大河原遁のレビュー一覧
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三つ目のシリーズに移行した本作も四巻目。今回も一筋縄ではいかない仕立てのトラブルを解決する物語が展開されている。
スカジャン好きの中年アートディレクターにベロア地のジャケットを仕立てる「阿弥陀の光背」、ナポリ仕立てとミラノ仕立ての違いに焦点を当てた「僕のアモーレ」「呼び継ぎの腕」、黒スーツという日本的な伝統がトラブルを起こした「黒羽二重の五ツ紋付」など7作が収録されている。
ただ、新シリーズはジラソーレを中心に据えた内容だったはずであるが、ここでの物語は織部に寄りすぎている感は否めない。最後に収録された「市民の護り手」はサービスジャングルとジラソーレが関わるエピソードであるが、やはりメイ -
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ジラソーレ社に焦点を置いた第三シリーズの三作目は、ややごった煮の内容。今までのような〇〇編といったとりまとめは今回見られなかった形である。
さすがに大ネタは攫いつくした感は否めないのだろう、ここではかなり特定のシチュ、例えばボヘミアンスタイルの女性と高級リストランテに入るコーデや、革ジャンでレトロなバイクに乗る上でエレガンテを維持したコーデなどが採り上げられている。
話を転がす手並みは相変わらずお見事で、クロコダイルダンディ(※実際はダサい)が都会で四苦八苦させられる♯17「ワニの涙」などは小ネタで落とす計算がよく為されている。
いつもながら安定した楽しみを提供してくれる。それだけに -
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今回は日本人のスタンダードなスタイルである白シャツを扱った巻となっている。正格なスタイルになりがちな白シャツをどのように(ナポリの感覚で)粋に着こなせるかがテーマだろう。
物語としては、ジラソーレとナルチーゾの小競り合いを軸にして連作短編に近い形で展開している。後半は日本人編集者がイタリア人作家に白シャツを使った難題を叩きつけられた二編が収録されているが、全体を通せばナルチーゾのちょっかいに対応するジラソーレという図式である。
今回は星四つ半相当と評価している。
全体的には良いのだけれど、ハリウッドスターのチャリティイベントのエピソードがやや気忙しいような物語の締め方になっているため -
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新装開店し、第三シーズンを始めた本作は、今回からジラソーレ社に視点を移して物語を展開している。
一巻を通してキャラのおさらいをしているような内容が特徴的だろうか。先のシーズンで顔見世しているライバル的存在、大手通販サイト「サービスジャングル」のイタリア支社長ゾーエのエピソードも加えられていて、彼女もこの新たなシリーズで活躍することが窺われるところだ。
内容的には、改めて一から紳士服を扱っていくようなニュアンスが感じられる。新装開店で新たな読者を得ようという意図も感じられるが、ストーリーとしてみた場合、やはり既存のシリーズを読んでいないと難しい部分も多い気がする。
今回は星四つ相当と評 -
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6巻ではサヴィル・ロウのパウエル親方が成金から狙われ、織部の元に逃げ込んできた「格上の男」編が収録されている。
親方に仕事を手伝ってもらう過程で、ナポリ仕立てとイギリス仕立ての様式の違い・仕事の作法の違いで互いに譲れない部分が出たりもしている。あえて差異を出すことで特徴を際立たせる手法だろう。
親方を指名手配した成金に対しどう対すべきか、という部分に焦点が当たっているが、英国貴族勢にせよ、ベリーニ伯にせよ、フィレンツェの彼女にせよ、それぞれの勢力を上手く絡めて展開させる手並みは相変わらずお見事である。
今回も星四つ半相当と評価している。 -
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アメリカ編が始まった21巻である。本社とNY支社で摩擦が起こりながらも、毎度のようにオーダーを消化していっている。
物語の舞台は当然ニューヨークなのだけど、中にはorder127「注文の多い洋品店」のような変り種も混ざっている。織部自身もアメリカ的な合理主義に揉まれて、少し得るところがあったようであり、物語としては溜めに入っているかのような印象を受けた。
NY支社としては本社からの抗議(織部らを勝手に連れ帰った件についてである)を上手く逸らしながらのらりくらりやっているが、この辺の摩擦もおそらく後の巻で本格的に取り上げていくことになるのだろう。
というわけで、物語としては星四つ半相当 -
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イギリス編に終止符が打たれた18巻である。物語が複雑に展開した割りに着地は軟着陸だった印象である。
その意味で、物語のカタルシスとしてはやや弱い感も否めない。できればジラソーレのカシミアの話はもう一歩踏み込んで描いてもらいたかったところだ。最後に収録されているオリエント急行の特急仕立ては面白かったが、これを次の巻に回してもう一話加えてもらいたかったなと。
そうした意味で、星は四つで評価している。だが、本店へと屋上を返した新生ギルレーズ・ハウスの面々は香港へと戦いの場を移し、力を蓄えて戻ってくるのだろう。今回はその前哨戦と見れば、次なる展開が楽しみになる。 -
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サヴィル・ロウからも一目置かれるイギリスの老舗、ギルレーズ・ハウスの分裂騒動を軸にしたイギリス編始まりの巻である。
一話完結の短編で前半を埋めながらロンドン支店長のクラリッサを登場させ、そこからイギリス編へとソフトランディングさせていく手並みには惚れ惚れとする。展開させながら説明を加え、読者に不要な混乱をもたらさないようによく計算されている。
まだまだ序盤であるがゆえに星四つ半相当と評価しているが(イギリス編そのものの評価は下せるはずもないため、単巻として見ればやや半端ではある)、物語の展開のさせ方、次への引きも含めた楽しませていただいた。次も楽しみにしたい。