している。