奥泉光のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『浪漫的な行軍の記録』は南方の戦線で孤立無援になった日本軍兵士の行軍の記録だ。とはいっても著者は戦後の生まれのなので、もちろん体験談とは一線を画す。
主人公は弾の出ない大砲(故障ではなく張りぼての大砲。もともと出ない)を上官の理不尽な命令により運び続けなければならない。大砲の名は「国体の精華」…なんと皮肉に満ちた名前だろう。『悪魔の辞典』に載せたいくらいだ。
夢と現を行ったり来たりする描写が、「奥泉さん、またこんな書き方で煙に巻こうとして」と突っ込みたくなる。収束させる気があるのかいつも疑う。でもそこが面白い。
扱っている内容は重いので、もしかしたらもっと深い読み方があるのかもしれないが、たぶんない。笑ってしまう表現が随所にみられる。
「浪漫的」という言葉が冒頭にくるのだから、全体主義的なイデオロギーへの痛烈な皮肉として、こういった物語の手法をとったのだと思う。
戦争文学ととらえるとふざけ過ぎているので、あくまでテーマを表現するのに題材として戦争が適していたと考えて読んだ方がいい。
(『石の来歴』は別レビューで)
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Posted by ブクログ
すっごくおもしろかった、読んでて幸せ、読み終わっても幸せな感じ。これぞ、小説という感じ。ミステリ、歴史、ファンタジー、冒険、SF、ロマンス、哲学、宗教などすべてがつまっているし、場面ごとの雰囲気もすごく動きがあったり、静謐だったり、ほのぼのだったり。そしてとにかく主人公の36歳ジャズピアニスト、フォギーがものすごーく魅力的でファンになった!自分ツッコミが多いし、一見、浮ついているみたいだけど実は繊細で、柔軟性があって前向きで、いい人で、考えが深くて。ジャズの即興演奏は他人を受け入れることだ、とか、他人のために祈ること、とか、深く感じ入って共感するところがたっくさんあった。相棒の佐知子ちゃんもすごくキュートで魅力的。こんな友達とか後輩がいたらいいなあと。このコンビと霧子の隠れ家生活のあたりなんていつまでも読んでいたいくらいだった。この小説、難しそうでかたそうで男っぽく見えて絶対損してると思うんだけど。もっとずっとやわらかくて楽しくて、絶対女子向けなのに!最後のオプショナルのような章も、これぞSFの幸せ!って感じ。ジャズに興味が出てきたり。フォギーと佐知子ちゃんが活躍する続編なんて出ないかなあ!!!
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Posted by ブクログ
ネタバレウダツのあがらない30代負け犬ジャズピアニストのフォギーが、「オルフェウスの音階」に導かれ戦時下のドイツに至る大冒険譚。
「ロンギヌスの石」やら「フィボナッチ数列」やら、神秘的なモチーフの断片が散りばめられ、しまいにはオクイズミヒカルまで出現する荒業のメタフィクション。
根底に流れる遊び心満載のジャズ魂から発せられる、人を食ったような展開にまるめこまれながら読んでいくのが気持ちよくてたまんないです。
何よりも、自由闊達に動き回るフォギーの魅力にヤラれました。
中盤の、祈りについてのフォギーの考察は胸に迫るものがありました。
特定の信仰、民族、文化を超えて、祈るということの意味を考えさせられます。
最後のほうは蛇足と思われる向きもあるかもしれませんが、これはこれで、ジャズのグルーヴ感をフォギーと一緒にめいいっぱい味わったようですごく良かったです。 -
Posted by ブクログ
今までぼんやりとしか知らなかったエピソードも原文が引用されて解説されるという形で深く理解することができた。中でも印象に残ったのはヨブ記のヨブが神に訴えるシーン。神がヨブと対等な存在として描かれている点も旧来の神のイメージとは異なるものでユニークなものであったが、私はそれでもヨブが神に対してこんなにも自信を持って自分の正しさを主張できることに感銘を受けた。ヨブと対等な存在といえども神はこの世界を作り、自然を調停する存在であるから普通であれば、自分の正しさに少しは疑問を抱くはずだろう。しかし、ヨブは違う。並大抵の信念じゃこんなことは言えないと思う。そうやって絶対的な信念を貫いてきたからこそ神に対してもなんら戦くことなく主張できたのだと思う。
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取り急ぎ夏目漱石を知ろう!Part2。
なんてこった。
先にこっちを読むべきだった。
この本は元々子供向けに夏目文学の読み方を指南したもの。
だもんで、えれぇ読みやすかっただ!
なんなら夏目文学総ざらい。もう読んだも同然!笑
「吾輩は猫である」や「坊ちゃん」「こころ」「草枕」などの有名どころの解説はもちろん、実はエッセイや俳句、漢詩なんかも書いてたんだよ、と教えてくれました。
そして何より目から鱗だったのが、小説の読み方指南。
この作者の奥泉光さんはね、小説なんて読み飛ばしたって構わない、とか、アート作品を鑑賞するつもりで読んだっていい、とか、未完の作品でも全然構わないし寧ろ「明暗」(漱石の絶筆作品)こそが傑作だと。
独自の視点ながらも私はそれらにとても共感し、これからの読書生活をより良きものにするであろうヒントを与えてくれましたね、
満足な〜り〜♪
あー、でもやっぱり「夢十夜」の前に本書を読むべきだったな〜。
他人の夢の話を面白がれる人はセンスが良いんだって。(・・)アタイ★2……(´. ॄ.`)
ま、これできっと近代文学館も楽しめるだろう。 -
Posted by ブクログ
文芸漫談2」1はまだ読んでないのですがまず2からで。見仏記の「いとうせいこうさん」と作品が好きな「奥泉光さん」の対談(ショーかも)
積んでいる本の中に付箋がちょろちょろ見えると胸騒ぎがする。記録しただろうか。題名を見て確かに読んでいる。でも感想を書くとなるとあまり記憶が鮮明でない。だからすぐ書こうと言ったのに(パソコンに低姿勢)
でも断言すると、これは面白かった。
いとうせいこうさんの作品は読んだことがないが取り敢えずデビュー作を読むのがいいらしい。
見仏記は相棒がみうらじゅんさんで相当ぶっ飛んでいたりするので、いとうさんが本筋に引き戻しつつ、ありがたい仏さまを見て歩く、この二人の会話が愉快でたまらない。
ここでも奥泉さんが話の翼を広げるだけ広げてどこか世界の違う所に飛び出しそうになるのを、いとうせいこうさんがそれとなく地上に引き戻す。手綱さばきがいい、息もあっている、見仏記と同じようなパターンで、だから面白い。
読んだものも読まなかったものも、二人の話から納得できたり、さすがに作家の視点がと感じたり、ユニークな表現で、照らし出して読ませてくれたり類を見ない。 本音が即本質に通じているという、作家・作品解説と言えばいえる、面白すぎる本でした。
目次を見ると
1 カフカの「変身」は結構ベタなナンセンス・コント
2 ゴーゴリの「外套・鼻」はいきなりハイパーモダン
3 カミュの「異邦人」は意外にイイ人
4 ポーの「モルグ街の殺人」は事件じゃなくて事故でした
5 ガルシア・マルケスの「予告された殺人の記録」は臓物小説
6 夏目漱石の「坊ちゃん」はちょっと淋しい童貞小説
7 デュラスの「愛人」にはアナコンダは出てきません
8 ドストエフスキー「地下室の手記」の主人公は空気読みすぎ
9 魯迅の「阿Q正伝」は文学史上もっともプライドが高い男の話
私、「愛人」は面倒な文体に内心呆れて、読みかけてやめました。呆れるというのは全く自己本位な感情でして、映画ともども名作だということがよくわかりませんでした。
その上「地下室の手記」は青空文庫で読んだのですが、これもあまりの憂鬱な内容と主人公がいやな奴過ぎて、読むのをやめました。ただどこがいやなのかという所は、地下室にいて地上に出ない見識、自覚はあるのだという主人公はよしとして、ドストエフスキーも、まぁどちらも作家と作品ながら不愉快満載でした。
奥泉 まぁ大多数の人は、思い込みのセルフイメージと他人から与えられる規定の微細に調整しながら、ある程度、一つの像にまとまって生きていますよね。だけど、地下生活者は違います。
いとう 違うの?
奥泉 自分というものが決定されることがすごく怖い「私」というものが信じられないんです。
いとう それは、自分で規定することが苦しいのではなくて、他者との関係の中で「私」が規定されていくことが苦しいわけ?
奥泉 そう。
とか
また脇注で
全編、逆切れしている中学生みたい…いとう
読みにくさ抜群…いとう
一人称小説は、なんでも地下室に行くと面白い…奥泉
ここなんて奥泉さんの面目躍如かも
例えばこんな風に、私のいやな気分を分析してくれます。
伝記なんて書かれても阿Q本人は読めないのに(笑)…奥泉
会話がおかしく爆笑、「変身」問答も面白かった。
変身
外套・鼻
異邦人