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Posted by ブクログ
“力を尽くして狭き門より入れ”
愛とは何か、を深く考察させられた作品でした。
ただ、肉体は決して交わらないが、互いを常に思い合うプラトニックな愛で、狭き門へと入ることを試みたアリサとジェロームは一体真実の愛、そして幸福を手に入れられたのでしょうか。
実際に読んで考えてみて、答えは否だと思います。
一方、好きではない人と結婚致しましたが、子を作り、実世界を真剣に生きているアリサの妹ジュリエットは非常に魅力的で幸福に暮らしています。
この作品の主題に対極的に書かれていると考える、D・H・ローレンスのチャタレイ夫人の恋人では、むしろ肉体的な愛を称揚されておりますが、それは事実、生物として生きている人間には必要不可欠な愛の形であると考えるのです。
Posted by ブクログ
ジッドの生育歴や人柄とよく重ねられて作品が語られるが、ちっともそんなものとは関係なく、彼一人が考え、向き合ったものが言葉として語りだされている。
作品の発表にとても年月を要するのも十分納得できる。真実を書くということは、生半可な覚悟ではできない。言葉では真理を捉えきることができないから。
これほど、キリストの言葉をその教義を超えてそのまま受け取れているひとのように感じる。彼は決してキリストの教えを捨てていない。真理は捨てることなどできない。
愛とは、すべての人を自分と同じように愛せなければ、それはほんとうの愛ではない。相手を堕落させるものなら、それは愛ではない。そこへの門は誰に対しても開かれているが、全てのひとが入れるわけではない。まさしく狭き門。
アリサは善く生きるために、大切な人を徳へと導くために、自ら行動で示し、そして役目を終えて消えていった。彼女がそう決めて、つらくとも実践に移したその時から、彼女の愛はすでにそこに実現している。魂は彼の心の中で生き続けている。善き精神に導けるのは、ひとへに善き精神の働きの他の何ものでもない。
一時の肉体の愛に溺れてしまえば楽になれる。それでも最後までほんとうの愛の追求し続けた力強さを、彼女に与えたジッドの、深い愛とやさしさを感じる。
Posted by ブクログ
「これ神は我らの為に勝りたるものを備へ給ひし故に、彼らも我らと偕ならざれば、全うせらるる事なきなり。」
(ヘブル書11:40)
この聖句は、比類ない「青春の書」、ジッドの『狭き門』において、アリサが従弟ジェロームに残して去った、最後の言葉である。この書を読まれた読者諸氏は多かろうが、ここでの恋愛経過は19世紀的どころか、現実に存在し得ない類のものである。悲劇的な結末を迎えるが、これは実に読者を陶酔させ、恍惚境へと誘い入れる。
女主人公アリサがここでは聖女のごとく、あまりにも美しく描かれている。この小説の主人公であり物語の語り手でもあるジェロームはかれらの愛を、そこを通って成就する苦難の「狭き門」と定め、アリサと結婚するためにと、自分を試練にかけ、自分を彼女にふさわしい「徳」の高い人物となる様にピューリタン的な努力を始める。がしかしそのことがかえって彼女を天上の神の世界へと向かわせる苦悩の要因になっていることに彼は気づかない。その結果、ジェロームが結婚の話を持ち出すたびに彼女はそれを打ち消し、彼女の内心の彼への強い愛にもかかわらず、ジェロームを否みつつ自らは不毛の死をとげる。
ここで見逃してはならないひとつの事件がある。実はアリサは、彼女の妹ジュリエットとジェロームとの会話を聞くとはなしに聞いてしまい、ジュリエットがひそかにジェロームを愛していることに気づく。それ以後、アリサは身をひいて自分の愛を妹に譲ろうとする。この自己犠牲的な愛もこの小説に異様な悲劇的雰囲気を醸している。
わたしがこの小説を読んだのは19歳の感受性の強い思春期であった。それがためこの書のあまりの美しさに我を忘れ感動の渦へと巻き込まれた。というのも当時のわたしの恋愛観がまだ未熟で、この恋愛悲劇を肯定的に受け止めてしまったからである。それはともかく、この小説がわたしの精神形成に与えた影響は計り知れないものがある。
ところで、この聖句であるが、アリサ自身、「はっきりその意味がわからない」と述べている様に、なぜここにこの聖句が引用されたかは作者ジッド以外、謎である。ジッドはここ以外にも、ところどころ新約聖書からの引用があるが、その解釈が自由すぎるという批判もある。ともあれ、アリサはジェロームとの最後の逢瀬で、ジェロームを突き放し、はらはらと涙を流し、「勝りたるもの」を繰り返しながら、闇夜に姿を消してゆく。
尋常ならざるストーリーだが風紀紊乱が叫ばれて久しい現代社会への強固な反定立として読みつがれるべき名作ではなかろうか。
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