伊藤計劃のレビュー一覧
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虐殺器官との繋がりもあり、面白かった。
自分は、この中では『the indifference engine 』が一番面白かった。虐殺器官と比べてみることができ、また、「戦争が終わっても、本当の意味での戦争は終わっていない」というのがとても印象的だったからだ。
その他の作品で、読みづらいものや難しいものもあったが全体的にとても面白かったと思う。
衝撃的だった作品は、『セカイ、蛮族、ぼく』だ。冒頭から凄かった。曲がり角でぶつかる、漫画、ゲームで定番のシチュエーションで、伊藤計劃さんらしくないと思ったが、その後で納得(というか圧倒された)した。長さは短いが、内容が深かった。
『屍者の帝国』の冒頭も収 -
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ネタバレぼくらのまわりを見てごらん、自然物がどれだけある?人間の手によって植えられた草や鉢植えや街路樹や、駐車場の雑草が「自然」かな?近所を流れている川、それは自然の川かね。何か最近になって出来た用水路は論外としても、実は昭和、明治、さかのぼって江戸時代につくった農業用水だったりしないかね。
ぼくらは人工物に囲まれて生きている。ぼくらは人間が思考してそう望んだ環境に囲まれて生きている。人間の思考の結果に囲まれて生きている。なぜ大地震で5000人の人が死ぬことにみな驚きながら、年間の交通事故によるものすごい数の死者には驚かないのかな?それはすなわち、自然は「降ってわいた災害」で、予測できないファクター -
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ネタバレ要注意ワードは「深い/浅い」です。あと「薄い」。
これは、責任とか自分といったものからものすごく遠い単語です。深い/浅いは具体的にどうだったのかを全く述べないときに使われる、印象批評では下の下の下下々の下ぐらいの単語でしょう。テーマが深い。よござんす。しかし、「どう」テーマが深いのかを書くのが文章というものの機能なのであって、それをきちんと書けている人はわざわざ「深い/浅い」とは書きません。つまり「深い」と書くのは馬鹿です。要するに何も考えていないということのぶっちゃけというか告白なので、その文章の知性を駄目な方向に数ランク引き下げたいのだったらがんがん使うべきです。 -
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伊藤計劃氏の映画批評。エッセイに近いラフな調子でぐいぐいと進んでいく。口調は軽快ですが、映画への思い入れや知識、監督や役者の個性やカラーまでを熟知して書かれる批評は絶品。一般的には駄作と評されるような作品についてもだめな部分は明確にしつつ、それでも愛すべき箇所を伊藤氏しか書けないだろう視点で書いているところには、映画という文化、媒体そのものへの愛を感じました。
そのかわり、世間では名作と呼ばれているようないくつかの作品は容赦なく喝破されていましたが…笑
ほんとうに早逝が惜しまれる人、というのは伊藤さんのような人なのだと思う。生きていたとしたら今の世界、映画をどう観てどう論じたのだろうか、そ -
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伊藤計劃三冊目。
デビュー前に「スプークテール」という著者自身が運営していたウェブ・サイトにアップされた映画に関するレビュー全51作をまとめたもの(「今月のまとめ」としてまとめて紹介された作品も勘定にいれた)。
僕自身はそれほどに映画に詳しくはなく、かといって全然見ないわけでもない、まぁそこそこ映画好きな人間、ってところだろうか。
本書に掲載されている51作品のうち、22作品は劇場、あるいはDVD等で鑑賞済。
決して多い数字ではないだろうけれど、「映画に全然興味ないもんね」と胸を張って言える(?)には多い数字だろう。
僕としては、映画のレビューを読みたい、というよりも、あ -
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「Running Pictures: 伊藤計劃映画時評集 1」の続編。
2000年から2004年にかけての、全30作品の映画レビューが掲載されている。
そのうち僕が観たものは12本。
前作とそれほどページ数が変わらないのに、掲載されているレビューが少ないのは、それだけ1本に対する掲載量が増えているから。
また、「イントロ」「キャスト」「要約」「レビュー」と章分けされてもいる。
感想は前作を読んだときと殆ど変らず。
ただ今回は前出のように1作品に対する情報量が増えているので、読んでいて観たくなった作品の本数は増えたように思う。
他の映画評論家と違うポイントで映画を観て -
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書籍というきちんとした形でまとめられていなかった作品を集めた作品集。
6つの短編に、2つの劇画、1つの他の作品の解説、という構成になっている。
やはり6編の短編はどれも極上。
「セカイ、蛮族、ぼく。」という短編だけは少し毛色が違っているが、残りはどれも伊藤計劃らしさが漂ってくる作品となっている。
きっちりと論理立てされており、だからといって息苦しさを感じさせることもなく、読むものを良質のエンターテインメントへと誘ってくれる。
最後の「屍者の帝国」のみ未完(遺稿でもある)。
のちに円城塔が後を引き継いで完成させているが、購入してはいるがまだ未読(評判はあまり芳しくないよ -
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夭折の天才、伊藤計劃の遺稿を含む短編集。同人誌に掲載した試作や未完の作品が多く、「お試し」感の強いラインナップで、一読しての印象は「なんか中途半端だなー」というのが正直なところ。
ただし、完結している作品ももちろん収録されてまして、この完成度が恐ろしく高いです。「虐殺器官」と同じ世界線にある表題作はもちろんのこと、鴨的には「From the Nothing, with Love」が衝撃的な出来。ぱっと見はあの世界的に有名なスパイ・アクション映画のパスティーシュで、なんでこの映画が題材なんだよ!と心の中で突っ込みながら読み進めたわけですが、これがちゃんとSFしていて、しかもいかにも伊藤計劃らしい -
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・伊藤計劃のハーモニー、屍者の帝国、そして虐殺器官について考えていた。世界に残された三つの計画は、それぞれ個別でありながら深く絡まり合い、人間の心と脳そして魂の幸福についてある一つの答えを導き出す。その答えは作者の手を離れ、読者である我々の心と脳、そして魂に深く結びつき、そこに一つの種を植える。
彼は何度も問うた『言葉で人を殺せるか?』と。そして彼はこう答えた。『言葉でしか人を殺すことはできない』
言葉がなければ人を殺すことは出来ない。この言葉の意味をあなたはわかるだろうか。言葉、つまり意思の記号化がされてない人間は、人を殺すことも、自分を殺すこともできない。言葉とは思考そのものなのだと彼