石田衣良のレビュー一覧
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ネタバレ石田衣良さんのエッセイはR25に掲載されているときから大好きだった。
『空は、今日も、青いか?』というタイトルで文庫化されている。
まず、なんと言っても読みやすい。
偉そうでもなく、独りよがりでもなく、テーマは日常の一部分なのに
ちゃんと読者に対するメッセージ性がある。
何より、その引き出しの多さに驚嘆する。
雑誌や新聞に寄稿したものを集めた本だけれど、
その幅が広い。
雑誌一つとっても、20代・40代向けの女性誌、
同じく各年代の男性誌、スポーツ雑誌に骨董雑誌。
タウン誌。新聞も大衆紙と経済紙。そのほか色々。
どの部分を切り取っても、石田さんのエッセイになっている。
多趣味な方だとは思っていたけれど、ここまでとは。
石田さんがいつまでも若々しい文章を綴られているのは、
心の柔らかさがあるからなんだろう。
「頭が固い」は年老いた人の形容詞だ。
そして一貫しているのは「文章を読もう」ということ。
これは小学生から、大学生から大人まで、どの人にも伝えている。
石田さんが持っている知識の泉はまさしく、
この読書習慣によって身についたものだという。
石田さんに憧れるのなら、もっともっと本を読もうと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ後味が悪いというか。
信じてきたものがことごとく、裏切る話。
主人公純一。この物語は彼が幽霊になり、自分の死体が埋められているところから始まる。
その後、記憶のフラッシュバッグ。生まれたところから始まって、現在の近くまでを走馬灯のように駆け巡るけれど、死の二年前からの記憶がよみがえらない。
自分はいったいなぜ殺されたんだろう。
彼は疑問に思う。
そうして真相を調べにいく。
純一は電気を操れて、声を出せて、実体化もできる。それを駆使してヤクザと戦って、自分の子供を身ごもった恋人を守る。
でもとても悲しい。
優しい物語で、悪人が完全な悪人じゃない。どこかで優しくて、どこかで義理堅くて。
でも悪役だ。
なんだかとても人間くさい。
池袋ウェストパークを書いている人、らしい。人間くささがかえって残酷なこともあったり。 -
Posted by ブクログ
どんな災厄があっても春になれば桜が咲いて、またこの季節が巡ってきたのかと思う。
毎年新入社員の人を迎え、その度に自分が入社した頃を思い出し、気持ちを新たにする季節。
去年の4月に異動してから新しい部署で楽しく仕事していて、結構大変なミッションなのだけど、それでも何となく心落ち着けて、ある意味会社に入って初めてこんな気持ちで仕事をしている自分に気付く。
平日の起きている時間の大半を会社に捧げ、働くということは生きるということと殆ど同義語みたいな世界を生きてきて、改めて働くとはどういうことかと思う。
自分を高めるため?お金を得るため?家族を養うため?どれもであるけど、簡単には括れない。
今と違って会社訪問解禁日の一発勝負の面談によって就社が決まった私たちの時代、32年前の10月の2日間で、私のそれからの人生の多くの運命が規定されたように思うし、そう思うと“シューカツ”というのは大層なことだと思えるのだけれど、しかし人生というのはそういう分かれ道の積み重ねでもあって、そう思えば、大事なことは、そこで自分がどう努力できるかであることで、どこを選んだか(どこに選ばれたか?)はあまり関係ないようにも思う。
『社会に出て働くってことは、ずっとこうしたひりひりした感じが続くんだと思う。自分が誰か。なにができるか。それをずっと試されていく』−確かに『自分以上の生き方なんて見せられない』この本、題名が際物的で導入の章がマニュアル本みたいなところで印象が悪いけど、読み進めて行く内に、そういうことを思い起こさせて、なかなか良い。
しかし今の学生さんは本当に大変だ。最早私たちの世代が口を出せるもんではないみたい。だけど、就活が恋愛みたいなものであることは変わってないと思う。
『ダメだったとしても…ただ相性があわなかったか運が悪かっただけ。…どんどんぶつかって、ぴたりとフィットする相手が決まるまで再チャレンジすればいいんだ』
上は何とか滑り込んだけど、大3になった下の子にも幸せなめぐり会いが来ることを秘かに願うのみ。 -
Posted by ブクログ
最近はだれも死ぬことがなく、電話一、二本で解決することが多くなってしまったから、ストーリーとしてはマンネリと言われても仕方ない。
でもそのかわりに、虐げられながらも強く生きようとする人たちを描く筆致が鋭さを増している。
シングルマザーの話と、最後の表題作が胸を打った。
強く生きようとしたって、それは誰にでもできることじゃないし、ときにはあきらめてしまうこともある。そりゃそうだよ。人間はロボットじゃない。感情があるんだから。
逃げたくもなるし、何もかもを捨てて一時的にでも楽になりたいと思ってしまうよ。
それでもみんな、最後はちゃんと前に向かって歩いていく。
それはやっぱり、一緒に歩き、一緒に泣いたり怒ったりするマコトにしかできないことなんだろうなあと思った。 -
Posted by ブクログ
少女を殺害した弟の、動機を解明しようと奮闘する少年(中学2年生)の物語。
加害者の家族としての苦難にも決して屈せず、自分が正しいと感じる価値観を信じて、真っ直ぐに行動していく少年の活躍を描く。
石田 衣良氏の作品、初めて読みました。
読みやすく、蠱惑的かつ美しい描写。リアリティのある設定。
過剰なまでの加害者家族への攻撃や、少年の心を占める空虚感を表すシーンは、心が締めつけられるような苦しさを感じました。
また、自分の住んでいる場所が本作品の舞台に近いこともあり、妙に感情移入してしまいました。
単なるミステリー作品とは言わせない、力強さを感じさせる良作です。