山内義雄のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ラストに向けて話が加速していきます。あぁ・・・面白い。
冒頭、前巻から不穏な動きを見せていたカドルッス。彼のその欲深さを持って、アンドレアから今以上の金を吸いだそうと目論む。そして、アンドレアの現在の立場を知り謀略を計るが、伯爵の方が一枚上手であった為にその目的が果たされる事は無かった。一方アンドレアの方も、ただカドルッスに良い様に付き纏われるのが思わしくない為、カドルッスがほうほうの体で伯爵の屋敷から出る所を見計らい、この機に乗じてカドルッスに対して刃を向けた。
重傷を負ったカドルッスは、伯爵の館に運ばれる。カドルッスを襲ったのがアンドレアであると知った伯爵はアンドレアの告発書を書くようにカドルッスを炊きつけ、事が終わった後、最後の最後にモンテ・クリスト伯爵がエドモン・ダンテスである事を当人に明かし、絶望と恐怖の内にカドルッスは息を引き取る。これで一人・・。決して事を予見していた訳ではないのに、その洞察力から突然の事態をも自分の道具として扱う、怖い人だ・・・。
次の対象はフェルナン。彼に対するゴシップ(告発記事?)が流れていたが、それはいよいよ深刻な物となる。議会にたたされるモルセール伯爵、そこに現れるエデ。(彼女が現れる場面を映像にするときっと美しい事だろうと思う)そして、エデがフェルナンに貶められた過去を暴露することにより、モルセール伯爵は窮地に陥る。旅先から戻ったアルベールはそれを知り激怒し、発端となった記事の出所を洗おうとするが、結果それはモンテ・クリスト伯爵へと繋がっていた。
この後、てっきり決闘によりアルベールが死ぬ、もしくは伯爵が怪我を負いながらも物語が続くものと思っていた。しかし、読み手の予想に反して、突如伯爵の屋敷に現れるメルセデス。彼女はモンテ・クリスト伯爵がエドモン・ダンテスである事を見抜いていた。かつて愛した人、貴方が復讐を行う気持ちは分かる。しかしそれでも息子だけは殺さないで欲しい。そう懇願するメルセデス。しかしそれは、伯爵に対して死ねと言っている様なものだった。
メルセデスの行動はどうなんだろうか。もうこの時点で、読み手としてはモンテ・クリスト伯爵に感情を移入しているが、エドモン・ダンテスがメルセデスを愛した気持ちの強さは判らない。だから、メルセデスの行動は凄く卑怯に思えて落胆を憶える。しかし、決闘の朝になってきっと、読み手はメルセデスの覚悟を知る。
夜を徹して息子(アルベール)に対して事の真相、エドモン・ダンテスが貶められた過去と真実をアルベールに打ち明ける事により、アルベールは伯爵との決闘を思いとどまり、恥を覚悟の上で決闘の場で謝罪を行う。(アルベール、なんて男らしい奴だ。やっぱり、まっすぐで良い奴だった。)そして、アルベールは母親メルセデスを連れ、モルセール家を出る決意をする。この時、モンテ・クリスト伯爵がメルセデス達に対して示す気持ちは切なくも暖かいものだった。
本筋の話としては、その様な感じだったが、一つ書いておかなければならないのがエデの行動だ。メルセデスがモンテ・クリスト伯爵の館に現れた後、伯爵が死を覚悟し遺書をしたためる間、不穏な気配を感じたが部屋の中に入る事が出来ずドアの前でずっと待っていたエデ。けれども伯爵が部屋からでて気付く頃には、疲れ果て寝落ちてしまったエデ。なんとも健気で愛おしさを憶える。要するに可愛い。
さて、フェルナンとの因縁に片がついた後は、ヴィルフォール家とダングラール家だ。それぞれ毒殺の疑惑と、偽公爵との結婚騒動。結末に向け進展を見せているが、どのように落ちるのか、楽しみだ。 -
Posted by ブクログ
1844〜46年に新聞連載&刊行。
『三銃士』の大デュマ作。
息子の小デュマは『椿姫』の作者。
ファリア司祭の知恵と工夫のくだりが大好きで、時々思い返していた作品。
自分が持っていたのは子ども向けに訳された青い鳥文庫の『巌窟王』で、今は大人なんだからと完訳版に手を出すも、会話が気取っていて婉曲で、話の内容が頭にスッと入ってこない。
そして比喩と引用が多い。かなり多い。
19世紀半ばのヨーロッパ人にとって『神曲』や『ハムレット』は、現代日本人にとっての『源氏物語』や『忠臣蔵』みたいな感覚だろうか。芸術作品やその作者だけでなく、当時話題だったであろうニュースもちょくちょく引き合いに出される。新旧聖書は言わずもがな。
ギリシャ・ローマ文化も必須科目だったようで、カサンドラやらホラティウスやらデジャネールやら、神話や歴史上のエピソードも会話の端々に出てくる。興味があっても結構目が滑る。
そもそもフランス王政やナポレオン台頭と退場の歴史がわかっていないと、主人公が追い込まれる原因すら理解できない。ただ、逆に言うとそこさえわかっていれば問題なし。
神話や歴史、芸術の話はあくまで会話の装飾部分であり、ピンとこなくてもストーリーに影響はない。注釈もあるし。
複雑に絡み合う人間模様がドラマチックで展開が面白いからぐいぐい読める。
家族愛や恋情はもちろん、血縁なしでも深い親愛が滲み出る関係がバラエティ豊かに繰り広げられる。ほんのりと匂わせる程度だが倒錯的な関係もあったりして、人間関係の描写が実に濃い。
多少冗長だが脇役まで丁寧に掘り下げて追いかける文章、そのおかげで登場人物は生き生きと光る(ジャコポとか、ほんのちょっとしか出てこないのにやたらと存在感がある)し、獄中でも洞窟でもパーティー会場でも、やや偏執的なまでの描写がその場を印象深くイメージさせてくれる。
何より、これでもかと周到に整えられ、着々と執行されていく復讐の描写が爽快。検事さんは確かに非道かつ外道だったが、さすがに気の毒過ぎる結末に主人公が自分で引いてるの、言っちゃなんだがかなりオモロイ。
くどめの描写に慣れてしまえば本当に面白い。親指を下に向けるあの下品なジェスチャーの始まりとか、シンプルに勉強になることも多い。注釈は端的だが、ストーリーへの没頭を途切れさせない適切な情報量で大変助かった。
総じて素晴らしくワクワクさせられた。完訳してくれた訳者に感謝。
ひとつ付け足すなら、人物紹介が必要だと思う。推理小説の目次らへんにあるやつ。7巻全部にあれを入れて欲しかった。
忘れたくないファリア司祭の名言をメモ。
「人智のなかにかくれているふしぎな鉱脈を掘るためには、不幸というものが必要なのだ。火薬を爆発させるには圧力がいる。監獄生活というやつは、ほうぼうに散らばっていたわしの才能を一つの点に集めてくれた。才能は、狭い領域でぶつかり合った。(中略)雲がぶつかると電気ができる。電気からは火花が出る。火花からは光が出る。」 -
Posted by ブクログ
ネタバレモンテ・クリスト伯があちこちに蒔いた罠が、いよいよ仇敵たちを追いつめる。
まず最初に舞台から去ったのはカドルッス。
彼はエドモンが陥れられるのを知っていて知らんふりをしていただけなので、他の人たちに対するよりも憎しみは少なかったのだろうか。
最初は落ちぶれていたカドルッス夫妻に大きなダイヤモンドをプレゼントしたりした。
けれどもそれが引き金になって、小悪党だったカドルッスは人殺しの犯罪者になったのだから、やはり復讐するつもりだったのか、それともカドルッスにチャンスを与えたのか。
カドルッスはエドモンの手によってベネデットとともに監獄から抜け出すことに成功したが、その後もやはり人目を避けてのその日暮らしのカドルッスに対して、ベネデットはエドモンの手引きでイタリアの貴族となる。
それを知ったカドルッスがベネデットをゆすり、結果…。
最後まで小悪党だなあと思っていたら、最後の最後に正体を明かしたエドモンの前で、カドルッスは悔い改める。
「これで一人」とは、カドルッスを看取ったエドモンのセリフ。
やはり最初から殺すつもりだったのか?
フェルナンは過去の悪事を暴かれ、それがモンテ・クリスト伯の仕業と知ったフェルナンの息子アルベールはエドモンに決闘を申し込む。
もちろんエドモンはアルベールを殺す気満々なのだ。
フェルナンの血を引いた者をこの世に残しておくつもりはない。
あんなに目をかけてかわいがっていたように見えたのに、それはフェルナンへのつなぎのためではなく、最初から頃好きだったんだ…。
全てを理解したメルセデスが、「エドモン」と呼びかけ、エドモンを死んだと思ってフェルナンと結婚した自身の罪を詫び、息子の命乞いをすることで、エドモンは己の心にまだ人の心が残っていたことを知る。
それにしても、ただメルセデスを愛していただけの田舎の漁師だったフェルナンが、過去にあんな残虐なことを行っていたというのはちょっと唐突過ぎる気もする。
そんな欲まみれの悪党だったとしたら、いくらエドモンの死で心が弱っていたからといってメルセデスがフェルナンと結婚するだろうか。
過去の自分の行いのせいで妻子に去られ、社交界に居場所を失くしたフェルナンは自殺する。
そしてエドモンのせいで財産をことごとく失うことになったダングラールは、財産目当てで、エドモンがでっち上げたイタリア貴族のカヴァルカンティことベネデットと娘の結婚を画策する。
社交界の歴々が集まった婚約披露のその場で、カドルッスを殺した罪でベネデットは警察に追われる。
結婚自体を嫌がり家から逃げ出すダングラールの娘とベネデットの逃走経路がおんなじで、笑っちゃったわ。
さて、次々に家族が死に見舞われたヴィルフォールは、ついに娘も薬を盛られていたことに気づく。
そしてヴァランティーヌを愛するマクシミリヤンもそれに気づき、なんとかモンテ・クリスト伯に助けてもらおうとする。
しかし彼はすべてを知っていながら、助けを差し伸べようとしない。
ヴィルフォールの娘の命なんて、かんけーない。
ところが、エドモンの恩人であるモレル氏の一人息子・マクシミリヤンが仇敵であるヴィルフォールの娘を愛していることを知り、エドモンは、またも運命の皮肉を、または神の摂理を知り、絶望の声をあげながらもヴァランティーヌの命を奪わない決断をする。
で、メルセデスとの会話で若かりし頃の愛情と絶望を思い出したエドモンだが、フェルナンに父を殺されたエデと今後恋愛関係になりそうな予感。
そこまでしなくてもいいのに、サービス精神の旺盛な文豪です。
新聞小説だったというからというのもあるのかな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいよいよ復讐が佳境に入る。
ダングラールはことごとく株で失敗し、体裁を取り繕う余裕もない。
ダングラール夫人とヴィルフォールの過去の子殺しについては、モンテ・クリスト伯がその事実を知っているのかいないのか判断がつかないまま宙ぶらりん。
ヴィルフォールの家では彼の義理の父母と、父の召使が立て続けに死亡。
かかりつけの医師はこれを連続殺人であり、犯人は娘のヴァランティーヌであると見なす。
検事総長の家族が連続殺人犯である、と。
フェルナンは過去の悪行が新聞に掲載されるが、今のところフェルナンがモルセール伯であることは知られていないので、アルベールが父の名誉を守ろうと動くことが却って事実を顕にしそうな予感。
モンテ・クリスト伯の仇はこの3人なわけだが、このままではヴィルフォールの娘まで無実の罪で破滅してしまう。
それは彼の望みであるのか?
そして、彼が大切に思っているマクシミリアンは、ヴァランティーヌと恋仲なのだ。
もしヴァランティーヌが冤罪のために死ぬことになったら、マクシミリアンも多分生きてはいない…かどうかはわからないが、不幸になることは明らかだ。
もんて。クリスト伯が身近に置いているエデという奴隷。
彼女の父の仇がフェルナンであるということが読者には明らかになったが、当事者同士はまだ知らないままというのも、今後もう一波乱がありそうで怖い。
全てがモンテ・クリスト伯の計画通りなのだろうけれど、子ども世代に罪はないと思うのだけど。
メルセデスに対しても、多少恨みがましいことは言ったけど、憎んでないでしょ?
やり過ぎると自分も不幸になる気がするなあ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいよいよモンテ・クリスト伯の復讐の罠が、仇たちに投げかけられる。
ダングラールには高裁で大損をさせ、ヴィルフォールとダングラール夫人の昔の罪がいよいよ暴かれようとする。
そしていったん物語から姿を消したカドルッスが落ちぶれて復活。
人を殺してまで手に入れた宝石と大金はどうなったん?
とにかくモレル家の長男マクシミリヤンのことが大好きなモンテ・クリスト伯。
ところが彼は、モンテ…めんどくさいな、エドモン・ダンテスの敵であるヴィルフォールの娘と恋仲なのである。
意に染まぬ男と結婚させられそうな娘・ヴァランティーヌを救うため、モンテ・クリスト伯に助けをもとめようとするマクシミリヤンにヴァランティーヌは「私はそんなにいい人とは思わない」と言う。
そのわけは、「人の何倍も大金持ちなだけで両親に愛されていない孤独な私をかわいそうに思って下さらないから」
ええと…すっげえ鼻持ちならんやつだなあと思ってしまったのは貧乏人の僻みなのでしょうか。
もう少し謙虚ということを覚えた方がいいと思うわ。
しかし、彼女の持つ莫大な財産を狙う義理の母は、やけに毒物に興味津々で、それをまたダンテスが煽るものだから、これは死人も出そうな勢い。
ああ、怖い、怖い。