奥泉光のレビュー一覧
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ネタバレ綾崎隼さんが将棋のアンソロジーに寄稿してると聞いては読まないわけにはいかない!
今回の綾崎さんの作品は、「僕らに嘘が一つだけ」の2人と同世代の朱莉さんが主人公。もう一度僕らに〜も読み返した上で、こちらも読み返したいな。
一話目は青山さんのお話らしく、前向きな気持ちになる門出の話。
葉真中さんは初読み。ただただ少年の手腕に鳥肌。
弟子にしたかった少年を冤罪から救うという白井さんの話にはびっくり。そういう将棋との絡め方もあるのか。
橋本さんも初読み。この一戦を勝てば夢が叶うという相手への対応って悩ましい。そこで手を抜かれて夢を叶えること、本気で相手してもらって破れること。
芦沢さんは気になっていた単行本の表題作?思いがけず読めて嬉しい。本気で目指していて、応援もしてもらって、でもそれを辞めたい時の気持ちを思うと胸が締め付けられた。 -
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「将棋」をテーマにしたアンソロジー。
大好きな伊奈めぐみさんの装画が可愛すぎるし。
大好きな青山美智子さんから始まるのだけど、初っ端から泣きそうになった。
「授かり物」
天才棋士と偶然同じ生年月日の息子が、唐突に漫画家になると言い出すお話。
普通の人生って何なんだろう。
分からないのに、「才能」みたいなものを必要とされる職業に就くことに、不安を感じる。
将棋は、「王」を取るゲームではなく、「玉」を取るゲームだったかもしれない、という解釈も、ストーリーに合っていて良い。
他にも、ちょっと怖い話や、奨励会員をめぐるキリキリする話など、豊かで面白かった。
将棋に関する小説が増えてきたような気がする。 -
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指を失ったはずのピアニストを巡るお話
以下、公式のあらすじ
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音大のピアノ科を目指していた私は、後輩の天才ピアニスト永嶺修人が語るシューマンの音楽に傾倒していく。浪人が決まった春休みの夜、高校の音楽室で修人が演奏する「幻想曲」を偶然耳にした直後、プールで女子高生が殺された。その後、指を切断したはずの修人が海外でピアノを弾いていたという噂が……。
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主人公である里橋優の手記という形で大部分が描かれている
社会人になってから届いた昔の友人からの手紙
指を失ったはずの天才ピアニストMasato Nagaseが海外のコンサートでピアノを演奏し、指は治療を受けて復活したという
そこから、永嶺修人(ながせ まさと)と私の出会いから交流、そして事件とその後までの回想
切り落とされた指が復活した謎
とある夜に校舎で行われた殺人事件
ミステリに幻想と狂気が含まれた物語
音楽と言うものの幻想性、神秘性
才能を持つ者と持たざる者
修人の過剰なまでのシューマンへの惑溺
そして、唐突に発生する殺人事件
二転三転する解釈
結局、一体何が真実なんだ?
シューマンの音楽性に関してはまったく読み解けない
というか、そもそも他の音楽ものの小説と同様、私に音楽的素養がないので理解できないのでしょうねぇ
それにしても、本屋大賞のノミネート作で音楽要素を多く含む作品がいくつかあるけど
書店員さんに、音楽的な素養がある人も多いのだろうか? -
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ネタバレ将棋がテーマのアンソロジー。
お気に入りは青山さん「授かり物」
有名な棋士と、同じ年で同じ誕生日の息子を持つ松原芳枝。シングルマザーとして息子を育てていたが、20歳になった歳に漫画家のアシスタントになると言い出し…
ひょんなことから出会った将棋を指す老人と出会い、将棋の奥深さにハマっていく芳枝。これまでの人生と将棋を掛けた描写にじんわりきました。
綾崎さんの「女の戰い」
あくまで棋士を目指す朱莉。女流棋士とは違い狭き門で、保険で東大へ入学できるのも凄いです。
ライバルだけど、友達以上恋人未満な関係の京介が心地よく、認めてくれる人がいるだけで強くなれる関係がまた更に朱莉を上へ連れてってくれる気がしました。 -
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『テーマ小説の旨味が凝縮された至極の一冊』
将棋にまつわる8話のアンソロジー。総じて良かった。特に将棋の細かいルールがわからなくとも読めるのが良い。全体的に夢を諦めない姿勢と将来の不安に対する心の葛藤を描いた作品が多く、勝負師たちの手に汗握る緊迫感が伝わってくる。奨励会の描写は「ヒカルの碁」を思い出した。
●授かり物 青山美智子
親子の優しい物語、ブラマンが出てくるのは青山ファンに嬉しい
●マルチンゲールの罠 葉真中顕
賭け将棋師の物語、真剣勝負に手に汗握る
●誰も読めない 白井智之
本格ミステリー、アリバイ崩しのトリックと将棋の先読みを掛けた白井先生らしい作品
●なれなかった人 橋本長道
天才ではない2人の棋士を描く、勇気をもらえる良い物語
●王手馬取り 貴志祐介
30年前の真相を暴く推理小説
●お前レベルの話はしていない 芦沢央
棋士をドロップアウトした弁護士の物語、辞め際の難しさを描く
●女の戦い 綾崎隼
自分を信じる女性棋士と他人を信じる高校生棋士、一番良かった
●桂跳ね 奥泉光
もの語る一手にふさわしい作品 -
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書名にある通り、対談がまとめられたものなので、まとまった論考が展開されているわけではない。でも、明治以降令和にいたるまでの天皇や皇室の変遷を二人で振り返ってくれているので、頭の中を整理できる。昭和天皇の崩御で、それまで存在感が薄れていた天皇の身体が急に表面に登場し、天皇のタブー性を再認識させられたこと(p156)、平成天皇は雲仙普賢岳の大火の時被災地を訪れひざまずいて国民と対話する姿が印象的だったが、一方で戦地訪問先は敗れたところのみ訪れ、旧満州や真珠湾などは意図的に回避しており、平成天皇の訪問した戦地のみであの戦争を振り返るのは実態を歪めてしまうこと(pp166-177)、眞子さんのニューヨーク行きは、国民の平安を祈るよりも「私」を優先させますという宣言であり、皇室のイメージを変えると同時にパッシングにつながったこと(pp190-193)。本書の最後では、天皇制は、多様性やLGBTQを認めていこうという時代の流れと乖離しており、被災地の視察や祈りは政治家や宗教者に任せ、天皇の仕事を減らし、いずれくる、天皇の存在しない社会の姿を考えておくことが大切、という結論で締められる。
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ネタバレあり得たかもしれない戦後史を陰画として描いた伝奇ミステリー。まずはモノとしての本の厚さに圧倒されるが、主役級の数名は言うに及ばず、次々登場する端役キャラに至るまで1人1人異なる味付けがされているところや風景事物の細部を描いて戦後の匂いがしっかり再現されているところ(特に下山事件を彷彿とさせる各種団体名には事件の臭いがプンプン)など注入されたエネルギーには恐れ入るしかない。
序盤どんどん話の風呂敷が広がり続けるなか、インテリ層による新憲法評価の議論に一つのクライマックスがあるが、そこから話がオカルト方面に転換して少しテーマを見失いそうになった。最後には再び本テーマに回帰するが個人的には最初の疾走感を維持したまま没入したかった。現代のシスターフッド的要素など後半の一連の流れと登場人物には著者自身本当に書きたかったことなのか疑問に感じて少し雑味を覚えてしまった。ただ現代っ子の鼠が国体論を振りかざす大蛇と対決する場面では、敵役の論理に借り物(21世紀のウツ先生によると〜)の論理で立ち向かう形となり、明らかに力不足を露呈して、小説としての成否とは別に、現代リベラルのひ弱さが見事に描かれていると受け取った。 -
Posted by ブクログ
20世紀の総力戦に取材した小説を多く発表してきた小説家と、近代天皇制とメディアとのかかわりを粘り強く追いかけて来た政治学者との対談本。新書という媒体的な制約もあって、基本的な知識の確認に多くのページが費やされているが、大正天皇の振る舞いを「大正流」として取り出したり、徳川時代の身分差をめぐる人々の身ぶりと近代天皇制のそれとの連続性を問題化したりと、興味深い論点も提示されている。原武史が、近代天皇制を研究していて最も分からないのは、「なぜ民衆が天皇制を支持し続けたか」「いったい誰が宮中の儀礼を設計したのか」が分からないことだ、とコメントしていたことも印象に残った。原が構造的な女性差別性を提起することで、近年では絶滅危惧種(?)となった天皇制廃絶論に言及していることにも注目したい。
本書の中では、原が日経新聞記者時代、昭和天皇の癌の手術の際に遊軍的に宮内省詰めとなった際の経験についての記述が印象に残った。何一つ新しいニュースはないのに、「万が一」を考えて毎日深夜まで宮内庁記者クラブに詰めていなければならない。社の上層部もほんとうはどうでもいいと思っているのに、自社だけが「特ダネ」を逃すのは失態に当たると惰性で報道の準備を続けていることこそが、「王の身体が日本という国の時空間を支配している現実」を再生産している――。では、そのような天皇の権威は誰が・どんな理由で求めているのか?