伊藤計劃のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ハーモニー。そういうことでしたか。
SF小説ですが、どう読むか難しかったです。
本書内の設定は、何百年先にも実現はしないもののように個人的には思いますが、そのイデオロギーは今の現実世界に確かに存在しているようにも思えます。
現代は日々、人間への抑圧が強くなっているように感じますが、抑圧されているものの中には、きっと必要性があって、存在していたものもあるんだろうなと時々考えます。
それが、そのときには悪く見えるようなものでもです。
このまま抑圧されることが加速していったとしたら、その先にはどんな世界があるのでしょうか。
こうならないことを願います。 -
Posted by ブクログ
「虐殺器官」と同じ世界観の未来の話。
「虐殺器官」のラストは「この先、世界は壊滅的な状況になるんだろうなぁ」エンドだったけど「ハーモニー」は言わば終わりのその先の物語。ジャンルはディストピアSFで、「こんな社会はやっていられないよ」という書き方がされているのだけれど、でもどうしても頭の片隅で「この社会で何も気がつかず一生を終えることができたら一種の幸せかも」という思いが読んでいるとどうしても消しきれない。読み終わったらどっと疲れちゃった。
「虐殺器官」で一度崩壊した世界では新たな社会体制が生まれ高度な医療経済社会となり、その社会体制で生きる人々は「個人」ではなく公共のリソースと見なされるよ -
Posted by ブクログ
ネタバレ『虐殺器官』の“genocidal organ”は、人間の内側にある「虐殺を引き起こす臓器」──すなわち認知や集団心理そのものを指しているように感じた。
ジョン・ポールは「虐殺の文法」を操り、後進国での内戦や武装蜂起を恣意的に発生させていく。だが、プロパガンダや情報統制、戦意高揚のための国民精神統一など、現実世界にも同じ構造は存在していて、それらによって民意が扇動され、国家的犯罪へと進んでいった例は枚挙に暇がない。
民族浄化や歴史修正主義も、他者への憎悪と、同胞への強すぎる一体感の裏返しとして起こる。そして現代では、憎悪や対立でさえ「マーケット」になり、平和そのものはビジネスになりにくいと -
Posted by ブクログ
「〇〇のジャンルが好きなんですよね~」という会話をしていると「じゃあ、これは読んだことある?」という流れで出てくるタイトルってあるじゃないですか。例えばSFなら「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」、「三体」、「プロジェクト・ヘイル・メアリー」とか。色々。
これって、共通の話題を求めてるだけじゃなくて「もし、まだ読んでないなら読んだ方が良いよ!」っていう気持ちも結構あるんじゃないかな、と思っています。私、読書歴が浅いので、いつも読む本は人に教えてもらったものばかり。
「虐殺器官」もそういう「SF好きなんですよね〜」という会話の中で出てきそうなタイトルの一つだと思います。どっぷりハマり込んで -
Posted by ブクログ
いつ果てるとも知れない意識ばかりが先になって、ひとは生を実感できているのだろうか。無意識をいいことに、生のなんたるかなどは置き去りにして。
この物語を読んでいるあいだに出会した思いがけない事実がある。太陽は宇宙空間を秒速230キロメートルで、天の川銀河の周回軌道に乗り移動し続けているというのだ。一周するのに2億年という時をかけて。
太陽系の惑星たちも、太陽の移動に付随して、飛びまくっている。ぼくらの大地も、当然のごとく。ぼくらは、まったく意識をしないけれど。
ひとは、ひとの一生を至上のものと信じて揺らがない。それはそれで、ひとつの真理だろう。疑念の余地もないけれど、本音を漏らせば、いささか -
Posted by ブクログ
ネタバレ最後は『屍者の帝国』だったが、フランケンシュタイン、ホームズ、吸血鬼ドラキュラなどが下敷きとなった作品で好みの題材だしこの先も超面白そうなのに絶筆なのが本当に本当に残念!!!
『セカイ、蛮族、ぼく。』は冒頭から食パンをくわえて走ってくるというコミカルな女性が、僕にぶつかってきて転倒したので犯した。という2度見するスタートから始まり、本編中でもう一人強姦する。
好きでやってるわけじゃない、蛮族という血に従ってるんだ、などと、今の時代では問題アリな作品だが、依頼されて同人誌に寄稿した作品だという説明で少しは納得できた笑
著者作品はそこまで書かなくても良いんじゃないか?と突っ込みたい女性の性・強姦 -
Posted by ブクログ
ネタバレ作家さんの書評はよくあるし楽しく読みますが、書評に比べて映画評の方はあまり見かけない気がします。
しかも基本的に褒めるスタンス、楽しく読みました。批評じゃないっておっしゃってますが、紛うかたなき批評です……
「面白そう!」と思っても、たぶん実際は楽しめないんだろうなわたし…という作品もチラホラあるので、伊藤計劃さんの感性好きだなぁ。
ストーリーもそこそこ大事だけど、それよりは世界観がキッチリ造られ作中で描かれているか、なのかな…?
SFは特に世界設計が大事なので頷けるものがありました。
伊藤計劃さんの書く小説がもう読めない、というところで早逝が悔やまれますが、「あの映画観たらどういう批評さ -
Posted by ブクログ
屍体を蘇生させて操る技術が発達した歴史ifストーリー
以下、公式のあらすじ
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屍者復活の技術が全欧に普及した十九世紀末、医学生ワトソンは大英帝国の諜報員となり、アフガニスタンに潜入。その奥地で彼を待ち受けていた屍者の国の王カラマーゾフより渾身の依頼を受け、「ヴィクターの手記」と最初の屍者ザ・ワンを追い求めて世界を駆ける──。伊藤計劃の未完の絶筆を円城塔が完成させた奇蹟の超大作。
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屍体を蘇生させて簡単な命令をする技術が発達し、屍者が労働力として社会の一旦を担うようになった十九世紀後期
諜報機関にスカウトされ -
Posted by ブクログ
ゲームデザイナー小島秀夫の作品に関するエッセイと伊藤の個人ブログに掲げられたテクストから主に映画評と闘病に関する記述を抜粋。言い尽くされた言いまわしだが、抗がん剤治療の苛酷さを淡々と綴っていくくだりには、胸が苦しくなってしまった。「わたし」の身体が自己の思う通りには決してならないという現実を生きながら、伊藤は小説を書いていたわけだ。
「1」の中心は映画評だが、伊藤が'90年代~'00年代のぶろっくばすたー商業映画を(くだらないもののくだらなさをふくめ)徹底的に渉猟していたことがよく分かる。批評もじつに的確で、博覧強記ぶりにも舌を巻かざるを得ない。「映画狂人」蓮實重彦の