伊藤計劃のレビュー一覧
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とある人物が世間のしがらみから逃れて、再生技術を用いた屍者の軍隊を束ねて、中央アジア奥地で独自の王国を作る……そんな伝聞を確認する任務のために、主人公ワトソンはアフガニスタンへ向かう。
その様子は、小説「闇の奥」または映画「地獄の黙示録」を彷彿させる。
その後、新型の屍者の謎を追い、明治初期の日本、南北戦争ののち勢いづくアメリカへ。
時代は19世紀、設定は“屍者の行動再生技術”のあるSF設定。
死者と生者の違い
屍者と生者の違い
死者と屍者の違い
科学は時に混沌を産み出す。
人物名が「カラマーゾフ」「フランケンシュタイン博士」「ヴァン・ヘルシング」「ナイチンゲール」「レッド・バトラー」などなど、ちょっと捻って登場する。
こうしたSF小説の読み方として、本来は書いてあることを“直感的”にイメージして取り込んでいくことで、本来の物語を楽しむことができる。
ところが、どうしても文字や文章を“理論的”に咀嚼しようとしてしまい、ひどく疲れた。
歳をとったということか…… -
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もともと『ハーモニー』が好きで、SNSで紹介されているのをきっかけに手に取った一冊。正直、SNSで見かける絶賛ほどの期待値には届かなかったけど、普通に面白い。短編集ということもありテンポもよく、一気に読み進められる構成になっている。
なかでも印象的だったのは、伊藤計劃氏の過去作とつながりを感じられる点。直接的な続編ではないものの、世界観や設定がリンクしているような作品がいくつかあって、ファンにはニヤリとできる仕掛けが随所に散りばめられている。時系列や設定の裏側に想像を巡らせながら読むのが楽しい。
伊藤計劃作品をすでに読んでいる人にはより深く楽しめる構成だし、初めて読む人にも短編としてサクッと入れる入口として悪くない。重厚なテーマ性を期待しすぎると肩透かしかもしれないけど、テンポの良いSF短編集としては十分楽しめた。 -
購入済み
伊藤計劃原案、円城塔著
こちらの小説は伊藤計劃さんの書かれた物語ではないですが、小説としては前作の「虐殺器官」「ハーモニー」よりエンターテイメント性があります。伊藤計劃さんが書かれていたらどんな物語になっていたのか•••2つの作品が素晴らしいだけに悔やまれます。しかし、ご本人が1番悔しかったと思いますし、円城塔さんも大変な思いをして書かれたと思います。
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人気ゲーム作品である『メタルギア・ソリッド4―ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』のノベライズ版です。
「PMC」(民間軍事会社)が世界各地で戦争を繰り広げる世界で、伝説の男と呼ばれる「ソリッド・スネーク」は、その肉体の急激な老化に抗いつつ、彼とおなじく「ビッグ・ボス」の遺伝子コピーのよって生まれた「リキッド・スネーク」を暗殺するという任務に就きます。やがてナオミ・ハンターによって彼の肉体に注入された殺人ウィルスが、世界を破滅にみちびくであろうことが明らかになり、ソリッド・スネークはわずかにのこされた時間を、「オタコン」ことハルとともに戦います。
ゲームの世界設定をていねいにおさらいしながら物語が進められていくので、ゲームについて知らない読者でもたのしめる内容になっています。とはいえ、このゲームの熱心なファンだった著者だけに、たんに元の世界を舞台にした一本のストーリーをえがくだけでなく、さまざまな事件へのリンクをぎっしり詰め込んでおり、本の厚さ以上のヴォリュームを感じます。
十分にたのしんで読むことができた作品ではありましたが、伊藤計劃の作品というよりも、「メタルギア・ソリッド」の熱烈なファンによる作品という印象があり、その点に若干の不満を感じてしまいました。 -
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プロパティ所有物 デフォルト初期状態 コンフィグレーション設定値 小銃弾の硝煙 薪のような人間の腕も、裸に剥かれた死体もないことだ。 戦争は終わっていない。僕自身が戦争なのだ。 その屍体の数はアメリカ合衆国の責任のもと正当化されるのだ あまりに抹香臭くて 鼻梁の中央めがけ 人類の弔鐘となった最後のキノコ雲を見つめる 細雨さいう 深奥しんおう 古強者ふるつわもの 天国の周縁 民間の艦船 勝鬨をあげろ 僕の野蛮は発動させるべき閾値に既に達しつつあるというのに 矛盾の針先 眼窩の空洞 冷笑家シニシスト テムズの川面 じょうさい城砦 神の子の顕現 隔壁のコンクリート はいえつ拝謁を賜った あらわれる顕れる 八十万人ものツチ族が、同じ言葉を話すフツ族によって虐殺された。 映画『ホテル・ルワンダ』 ただし但し書き いはつ衣鉢を継ぐと目される創り手達が
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悪性腫瘍しゅよう 5年生存率 窓からの光の筋が見えるようなリドリー・スコット部屋 コロンビア号 チャレンジャー号爆発事故の調査報告 原因はOリングの弾性劣化ではないという話もあるけれど 科学技術の粋すい 消費を中心にした幸福な生活モデルの最後の時代だったと言えるかもしれない 怠惰さが切実さを圧倒した 愚かさというのはこういう精神的に便利な特典もついてくるので 基本的に猥雑で下劣な裾野なのである それともエログロ込みで引き受ける覚悟を固めているのだろうか そしてPSGは今も叫び続ける 原作のパッチワーク感 二次創作としての フォレストガンプのスマイルマークシャツ誕生の件 えんえき演繹 卑近さを 阿部和重の語りをえらくアナクロなものに思わせてしまう ふせって臥ってます 出会い系を装った文学 趨勢すうせい ぺ・ドゥナたんの御尊顔を拝してくることであるわけで 誰にでもやってくるのは死だけだ。死が暴力的なのは有無をいわさず誰にでもやってくるからだ。 回避不能を宣言されたわけだから 「もののけ姫」はそんな宮崎作品の中にあって、唯一宮崎駿がヤバいところまで行った「狂気」に限り無く近いものが、ある種の逡巡と傲慢さが同居した結果落とし所がまったく不明なまま物語が暴走する、「手に汗握る絶望」が全編を覆っている凄い作品だと思う。 彼岸と此岸しがん 其れは一言で言って死が怖い映画であり、死に脅かされる人間達の寂しさを扱った物語だ。「バレット・バレエ」からの塚本映画は、常に「終わりの刻」を見据えながら、その虚無に怯えながら撮られているように思う。 その衝撃は「メメント」など比較にならぬほどの衝撃の結末と化し、そして我々の心に生じる静かな怒りは、貧乏人が金持ちに対して抱く殺意のそれであるだろう。 とうじん蕩尽ぶりが 称揚された残酷なファンタジーのキャラクターは 技芸を駆使さした 宿業にに囚われざるを得ず 言うなれば畜生としての腕っ節のみであり 作り手が「怪奇」の近似値として南部の田舎という、悍ましさの残り香がまだ有効な土地を(日本でいえば近親婚がまだ続いてそうな横溝的田舎に相当します)選ばざるを得なかった、という理性的な思考の結果です。 本田美奈子の死と、宇宙戦争という映画は、僕の体に起きた理不尽な出来事を経由して繋がっている。あなたは、体と心中するしかない。叙事的な映画というのは、そういう事を嫌でも感じさせてくれる。あれは、容赦ない。あれは、人を選ばない。あれは、突然やってくる。出来事というのは、そういうものだ。死んだ事のある人はいない、と誰かが言っていた。 山田風太郎『人間臨終図鑑』
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【ノート】
・これを読むことで、少しゲーム内で分かりづらかったことが補完された。
・このゲームをやり続けてきて、なぜ、アメリカが舞台なんだろうと思っていた。今もまだぼんやりとしか、自分なりの解釈はできていない。このノベライズでは、日本に向けてのメッセージ性を読み取れる箇所もあったが、それは小島ワールドとのシンクロなのか、伊藤計劃独自なのか。
・脚本ありきでのノベライズだからか、若干、描き方で「おや?」と思う箇所に何度か出くわした。決定的なのは、オタコンの一人称で描かれていながら、時々、三人称的な描かれ方をされている箇所。もちろん、後から聞いた話ということなんだろうが、それを差し引いても、違和感を感じる箇所があった。
・当然だが「虐殺器官的」な匂いもする。こちらの方、つまり小島ワールドの方がより壮大で、しかも希望があるが。このノベライズを読む前に「虐殺器官」は読んだが、その時に、主人公に感じた雰囲気と、このノベライズでのオタコンに感じた雰囲気が似ているように思った。
・それにしても、PSの最初のMGSをやった時に、オタコンがここまで重要なキャラクターになるとは思わなかったなあ。 -
Posted by ブクログ
一見して「ありえない」世界を作り出し、それを「ありえる(かもしれない)」と思わせることができるもの。SFというジャンルを仮にこのように定義するならば、伊藤計劃は、SFがもつ威力を思い知るのにもっとも適した作家のひとりだと思う。
「嘘ではない。だがな、お前が教えられてきたのは、戦争が始まってからSDAがまとめた歴史ではあるんだ。戦うには歴史が必要だ。俺たちが戦う拠り所となり、奴らと俺らとを隔てるのに必要な歴史がな」
「戦争のために、嘘の歴史を作ったんだろ」
たとえばこれは、表題作の中のやりとり。
小説で描かれるものを何でもかんでも現実世界と結びつけようとするのは野暮な読み方かもしれないけれど、この台詞に、いまの自分たちはまったく思い当たりがないとは言えない。この小説の「ありえない」世界と、いまの自分たちが生きる現実世界は、まったく関係がないとはもちろん言えない。
この小説にはいちいち微細に描写した残酷表現が無数にある。倫理的に、どうしたって目を背けたくなるような表現がある。まさに「ありえない」と言いたくなるような。でも、残念ながら、この小説で描かれる世界は現実に「ありえる」のだろう。それも意外とすぐ近くにあるのかもしれない。
…とかなんとか、いろいろ考えることのできるSFらしいSF。