伊藤計劃のレビュー一覧

  • ハーモニー

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     場面設定の理解に苦戦しつつも読み始めればやはりSFというものは面白く奥深いと心底思います。
     ハーモニーは近未来で、だれも病気やケガでは死ななくなった世界、でも若年層の自殺だけは増えているという状況が舞台である。福祉社会に完璧に近づき優しさで包み込まれるようなはずなのになぜか虚しい、寂しい、辛いのである。優しさというものがここまで鋭い刃になることをこの作品で改めて突き付けられた気がする。
     誰も死なないこと、だれも体調を崩さないこと、健康的な毎日を送れることというのはこの上ないことだと思っていた。だが、「死」ということを老衰、事故、または自殺でしか達成できないとなった場合、我々はこのような結

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    2026年02月08日
  • ハーモニー

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    去年、「虐殺器官」を読んでハマったから読んだけど、期待を軽々超えて来た。もちろん本編も最高に面白かったし、解説もとても面白かった。二作続けて「次元が違う」面白さを感じたからこそ、もう彼の新作を待てないことがとても残念、、
    きっとここ15年くらいの社会についても、面白い小説書いたんだろうな。

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    2026年01月27日
  • 虐殺器官

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    「ジョン・ポール」
    「この男が入った国は、どういうわけか混沌状態に転がり落ちる。」
    「この男が入った国は、どういうわけか無辜の命がものすごい数で奪われる。」

     どこからが「わたし」なのか。この意思は、選択は、本当に「わたし」のものなのか。
     いろいろと考えさせられた。これが『ハーモニー』に繋がっていく辺り、作者自身も答えは出ていないのかなと思う。もっと伊藤計劃さんの書く物語が読みたかった……。
     昨今の世界情勢に通じるところがありつつも重くなり過ぎず、SF・ミステリ・ミリタリー小説として楽しめた。
     人は見たいものしか見ない。ほんとうにその通りだと思う。

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    2026年01月14日
  • 虐殺器官

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    少し未来の科学が進んだ世界の軍隊の話です。
    リアリティがすごくあるのと、ストーリーとキャラクターが上手いことマッチしていて、最初から最後までずっと面白かったです。
    ただ、バイオレンスなシーンも多いので、好き嫌いが分かれるかもしれません。ただ、自分はおススメしたい一冊です。

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    2026年01月09日
  • 屍者の帝国

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    魂は人間に特有のものなのか?
     ―ではその魂とはなんなのだね?

    伊藤計劃の遺稿を、円城塔が引き継ぐ形で生まれた『屍者の帝国』。
    伊藤氏の作品、『虐殺器官』『ハーモニー』が好きで、今でも時々読み返している。
    一方で本書は、以前途中で離脱してしまいそのままになっていた。

    もし同じく途中で離脱してしまった方がいたら、登場人物たちの目的をなんとなく掴んだうえで、398ページからだけでも読んでみてほしい。
    (失礼かもしれないけれど、途中でやめてしまった方にこそ、ぜひ)
    そこからの展開はドキドキが止まらず、もっと早く読んでしまえばよかった!と思ったくらいだった。

    『虐殺器官』『ハーモニー』『屍者の帝

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    2026年01月06日
  • 虐殺器官

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    日本を代表するSF作品という評価に偽りないと感じました。

    SF作品の面白さは設定の作りこみ、本当に起きているかのようなリアルさにあると思うため、舞台設定から描写まで非常に緻密でした。
    今の世界情勢についても考えてしまう嫌な読後感ですが、そういった目を背けたくなるようなテーマを扱うことこそSF作品の価値だなと感じました。

    テーマとなっている虐殺器官の真相、主人公の葛藤、世界観の残酷さと、読んでいてちゃんと嫌な気持ちになる作品で、様々な観点から考えさせられる作品でした。
    こんな世界になっていたら自分もそうしてしまうんじゃないかと思う場面が多々あり、そんな葛藤の気持ちもテクノロジーにより制御され

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    2026年01月04日
  • ハーモニー

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    ネタバレ

    1.最適化
    合理性を求めていった結果、規則や、空気に縛られて、最終的に人類の意識はなくなってしまう。そのきっかけが医療の高度化によって引き起こされるのは面白かった。「脳もまた肉体の一部である以上、それを制御してはならない根拠など、どこにあるだろうか。」脳を制御し始めた場合、自分の意志はどこに存在するのだろうか。正しい報酬設定のために生きることに意味はあるのだろうか。


    2.美
    トァンの最後の意志としてミァハを撃った。そして意識は消滅した。その表現がとても綺麗に感じた。文中のタグ表現で無機質に見えるような場面も多かったが、後半になるにつれて、そして一番最後の場面は「感情のテクスチャを生起」させ

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    2026年01月01日
  • 虐殺器官

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    内戦や大虐殺の陰に存在する謎の男ジョン・ポールを追う、お話(?)。

    近未来SF(?)作品。残酷なシーンや思想的な難解さもありながら、世界観に引き込まれて一気読みしてしまった。

    ミーム、モジュール、虐殺の文法、マスキング。
    完全な理解はできていないけども。



    途中まで読んで、ぽいっと置いておいて年越してもよかったけど、何故だかぐいっと引き込まれて、読まされたという感じ。

    読書熱高まった今年最後にふさわしい素晴らしい作品だったな、と思いました。

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    2025年12月31日
  • 虐殺器官

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    個人情報の管理が進んだ社会でアメリカ情報軍の暗殺部隊に所属する主人公が、「言語」によって虐殺を引き起こしていると考えられる人物を追う物語。

    社会の設定が現代よりも進んだ管理社会になっているが、今の情報管理の流れを考えるとありそうだと感じる。そのような社会の中で足がつかずに犯罪やテロを引き起こすのは難しそうだが、そこの方法は準備されていて非常に良かった。

    また表題の『虐殺器官』もそれ自体の明確な原理の説明はない(まぁそりゃそうか)が非常に面白い設定。言葉で虐殺が起きるなんて、なんて思うがちょっと前に読んだローティの解説本(100de名著)でも取り上げられていたから、受け入れられました。とても

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    2025年12月31日
  • ハーモニー

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    よかった。本当によかった。

    大災禍後、過剰な福祉により病気や不健康、不道徳というものがなくなり、統制された個人=社会となった「ユートピア」が舞台。
    SFであり哲学。病床に伏せながら本作を執筆していた著者は、自身の命にいかに向き合っていたのか、否応なしに意識させられる。
    2006年の作品だけど、最近いわれている「ホワイト社会」という言葉とも重なる。

    テレビアニメ「攻殻機動隊」や古屋兎丸の漫画作品「Marieの奏でる音楽」を思い出した。

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    2025年12月28日
  • The Indifference Engine

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    『虐殺器官』から随分と空いてしまった。
    伊藤計劃のストーリーは彼が踠いているように思えて苦しくなってしまう。
    The Indifference Engine
    ルワンダの歴史を感じさせる。

    From the Nothing,With Love.
    何を読まされているのだろう…からラストが素晴らしい。


    『俺』と『お前』が憎み合うから戦争が起こるんじゃない。
    戦争するために『俺』なんてものは存在するんだ

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    2025年12月28日
  • 虐殺器官

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    1.なにのために戦うか。
    諸悪の根源のように描かれていたジョン・ポールにも、明確な行動原理があった。彼は「破壊するために戦った」のではなく、「守るために破壊した」。単純な善悪の対立ではなく、葛藤のなかで揺れ動く主人公クラヴィスを通して、それぞれの「正義」の輪郭を見ていく物語だった。誰もが誰かを守ろうとしているのに、結果として誰かを殺してしまう。そこに人間の矛盾が凝縮されていた。

    2.SF的な要素
    IDタグ、環境追従迷彩、人工筋肉……。「ありそうな未来」を想像させるテクノロジーの描写がリアルで良かった。倫理と科学がどこで交わり、どこで断絶するのか。虐殺器官という発想も、単なる空想のようには思え

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    2025年12月08日
  • ハーモニー

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    ネタバレ

    伊藤計劃の長編の素晴らしいところは、「人間を人間たらしめるのはなにか」という本質を突きながら、常に“社会的生物としての人間”という集団にフォーカスしている点だと思っています。

    長編第一作『虐殺器官』では、「言葉」が虐殺のための臓器として描かれていました。デマ、欺瞞、対立──それらは言葉によってもたらされ、人間は集団の中でいかに安易に誘導されうるか、その危うさが描かれていたように感じます。

    今作『ハーモニー』では、大災厄を経た後の社会が、WatchMe に代表される総監視社会・究極の合理社会として描かれ、その中に生きることについての思考実験のような要素を強く感じました。WatchMe による

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    2025年12月07日
  • ハーモニー

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    人類の救済は最終的にアポカリプスによってしか成されないんやなぁと。
    テクノロジーの力で人類が死を乗り越えられるようになってしまえば、こういう結末が必要になるかもなぁ。

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    2025年11月23日
  • ハーモニー

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    今の価値感で想像すると、ハーモニー後の世界はぞっとしないけど、意識を理由づけする存在とするなら、自分で選んだと思い込んで案外幸福でいられるのかも⁈今の世界だって選んだつもりになってることの方が多いし、そう考えると大差ない⁈私が目指したい調和はどんな形⁈とか
    とにかくいろいろ考えさせられる本

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    2025年10月24日
  • ハーモニー

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    読み終わった後に本文冒頭を見てハッとした。

    幸福とはなんだろう。誰もが幸せな世界は実現不可能なのだろうか。
    いつかこんな未来がくるんじゃないかと思わせる説得力がある。

    とてもおもしろかった。作中の仕掛けに驚いたし、登場人物たちも魅力的な人ばかり。「姉御(クイーン)」って呼ばれてるのかっこよくて好き。
    世界観を理解するのにも時間は掛からず、ぐいぐい読み進められた。
    大好きな一冊になりました。「虐殺器官」も読みます。

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    2025年10月18日
  • 虐殺器官

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    ネタバレ

    読みながら、ノベライズ版の『PSYCHO-PASS』との共通点を感じた。『虐殺器官』風に書くと、語る内容は違うが文法は同じ様な印象。テクノロジーによる人間の制御を主題にしたSF的な世界観、静かでどこかグロテスクな文体、人文学的な引用を織り交ぜながら展開する物語。どちらにも、文学的マッドサイエンティストのような犯人が登場し、事件の裏でフィクサーとして暗躍する。
    また、犯人と主人公の関係性にも通じるものがある。『虐殺器官』では「言語」を、『PSYCHO-PASS』では「犯罪係数」を軸に、正義と悪の曖昧な世界を描いている。物語の最終舞台が社会を支えるインフラ(人工筋肉製造工場/食料供給プラント)であ

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    2025年10月17日
  • 虐殺器官

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    ★4.5ですけどおまけで。
    日本のレベルに収まっていないストーリー展開と設定、返す返すも惜しい作家を失ったなと。
    ただ小松左京が感じたようですけど、全体として軸に据えた虐殺の文法が物語として大きく昇華し切れていない感が否めない。
    才人なれどデビュー作であるという粗さであり、だからこそもっと読みたかったなぁ、この作家の作品を。

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    2025年09月25日
  • ハーモニー

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    ネタバレ

    文体が綺麗で、残酷。
    「調和」と「意識」という哲学的なテーマで、こんなにも惹かれるとは思わなかった。「意識の消失は死なのか」という命題に、真っ向から勝負している。
    病気が根絶され、「福祉」という公共的な優しさで満たされた息苦しい社会。
    苦痛や自殺を悪と見なし、「セラピー」という論理的な優しさで抑えつける社会。
    まるで予言書のようで恐ろしかった。
    結末がハッピーエンドかバッドエンドか、どちらとも解釈できるのが魅力的だった。

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    2025年09月27日
  • 虐殺器官

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    ストーリーは奇想天外でありながら、会話や深層心理は哲学的で理路整然としていてなかなか興味深く面白かったです。
    ストーリー自体も面白いが、対話のやりとりも面白い。
    未来の創造上のアイテムも描写が細かく目に浮かんできます。

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    2025年09月08日