奥泉光のレビュー一覧

  • 旧約聖書がわかる本 〈対話〉でひもとくその世界
    「正義を貫くこと」こそ「応報原則」。神はその自由を人間に与えた。神は自身の絶対的力で悪を壊滅しない。人間は自分達の強い意思と力を持って正しいことを成し、悪を寄せつけず、世の中を正しい方向に導かねばならない。遥か太古からのヨブ記のメッセージ、確かに受けとりました!
  • 旧約聖書がわかる本 〈対話〉でひもとくその世界
    対話とは自由が保障されている中で生じる。
    解釈の視点が愛情溢れる教養から滲み出ている対話は、類まれな歴史に残る名著になると思う。
    日本人の感じる神とはいい意味で違う。欧州の文化を理解する基本書にもなり得る。
  • 死神の棋譜(新潮文庫)
    将棋を題材にしたミステリー小説。名人戦の最中、ある詰将棋が描かれた矢文が見つかる。
    そして、その矢文を持ち込んだ奨励会員がそのまま失踪することに。矢文に描かれた詰将棋が意味することとは。さらに、彼が失踪したことの意味とは。元奨励会員である主人公が探偵のように二つの謎を解決すべく、各地を巡ることとなる...続きを読む
  • この国の戦争 太平洋戦争をどう読むか
    歴史を学ぶ意義を重く認識させてくれる名著 「歴史は『物語』として理解される」
    ここに歴史の面白さと同時に「怖さ」がある
    1.国家の統合 ①統治=政治 ②統帥=軍隊 明治は分立 民主国家は政治優位
     日本・ドイツは後発国、ゆえに政治の熟成を待てず、皇帝主導・軍優位の国家体制
    2.日本の稚拙な植民地経営...続きを読む
  • この国の戦争 太平洋戦争をどう読むか
    小説家の奥泉さんと歴史学者の加藤さんの対談集。
    単一の物語に回収されないように歴史を語るべきとはポストモダン以来の歴史の見方だとは思うのだけれど、それをアジア・太平洋戦争に当てはめて語ってくれている。
    当初単なる軍人のモラルだった軍人勅諭が変質し政治に関わることの正当化に使われたところから、共通の思...続きを読む
  • この国の戦争 太平洋戦争をどう読むか
    歴史は「物語」の形でしか語られ得ず、またそうならなければ人を動かす力を持ち得ない。多くの国々で、明白に贋物とわかる歴史の「物語」が流通する現状があるのも事実だ。
  • グランド・ミステリー
    面白い! 最初は、少しとっつき難いかもしれないが、読み進め重層的な世界が見えてくると、一気に最後まで読んでしまう。さすがベテラン作家です。
  • 雪の階(下)
    さすが奥泉氏という作品。文章は上手いしストーリー、小物から情景描写までいやらしいところなく丁寧に描かれている。どうやったらこんな文章が書けるのだろうという思いがするし知識量も比類なきものを感じる。
    ストーリはいよいよ佳境を迎え上巻で伏線として張られていた兄惟秀、伯父白雉博允、紅玉院が回収される。途中...続きを読む
  • 雪の階(上)
    昭和初期、2・26事件を翌年に控えた昭和10年。華族の娘、笹宮惟佐子を中心に友人の宇田川寿子、ドイツ人音楽家カルトシュタイン、父の笹宮惟重、母の瀧子、弟の惟浩、友人の牧村千代子、宮内省の役人木島征之、記者の蔵原誠治、寿子の友人の槇岡貴之中尉とその友人の久慈中尉、そして伯父の白雉博允、兄の惟秀が時代の...続きを読む
  • シューマンの指
    これ好みです。とっても面白かった。「イデアとしての音楽があれば実際の演奏には何の意味もないんだ」とする主人公の言にはまったく賛成できないけど。
    で、読み終えてから気づいた。この作品って読者を選ぶよね。シューマンの作品に触れていない人には楽しめないのかもしれない。『死神の棋譜』を読んだ時辛かったのは、...続きを読む
  • シューマンの指
    クラシック音楽専門書かと見紛う程、その詳細な内容の充実度に圧倒されるばかり。専門とする私には至極面白いし勉強になるしついて行けるけれど、全く専門外の人の中には小説の芯を見失う可能性もあるかもしれない。もちろん専門としなくとも十分丁寧かつ鋭敏に繰り広げられる物語はすべての人の心を離さないと思う。
  • 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活
    「クワコー」こと桑潟幸一は、消費者金融会社の取締役だったという経歴をもつ鯨谷光司(くじらたに・みつじ)とともに、千葉県権田市のたらちね国際大学に転任することがきまります。「レータン」に勝るとも劣らない大学事情を知って落胆しつつも、下流学者生活に適応していくクワコーでしたが、そんな彼の研究室に幽霊が出...続きを読む
  • 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活
    再読。やっぱり面白い、純文学作家×エンタメの最高峰。
    自分はやっぱり、純文学なら純文学、推理小説なら推理小説として、それぞれ徹底してくれないと楽しめない。
    まあ、純文学とかエンタメとかの区分の意味が何なのかと言われても困るけれど、本来「純文学」の作家であった著者が、純文学的でない作品をものしたとき、...続きを読む
  • 漱石漫談
    いとうせいこうと奥泉光が行っている「文芸漫談」というライブイベントから、夏目漱石の作品をピックアップ。漱石作品の面白さを紹介している。
    きっと、二人とも何回も、何回も、何回も漱石作品を読んでいるのだろうな。全編に漱石愛が満ち満ちている。

    中学の教科書で漱石に出会い、読書感想文の宿題では面白さがちっ...続きを読む
  • 漱石漫談
    2017年刊。生誕150年企画。積読本でした。

    『こころ』は他の本でもいろいろ読んだので、あまり目新しさはかんじなかったです。
    『三四郎』は面白かった!
    『草枕』タイプの小説で絵画を理想とした、物語ではなくシーンが推移していく小説だというのは知りませんでした。

    『草枕』は何度も書店で買おうかと迷...続きを読む
  • シューマンの指
    シューマンに対する知見が全くない僕でも、一種のシューマン論評を読んでるかのように魅力的な音楽性、フラジールな人物像を学んでいるという感覚。前半は特に。
    これはミステリーになりうるのか?と思ったら急に殺人事件。後半はあれよあれよと畳み掛ける展開で一気に読み進めてしまった。

    それでも音楽を文字で表現す...続きを読む
  • 東京自叙伝
    単行本は確か見出しが岩波新書ふうに配置されていた。
    単行本の真っ赤=火事のイメージ、帯の言葉溢れ出る感じ、に比べると、文庫の表紙はすっきりしすぎているかな。
    でも、背表紙の水色+表紙のピンクにちょこなんといる鼠を見て「カワイイー!」とジャケ買いしたほんわか女子が、読後ガツンとやられている光景を想像し...続きを読む
  • シューマンの指
    天才ピアニスト少年、永嶺修人。右手の指を失ったはずの彼が30年後、再びピアノを弾いたと伝え聞いた語り手。再生した指の謎。そこからの語り手による高校時代の回想は、修人とのシューマン談義が延々と続き、正直、読むのが大変だった。後半、語り手の高校卒業の日の殺人事件から話は動く。全ての謎は語り手が閉じ込めて...続きを読む
  • 漱石漫談
    いとうせいこうと奥泉光が、漱石の小説について、ライブで語り合う。

    10年以上前から、この2人で、文芸漫談という形式で色々な文学作品を、鋭く、面白おかしく語っているとのこと。
    今まで全く知らなかった。もっと早く知っていれば、もっと人生楽しくなったのに。

    とにかく2人の文学作品への造詣の深さ、感覚の...続きを読む
  • グランド・ミステリー
    単純なミステリーとは到底言えない小説。戦記物であり、SFであり、それよりも物語として、久々に面白いと思った。個人的には、アービングの小説を読んだ時の満足感と良く似ている。持つのも大変なくらいの分厚い文庫本だったが、まったく気にならないくらいの読後感だった。