伊藤計劃のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
伊藤計劃は中二病だ。優しい中二病だ。それをこじらせたまま逝ってしまった。優しさに溢れた中二病的文章をできればもっと読みたかった。
オリジナルの作品よりは残酷、グロテスク描写は少なかった。文章のそこかしこにメタルギア・サーガへの溢れんばかりの愛情を感じた。
人は死なない。生物学的に死んでも、その人の遺した物語が誰かに伝わる限りはその人は生き続ける。それがこの作品のテーマでありおそらく原作ゲームのテーマでもある。そしてこの作品自体が、作者である伊藤計劃の死後発表されたこと、彼の存在感を世に強く刻み付けたことにより、メタ的にこのテーマを踏襲しているようにも思える。
メタルギアシリーズめっちゃやりたく -
購入済み
単なるノベライズではない
作家・伊藤計劃、そしてMGSのファンとしてこの作品は、その両方の真髄が見える作品でした。
私は伊藤計劃作品の一つとして、この作品を読みだしたため、その作風や描写、構成に至るまで、伊藤計劃らしさが、どこかぼやけて、違和感を感じました。ただ、「本体」であるMGS4ともどのか違う、何か別のものという感じが、第一印象でしょうか。
ただ、読み進めていくうちに、その両方の世界が緩やかに融合していくような、そして昇華していくような、心地よい読書体験へ変わっていきました。
ゲームでは「読めない」MGSがあり、伊藤計劃作品では「読めない」文体がここにあります。
ゲームノベライズとなると、あまりいい印象を持たなか -
Posted by ブクログ
メタルギア・ソリッドというゲームのノベライゼーション。
幸か不幸か僕はこのゲーム未体験。
ゲームを知っていればもっと面白かったかもしれない。
ゲームを知っていればしらけてしまったかもしれない。
ノベライゼーションなのでどこまでが伊藤氏の創作が含まれているのか判らないが(もしかしたら全くないのかもしれない)文句なしに面白く読めた。
読者を先に先にと導く物語への吸引力に満ち溢れており、魅力的なキャラクターが多く登場するし、伏線もきちんと張られており、おもわず「ハッ!」とするような伏線の回収の仕方も見事だったと思う。
ここはどうかなぁ? と思わせる箇所がないわけではな -
Posted by ブクログ
ネタバレこの本はステルスアクションゲーム「METAL GEAR SOLID 4」をノベライズ化したものです。
ゲームの方は、敵に見つからないように潜入するスリルと、映画のようなシナリオがとても人気のある作品です。
小説ではゲームをやっていたときにはわからなかった設定や、キャラクターの心情が補完されているので、500ページ以上ありましたが、終始楽しみながら読めました。本当にこの主人公はカッコいいですし、その相棒との友情も素晴らしく、メタルギアソリッドという作品の良さをさらに高めてくれる良い本です。
その反面ゲームをプレイしていない人は・・・どうなんでしょうね。
実はこの小説の作者、伊藤計劃さんは200 -
Posted by ブクログ
こんなに沢山の引用を登録した本は、他にありません。とても鋭く刺激的な文章です。
ざっと、十四、五年前の(前世紀の!)文章ですが、今でも響いてくる。
伊藤さんの小説作品のアイデアの元というか核になる発想や好みが随所に顔を出しているのも面白い。蒸気機関に対する熱い思いから『屍者の帝国』までは、まさに「あと一歩」。
ちなみに、取り上げられている44本は、名前を聞いたことがあるメジャな作品ばかりですが、実際みたことがあるのは、「踊る大捜査線」くらい。しかも、それもテレビで何となくみただけ。映画館に行ってみた作品は皆無。
ひどい青春時代をおくったもんです。 -
購入済み
善悪の大転換
善悪の大転換が起こる作品です。
主人公に共感出来た人は、読了後心地よい納得感を得られるのではないかと思います。
テロ、虐殺、暗殺、事故死、尊厳死、等々「まだ生きられる命を絶つこと」について、さまざまな視点から主人公が思索していきます。
ですのでものすごく暗い内容ですが、上に挙げた様な命に関わる問題について普段からもやもやしたものを感じている人には、この著者が提案する答えを知るという意味で読む価値があると思います。
あと、私がこの本を買った理由になった本の紹介がありまして、それは
『「人間には虐殺をつかさどる器官がある。呼吸をつかさどる肺や、消化をつかさどる胃という器官があるように。」 とい -
ネタバレ 購入済み
これが本当にラストか
これが伊藤計劃のラスト短編集ということで、心して読みました。
まあ、先に『屍者の帝国』を読んでいたんですが。
全体に絶筆らしいというか、未完成、あるいは習作的なもの寄せ集めという印象ではありますが、遺されたテクストに触れるのは感慨深いものがあります。
なかでも短編としてダントツの完成度を感じさせてくれる表題作には驚かされました。対立する部族に生まれて、殺し合いを強いられる子供達の救いのなさと、欺瞞に満ちたかりそめの平和維持。伊藤さんってこんなに暴力的でワイルドな作品を書くんだ、と思ったりして。
あ、『メタルギアソリッド』は読んでいないのでそっちがどういう作品なのかは知りません。 -
Posted by ブクログ
「少しでも気を緩めれば、ぼくはたちまち絶望のうちへ崩れてしまいそうだ。もちろん、どうすればいいかは判っていた。過去に二度も大切な人を失って、慣れることはできなくとも耐える術は学んでいたからだ。単純にも目蓋を閉じて呼吸を整えれば、気持ちはある程度落ち着けることができる。肉体に気持ちがついてくるのだ。それはある意味で残酷な、人間の肉体と精神に備わる身も蓋もなさだった。そんな自分の心身を、束の間ぼくは激しく憎んだ。」
「世界はささやかな物語の集合体なんだ」と終わる世界。この置いていかれる悲しみはどうしたらいいのだろうか。僕らには国家、組織、規範、時代に囲われた『内』なる自由しかない。いや、それすら