奥泉光のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ将棋がテーマのアンソロジー。
お気に入りは青山さん「授かり物」
有名な棋士と、同じ年で同じ誕生日の息子を持つ松原芳枝。シングルマザーとして息子を育てていたが、20歳になった歳に漫画家のアシスタントになると言い出し…
ひょんなことから出会った将棋を指す老人と出会い、将棋の奥深さにハマっていく芳枝。これまでの人生と将棋を掛けた描写にじんわりきました。
綾崎さんの「女の戰い」
あくまで棋士を目指す朱莉。女流棋士とは違い狭き門で、保険で東大へ入学できるのも凄いです。
ライバルだけど、友達以上恋人未満な関係の京介が心地よく、認めてくれる人がいるだけで強くなれる関係がまた更に朱莉を上へ連れてって -
Posted by ブクログ
『テーマ小説の旨味が凝縮された至極の一冊』
将棋にまつわる8話のアンソロジー。総じて良かった。特に将棋の細かいルールがわからなくとも読めるのが良い。全体的に夢を諦めない姿勢と将来の不安に対する心の葛藤を描いた作品が多く、勝負師たちの手に汗握る緊迫感が伝わってくる。奨励会の描写は「ヒカルの碁」を思い出した。
●授かり物 青山美智子
親子の優しい物語、ブラマンが出てくるのは青山ファンに嬉しい
●マルチンゲールの罠 葉真中顕
賭け将棋師の物語、真剣勝負に手に汗握る
●誰も読めない 白井智之
本格ミステリー、アリバイ崩しのトリックと将棋の先読みを掛けた白井先生らしい作品
●なれなかった人 橋 -
Posted by ブクログ
書名にある通り、対談がまとめられたものなので、まとまった論考が展開されているわけではない。でも、明治以降令和にいたるまでの天皇や皇室の変遷を二人で振り返ってくれているので、頭の中を整理できる。昭和天皇の崩御で、それまで存在感が薄れていた天皇の身体が急に表面に登場し、天皇のタブー性を再認識させられたこと(p156)、平成天皇は雲仙普賢岳の大火の時被災地を訪れひざまずいて国民と対話する姿が印象的だったが、一方で戦地訪問先は敗れたところのみ訪れ、旧満州や真珠湾などは意図的に回避しており、平成天皇の訪問した戦地のみであの戦争を振り返るのは実態を歪めてしまうこと(pp166-177)、眞子さんのニュー
-
Posted by ブクログ
ネタバレあり得たかもしれない戦後史を陰画として描いた伝奇ミステリー。まずはモノとしての本の厚さに圧倒されるが、主役級の数名は言うに及ばず、次々登場する端役キャラに至るまで1人1人異なる味付けがされているところや風景事物の細部を描いて戦後の匂いがしっかり再現されているところ(特に下山事件を彷彿とさせる各種団体名には事件の臭いがプンプン)など注入されたエネルギーには恐れ入るしかない。
序盤どんどん話の風呂敷が広がり続けるなか、インテリ層による新憲法評価の議論に一つのクライマックスがあるが、そこから話がオカルト方面に転換して少しテーマを見失いそうになった。最後には再び本テーマに回帰するが個人的には最初の疾走 -
Posted by ブクログ
20世紀の総力戦に取材した小説を多く発表してきた小説家と、近代天皇制とメディアとのかかわりを粘り強く追いかけて来た政治学者との対談本。新書という媒体的な制約もあって、基本的な知識の確認に多くのページが費やされているが、大正天皇の振る舞いを「大正流」として取り出したり、徳川時代の身分差をめぐる人々の身ぶりと近代天皇制のそれとの連続性を問題化したりと、興味深い論点も提示されている。原武史が、近代天皇制を研究していて最も分からないのは、「なぜ民衆が天皇制を支持し続けたか」「いったい誰が宮中の儀礼を設計したのか」が分からないことだ、とコメントしていたことも印象に残った。原が構造的な女性差別性を提起す
-
Posted by ブクログ
テーマもページ数も分厚い力作。不穏な空気を垣間見せながらも、軽妙な石目の章を織り交ぜながらなので、単なるミステリーかとも思わせるテンポで延々と話が進んでいく。かなりの終盤になって物語は一気に混沌の度合いを増し、虚構と現実の並行世界を体感できる。
とにかく文章が抜群に上手いのでいつまでも読み続けていられるけれど、並みの文章力でこの話を読まされたら「なんじゃこりゃ」になってしまうかもしれない。K文書や第一の書物のことなどを始めとして、様々な謎がスッキリと解消されずにモヤモヤが残ってしまった。
石目とか橿原いう名前に既視感があったのですが、これは「神器」とリンクしている作品なのでしょうか?(的外れ -
Posted by ブクログ
夏目漱石の作品について、筆者の二人が対談する本。
自分の好きな作品が多くて嬉しかった。やっぱ「猫」はサイコーですよね!「門」もいいよね!「坑夫」好きだっていう意見は今まで見なかったから、同じ意見で嬉しい!
夏目漱石の作品を読み込んでるんだろう二人の意見はとても参考になった。夏目漱石はコミュニケーション不全の話をずーっと書いてるんだということは今まで気づかなかったけど、言われるとそうだな…
「坊っちゃん」も威勢が良くて好きだけど、坊っちゃんってあんまり話してない、と書かれてて、あ、確かに…と気づいた。なんか坊っちゃんが可愛く思えてきて、再読したくなった。猫も門も坑夫も読もうかな。