伊藤計劃のレビュー一覧

  • 屍者の帝国

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    とある人物が世間のしがらみから逃れて、再生技術を用いた屍者の軍隊を束ねて、中央アジア奥地で独自の王国を作る……そんな伝聞を確認する任務のために、主人公ワトソンはアフガニスタンへ向かう。
    その様子は、小説「闇の奥」または映画「地獄の黙示録」を彷彿させる。

    その後、新型の屍者の謎を追い、明治初期の日本、南北戦争ののち勢いづくアメリカへ。

    時代は19世紀、設定は“屍者の行動再生技術”のあるSF設定。

    死者と生者の違い
    屍者と生者の違い
    死者と屍者の違い

    科学は時に混沌を産み出す。

    人物名が「カラマーゾフ」「フランケンシュタイン博士」「ヴァン・ヘルシング」「ナイチンゲール」「レッド・バトラー」などなど、ちょっと捻って登場する。

    こうしたSF小説の読み方として、本来は書いてあることを“直感的”にイメージして取り込んでいくことで、本来の物語を楽しむことができる。
    ところが、どうしても文字や文章を“理論的”に咀嚼しようとしてしまい、ひどく疲れた。

    歳をとったということか……

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    2025年09月12日
  • The Indifference Engine

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    もともと『ハーモニー』が好きで、SNSで紹介されているのをきっかけに手に取った一冊。正直、SNSで見かける絶賛ほどの期待値には届かなかったけど、普通に面白い。短編集ということもありテンポもよく、一気に読み進められる構成になっている。

    なかでも印象的だったのは、伊藤計劃氏の過去作とつながりを感じられる点。直接的な続編ではないものの、世界観や設定がリンクしているような作品がいくつかあって、ファンにはニヤリとできる仕掛けが随所に散りばめられている。時系列や設定の裏側に想像を巡らせながら読むのが楽しい。

    伊藤計劃作品をすでに読んでいる人にはより深く楽しめる構成だし、初めて読む人にも短編としてサクッと入れる入口として悪くない。重厚なテーマ性を期待しすぎると肩透かしかもしれないけど、テンポの良いSF短編集としては十分楽しめた。

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    2025年05月17日
  • 屍者の帝国

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    伊藤計劃と円城塔の合作。合作とはいっても遺されていたのは30ページ程のプロローグと設定等のメモだけで、続きというよりは本人もあとがきで語っている通り、遺されたものを元に円城塔が作り上げた作品という感じ。そこまではわかっていたし、十分面白かったけど、それでも…と考えさせてしまう伊藤計劃の名前の大きさ。「言葉」というものについて考えるという点で、『自生の夢』の解説をきっかけに読んでみたのだけど、この点については飛浩隆が凄すぎる。とはいえ創作物と実際と歴史の登場人物が織り混ざった改変歴史ものとしてはなかなか楽しかった。

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    2025年01月15日
  • 屍者の帝国

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    初読。わかってない部分もたぶん多いが、『フランケンシュタイン』の後日談としても『ホームズ』のワトソンの前日譚としても歴史改変ものとしてもおもしろかった。ロボット三原則もちょっと出てきて、いろいろな知識があれば、もっといろいろ楽しめそう。
    もう少し若いときに読んでたらめちゃくちゃはまってただろうなと思った。

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    2024年04月28日
  • Cinematrix―伊藤計劃映画時評集2

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    2000年〜2004年の公開作品についてブログの映画評。
    この中で見ていたのはWXⅢだけ!
    どの映画も周辺の話がとても詳しいので見てなくても苦にならない。
    特にロード・オブ・ザ・リング二つの塔の、サウロンの記述!そうだったのか…。私はシルマリルで挫折したのでありがたい。
    音楽についても、よく言及されている。

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    2023年03月04日
  • 屍者の帝国

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    伊藤計劃という夭折した作家の。
    芥川賞作家の円城搭が筆を引き継ぎ。
    時代設定独特の暗さと雰囲気が伝わってくる。でもなんだかよくわからなかった。というのが感想。割と歴史上の実在・仮想の人物の固有名詞が踊り、理解の混乱を助けているところがまた、独特かもしれない。なんとなくこんなものかなという感じの作品だが、もう一度読みたくなるかもしれないとも思います。

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    2022年09月19日
  • 屍者の帝国

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    むずかしい…!!
    ザ・ワンの口上述べ述べシーンあたりが辛うじて意識を保っておもしろく読めた気がするけれど他は文章と展開についていくのに必死でなんとか読み終えたという感じ…。
    ひとえにわたしの知識不足です、、
    もっと色んな本を読んだり今の段階ではまだ知らないことをこれから知ったりしていって、またいつか再読したいです。

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    2022年08月12日
  • The Indifference Engine

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    著者の恥部を覗き見ているような感覚。

    虐殺器官や、ハーモニーの前身。学生時代に書いた漫画など。所々チープな場面はあれど、天才の片鱗は十二分に感じられる。
    ただ、メタルギアソリッドを知らないと物語に入り込めない短編もあり、読むのに骨が折れた。さすがにこの為だけにゲームはできない。

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    2022年07月30日
  • 屍者の帝国

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    内容がとても難しかった。
    何度か諦めようと思ったけど、なんだかんだ手にとって読んでを繰り返して、今日読み終えた!!!

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    2022年07月03日
  • 屍者の帝国

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    世界観とか設定とかアニメが気になって読んでみたけど、まぁ難しい……!
    アニメ見てなかったら全く理解できなかった。
    小説というよりはアニメのシナリオらしいので、補完として見ました。読みましたというより見ました、って感じ。
    世界観とかキャラクターは好き。

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    2022年02月07日
  • 屍者の帝国

    購入済み

    伊藤計劃原案、円城塔著

    こちらの小説は伊藤計劃さんの書かれた物語ではないですが、小説としては前作の「虐殺器官」「ハーモニー」よりエンターテイメント性があります。伊藤計劃さんが書かれていたらどんな物語になっていたのか•••2つの作品が素晴らしいだけに悔やまれます。しかし、ご本人が1番悔しかったと思いますし、円城塔さんも大変な思いをして書かれたと思います。

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    2020年06月26日
  • メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット

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    伊藤計劃さんの作品だということで、読んでみた作品だが、とにかく長くて大変だった。また、名前を区別することができなかったため、読むのが大変だった。印象に残ったのは機械の冷酷で残酷な攻撃が描かれる戦争の場面だった。

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    2020年06月12日
  • メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット

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    人気ゲーム作品である『メタルギア・ソリッド4―ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』のノベライズ版です。

    「PMC」(民間軍事会社)が世界各地で戦争を繰り広げる世界で、伝説の男と呼ばれる「ソリッド・スネーク」は、その肉体の急激な老化に抗いつつ、彼とおなじく「ビッグ・ボス」の遺伝子コピーのよって生まれた「リキッド・スネーク」を暗殺するという任務に就きます。やがてナオミ・ハンターによって彼の肉体に注入された殺人ウィルスが、世界を破滅にみちびくであろうことが明らかになり、ソリッド・スネークはわずかにのこされた時間を、「オタコン」ことハルとともに戦います。

    ゲームの世界設定をていねいにおさらいしながら物語が進められていくので、ゲームについて知らない読者でもたのしめる内容になっています。とはいえ、このゲームの熱心なファンだった著者だけに、たんに元の世界を舞台にした一本のストーリーをえがくだけでなく、さまざまな事件へのリンクをぎっしり詰め込んでおり、本の厚さ以上のヴォリュームを感じます。

    十分にたのしんで読むことができた作品ではありましたが、伊藤計劃の作品というよりも、「メタルギア・ソリッド」の熱烈なファンによる作品という印象があり、その点に若干の不満を感じてしまいました。

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    2020年05月07日
  • 伊藤計劃記録 II

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    自分の癌という病状が進む中、よくこれだけの文章を残すことができたなぁと、なんというか、執念を感じましたね。
    もちろん、ダウン気味の時は文章を残していないんだろうし、実際に症状が重いときは書けなかったんだろうけど、よくぞ、(文章上だけだとしても)同じようなテンションで続けることができたと思います。
    ファンでもファンじゃなくても必読ではないでしょうか。

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    2020年04月12日
  • The Indifference Engine

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    プロパティ所有物 デフォルト初期状態 コンフィグレーション設定値 小銃弾の硝煙 薪のような人間の腕も、裸に剥かれた死体もないことだ。 戦争は終わっていない。僕自身が戦争なのだ。 その屍体の数はアメリカ合衆国の責任のもと正当化されるのだ あまりに抹香臭くて 鼻梁の中央めがけ 人類の弔鐘となった最後のキノコ雲を見つめる 細雨さいう 深奥しんおう 古強者ふるつわもの 天国の周縁 民間の艦船 勝鬨をあげろ 僕の野蛮は発動させるべき閾値に既に達しつつあるというのに 矛盾の針先 眼窩の空洞 冷笑家シニシスト テムズの川面 じょうさい城砦 神の子の顕現 隔壁のコンクリート はいえつ拝謁を賜った あらわれる顕れる 八十万人ものツチ族が、同じ言葉を話すフツ族によって虐殺された。 映画『ホテル・ルワンダ』 ただし但し書き いはつ衣鉢を継ぐと目される創り手達が

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    2020年04月16日
  • 伊藤計劃記録 I

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    悪性腫瘍しゅよう 5年生存率 窓からの光の筋が見えるようなリドリー・スコット部屋 コロンビア号 チャレンジャー号爆発事故の調査報告 原因はOリングの弾性劣化ではないという話もあるけれど 科学技術の粋すい 消費を中心にした幸福な生活モデルの最後の時代だったと言えるかもしれない 怠惰さが切実さを圧倒した 愚かさというのはこういう精神的に便利な特典もついてくるので 基本的に猥雑で下劣な裾野なのである それともエログロ込みで引き受ける覚悟を固めているのだろうか そしてPSGは今も叫び続ける 原作のパッチワーク感 二次創作としての フォレストガンプのスマイルマークシャツ誕生の件 えんえき演繹 卑近さを 阿部和重の語りをえらくアナクロなものに思わせてしまう ふせって臥ってます 出会い系を装った文学 趨勢すうせい ぺ・ドゥナたんの御尊顔を拝してくることであるわけで 誰にでもやってくるのは死だけだ。死が暴力的なのは有無をいわさず誰にでもやってくるからだ。 回避不能を宣言されたわけだから 「もののけ姫」はそんな宮崎作品の中にあって、唯一宮崎駿がヤバいところまで行った「狂気」に限り無く近いものが、ある種の逡巡と傲慢さが同居した結果落とし所がまったく不明なまま物語が暴走する、「手に汗握る絶望」が全編を覆っている凄い作品だと思う。 彼岸と此岸しがん 其れは一言で言って死が怖い映画であり、死に脅かされる人間達の寂しさを扱った物語だ。「バレット・バレエ」からの塚本映画は、常に「終わりの刻」を見据えながら、その虚無に怯えながら撮られているように思う。 その衝撃は「メメント」など比較にならぬほどの衝撃の結末と化し、そして我々の心に生じる静かな怒りは、貧乏人が金持ちに対して抱く殺意のそれであるだろう。 とうじん蕩尽ぶりが 称揚された残酷なファンタジーのキャラクターは 技芸を駆使さした 宿業にに囚われざるを得ず 言うなれば畜生としての腕っ節のみであり 作り手が「怪奇」の近似値として南部の田舎という、悍ましさの残り香がまだ有効な土地を(日本でいえば近親婚がまだ続いてそうな横溝的田舎に相当します)選ばざるを得なかった、という理性的な思考の結果です。 本田美奈子の死と、宇宙戦争という映画は、僕の体に起きた理不尽な出来事を経由して繋がっている。あなたは、体と心中するしかない。叙事的な映画というのは、そういう事を嫌でも感じさせてくれる。あれは、容赦ない。あれは、人を選ばない。あれは、突然やってくる。出来事というのは、そういうものだ。死んだ事のある人はいない、と誰かが言っていた。 山田風太郎『人間臨終図鑑』

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    2019年10月02日
  • メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット

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    【ノート】
    ・これを読むことで、少しゲーム内で分かりづらかったことが補完された。
    ・このゲームをやり続けてきて、なぜ、アメリカが舞台なんだろうと思っていた。今もまだぼんやりとしか、自分なりの解釈はできていない。このノベライズでは、日本に向けてのメッセージ性を読み取れる箇所もあったが、それは小島ワールドとのシンクロなのか、伊藤計劃独自なのか。
    ・脚本ありきでのノベライズだからか、若干、描き方で「おや?」と思う箇所に何度か出くわした。決定的なのは、オタコンの一人称で描かれていながら、時々、三人称的な描かれ方をされている箇所。もちろん、後から聞いた話ということなんだろうが、それを差し引いても、違和感を感じる箇所があった。
    ・当然だが「虐殺器官的」な匂いもする。こちらの方、つまり小島ワールドの方がより壮大で、しかも希望があるが。このノベライズを読む前に「虐殺器官」は読んだが、その時に、主人公に感じた雰囲気と、このノベライズでのオタコンに感じた雰囲気が似ているように思った。
    ・それにしても、PSの最初のMGSをやった時に、オタコンがここまで重要なキャラクターになるとは思わなかったなあ。

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    2018年10月28日
  • Running Pictures―伊藤計劃映画時評集1

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    言ってることが難しすぎて、私のような阿呆には半分も理解できないよ!な本(笑)
    でも、映画への熱い思いはひしひしと伝わる。

    1も2もリアルタイムで劇場で観たものがけっこうあって、懐かしいと共に、自分が映画をまったくといいほど理解してないのがわかり、少し落ち込む。

    伊藤さんも『人狼』を高く評価していたことが分かり、思わず「いい映画だよね!」と声をかけたい気分になった。

    でもなー、もっと映画見て、語っているのを読みたかったな。

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    2017年09月21日
  • The Indifference Engine

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    伊藤計劃さんの『虐殺器官』を読んだ時の興奮を今も憶えている。
    続く、『ハーモニー』の緊迫感も忘れない。
    本書は、その伊藤計劃さんの短・中編集で、『虐殺器官』の世界観を現す作品も含まれる。もちろん既視感がつきまといはするが、この既視感が無いと本書は楽しめないと思う。

    最近、書店に行けば必ず伊藤計劃さんのコーナーが確保されており、嬉しく思うが、ご本人が亡くなっているので、伊藤計劃作品をめぐる評論合戦になってしまうのが少し寂しい。

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    2016年02月14日
  • The Indifference Engine

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    一見して「ありえない」世界を作り出し、それを「ありえる(かもしれない)」と思わせることができるもの。SFというジャンルを仮にこのように定義するならば、伊藤計劃は、SFがもつ威力を思い知るのにもっとも適した作家のひとりだと思う。

    「嘘ではない。だがな、お前が教えられてきたのは、戦争が始まってからSDAがまとめた歴史ではあるんだ。戦うには歴史が必要だ。俺たちが戦う拠り所となり、奴らと俺らとを隔てるのに必要な歴史がな」
    「戦争のために、嘘の歴史を作ったんだろ」

    たとえばこれは、表題作の中のやりとり。
    小説で描かれるものを何でもかんでも現実世界と結びつけようとするのは野暮な読み方かもしれないけれど、この台詞に、いまの自分たちはまったく思い当たりがないとは言えない。この小説の「ありえない」世界と、いまの自分たちが生きる現実世界は、まったく関係がないとはもちろん言えない。
    この小説にはいちいち微細に描写した残酷表現が無数にある。倫理的に、どうしたって目を背けたくなるような表現がある。まさに「ありえない」と言いたくなるような。でも、残念ながら、この小説で描かれる世界は現実に「ありえる」のだろう。それも意外とすぐ近くにあるのかもしれない。

    …とかなんとか、いろいろ考えることのできるSFらしいSF。

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    2015年05月31日