山内義雄のレビュー一覧
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ネタバレアリサの美しさ、挙動、そのすべてが繊細なガラス細工のように描かれている。本当に、主に導かれるかのように、天上に召されてしまった。幸福に手を伸ばすこともできたろうに、そうしなかったアリサ。ジェロームを思うと、ジュリエットを思うと、まぁなんとも言えない複雑な思いになるのだけれど、きっとアリサは母の不義を自らの原罪のように感じてしまったのではあるまいか。私はキリスト教徒ではないのではっきりとしたことはわからないがやはりりっぱだったと思わずにはいられない。そして今まで興味を持てなかったヨーロッパ庭園の美しさの片鱗を垣間見ることができた。華やかな表面だけを見ていたが、そこには華やかさと喜びとともに、やっ
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Posted by ブクログ
“力を尽くして狭き門より入れ”
愛とは何か、を深く考察させられた作品でした。
ただ、肉体は決して交わらないが、互いを常に思い合うプラトニックな愛で、狭き門へと入ることを試みたアリサとジェロームは一体真実の愛、そして幸福を手に入れられたのでしょうか。
実際に読んで考えてみて、答えは否だと思います。
一方、好きではない人と結婚致しましたが、子を作り、実世界を真剣に生きているアリサの妹ジュリエットは非常に魅力的で幸福に暮らしています。
この作品の主題に対極的に書かれていると考える、D・H・ローレンスのチャタレイ夫人の恋人では、むしろ肉体的な愛を称揚されておりますが、それは事実、生物として生きている人 -
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Posted by ブクログ
ジッドの生育歴や人柄とよく重ねられて作品が語られるが、ちっともそんなものとは関係なく、彼一人が考え、向き合ったものが言葉として語りだされている。
作品の発表にとても年月を要するのも十分納得できる。真実を書くということは、生半可な覚悟ではできない。言葉では真理を捉えきることができないから。
これほど、キリストの言葉をその教義を超えてそのまま受け取れているひとのように感じる。彼は決してキリストの教えを捨てていない。真理は捨てることなどできない。
愛とは、すべての人を自分と同じように愛せなければ、それはほんとうの愛ではない。相手を堕落させるものなら、それは愛ではない。そこへの門は誰に対しても開かれて -
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Posted by ブクログ
所蔵する文庫が古すぎて、まだカバーも無い頃のもののため、ずっと岩波文庫だとばかり思っていたが、実は角川文庫だった。
角川版は全6冊。今もまだ文庫に入っているのかもわからないが。
当作品を通じての楽しみの一つに、主人公の常識はずれの富豪ぶりがある。
スーパーカーブームの子供の頃、「こち亀」中川の家には色違いのカウンタックが12台もあることをうらやましく思ったことを初めとして、古今東西の作品中のお金持ちたちの行動に、そうではないわが身を照らし合わせながら楽しむ感情はよくよく理解できるものだろう。
最終巻、魅力あるサブキャラの一人である、山賊ルイジ・ヴァンパが、人質に対して高額の食事代 -
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Posted by ブクログ
現代日本人にとって復讐は、法律上許されないこと。
だが、時としてそれを望む気持ちがある。
人は自らの身に起こった災難・不幸などを自分以外の誰か・何かのせいにしたくなる。そしてその誰か・何かに仕返ししたくなる時がある。
高潔な心ではない。建設的でないのかもしれない。
しかし人は時として、つまづいた石に当り散らす存在なのだ。その石に悪意などなく、よく足元を見る、と反省した方が、その後の人生にとって有用だとしてもだ。
まして、人が人に対し、悪意を持って行った行為について復讐は自然と湧き上がる思いなのだ。
人として許されない行為をした者が、そしらぬ顔で人生を楽しんでいる。
それ